宝の持ち腐れはやめよう
~HRテクノロジーへの処方箋~
さらに、人口減少の影響もあり、人手不足が深刻化しています。このような状況の中で、業務をアウトソーシングするか、テクノロジーを活用して業務を減らすことが必要になっています。しかし、アウトソーシングを行っても相対的に人手不足は解消されないため、テクノロジー化によって業務量を減らすことを考えるべきです。
業務の効率化において、HRテクノロジーが進んでおり、これらを活用しない手はありません。
しかし、HRテクノロジーを導入しても工数を削減するどころか、オーバーヘッドの業務が増えてしまい、業務工数が増大してしまった、また、業務工数が減ったとしても、コスト削減を図れていなかったなどの経験はないでしょうか。
このような課題を解決するためには、業務の中で自動化やテクノロジー化が可能な部分を見つけ、HRテクノロジーを活用することで工数を削減し、業務工数削減だけでなく、コストメリットのあるテクノロジー導入を検討すべきだと考えています。
本記事では、HRテクノロジーの歴史を振り返り、どのようにHRテクノロジーが発展してきたかを知り、現在の日本企業が直面しているHRテクノロジー導入における人事が抱えている課題・真因を紐解き、効率的・効果的なHRテクノロジー導入方法のポイントをご紹介いたします。
HRテクノロジーの歴史
HRテクノロジーは1990年代に単純なオペレーション処理の自動化から始まり、昨今はAIやビックデータの活用など、人事業務全体に大きな影響を与えています。
HRテクノロジーの誕生当初は、業務の処理において人が指示を出さなければならないという制約がありましたが、HRテクノロジーの進化の歴史の中で、人が介在せずに業務を処理できるようになってきました。
HRテクノロジーが誕生した1990年代には、パソコンの普及が進み、企業内での業務効率化が求められるようになり、この時期には給与計算や勤怠管理などの基本的なHR業務をサポートするソフトウェアが登場しました。
2000年代に入ると、インターネットの普及とクラウドコンピューティングの台頭により、HRテクノロジーの導入が一般化しました。クラウドベースのHRシステムが登場し、従業員の情報管理や給与計算、勤怠管理などの業務がオンラインで行われるようになり、業務の効率化と従業員エクスペリエンスの向上が図られています。
2010年代に入ると、AI(人工知能)やビッグデータの活用が進み、より高度なHRテクノロジーが開発されました。AIを活用した採用支援や人材分析、パフォーマンス管理などの機能が追加され、組織の人事戦略において重要な役割を果たすようになりました。
現在、HRテクノロジーは多様な機能を持ち、組織の人事業務をサポートする存在となっています。従業員のデータ管理や給与計算、採用活動、人材育成、パフォーマンス管理など、幅広い領域で活用されています。今後も、AIやデータ分析の進化により、より高度なHRテクノロジーが開発され、人事部門の業務改革を支援していくことが期待されています。
HRテクノロジー導入における人事担当者が抱える課題
日本の人事部門は、将来的な人出不足の虞がある中で、戦略的な人事にも注力していくことを考慮すると、根本的な業務ボリュームを減らすことからは逃れられず、効率化や省人化を目指す必要があるかと思います。
しかし、HRテクノロジーの活用を検討しているものの、現状維持の脱却が難しいという課題に
直面しているケースが多いと考えています。
新規システムを導入するには、既存システムとの統合やデータ移行などの課題が発生します。その結果、既存システムは人事部門や従業員にとって馴染み深く使い慣れているため、新しいシステムへの移行に対する抵抗感が生じ、泣く泣く既存システムを使い続けることを選択してしまっていないでしょうか。
また、多くの HRテクノロジーサービスが市場に存在していますが、自社に合ったサービスを選択するのが難しいという課題をお持ちではないでしょうか。多くのサービスが展開されており、それぞれの特徴や機能が異なるため、どのサービスが最適であるかを判断することが困難であり、サービスの選定にはコストや導入の手間なども考慮しなければなりません。
さらに、HRテクノロジーを活用するためには従業員データの管理や分析、将来予測等、高度なスキルを必要とするため、新しいシステムを導入しても、使いこなせる人材が社内に不足しているという課題が発生するケースが多く見受けられます。
HRテクノロジー導入に至らない真因
HRテクノロジー導入に至らない真因として、①HRテクノロジー導入に対する目利き力のある人財の不足、②人事部門の重要性が十分に理解されていないことにあると考えています。
①HR×ITに対する目利き力のある人財
HR業務の特性やニーズを理解し、自社に合ったテクノロジーを選定し、システムの構築・運用するためには、HR×IT両方の知識を有する目利き力のある人財が必要です。HR×IT両方の知識を有した人財がいることで、HRとIT双方の要望や制約を理解し合うためのコミュニケーションを円滑に行うことが可能となります。また、HR業務の効率化やデータ分析、従業員エクスペリエンスの向上など、HRテクノロジーの効果を最大限に引き出すことができます。
②人事部門の重要性が十分に理解されていない
人事部門は組織の人材戦略や従業員の幸福度向上など、重要な役割を果たしていますが、その重要性が十分に認識されておらず、予算やリソースの確保が困難な状況が続いていると考えています。
これらの課題を解決するためには、人事部門の重要性を経営陣にアピールすることが必要です。組織の成長や競争力向上において、人事部門がその役割を果たすことを伝える必要があります。また、HRテクノロジーの導入の成果を定量的に算定(投資対効果算定)し、具体的な数字やデータを示すことで、経営陣を説得する一助になると考えています。
テクノロジー導入の流れ
テクノロジー導入においては、「デジタルツールの見極め」と「デジタルツールを取捨選択・補完」する必要があり、3つのSTEPに分けられます。
STEP1:社内デジタルツールの棚卸・整理
STEP2:社内デジタルツール再編成・運用維持のための目利き
STEP3:デジタルツールの導入
STEP1では、「デジタルツールの棚卸」、「評価・分類」、「使っていない機能の洗い出し」を行います。この段階では、保有しているツール・システムの可視化や最新の法規制・社内ポリシーとの適合性の確認などを行う必要があります。
ここで重要なことは、予め設定した目標を念頭に置き、道筋から逸れないように進めることです。
STEP2では、世の中で出来得る最先端のデジタルツールとのマッチングを行います。
デジタルツールに業務を合わせることにより、最先端のデジタルツールが想定する最適な業務として生まれ変わることが可能です。
STEP3では、実際にデジタルツールを導入していくことになりますが、選定したデジタルツールが想定している使い方に合わせた業務にすることが重要です。
ただし、競争力の源泉となる業務(鉄道事業における固定資産管理業務等)については、独自の業務とする必要があります。その場合は、業務フローの定義をしっかりと行い、ツールにロックインされない仕組みにすることが重要です。
【図1】テクノロジー導入における3つのSTEP
テクノロジー導入時のポイント
テクノロジー導入はあくまで目的達成のための手段であり、導入自体が目的ではありません。
プロジェクト推進中は、この原則を常に意識することが重要です。
また、テクノロジー導入自体が目的ではないのと同様に、テクノロジーの導入はゴールでもありません。導入したものを使いこなす・使い倒すことで本当の意味での改革が達成できます。
そのため、デジタルツールが自社に適合しないと判断したら、デジタルツールを“捨てる”判断をすることも重要です。かつ、保有するデジタルツールが煩雑化しないように、1年に1回は棚卸を実施して、必要なものを必要な分だけ導入できるようなクイックな見直しが必要です。
そして、本当に効果が出るデジタルツールを選ぶためには、2つのポイントがあります。
1つ目は、フロントシステムでの効果を意識することです。
フロントシステムでは、AIの活用なども考慮しながら全体を覆うようなシステム・ツールの整備を行うことで、社員の使い勝手に応じて大きな効果が見込まれます。
従って、社員が使うフロントシステムで想定される業務(勤怠管理、申請、および、お問い合わせ)に対する面倒くささや非効率をなくすことが重要です。
2つ目は、SaaS・ローコードの製品をベースに検討/導入することです。
SaaSは、ランニングコストとなる利用料のみ払えば使える仕組みになっており、必要なものを必要な分だけ購入することが可能であるため、ツールの入れ換えをスムーズに行うことが可能です。
また、ローコード製品は視覚的に分かりやすいインターフェースになっており、迅速な開発が可能なため、社員が「すぐに、たくさん使用する」ことが可能です。
まとめ~HR領域のテクノロジー化に向けて~
最後に、HRテクノロジー導入に関する成功のポイントをおまとめしてみました。
2.導入が上手くいかない場合・効果が出ない場合は、早期に“捨てる”判断を行う
3.デジタルツールの煩雑化を防ぐため、年に1回は棚卸・整理をする
4.フロントシステムで徹底的な効果を出す
5.SaaS・ローコードの製品をベースに検討する
テクノロジーは進化し続けており、先に進んでいる印象がありますが、実際に上手く使えている企業は少ないです。今回の記事は、デジタルツールの導入が出来ていない企業、デジタルツールを導入しているが効果が出ていない企業が多いということを受けてご紹介しました。
デジタルツールの導入効果が出し切れている会社はまだ少なく、導入の途についたばかりです。
そのため、導入自体が出来ていないとしても、まだまだ手遅れの状況ではありません。
むしろ、標準化された業務は丸ごとデジタルツールに置き換えやすいため、現状アナログな業務に依存しているほど、実は一足飛びにテクノロジー化を推進することが可能なのです。
今後より具体的なイメージが持てるように、引き続き当社の支援事例をご紹介していきます。
今回ご紹介した内容で気になる点やご不明な点がある方は、是非弊社までお問い合わせください。
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この記事の執筆者
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小川 嘉一HR事業部
シェアードサービスビジネスユニット長
マネージングディレクター -
野村 雄摩HR事業部
シニアコンサルタント -
小森 聖人HR事業部
シニアコンサルタント
職種別ソリューション