なぜ会社にあるデータが活かされないのか?
―――システム刷新を阻む組織構造とデジタル活用の壁

◆この記事の要約

近年、DX推進や競争環境の変化により、システム刷新に踏み切る企業が増えていますが、現場で十分に活用されず形骸化するケースも少なくありません。システム刷新は単なるIT投資ではなく、組織構造や意思決定プロセスの再設計をともなう経営課題です。そこで本記事では、刷新の落とし穴と、それを乗り越えてデータを最大限活用し、経営改革へつなげるための視点を具体的に解説します。刷新効果を実感できず悩む企業様は必読です。

  • システム刷新:ツール導入で終わらず意思決定基盤を再構築することが鍵
  • DXと組織文化:意思決定回避や属人化が刷新の障害となる現実
  • データ活用:現場がデータを読み解き行動できる環境整備が重要
  • 経営改革:刷新を企業競争力強化に結び付ける視座が不可欠
多くの企業がシステム刷新に挑む一方で、活かされないデータや形骸化した仕組みに悩まされています。刷新を真に成功させる鍵は、ツール導入ではなく意思決定の構造改革にあります。そこで本記事では、その見えにくいリスクと、DXを実現するための視点を解説します。

そもそもなぜ今、システム刷新が求められるのか。

企業を取り巻く環境は、デジタル技術の進展と人口構造の変化によって急速に変化しています。AIやクラウドをはじめとした新技術がビジネスモデルを塗り替える一方で、現場では人手不足や高齢化といった課題が深刻化しています。こうした背景から、従来の業務や基幹システムの限界を超えるべく、システム刷新による構造改革があらゆる業界で進められています。

しかし、刷新を行ってもなお、「使われないシステム」や「活用されないデータ」に悩まされる企業は少なくありません。刷新の目的が“仕組みの入れ替え”にとどまり、組織がその仕組みを活かす体制に進化していないケースが多く見受けられます。そのため次章より、システム刷新をデジタル戦略の一環として成功させるために必要な視点として、「組織構造」「企業文化」「データ活用設計」の観点から見えにくいリスクを説明していきます。

【図1】システム刷新はIT部門の課題ではなく、経営課題。

“組織”がシステム刷新に与える“見えにくい影響”。

刷新という言葉が指すのは単なるITツールの導入ではなく、業務プロセス・役割分担・意思決定の構造を再設計することにほかなりません。にもかかわらず、刷新が「情報システム部門主導のITプロジェクト」として進行すると、組織全体の巻き込みが不十分となり、現場との乖離が生じやすくなります。
このようなケースでは、次のような構造的・文化的な問題が刷新の定着を阻みます。

  • 縦割り組織による情報の分断
  • 現場業務への過度な固執と“今のままでよい”という空気感

刷新における最大のリスクは、導入後に組織が“元に戻る”ことです。その根本原因は、「業務を変える仕組み」を「使われる仕組み」に落とし込めていないことにあります。

【図2】真の障害は技術ではなく、組織構造。

なぜ“組織文化”が刷新の成否を分けるのか。

刷新プロジェクトが直面する壁の多くは、技術の問題ではなく組織文化や意思決定の習慣にあります。
現場の理解・合意・自走がなければ、新しい仕組みはいずれ形骸化します。
特に、以下のような組織的傾向は刷新を妨げる典型例です。

  • 上長が意思決定をしない文化
    管理職層が判断を先送りにし、導入の是非が現場任せになると、推進力が失われます。
  • 業務の属人化
    標準化が進まない現場では、システムへの移行設計が破綻しやすく、個人のノウハウに依存した運用に戻ってしまいます。
  • 移行期へのリソース投資不足
    現場への負担が過大になると、導入初期でのトラブルが「やっぱり前の方がよかった」という空気を助長し、刷新が頓挫します。

これらはいずれも「技術の失敗」ではなく、「組織の準備不足」によるものです。刷新の成功には、組織が“デジタルを使いこなす前提条件”を整える必要があります。

システム刷新と“意思決定の構造”を更新する。

デジタル化の目的は、単に処理スピードを上げることではありません。本質的な目的は、より正確な意思決定を実現することにあります。システム刷新によって業務データやサプライチェーン情報が可視化されても、それを現場が活用できなければ、経営判断の質は変わらないのです。これからの時代、企業にはサプライチェーン全体を見渡した予測力と意思決定スピードが求められます。そしてその鍵は、現場の各所に“データを読み解き、判断する力”が分散していることです。

つまり、デジタル化とは「データを一部の専門職が見るためのもの」ではなく、「現場が主体的に状況を把握し、動ける構造を作ること」です。主に、現場作業や工場作業向けの作業服・関連用品を専門に扱う大手企業ワークマンが、新入社員の段階から売上分析の基礎を教育し、店長が仮説を立ててアクションを行う文化を育てているのはその好例です。システム刷新はツールの導入だけではなく、“誰が・どこで・何を判断するのか”という構造を再設計する経営行為なのです。

【図3】デジタル化の真価は意思決定の質を変えることにある。

おわりに:システム刷新とは「情報構造の再設計」である。

システム刷新を単なるIT投資と捉えるか、それとも業務と意思決定の構造を変える改革と捉えるかで、その成否は大きく分かれます。技術導入の成否ではなく、その技術が情報として誰に届き、どう使われるかにこそ、デジタル変革の本質があります。それゆえ経営層には、仕組みと同時に意思決定のあり方を再設計する視点が求められます。

もし貴社でも、システム刷新を検討中または導入済でありながら、活用に課題を感じておられるようであれば、ぜひ一度ご相談ください。DXを「情報の力で組織を変える」取り組みと位置付け、仕組みと構造の両面から刷新をご支援いたします。

ソリューションに関するオンライン相談ソリューションに関するオンライン相談 最新情報をお届け!メルマガ登録最新情報をお届け!メルマガ登録

この記事の執筆者

  • 豊増 慧介
    豊増 慧介
    DX事業部
    シニアコンサルタント

お仕事のご相談や、ご不明な点など、お気軽にお問い合わせください。
セミナー開催予定など最新ニュースをご希望の方はメルマガ登録をお願いいたします。