強い情報システム部門への原点回帰
◆この記事の要約
情報を持ち企業貢献する強い情報システム部門へ
VUCA時代の激動するビジネス環境で、情報システム部門は「第四の経営資源」である情報を持ち企業競争力を支えています。しかし、情報システム部門は多くの悩みを抱え、目の前の業務に追われているのが現状です。これらの解決の鍵が情報システム部門の原点ともいえる「情報資産管理」への回帰です。情報資産の可視化・分類化・断捨離・最適化を通じて情報の有効活用基盤を適正品質・適正コストで整えることにより、強い情報システム部門を実現します。
情報資産管理の進め方
- 可視化:情報資産の定義を明確化し、企業が要する情報資産を棚卸します。
- 分類化:情報資産の保全レベルを決めるため情報資産を分類します。
- 断捨離:利用実績などのファクトに基づき不要資産を削減します。
- 最適化:利用用途や分類などの多角的な観点から情報資産の統廃合を行います。
辛さを分かってもらえない情報システム部門
『情報システム部門は大変だ。しかも、周りからは理解されないし説明も難しい。』
そう考える情報システム部門の方々は多いのではないでしょうか。
実際に、以下のような悩みをよく耳にします。
- 維持管理にカネがかかってしょうがないが、打開に予算化するための言語化ができない。
- ソフトやハードが混在していて、自分でもよくわからなくなってきた。
- セキュリティの重要性は社内で理解されているが、どの程度の対策が必要か論理的な説明ができない。
- 積み上げで予算を作ったにも関わらず、見過ごした案件が散発し辻褄合わせに苦労している。
- “データを抽出して”と無責任にいわれるが、利用目的理解とデータ抽出箇所に自信がない。
- プロジェクト遂行中に業務部門側で思わぬツールの存在が判明し、計画の見直しを要した。
これらの悩みが指し示すように、情報システム部門は日々のオペレーションで手一杯の中、進化を続けるデジタルテクノロジーや高まるセキュリティ脅威など、激化するビジネス環境への適応が常に求められています。しかしながら、この苦しい現状を打破するためにはどうしたらよいのでしょうか。
その答えは“情報資産管理”にあります。あまりにも原点に立ち返った解で、「情報資産管理は行っているが、これら悩みが解消されたことはない」と思われる方もおられるでしょう。そのため、情報資産管理の進め方の前に、その効果についてみていきましょう。
忘れがちとなる情報資産管理の効果
あらためてとなりますが、情報資産そして情報資産管理の定義についてまずは触れておきましょう。
情報資産とは、企業が収集した「ヒト・モノ・カネ」に関する情報やそれを保存している媒体を指し、例えばハードウェアやソフトウェアなどが含まれます。そして、情報資産管理とは企業が保持する情報資産を適切に可視化・分類化し、その価値を維持・向上させるために管理・保全する一連の活動を指します。情報資産は、ビジネスの成功に必要不可欠な資源であると共に、逆に誤った活用をされてしまうと企業の信頼失墜や法的な責任問題に直面してしまう恐れがあるため、企業にとって情報資産管理は非常に重要な活動となります。
では、情報資産管理がどのようにして前述のような情報システム部門の悩みの解消につながるのでしょうか。ここで特に肝となるのが、情報資産管理の活動の内“可視化”や“分類化”、その結果を踏まえた“断捨離・最適化”になります。その効果を整理すると【図1】のとおりです。これらの効果が最大化するように情報資産管理を行えば、前述のような悩みが必然的に解消されていきます。
【図1】情報資産管理の効果
効果的な情報資産管理のための重要ポイント
情報資産管理は、大きく4つのプロセス(①可視化→②分類化→③維持運用/評価、④断捨離・最適化)をサイクルで回すのが一般的です。そのサイクルをもう一段ブレイクダウンすると【図2】のようなステップに分解できます。
【図2】情報資産管理の進め方
もし、情報資産管理の効果を十分に享受できていない場合、理由として考えられるのは、【図2】に記載のステップの省略やその活動が不十分であることに起因しています。ここで筆者の経験から、情報資産管理で見落とされがちな重要ポイントを以下より挙げてまいります。
情報資産の可視化
■ 1-2 情報収集項目の整理
情報資産管理を適切に行うためには、当然ながらその中身を知る必要があります。例えば、後述にある情報資産の分類するためには、基礎情報が必要となります。それ以外にも、ソフトウェアであればライセンス数や保守期限、バージョン等を把握する必要があるでしょう。これら必要情報を事前に整理し、資産棚卸時に収集することにより、無駄のない計画的な情報資産管理が実現できます。
情報資産の分類化
■ 2-1 情報資産分類の定義
情報資産は一律に同じレベルで管理するわけではありません。それぞれの特徴に応じて強弱をつけて適正に管理することにより、結果管理コストも適正化されます。その強弱とは分類するための切り口を定義することです。分類の切り口は、情報資産の種別によって異なる場合が多いですが、一般的には情報三原則である“完全性”、“可用性”、“機密性”があります。筆者の担当したプロジェクトでは、そこに業界や企業特有の切り口を追加しました。例えば、個人情報の有無や業界特有の法規制応です。蛇足ですが、分類に法規制を含めて関連資産とその運用状況を可視化したことにより、外部監査指摘ゼロを実現できました。
■ 2-2 情報資産の分類
情報資産の分類は、その維持運用を含めた管理の仕方が変わるレベルで行います。 “機密性”を例にした場合、機密情報の有無でセキュリティレベルが異なるでしょう。また、社内秘と極秘でもまた異なるかもしれません。このように、分類は数の多寡で良し悪しが決まるのではなく、情報資産の管理が異なるレベルで行います。
情報資産の断捨離・最適化
■ 3-1 不要資産の判別
可視化の結果を踏まえ、断捨離や最適化を行うことが情報システム部門の業務の効率化・簡素化やコストダウンなどにつながります。しかし、歴史の古いレガシーシステムなどにおいて、要不要の判断が難しいといったケースを耳にします。筆者も直面したケースがあり、過去の利用実績などのファクトを収集して不要資産の目星を付け、論理的な削除ステップを設けて段階的に削除する形で対応しました。その結果、約5割のアプリケーションの削減が実現し、大きなコストメリットを享受できました。
最後に
繰り返しになりますが、デジタル化が加速している現代において、情報システム部は企業活動の屋台骨を支える重要な役割を担っています。その中で、日々の業務の忙殺される悪循環を断ち切り、強い情報システム部門の姿を取り戻すためには、情報資産管理といった原点への回帰が必要です。本内容がそのきっかけとなり、日々苦労されている情報システム部の皆様のお役に少しでもなれたら幸いです。
本記事をお読みになって、ご不明点や詳細にご興味をお持ちになられた方がおられましたら是非お問い合せください。適した事例と共にご紹介させていただきます。特に、誤った場合にマネジメントプロセス全体に悪影響を及ぼす情報資産管理の最初のハードル『情報資産の分類化』は、概要にしか触れられませんでした。ご関心がございましたら、情報資産種別ごとの分類を実例にてご説明いたします。


ソリューションに関するオンライン相談問い合わせる メルマガ登録
最新情報をお届け! メルマガ登録
この記事の執筆者
職種別ソリューション




