「マクナマラの誤謬」に貶めることなかれ
~人的資本経営~

重要経営イベントが一巡した今こそ、「ウチにこれから必要な人的資本経営」の実現に向けた人財戦略構築の好機と考えます。それは、数値は追うものの実質を伴わない「マクナマラの誤謬」を回避することでもあります。ISO 30414等の標準形に「我が社らしさ」を上乗せした「我が社らしい人材戦略」の構築が望まれます。

人的資本経営の論調に対する「違和感」

人的資本経営の重要性を皆様方にお伝えしている中で、10年以上株式アナリストを務めていた頃の違和感を思い出すことがあります。例えば、「利益がXX億円で株価評価(バリュエーション)がYY倍だから買い推奨」と、先輩が半ば数値を機械的に扱っていた際の違和感。或いは、業界の株価と約50種類の指標等の相関係数を計算して、少しでも株式市場に先んじた投資判断を目指した際の違和感です。

実際、数値だけ追っても株価のヨミは当たらず、私自身も機械的に数値を見ることは避けてきました。過去の傾向が繰り返される可能性は知りつつ、経営や株価を取り巻く局面は毎回異なるので、その時点の企業や株価、事業環境をより適切に把握する上で、取材や工場見学による対話が必要と考えたためです(故にマニアックと称されたことは懐かしい思い出です)。

歴史の教訓「マクナマラの誤謬」

人的資本経営の重要性が認識されつつある中、人的資本KGI・KPIと業績・株価の相関性を追いたがるトレンドに、過去と類似した危うさを感じていた私の胸の内を、あるTV番組が表現してくれました。

それは、5月下旬のドキュメンタリー番組で取り上げられた「マクナマラの誤謬」です。「マクナマラの誤謬」とは、要約すると「数字にばかりこだわり、物事の全体像を見失うこと」です。ベトナム戦争の際に、当時のアメリカ国防長官のロバート・マクナマラ氏がデータ分析を駆使して勝利を目指したものの、ベトナム人の愛国心やアメリカ市民の反戦感情に目を向けず泥沼の戦争を招いたことに起因します。

そして「歴史の教訓」として、戦争等の極限状態や「天才」マクナマラ氏だからこうした事象が起きたのではなく、我々にも普通に起こり得ることも伝えられています(なお、マクナマラ氏自身、回顧録出版や現地訪問等を通じてベトナム戦争の検証・教訓を残しています)。

【図1】「マクナマラの誤謬」とは

人的資本経営における「マクナマラの誤謬」の教訓

こうした「歴史の教訓」を踏まえて、当社では、人的資本経営においてKGI・KPI等の「数値は読むもの」と認識するスタンスが妥当と考えています。換言すれば、数値とは検証や対話における重要な切り口・手段ではあるものの、背後にある事実・環境や感情・思いを読み解くことこそが重要です。

人的資本経営においてそう考える理由は以下3点、すなわち、①人的資本を数値的に100%分解・説明することは困難、②過去の検証結果が将来も通用するとは限らない、③経営も株価も科学(Science)だけでは語れない、です。

数値を読み解き活用することは、人を活性化して勝ち残るために堅固で確度が高いナラティブ(双方向の対話)を組立てて、自社とステークホルダーが共に腹落ちする上で活かすべきでしょう。その意味で、人的資本の開示・数値化に止まっていては「人的資本経営」と呼べないと考えます。法定開示項目や人的資本可視化指針、ISO 30414に則った人的資本開示だけで、或いは、統合報告書からの転載だけでヒトの観点からの差別化・勝ち残りに十分でしょうか?

重要経営イベントが一巡した今こそ、「ウチにこれから必要な人的資本経営」を実現するための人財戦略を構築する、それは、人的資本可視化指針やISO 30414等の標準形に「我が社らしさ」を上乗せした「我が社らしい人材戦略」であるべきと考えます。

【図2】「マクナマラの誤謬」を超えて

おわりに

当社は、『我が社らしい”本物の”人的資本経営へ「パーパス・おもい」を実現する人事』と題して、7月20日(木)15時よりセミナーを開催いたします(お申込はこちら→https://www.layers.co.jp/seminar/s20230720/)。本メールと合わせて、貴社の人的資本経営の一助となりますと大変嬉しく存じます。上記セミナーまたは本メールにご関心をお持ちいただけましたら、お気軽にご連絡ご参加いただけますと幸いです。

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