個別最適からの脱却!
全体最適を取り戻すIT環境統合への取り組み
◆この記事の要約
本記事では、M&Aやグループ会社統合で顕在化する「バラバラなIT環境」が生む課題を整理し、対症療法から脱却するための全社最適のロードマップ作成と、現場を巻き込んだIT環境統合の進め方を解説します。
- ユーザーID・PC仕様・業務システムのバラバラさが生む業務負荷とセキュリティリスクを整理
- 対症療法からの脱却に必要な「ITのあるべき姿(To-Be)」の明確化
- 全社最適のロードマップ作成手順(要素の洗い出し→集約→優先順位付け)
- 成功のカギとなる現場の巻き込みとITリテラシー向上の重要性を提示
また、グループ会社内でも人財の流動化が活発に行われる企業も増えています。そのような企業の多くが抱えている課題の一つに、「IT環境がバラバラで統合できていない」という課題があります。皆様も「複数のIDやパスワードを使い分けている」といった経験はないでしょうか。「ユーザーID」「ネットワーク」「認証」「業務システム」「PCの仕様」「運用」などが企業グループ内で個別最適で温存されていると、事業の土台となるべきIT環境が事業推進の足かせになりかねません。そこで今回は、そのようなIT環境の統合に向けた第一歩として何をすべきか、についてご説明させていただきます。
バラバラなIT環境が生む課題
一口に「IT環境」といっても様々な観点がございます。
ここではバラバラになりがちな観点とバラバラ故に生じる課題についてご紹介します。
① ユーザーID管理やドメインがバラバラ
会社ごとにユーザーIDやドメインが異なるというケースが散見されます。このケースにおける課題について、ユーザー視点とIT部門視点でそれぞれ考えてみます。
<ユーザー視点>
システムによりIDが異なることとなるため、1ユーザーが複数のIDやパスワードを管理する必要があります。利用する業務システムが変わるたびに、別のIDやパスワードでログインするといった煩雑さが生じることとなります。また、部署異動や関連会社への出向などで所属部門が変更となる場合、IDやメールアドレスが再発行となるため、発行までの一定期間について業務システムやメールなどの利用が制限される恐れがあります。
<IT部門視点>
ユーザーIDの管理体系が個別最適となっているため、管理が複雑なものになります。
また、ユーザー認証やファイルサーバなどへのアクセス権管理も煩雑化し、社内外からのアクセスに対する一貫したセキュリティ対策が困難なものとなります。
② PCの仕様(ソフト/ハード)がバラバラ
会社ごとの業務にあわせた個別最適なPCの仕様を設定しているケースが散見されます。このケースにおける課題について、ユーザー視点やIT部門視点でそれぞれ考えてみます。
<ユーザー視点>
ユーザーIDと同様となりますが、部署異動や関連会社への出向などで所属部門が変更となる場合、PCの仕様が異なるため異動前に使っていたPCをそのまま異動先へもっていくことができません。新しいPCの払い出しまでの期間や利用が制限される恐れがあります。
<IT部門視点>
PCの仕様が部署や会社ごとに異なるため、PC管理・運用についても個別最適となり、高コストの要因となります。また、セキュリティ対策の観点からも、バージョン管理やパッチ適用なども各仕様を考慮した実施方法の検討が必要となり、全社一律での実行が困難になってしまいます。
③ 業務システムがバラバラ
業務システムも各部署や関連会社ごとに必要なシステムを個別最適で設計・構築されており、誰がどのシステムを利用しているのか誰も把握できていないケースが散見されます。このケースにおける課題について、ユーザー視点やIT部門視点でそれぞれ考えてみます。
<ユーザー視点>
ユーザーIDと同様となりますが、業務システムごとに異なるユーザーIDやパスワードが発行されるため、自身で複数のパスワードを管理していく必要があります(パスワードの要件が異なる場合は共通のパスワードの設定もできません)。また、利用するシステムごとにログインを行う必要があります。
<IT部門視点>
各業務システム間での連携もないため、どのPCでどの業務システムを利用しているのかの全体像が把握できません。そうなるとPCの仕様変更やパッチを適用する場合にも、各業務システムへの影響調査や端末ごとの影響有無の確認など、膨大な事前作業が必要となります。
ここまで主な観点と課題についてご説明いたしました。このほかにも「認証」や「ネットワーク」、「運用」などバラバラな環境がもたらす課題は多いと考えます。
【図1】個別最適による問題点
対症療法からの脱却
多くの企業において「IT環境を統合すべき」ということは理解しているものの
- 課題が多く、何を優先すべきかわからない
- 現場からの改善要望をすべて取り込んでいたらキリがない
- 横串での全体最適の観点を持てていない
その結果、目についたところのみ取り組む対症療法的な施策が単発的に実行され、根本的な問題は全く解決していない・・・というケースが散見されます。
【図2】対症療法からの脱却
解決の第一歩は“全社最適のロードマップ”を作ること
現場からの声を拾うことも重要ですが、いきなり各論を検討してはいけません。
まず取り組むべきは、「全社としてのITのあるべき姿(To-Be)を描き、あるべき姿(To-Be)実現までの段取りをロードマップという形で明確にすること」に尽きます。
ロードマップ作成までの大まかな流れを示します。
① 実現したい「要素」の洗い出し
まずはオーナー、IT部門、事業部門、関連会社などの関係者が集まり、実現したい「要素」の洗い出しを行います。To-Be像描くための「要素」を出し切り、目指すべき姿を可視化します。
② 「要素」の集約と優先順位付け
次に、➀で洗い出した要素の「集約化」と「優先順位付け」を行います。
関係者それぞれの視点から出た「要素」をカテゴリーごとにまとめ、関連付けるとともに、優先すべき要素を関係者間で話し合い、定めていきます。
③ ロードマップへの落とし込み
②でまとめた優先順位をもとにSTEPごとの実施施策・実現したい姿を定義し、あるべき姿実現までの全体ロードマップを作成します。
【図3】ロードマップ作成までの流れ
成功のカギは“現場の巻き込み”
ロードマップを描いたとしても本社やIT部門だけではうまく進みません。
どれだけよい構想を練って、よいシステムや構築ベンダーを選定しても、実行主体は「現場」です。
実際に、2024年に改定された経済産業省の「デジタルガバナンス・コード3.0」においても、DX推進による持続的な企業価値の向上を図るためには、「組織横断的な取り組み」と「社内外のステークホルダーとの積極的な対話」が重要と述べられています。したがって、本社・IT部門だけでなく、「現場の理解・協力を得ること」が成功のカギとなります。
例えば、
- IT環境の統合の必要性
- 統合による現場メリット
- 全社としてのITリテラシーの向上の必要性
などの点を現場の方々との密なコミュニケーションにより、腹落ちしていただくことが何よりも大切です。計画策定の早い段階から現場を巻き込んでいき、全社一丸となって取り組むことが、長期的な発展につながります。
【図4】デジタルガバナンス・コード3.0
最後に
今回は、IT環境の統合の必要性や統合に向けた取り組み方についてご説明いたしました。
レイヤーズ・コンサルティングは、PMOとしてオーナーと現場との橋渡しや複数ベンダーのコントロールに強みを持ち、あるべき像の可視化やロードマップ作成、RFP作成などのご支援が可能です。まずは、IT環境統合に向けた皆様の第一歩をご支援させていただければと考えております。詳細については是非お問い合わせください。
【引用文献】
・【図4】:経済産業省「デジタルガバナンス・コード3.0」(2020/11/9策定・2024/9/19改訂)
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc3.0.pdf


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この記事の執筆者
-
佐藤 大耀経営管理事業部
マネージャー -
池上 優太経営管理事業部
シニアコンサルタント
職種別ソリューション


