仕様変更・設計変更で疲弊する現場を救う
プロセス整備とPLMシステム活用
◆この記事の要約
本記事では、製造業で頻発する仕様変更・設計変更が、手戻り・納期遅延・原価悪化を通じて現場負荷や収益性に与える影響を整理し、業務プロセス整備とPLMシステム活用の両面から対応策を解説します。変更を発生させにくい管理の仕組みと、変更発生時に影響を最小化する仕組みを整備することが、変更に強い現場づくりの鍵となります。
- 仕様変更・設計変更の頻発が、現場の疲弊や企業全体の収益性・競争力低下を招く“負のサイクル”について解説
- 仕様確定プロセスの整備、標準仕様への誘導プロセスの整備により、不要な変更を抑制する管理の仕組みづくりについて紹介
- PLMシステムを活用し、変更発生時の影響範囲把握や部門間連携を迅速化・省力化する方法を解説
「日頃から仕様変更・設計変更の対応に追われて次期製品開発に工数が割けない…」
「変更内容を正確に連携できておらず手戻りが常態化している…」
といった課題をお持ちの企業は多いのではないでしょうか。
特に、顧客要求に柔軟に対応する受注設計型の一品一様ビジネスでは、仕様変更の影響が非常に大きく、企業利益を圧迫する経営課題となっているケースも散見されます。
今回は頻発する仕様変更・設計変更へどのように対応すればよいのか、「業務プロセスの整備」と「PLMシステム活用」の2つの視点からご紹介していきます。
変更多発による“負のサイクル”を断つための2つのアプローチ
多品種生産や個別受注設計が求められる製造業のお客様では、特に顧客要求確認や設計検討の過程で仕様変更・設計変更が頻繁に発生します。しかし、その変更が適切にコントロールされない場合、設計・調達・製造の各工程で手戻りが連鎖的に発生し、現場の負荷が増大します。
その結果、納期遅延や原価悪化を招くだけでなく、変更対応に想定以上の開発工数が奪われることでリードタイムが長期化し、次案件の受注機会の損失にもつながりかねません。こうした状況は、現場の疲弊を加速させるとともに、企業全体の収益性や競争力を低下させる“負のサイクル”を生み出してしまいます。
こういった課題を解決するためには、
① そもそもの仕様変更・設計変更を極力抑えること
② 発生した仕様変更・設計変更の影響対応を迅速化・省力化すること
の両面からのアプローチが必要です。
その実現に向けては、業務プロセスの整備に加え、変更情報や仕様情報を一元的に管理・連携できるPLMシステムの活用が重要な鍵となります。
① 変更を抑制するための業務プロセス整備
仕様変更・設計変更を抑制するためには、「いつ・誰が・何を基準に仕様を決定するか」を明確化するとともに、個別最適な要求ではなく、標準仕様へ誘導する考え方を組み込み、プロセス整備していくことが重要となります。
①‐1 仕様決定のプロセス整備
多くの現場では、「いつまでに何を決めるべきか」「どの段階まで変更を許容するのか」「誰がどの範囲の意思決定を行うのか」が明確になっておらず、開発・設計が進んだ後でも仕様変更が発生しやすい状況となっています。
こうした状況を防ぐためには、フェーズごとに何を・どの粒度まで・どの観点で“確定”させるのかを明確化し、それに基づいて意思決定を行う仕組みを整備することが重要です。
例えば、
- フェーズごとの仕様確定レベルや判断基準の明確化
- 変更内容に応じた承認権限・エスカレーションルールの定義
- 後工程への影響を踏まえた変更可否判断プロセスの整備
- 「未確定仕様」「確定仕様」など仕様状態を明確に区別した運用
などを整備することで、変更発生を抑制するとともに、必要な変更についても統制を効かせながら進められるようになります。
【図1】仕様決定プロセス整備のポイント
①‐2 標準仕様へ誘導するためのプロセス整備
仕様変更・設計変更を抑制するには仕様決定のルールを明確化するだけでは不十分であり、標準仕様へ誘導する考え方をプロセスに組み込み、定着させることも重要です。
そのためには、単に標準仕様を定義するだけでなく、誰でも同じ判断ができる形で形式知化し、さらにそれを継続的に遵守できるよう業務プロセスへ組み込んでいく必要があります。
【図2】標準仕様へ誘導するためのプロセス整備のポイント
標準仕様の形式知化
まず標準化すべき要素について、「何を標準とするのか」だけでなく、「なぜその仕様を標準とするのか」「適用条件や制約は何か」といった背景・判断根拠まで含めて、整理・形式知化することが重要です。
そのうえで、営業資料・提案テンプレート・設計ガイドライン・図面ルールなどへ展開し、営業から設計・製造まで一貫して同じ基準で判断できる状態を構築する必要があります。
標準仕様の継続的な整備・遵守
次に、標準仕様を継続的に整備・運用していくためには、設計・製造・調達・品質保証・営業など各部門の有識者で構成される組織を設け、「何を標準として採用するか」「例外をどこまで許容するか」を横断的に判断できる体制を構築することも重要です。
この組織が責任主体となって、標準仕様の判断・維持更新や関係部門への周知・教育を継続的に実施することで、属人的な判断から脱却しやすくなります。
さらに、標準仕様を“作る”だけでなく、“守る仕組み”として、各フェーズのレビューや承認プロセスへ標準化遵守の観点を組み込むことも重要です。
例えば、検図時のチェックリストへ標準仕様遵守項目を追加する、見積もり・受注段階で標準仕様との差異を明示・承認させる、といった仕組みを設けることで、標準からの逸脱を早期に検知・是正できるようになります。
② 発生した変更対応を迅速化・省力化するためのPLM活用
仕様変更・設計変更は完全になくすことは難しく、一定数の変更発生は避けられません。
そのため、変更そのものを抑制する取り組みに加え、発生した変更へ迅速かつ効率的に対応できる仕組みを整備することも重要です。
多くの現場では、仕様情報・図面・BOM・工程情報が部門ごとに分散管理されているため、変更発生時に「どこへ影響が及ぶのか」「誰へ連携すべきか」を把握するまでに多大な工数を要しています。
その結果、関係部門への情報展開漏れや、古い図面・BOMを参照したまま業務が進行してしまうといった問題が発生し、さらなる手戻りや品質問題を招くケースも少なくありません。
こうした課題に対して有効なのが、PLM(Product Lifecycle Management)システムの活用です。
PLMでは、仕様情報・図面・E-BOM・M-BOM・BOPなど、製品ライフサイクル全体に関わる情報を一元的に管理し、変更情報を関係部門へリアルタイムに共有することができます。
これにより、仕様変更・設計変更が発生した際にも、変更対象に紐づく部品・図面・工程・関連ドキュメントを横断的に追跡でき、各部門が影響範囲を迅速に把握することが可能となり、確認・調整工数の削減や情報伝達漏れ防止にもつながります。
さらに仕様情報を一元管理し蓄積することで、受注案件に対する標準仕様のカバー率の分析にも活用でき、標準仕様の見直しや標準仕様への格上げ検討を実施することが可能となります。
【図3】PLMでの仕様・BOM / BOPの紐づけ管理のイメージ
疲弊する現場を救うには
業務プロセス整備とPLMシステム活用の両輪での対応が必要
仕様変更・設計変更が頻発する環境において、現場の疲弊を防ぐためには変更そのものを抑制する業務プロセス整備と、発生した変更へ迅速に対応するためのPLMシステム活用を、両輪で推進していくことが重要となります。
業務プロセス面では、仕様決定の基準や責任範囲を明確化するとともに、標準仕様へ誘導する仕組みを構築することで、不要な仕様変更・設計変更そのものを減らしていく必要があります。
一方で、変更を完全になくすことは難しいため、発生した変更については、仕様情報・BOM・BOPなどを一元管理できるPLMを活用し、影響範囲把握や関係部門への情報連携を迅速化・省力化していくことも不可欠です。
特に近年は、市場ニーズの多様化や製品の複雑化により、従来の属人的な運用や部門ごとの個別最適では対応が難しくなっています。
だからこそ、「変更を発生させにくくする仕組み」と「変更発生時に素早く対応できる仕組み」の双方を整備し、変更に強い現場づくりをしていかなければなりません。
レイヤーズ・コンサルティングでは、標準仕様の整備・運用に係る業務改革やPLM導入に関する事例を多く保有しています。もっと深く確認したい/事例を聞きたい/相談をしたい等がございましたら、どうぞお気軽にご連絡ください。
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この記事の執筆者
-
加藤 美里SCM事業部
マネージャー -
松永 貴寛SCM事業部
シニアコンサルタント -
今津 文沙SCM事業部
シニアコンサルタント
職種別ソリューション





