ERPで本当に業務改革ができる日は?
~夢を見たのが悪いのか~
今回は、ERPの登場から今日までの蹉跌を踏まえ、ERPで業務改革を実現するポイントをご紹介します。
ERP導入の蹉跌
ERPが登場してから30年、平成のERP導入はうまくいったのでしょうか。
ERPの登場以来、情報システム部門の方々は、「これでホストコンピューターのスパゲティ・システムから解放される」というような夢を見てきました。
90年代後半に入り会計ビッグバンが訪れ、多くの企業でERPをこぞって導入しました。しかし、ERPの標準機能が不足したり、また現場部門の業務に対する強いこだわりがあったりしたため、ERPへの追加開発(アドオン)の山になった企業も多かったのも事実です。結局スパゲティが、ホストからERPに変わっただけでした。
こうした企業においては、今日においても、そのアドオンのためにバージョンアップができなかったり、保守運用に多大な費用がかかったりしているケースも多く見受けられます。
【図1】ERPでの業務改革の失敗
また、グループ全体で同一のERP製品を導入したものの、業務プロセスが統一されておらず、全く別々のシステムが存在しているかのようであったり、グループ各社で別々のERP製品を入れ、経営情報収集に苦労していたりすることも多く見受けられます。
このように日本企業は、ERPを導入しても抜本的な業務改革やIT改革を十分にできなかったというのが実情ではないでしょうか。
ERPの本質は何か?
そもそもERPはどういうコンセプトで作られたのでしょうか?
エンタープライズ・リソース・プランニング、すなわち、すべての経営情報を1つにまとめることによって、経営者の資源配分といった経営判断に役立てることを目的にして作られたものです。
【図2】エンタープライズ・リソース・プランニングが目指すもの
しかし、多くのERP製品は、そのコンセプトを未だ果たせず、実際には伝票記録・集計システムです。すなわち、「伝票を正しく入れれば、正しく出てくる」という事に過ぎないのです。
伝票処理に企業として競争上のコアな業務はありません。コアな業務は伝票処理の前後にあったとしても、伝票処理自体にはありません。
逆に、こうしたERPの本質が分かれば、いかにその伝票(経営情報)を効率的に正確に入れることを考えるだけです。換言すれば、今の業務プロセスを考慮する事(ERPで再現すること)は、逆にERP活用の足かせとなり、ERPのメリットの享受を大きく遠ざけると言えます。
経営情報に着目する(Fit to Data)
ERP活用のポイントは、経営としての必要情報に着目し、その情報を徹底的にシンプルな業務プロセスで処理することです。
多くの企業の現状の業務プロセスは、長年の慣習・慣行や組織のしがらみから、複雑怪奇なプロセスとなっています。まるで九龍城の迷路のようなプロセスになっている会社も多く見受けられます。
こうした複雑奇怪なプロセスは本当に必要なのでしょうか。
本当に必要なプロセスとは、会社にとって必要な情報を生み出すプロセスです。その情報を加工・変換するプロセスは附帯的なプロセスです。
そもそも、ERPは資源配分に必要な経営情報を統合的に集めることを目的としたわけですから、資源配分に必要な経営情報は何かを考え、その情報を生み出すプロセスに集中すべきです。
これが、我々が言う「データアプローチ=Fit to Data」です。
【図3】必要な経営情報を生み出すプロセスは何か
データに着目したシンプルなプロセスとは
例えば、購買業務で考えてみます。
通常購買業務は、予算策定→稟議申請→発注申請→発注→検収→請求→支払い、またその中でも多段階の承認が存在し、複雑に絡み合ったプロセスとなっています。支払いまでの間に承認行為が数十以上ある企業も少なくありません。
これで生産性を上げるなど夢のまた夢です。
本当に必要な情報はなんだろう、そのための最低限のプロセスは何か、そうシンプルに考えていくべきです。
そう考えれば、発注と検収さえあれば支払える事がわかります。またこうした情報を社内でオープンにしておけば、個々の承認行為を最低限にすることもできます。
【図4】複雑な購買プロセスvsシンプルな購買プロセス
分権化が進んだ会社では、業務上必要なものがあれば、買いたいもの、金額、理由を投稿し、反対意見が無ければ発注できる会社もあります。情報をオープンにし、透明性を保つことによって、不正などを防いでいます。すなわち、社員を信用することで、プロセスをシンプルにしながら、不正を減らすことにつながるわけです。
この様に発想を変えてゼロベースで考えていけば、ERPの標準機能だけで業務を回すことができるようになるのです。
標準機能を組み合わせる(Fit to Standard)
ERPを活用するうえでは、すべてを同一のERP製品で実現しようとしないことです。
現在のERPは、自社内での伝票処理機能は、充実していますが、それ以外の部分は、機能が無かったり、発展途上だったりします。
例えば、取引先との取り引きを電子データでやりとりしようとするならば、現在ではクラウドの商取引のプラットフォームを利用した方が便利だからです。
このように、色々なIT製品やクラウドサービスの標準機能で賄うことを、Fit to Standardと呼びます。
【図5】クラウド購買システムの導入事例
今回は、ERPで業務改革を実現するポイントをご紹介しました。詳細は、是非お問い合わせ下さい。皆様とともに、デジタルトランスフォーメーションとしてERP+αで業務改革、業務変革を推進していきたいと思っております。
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この記事の執筆者
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辻 亮二経営管理事業部 兼 ERPイノベーション事業部
バイスマネージングディレクター -
武貞 正浩経営管理事業部
バイスマネージングディレクター -
田中 貴大ERPイノベーション事業部
シニアマネージャー -
大橋 遊経営管理事業部
マネージャー
職種別ソリューション