【第30回】システム開発フェーズ
(設計・開発・テスト)の秘訣は何か
◆この記事の要約
会計システム刷新のシステム開発フェーズ(設計・開発・テスト)では、要件を「実装」し、「各種テスト」で品質を検証する進め方を整理します。そこで本記事では、ERP/会計パッケージの標準機能設計、アドオン・インターフェース(IF)設計、UATに影響するテスト観点まで、ユーザー部門も押さえるべき要諦を解説します。
- システム要件定義で決定した機能要件・非機能要件を、標準機能設計(マスタ設定・パラメーター設定等)+各種テストで「品質確保」する。
- 標準機能設計書と実装内容の不整合を防ぐため、変更管理を含め設計内容を再検証し、権限・ロールも設計する。
- アドオン・インターフェース設計は、IPO(インプット、プロセス、アウトプット)で基本設計→詳細設計(画面設計書・処理設計書・帳票設計書・DB設計書・インターフェース設計書)へ落とし込む。
- 開発・テストは、単体テスト/結合テスト/システムテストで連携と非機能(性能・負荷・セキュリティ・可用性)を検証し、業務運用テスト(UAT)と本番移行のリスクを下げる。
システム開発フェーズは、一般的にシステム部門とERPや会計システムの導入ベンダーが中心となって進めますが、ユーザー部門である経理財務部門もその内容を理解しておくことが、プロジェクトのスムーズな推進において重要です。なぜなら、システム開発フェーズの品質が、ユーザー部門が行う業務運用テスト(UAT)や、本番への移行に大きな影響を与えるからです。
そこで今回は、ERPや会計システムパッケージによる「会計システム刷新」のキホンのキとして、会計システム刷新におけるシステム開発フェーズの要諦をご紹介します。
システム開発フェーズとは
システム開発フェーズの位置付け
システム開発フェーズでは、システム要件定義できまった要件をシステムとして実装するとともに、システムの品質を確保するための各種テストを行い、それらを検証する重要なフェーズです。
【図1】システム開発フェーズの位置付け
システム開発フェーズの進め方
システム開発フェーズとしては、システム要件の基づきERPや会計パッケージの標準機能設計(マスタ設定やパラメーター設定等)を行う標準機能設計、アドオンやインターフェース(IF)の基本設計と詳細設計を行うアドオン・インターフェース設計、これらについてシステムに実装し、システム機能を検証していく開発テスト(実装単体テスト、結合テスト、システムテスト)、開発環境・テスト環境・本番環境を準備するシステム環境構築があります。
【図2】システム開発フェーズの内容
標準機能設計とは
標準機能設計では、ERPや会計パッケージにおいて、最終化されたシステムフロー等をベースに、標準機能に対して設定するパラメーター設定や、マスタ設定などの標準機能設計書(パラメーター設計書など)を作成します。
システム要件定義の中で、実機検証と設定変更を繰り返している場合、システム開発フェーズの初期段階で標準機能設計が概ね完了し、実装されている場合もあります。しかし、変更管理の瑕疵から標準機能設計書と実装内容が異なっていることもあるので、再度この段階で設計内容を検証することが重要です。
また、ERPや会計パッケージを実際に利用するユーザーについて、それぞれ権限・ロールについても設計します。権限・ロールの設定については、ERPや会計パッケージで異なるため、システム要件定義時に確認が必要です。
アドオン・インターフェース設計とは
アドオン設計・インターフェース設計では、アドオンやインターフェースについて、画面・処理・帳票などを具体的に決める基本設計と、それらシステムへの実装方法を決める詳細設計(プログラム等の仕様を決める)を行います。また、アドオン開発とインターフェース開発については、一般的なスクラッチ開発と同様の開発方法論に基づき実施することが標準的です。
アドオン設計
基本設計
基本設計では、業務フローやシステムフローを踏まえて、アドオンにて開発対象となる機能について、画面および帳票のイメージや機能の処理について案を作成します。各開発する機能単位にごとに、IPO(インプット、プロセス、アウトプット)を定義し、開発する機能について基本設計書を作成します。
詳細設計
詳細設計では、アドオンにて開発対象となる機能について、基本設計書を元に詳細設計書(画面設計書、処理設計書、帳票設計書、インターフェース設計書、データベース設計書など)を作成します。
インターフェース設計
基本設計
基本設計では、インターフェースのシステムフローを踏まえて、インターフェースに必要な機能について、画面および帳票のイメージ(エラーメッセージ画面やエラーログリスト等)、処理について案を作成します。各開発する機能単位にごとに、IPO(インプット、プロセス、アウトプット)を定義し、開発する機能について基本設計書を作成します。
詳細設計
詳細設計では、インターフェースに必要な機能について、基本設計書を元に詳細設計書(画面設計書、処理設計書、帳票設計書、インターフェース設計書、データベース設計書など)を作成します。
※ETLツールを使ってインターフェースを行う場合は、ETLツールの設定仕様に基づいて設計します。
開発・テストとは
開発・テストでは、ERPや会計パッケージの標準機能設計書、アドオンやインターフェースのアドオン・インターフェース詳細設計書に基づいてシステムに実装するとともに、システムの品質を確保するための単体テスト、結合テスト、システムテストを行います。
開発テストの種類
開発テストは、一般的に単体テスト、結合テスト、システムテスト、ユーザー受入テストがあります。
【図3】テストの位置付け
- 単体テスト
個々の機能やプログラムが仕様どおりに動作するかを確認 - 結合テスト
複数の機能やモジュールが連携して正しく動作するかを検証 - システムテスト
システム全体としての動作確認と業務フローに沿ったテストを実施 - ユーザー受入テスト(UAT)
実際のユーザーが業務シナリオに基づき操作し、要件が満たされているかを確認
導入ベンダーが主体的に行うのはシステムテストまでです。ユーザー受入テスト(UAT)はユーザーが主体的に行うため、ここでは業務運用整備フェーズとして扱います。
開発・テスト ①実装・単体テスト
実装・単体テストでは、下記を行い、各設定やプログラムが設計書どおりか単体テストで検証します。
- ERPや会計パッケージの標準機能について、標準機能設計書に基づきシステムに実装します。
- アドオン開発では、アドオン設計書(画面設計書、処理設計書、帳票設計書、データベース設計書)に基づき、プログラム開発やデータベース設定を行います。
- インターフェース開発では、インターフェース設計書に基づき、プログラム開発や連携基盤(ETLなど)の設定を行います。
実装・単体テストの具体的な手順
実装・単体テストは、下記の手順で実施します。
【図4】実装・単体テストにおける主な手順
開発・テスト ②結合テスト
結合テストでは、アドオン開発・インターフェース開発の個々のプログラム間の連携や、ERPや会計パッケージの標準機能とアドオン機能・インターフェース機能との連携が、設計どおりに正しく機能していることを検証します。
結合テストの内容
内部結合テスト(プログラム間連携)
- アドオンプログラム間の連携検証
例えば、アドオンで開発した仕訳生成処理と、それを実行するバッチプログラムとの連携など、複数の自社開発プログラムを連続して実行し、データの受け渡しを検証します。 - ERP標準機能とアドオンの連携検証
例えば、ERPや会計パッケージの標準処理(例:債務登録)を実行した際に、それがトリガーとなって動作するアドオン機能(例:支払期日設定処理)が設計どおりに呼び出され、正しく結果を返すかを検証します。
外部結合テスト(インターフェース連携)
- ERPや会計パッケージと外部システム間の連携検証
例えば、ERPや会計パッケージと、連携元・連携先の既存システムや外部サービスとの間で、定義されたインターフェース仕様に基づき、データ連携が行われているかを検証します。 - データ送受信検証
例えば、連携ファイルやAPIを通じて、データが欠落なく指定された形式で、適切なタイミングで送受信されているかを検証します。 - エラーハンドリング検証
例えば、連携データの形式を意図的に壊したり、通信を中断させたりして、エラー処理ロジック(データの再送、エラーログ出力、通知)が設計どおりに動作するかを検証します。
結合テストの具体的な手順
結合テストは、下記の手順で実施します。
【図5】結合テストにおける主な手順
開発・テスト ③システムテスト
システムテスト(総合テスト)では、開発された標準機能、アドオン機能、およびインターフェース機能が、連携を含めて設計どおりに動作することを、システム全体として検証します。
また、性能(パフォーマンス)、負荷、セキュリティ、可用性(バックアップ・リカバリ)などの非機能要件について、システムが実運用に耐えうるかを検証します。
システムテストの内容
機能テスト
- 業務シナリオテスト
実際の業務フローに基づいた大規模なテストデータとシナリオを使用し、システムが業務要件を完全に満たすかを確認します。 - 入出力/インターフェーステスト
外部システムとの連携(連携データ、ファイル形式、タイミング)が、総合的な業務プロセスの中で機能するかを検証します。 - 権限/セキュリティテスト
ユーザーの役割(ロール)に応じたアクセス権限が正しく設定されており、機密データへの不正アクセスができないことを確認します。
非機能テスト
- パフォーマンステスト(性能試験)
特定のトランザクション(例:月末の仕訳処理、バッチ処理)の応答時間が許容範囲内かを確認します。また、将来のデータ増加やピーク時のアクセス量を想定した負荷テストを実施し、システムの限界を把握します。 - 運用・継続性テスト
バックアップとリカバリ手順を実際に実行し、データが完全に復旧できることを検証します。
障害発生時の切り替え(フェイルオーバー)や、監視機能が設計どおりに動作するかを確認します。
システムテストの具体的な手順
システムテストは、下記の手順で実施します。
【図6】システムテストにおける主な手順
システム環境構築
開発フェーズのシステム環境構築では、開発環境、テスト環境(結合テスト環境、システムテスト環境、業務運用テスト環境)、本番環境を準備します。
システム環境構築の内容
開発環境の構築と管理
設計書に基づいてプログラム開発やデータベース設定などが行える開発環境を構築します。
開発したプログラムや設定変更をテスト環境へ移行するための手順(トランスポート管理など)を確立・実行します。プログラムのバージョン管理を行い、開発が維持・継続できる状態を確保します。
テスト環境の構築と維持
結合テストやシステムテスト、業務運用テストが行えるテスト環境を構築します。
テスト環境のデータをリフレッシュ(巻き戻し)して、テストの再現性を確保します。
システムテストにおける負荷テストに対応できるよう、一時的にハードウェアリソースを増強したり、設定を最適化したりします。
本番環境の構築と初期設定
確定したサイジングに基づき、クラウドまたはオンプレミスの本番サーバー、ストレージ、ネットワークを構築し、セキュリティ設定(ファイアウォール、アクセス制御)を適用し、本番環境を構築します。
ERPや会計パッケージをインストールし、システム要件定義で確定した基本パラメーター・マスタ(言語、会計期間、組織構造など)を設定します。
システム環境構築の具体的な手順
システム環境構築は、下記の手順で実施します。
【図7】システム環境構築における主な手順
まとめ
今回は、ERPや会計システムパッケージによる「会計システム刷新」のキホンのキとして、会計システム刷新におけるシステム開発フェーズの秘訣についてご紹介しました。システム開発フェーズは、情報システム部門や導入ベンダーが会計システムや関連システムとの連携の品質を検証する重要なフェーズです。詳細については、是非レイヤーズ・コンサルティングにお問い合わせください。


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この記事の執筆者
-
村井 泰三経営管理事業部
バイスマネージングディレクター -
山本 晶代経営管理事業部
ディレクター -
飯田 稜大経営管理事業部
シニアマネージャー
職種別ソリューション





