基幹システムの賞味期限は何年?
CIOの憂鬱
199X年X月、5年を費やした基幹システム開発プロジェクトが、いよいよ稼働を迎えた。バブル崩壊後の景気低迷や円高不況、阪神・淡路大震災などの苦境を乗り越え、何とかやり切ることができた。最新の汎用コンピュータを自社センターに設置して、全国の拠点にはWindows PCも導入した。
他社ではERPとか呼ばれるパッケージシステムを導入したところもあるようだが、業務が回らないとか、マスター入力が大変だとか、データが抜けないとか、ユーザは結構不満らしい。うちのは数十億円をかけてユーザ要求をすべて実現したシステムだ。これから先、少なくとも10年は使っていくことになるだろう…
…あれから25年経ったが、機能追加もして、まだまだ基幹システムは現役だ。でも一体この先どうしたらよいのだろうか。世の中は大きく変わっている。新規投資もしたいが、システムの維持費も結構かかっていて回せる余地がない。担当者も60代ばかりになっている。この先何年働いてもらえるのか…
基幹システムの賞味期限は10年
一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が2019年に発行した 「企業IT動向調査」 によると、売上高1兆円以上の企業の31.1%、1,000億円以上1兆円未満の企業の22.2%が、21年以上前に開発した基幹システムを使用しています。10年~20年前に開発した基幹システムを使用している企業は、1兆円以上の企業では33.3%、1,000億円以上1兆円未満の企業では41.5%になります。実に60%超の大企業の基幹システムが10年以上を経過しているということになります。
図表にあるように、これまでの情報技術の進化を眺めてみると、10年単位で大きな変化が起きてきたと言えます。こうしたサイクルから俯瞰的に見た場合、基幹システムの賞味期限は10年と言えるのではないでしょうか。
10年毎の情報技術の進化をタイムリーに取り入れてきた企業は、コストパフォーマンスの飛躍的な上昇や、ビジネス面でのイノベーションを手にしてきたに違いありません。一方、旧世代に取り残されてしまった企業は、情報技術進化がもたらす機会を逸失してきたと言えます。おそらく次の10年には、AIやデジタルツインといった技術が、業務アプリケーションシステムやビジネスプロセスに、一層組み込まれていくに違いありません。コンピューティングや通信のコスト・性能比も、飛躍的に向上するはずです。新たな情報技術を取り入れられる企業と、旧態依然のままの企業の格差は、さらに拡がっていくのではないでしょうか。
【図1】10年毎の世の中と情報技術の変化
基幹システムの賞味期限切れを克服し、次の10年の波を捉えるには
これまで基幹システムを刷新できてこなかった企業には、ほぼ共通した理由があります。
- 進めたくても、やれる人がいない。忙しくてアタマと手が回らない。
- どうやって進めたらよいかわからない、イメージがわかない。
- 経営層を説得できない。
- 業務が変わっていないので、作り直しても同じシステムになる。
- 現行機能を保証し、かつ新たなユーザ要件も実現しなくてはいけない。
- 開発投資の償却が終わり、保守・運用費用だけになっているため、新規投資はPLへの影響も大きくなる。
大別すると、進め方の問題と、システム自体の価値の問題と言えます。
基幹システムの賞味期限切れを克服し、次の10年の波を捉えるためには、この2つの問題を乗り越え、自社の基幹システムを世代交代させていかなくてはなりません。
賞味期限が切れてから次のサイクルを動かしだすのではなく、切れる前から始める必要があります。構想や開発に3年~5年かかるとしたら、システムが稼働してから5年ぐらい経ったら始めなくてはいけないということになります。
【図2】基幹システムのライフサイクルとシステム価値の例
システム構想のアプローチ
システム構想は単に自社に見合った製品やソリューションを選ぶことではありません。ソリューションの選定以前に、自社を取り巻くビジネス環境の変化や自社の戦略を踏まえたうえ、今後のシステムがもたらすべきビジネス価値について熟考する過程と言えます。弊社のこれまでのコンサルティング事例では、システムライフサイクルコストの大幅な削減や、従来ビジネスのサプライチェーン効率化により投下資本の再配分を狙いとしたケースや、取引先との情報共有により、計画の精度向上やフルフィルメントのリードタイム短縮と品質改善を狙ったケース等があります。
10年毎に、システムの世代毎にビジネス環境やビジネス戦略は変化し、基幹システムに求められるビジネス価値も狙いを変えていかなくてはいけません。
システム構想を描き、着実に基幹システムを進化させていくためには、自社だけで取り組むのではなく、外部を活用し、スピーディかつ合理的に検討を進めることも重要です。弊社では、オーナーの立場になって、中立かつ客観的な視点からシステム構想づくりを支援するコンサルティングサービスをご提供しています。
【図3】システム構想のステップ
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この記事の執筆者
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小池 宗彦DX事業部
マネージングディレクター -
藤原 七海DX事業部
マネージャー
職種別ソリューション