【第9回】会計システムで債権管理ってどうやるの?
◆この記事の要約
会計システム刷新やERP導入で見落とされがちなのが、売掛金など重要な債権を扱う「債権管理サブシステム」です。そこで本稿では、計上・請求・入金・消込・相殺・残高管理から一般会計システム連携まで、標準機能の勘所と確認ポイントを業務フローに沿って整理し、販売管理システム等との役割分担まで解説します。
- 全体像:計上→請求(締め)→入金→消込→相殺→残高管理までを債権明細単位で管理し、一般会計へ仕訳連携します。
- 計上の前提:取引先マスタに勘定科目(売掛金・未収入金等)と回収条件(締め日、回収サイト、回収手段等)を事前設定します。
- 登録方法と統制:手動入力/Excel等(CSV)インポート/インターフェースデータ登録ーー前二者は確認・承認が前提、後者はIT統制が鍵です。
- 導入時の確認:回収条件の標準機能の制限、請求書発行(アドオン要否)、自動消込・相殺パターン、滞留期間管理(年齢調べ)やアラーム等を確認します。
債権管理サブシステムの主要機能
債権管理サブシステムは、主に売掛金や未収入金等の損益取引に基づく債権の管理に利用します。
債権であっても、仮払金や前払金等の勘定科目の管理ができるかは、ERPや会計パッケージによって異なるので、確認が必要です。また、貸付金等も一般的には対象としていません。
【図1】会計システムのシステム構成イメージ
債権管理サブシステムは、業務の流れに合わせて、下記の機能を基本的に保持しています。
【図2】債権管理サブシステムの主要機能
ここでは、債権管理業務の流れに沿って、主要機能をご紹介します。
計上処理
債権管理サブシステムでは、取引先ごとに債権明細(個々の取引明細)の入力を行って計上します。
【図3】債権計上のイメージ
債権管理サブシステムで債権管理を行うためには、管理する取引先や勘定科目(売掛金、未収入金等)や、回収条件(締め日、回収サイト、一括回収・分割回収、回収手段等)などを取引先マスタに事前に設定することが必要です。
債権計上の入力項目
債権計上の入力・登録においては、一般的に下記の項目を入力します。
【図4】債権計上の入力・登録
入力項目のうち、借方・貸方の勘定科目、回収予定日、回収手段等については、取引先ごとに取引先マスタに事前に登録したり、入力時に伝票タイプ等を指定したりすることにより、システムがデフォルト値を設定する場合もあります。債権計上の入力項目は、ERPや会計パッケージによって異なるので、どのような項目が入力できるか、どの項目が必須項目か任意項目かなどの確認が必要です。また、ユーザーが設定できるフリーの項目があるものもありますので、それらがどれくらいあるかも確認が必要です。
債権計上の入力・登録の方法
債権計上の入力・登録には、画面からの手動入力、Excel等からのインポート登録、他システムからのインターフェースデータの登録などがあります。
画面からの手動入力
ユーザーが画面上で債権計上として取引先、勘定科目や金額等を直接入力する方法です。
販売管理システム等で債権取引を管理していない債権の計上入力の基本的な方法です。
手動入力の場合、内部統制の観点から、入力者と別の人の確認や承認を得てから正式な債権計上となることが一般的です。なお、債権計上の承認は、一般会計サブシステムに準じます。
また、電子帳簿保存法対応のため、会計システムに証憑を電子保存したい場合は、取引先への納品書や請求書等の証憑を電子的に添付できるか否か、添付操作がしやすいかなども確認が必要です。
手入力の場合、ユーザーがコード類を入力する必要があるため、画面入力時に取引先・組織・勘定科目等の入力支援機能(ポップアップ画面、日本語名称検索等)があるかも確認が必要です。
Excel等からのインポート登録(CSV形式で仕訳の登録)
ユーザーが画面からExcel等(CSV形式なと)のデータをアップロードし、債務を登録する方法です。Excel等の形式は、ERPや会計パッケージが用意したインポートファイル形式に準拠します。インポートファイルに債権を入力(Excelに入力)して、これをアップロードします。Excel等からのインポート登録は、大量データをユーザーが直接入力しなければならない場合、便利な登録方法です。
Excel等からのインポート登録は手動入力と同じですから、内部統制の観点から、入力者と別の人の確認や承認を得てから正式な債権計上となることが一般的です。
他システムからのインターフェースデータの債権登録
販売システム等の債権を管理するシステムから、債権計上が必要なインターフェースデータ(出荷データ、売上データ、請求データ等の取引明細データ)を会計システムに送り、このインターフェースデータをもとに債権を登録する方法です。インターフェースデータの形式は、ERPや会計パッケージが用意したインターフェースデータ形式に準拠します。
製造業や商社など大量の販売取引データを扱う場合は、販売システム等を利用していることがほとんどですから、インターフェースによる債権計上が一般的に多いといえます。インターフェースによる債権計上の場合、回収予定日や回収手段等を販売システム側で設定するか、会計システムで設定するかを検討することも必要です。例えば、これらを販売システム側が管理している場合、回収予定日や回収手段等の情報を含んだインターフェースデータが送られ、会計システムでこれらを設定しないこともあります。
また、他システムからのインターフェースデータの債権登録は、IT統制がしっかり担保されていることを前提に、登録時点で正式な債権計上とすることができます。IT統制が担保されていない場合(インターフェースの途中で改竄のリスクがあるなど)は、人間系で確認や承認が必要になります。
以前は取引明細データを集約(サマリー)して仕訳計上(債権計上)することが多かったのですが、昨今は取引の分析や統制を行うため、明細単位での計上が多くなってきています。販売システムも会計システムと同じERPを利用する場合は、そもそも取引明細単位で仕訳計上(債権計上)することが一般的です。
請求処理
請求額の決定
請求処理は、取引明細から取引先ごとに回収条件(締め日、回収サイト、一括回収・分割回収、回収手段等)を加味して請求額を決定する処理です。債権の締め処理ともいいます。
【図5】請求処理のイメージ
締め日の設定、回収サイトの設定、一括回収・分割回収の設定、回収手段(現金、小切手、振込、期日払、でんさい等)の設定などについては、ERPや会計パッケージの標準機能では制限がありますので、導入時に確認が必要です。
請求書の発行
請求額の決定時にシステムで請求書を発行したい要望に合わせて、取引先ごとに請求書を作成し、送付する機能があるERPや会計パッケージもあります。送付方法としては、電子メールや紙での送付がありますが、請求書送付のクラウドサービス等と連携できる場合もあります。
ただし、請求書発行ができるERPや会計パッケージは限られています。会計システムで請求書を発行する場合には、請求書発行処理をアドオン開発することが必要になります。しかし、販売システム等を同時に利用している場合には、あえて会計システムで請求書を大量処理するアドオン開発をすることはあまりお勧めしません。販売システム等を利用しており、請求額決定や回収条件設定等を販売システム側で制御している場合、販売管理システムでの請求書発行機能を持たせた方が、これらの機能との連携がしやすいからです。会計システムでの請求書発行は、ERPや会計パッケージにその機能があった場合だけ、あくまで未収入金などの請求書発行に関して利用したほうが望ましいといえます。
入金処理
入金処理は、取引先からの入金を計上する処理です。ERPや会計パッケージよっては、一般会計サブシステムや資金管理サブシステムなどの機能の場合もあります。
【図6】入金処理のイメージ
実際の入金は、銀行への振込入金が多いため、ファームバンキング等を利用して入金データを取り込み、これを会計システムにインターフェースして計上します。また、入金段階では、どの債権に対する入金か不明なため、一般的には仮勘定を用いて仕訳を行うことが多いようです。
(借方)預金 XXX (貸方)仮受金 XXX
消込処理
消込処理は、請求データと入金データを照合し、債権明細を個々に消し込む処理です。
(借方)仮受金 XXX (貸方)売掛金 XXX
【図7】消込処理のイメージ
請求先(入金先)、期日、金額等が一致しているか否かを確認して消込ます。
ERPや会計パッケージでは、消込を自動照合して自動で消込める機能をもったものもあります。例えば、「差額が振込手数料相当に近い場合一致していると見なす」などを判定して消込ます。自動消込に当たっては、色々な消込キー(照合用の記号)を持てるものもありますが、すべて自動照合ができるケースはあまりありません。人間系で消し込む場合、一般的にシステムから消込候補が提示され、担当者が確認の上消込を実行することが多いようです。また、システム的には、請求額と入金額の差額を新たに請求残としてデータをつくる場合とつくらない場合があるといったように、ERPや会計パッケージの消込処理機能が異なるので、導入時には確認が必要です。
相殺処理
相殺処理は、債権と債務を相殺する場合に用いる処理です。例えば、サプライヤーに材料の有償支給をしている場合、有償支給時の債権(未収金等)と部品買戻し時の債務(買掛金)を相殺する場合などです。
(借方)買掛金 XXX (貸方)売掛金 XXX
【図8】相殺処理のイメージ
債権と債務の相殺処理は、ERPや会計パッケージによって、どのような相殺パターンが標準機能として備わっているか異なるため、導入時に確認が必要です。また、相殺処理については、請求段階で相殺する場合や消込段階で相殺する場合などがあり、ERPや会計パッケージによって処理の可否が異なるため、導入時に確認が必要です(※説明上ここでは相殺を最後のプロセスとしていますが、通常の取引で常に債権>債務の場合は、債権の請求決定段階で相殺する場合が多いようです)。
なお、昨今では相殺処理自体が煩雑で業務工数を増やすことから、相殺をやめ債権回収と債務支払を両建取引とするケースも増えてきています。
残高管理
残高管理は、債権の残高を取引先別に管理する機能です。取引先別の残高だけでなく、債権計上データごとの残高も管理を行う点が、一般会計サブシステムの残高管理との違いです。
【図9】残高管理のイメージ
未回収債権については、滞留期間管理(年齢調べ)などもできます。
ERPや会計パッケージによっては、滞留期間によるアラーム、督促状作成、残高確認状作成などの機能をもったものもあります。また、取引先の与信限度額の設定や信用調査結果の登録、与信枠を超えた場合の取引警告などの機能をもったものもあります。また、残高管理機能は、ERPや会計パッケージで異なるため、導入時に確認が必要です。
一般会計システム連携処理
一般会計における債権に係わる仕訳や入金データ等を債権管理サブシステムに取り込みます。
また、債権管理サブシステムにおける債権計上処理、請求処理、消込処理、相殺処理等にともなう仕訳を生成し、一般会計に連携します。債権管理サブシステムと一般会計サブシステムの仕訳やデータの連携は、ERPや会計パケージによってシステム構成とデータの流れが異なりますので、両者間でどのようなタイミングでどのような動きになるのか、業務運用上留意すべき点は何かなど、導入時に確認することが必要です。
導入上のポイント
債権管理サブシステムは、通常一般会計サブシステムと同じ会計システムを導入することが一般的です。ただし、販売システム等を独自にスクラッチ開発で構築している場合、債権管理機能は販売システム側に構築した方が効率的な場合も多くあります。特に、独自の債権取引条件が多く債権管理サブシステムに対するアドオン開発が多くなる場合には、販売システム側での構築も検討してください。
まとめ
今回は、ERPや会計システムパッケージによる「会計システム刷新のキホンのキ」として、会計システムにおける債権管理サブシステムをご紹介しました。今後の会計システム刷新は、ERPや会計パッケージに限らず様々なクラウドサービスやAIサービスを活用して「真に経営に資する情報システム」として実現する必要があります。レイヤーズ・コンサルティングでは多数のご支援実績を持っておりますので、個別のERPや会計パッケージ、クラウドサービスの活用のポイントについては、是非お問い合わせください。


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この記事の執筆者
-
村井 泰三経営管理事業部
バイスマネージングディレクター -
山本 晶代経営管理事業部
ディレクター -
飯田 稜大経営管理事業部
シニアマネージャー
職種別ソリューション


