高市新政権によって労働関連法はどのように変わるのか
~人事部門が40年ぶりの大改正に向けて備えるべきこと~
◆この記事の要約
高市政権下で2026年から労働安全衛生法・年金制度改正、さらに約40年ぶりの労働基準法抜本改革が予定されています。本記事では、労働時間規制緩和の検討、勤務間インターバル義務化、被用者保険適用拡大など複雑化する法改正の全体像と、企業が段階的に取り組むべき実務対応を網羅的に解説します。人事部門が直面する制度対応の優先順位、システム改修の要点、業種別の注意点まで、実践的な準備戦略を提示します。
- 高市政権の労働時間規制緩和方針と労働基準法抜本改革の最新動向:労働政策審議会で審議中の勤務間インターバル義務化、連続勤務制限、有給休暇賃金算定方式の変更など、企業の働き方に影響する改正項目の詳細
- 2026年4月施行の労働安全衛生法・年金制度改正への実務対応:個人事業者への安全衛生措置拡大、ストレスチェック義務化、被用者保険適用拡大における企業規模別の準備スケジュール
- 法改正に向けた3段階の対応ロードマップ:就業規則改正、人事給与システム改修、管理職研修など、施行時期に応じた具体的な準備項目と優先順位
- 企業特性に応じたオーダーメイド対応の必要性:業種・事業形態・現行システムによって異なる対応内容と、経営戦略と連動した人事戦略立案の重要性
また、2026年中に労働安全衛生法や年金制度の改正が予定されている他、労働政策審議会・労働条件分科会にて約40年ぶりの労働基準法抜本改正が審議されているなど、ここ数年で目まぐるしく法改正が進むことも予見されます。
本記事では、労働関連法のトレンドと高市政権の考えを整理することで、今後企業に求められる準備を取り纏めます。
※本記事の内容には、2025年12月17日時点での事実に基づいた今後の予測を含みます。法改正を確約するものではございません。
今後の法改正と高市政権の影響
2026年から2027年にかけて、労働関連法の大規模な改正が集中的に実施されます。人事部門にとって、制度対応と運用体制の見直しは喫緊の課題です。
①2026年の労働安全衛生法・年金改正
2025年5月に成立した改正労働安全衛生法は、2026年4月から段階的に施行が予定されています。主要な改正項目として、個人事業者等に対する安全衛生対策の推進、職場のメンタルヘルス対策の強化、高齢者の労働災害防止の推進が盛り込まれています。
企業への影響として、フリーランスや個人事業主と混在する作業場では、元方事業者の安全衛生措置の対象が拡大され、保護具の貸与や安全衛生教育の実施が義務化されます。また、全事業場でストレスチェック制度の実施と高ストレス者への医師による面接指導が義務化されます。加えて、高齢労働者の心身特性に配慮した作業環境改善や、治療と仕事の両立支援措置が努力義務化されます。
年金制度改正法は2025年6月に成立し、2026年から段階的に施行される予定です。被用者保険の適用拡大では、企業規模要件が段階的に縮小され、2027年10月から従業員36人以上、2029年10月から従業員6人以上の企業が対象となり、最終的には企業規模にかかわらず週20時間以上働く短時間労働者が厚生年金と健康保険に加入することになります。
在職老齢年金の支給停止基準額は2026年4月から62万円に引き上げられ、高齢者の就労継続が促進されます。厚生年金保険等の標準報酬月額の上限も、2027年9月から段階的に引き上げられ、現行の65万円から68万円、71万円、75万円と段階的に拡大される予定です。これにより、高所得者はより多くの保険料を負担することになる一方、将来の年金給付額も増加します。
②40年ぶりの労働基準法抜本改革
厚生労働省の有識者研究会において、約40年ぶりとなる労働基準法の抜本的な見直しが進められており、2026年の通常国会に改正法案が提出され、早ければ2027年4月からの施行が見込まれています。
検討されている主な改正項目は以下の通りです。連続勤務の上限規制として、4週4日の変形週休制の特例を2週2日に見直し、14日以上の連続勤務を禁止する方向です。法定休日の明確な特定義務が新設され、企業は就業規則で法定休日を明示する必要があります。勤務間インターバル制度については、原則11時間の休息時間確保を軸に義務化が検討されており、現行の努力義務から法的義務への転換が図られます。有給休暇の賃金算定における通常賃金方式の原則化、「つながらない権利」に関するガイドライン策定、副業・兼業者の割増賃金算定における労働時間通算ルールの見直し、法定労働時間週44時間の特例措置の廃止なども論点に含まれています。
③高市政権の影響
高市早苗首相は2025年10月21日の内閣発足時に、上野賢一郎厚生労働大臣に対し「心身の健康維持と従業者の選択を前提にした労働時間規制の緩和の検討」を指示しました。
上野厚生労働大臣は就任会見で、労働時間規制については「過労死認定ラインである月100時間の上限規制に変更すべきではない」と述べつつ、労働時間規制の総点検と審議会での議論を進める考えを示しており、労働者と企業双方のニーズ調査が実施される見込みです。一方で、労働基準法の抜本改革では勤務間インターバルの義務化や連続勤務制限など健康確保措置の強化が検討されており、規制緩和と健康保護のバランスをどう取るかが今後の焦点となります。
【図1】40年ぶりの労働基準法抜本改革(主な項目) 1/2
【図2】40年ぶりの労働基準法抜本改革(主な項目) 2/2
法改正に向けた対応
第1段階:2026年4月施行対応
労働安全衛生法改正
個人事業者等との作業場における危険要因の洗い出しとリスクアセスメント体制の構築に取り組む必要があります。元方事業者としての安全衛生措置対象が拡大されるため、個人事業者向けの保護具貸与・安全衛生教育の実施体制を整備し、契約ルール見直しを実施しなければなりません。化学物質管理ルール、安全衛生担当者の役割分担と責任体制の明確化も不可欠です。2026年4月から、SDS(安全データシート)通知義務違反に対する罰則が適用されるため、企業の対応が求められます。
全事業場でのストレスチェック制度導入が義務化されるため、導入体制の構築が必須です。実施方法(外部委託・内部実施)の選定、高ストレス者への医師による面接指導体制の整備を進める必要があります。高齢労働者対応ガイドラインを策定し、作業環境改善に取り組むことが求められます。
年金関連準備
被用者保険適用拡大に向けた準備体制の構築に取り組む必要があります。短時間労働者の労働時間・賃金の正確な把握体制を整備することが重要です。高齢労働者が「働きながら年金をもらいやすくなる」点を周知し、継続雇用と賃金上昇を組み合わせた人事戦略を検討しなければなりません。
第2段階:早ければ2027年4月施行見込み
労働基準法抜本改革
就業規則の改正が必須となります。連続勤務上限規制(14日以上連続勤務禁止)、法定休日の明確な特定、勤務間インターバル制度の義務化(原則11時間)対応、有給休暇の通常賃金方式化、「つながらない権利」に関するガイドライン策定、副業・兼業者の割増賃金算定ルール廃止、法定労働時間週44時間特例措置廃止への対応を含めた改正を実施する必要があります。
また、規程の改正に合わせた人事給与システムの大幅改修が不可欠です。勤怠管理システム更新(連続勤務日数自動チェック機能、勤務間インターバル機能)、シフト管理システムの機能拡張、給与計算システムの改修(有給休暇賃金算定、副業・兼業者対応)を実施する必要があります。
管理職研修の実施により、連続勤務制限や勤務間インターバル制度の実務的な理解を深め、シフト作成や業務配分見直しに向けた準備を進めることが求められます。
第3段階:被用者保険適用拡大対応(段階的)
被用者保険の適用拡大は段階的に実施されるため、自社が対象となる時期を正確に把握し、それに応じた準備を進めることが重要です。短時間労働者の段階的な加入対応、給与計算システムの改修、社会保険料負担増のシミュレーション、採用戦略・給与体系見直しを計画的に実施する必要があります。標準報酬月額上限の段階的引き上げに対応するシステム改修も継続的に進める必要があります。
企業の特性に応じたオーダーメイドの対応が重要
本記事で紹介した法改正への対応は、一般的な方向性を示したものです。実際の対応は、各企業の業種・事業形態、現状の体制・業務プロセス、導入システムなど、企業ごとの事情によって大きく異なります。
例えば、製造業と建設業では個人事業者対策の内容が変わりますし、現在の給与計算システムの仕様によってシステム改修の難易度も異なります。また、既に先進的な安全衛生管理体制を構築している企業と、これから整備する企業では、必要な投資規模や準備期間が大きく異なることも考えられます。
さらに、短時間労働者の段階的な被用者保険適用拡大は施行時期がまだ確定していないため、自社がいつから対象となるのかを正確に把握した上で、経営戦略と連動した人事戦略を立案する必要があります。
レイヤーズ・コンサルティングのHR領域に特化した部門では、こうした複雑な法改正課題に対する、業種別・企業特性別の詳しい対応戦略ソリューションのご案内が可能です。
法改正への対応方法や優先順位、投資計画などについて、ご不明な点やご心配な点がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。経営層から実務担当者まで、各層のお悩みに対応させていただきます。
【図3】法改正に向けた対応スケジュール(一例)


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この記事の執筆者
-
矢崎 冬馬HR事業部
コーポレート業務改革ビジネスユニット
シニアマネージャー -
下山 文香HR事業部
シニアコンサルタント -
萩尾 有彩HR事業部
シニアコンサルタント
職種別ソリューション


