「形だけデータドリブン経営」からの脱却
~本質をおさえ成功に導く~
[1. 課題編]

「データドリブン経営」がバズワード的に広がっていますが、実際にその実現により成果を上げている企業はまだ一部に留まっています。その背景として、“データドリブン経営は自分たちの会社・事業とは縁遠い”と検討すらされていなかったり、または、“データドリブン経営をよく理解しておらず漠然と取り組んでいる”ケースも多いように感じます。
そこで今回は、「データドリブン経営」とは何なのかという本質とともに、成果を上げるに当たって乗り越えるべき壁をご説明します。

そもそもデータドリブン経営とは何か

皆さんは、そもそも「データドリブン経営」の意味を理解できていますでしょうか?
バズワードとして、何となく分かったような気がしている人が多いのでは、と感じております。
実際データドリブン経営の定義は、有識者によってまちまちであるため、分かったようで分からないのは当然のことだと考えています。また、このような状態は他にトレンドワードとなった、「DX」や「デジタルマーケティング」なども同様です。

では、色々な定義がある中「データドリブン経営」の意味を、どう解釈・認識すれば良いのでしょうか? まずは、公表されているいくつかの定義を具体的に見てみましょう。

データドリブン経営の定義例

  • “これまでにない大きな経営インパクトを創出するための全社変革であり、デジタル技術や人工知能(AI)などの技術を活用し、ビジネスのあらゆる局面においてデータ主導での意思決定をする経営”
  • “データに基づいて最適な打ち手を実行してフィードバック・ループを高速に回す”
  • “収集・蓄積したデータをビジネスの意思決定や経営に活かすこと”
  • “意思決定のプロセスを経験と勘に頼るのではなく、データとAI(人工知能)に変えること”

 

一見すると、定義がとりとめのない状態に見えますが、本質的に共通している部分があります。
それは、「データに基づき、意思決定を行うこと」であり、会社における意思決定プロセスを、再設計・再構築する活動であるということです。従って、詳細は後述しますがデータドリブン経営を検討する際、特に重要なことは何の意思決定を変革するかを明確に設定することです。
なお、補足として意思決定の対象ですが、「データドリブン経営」という名前から経営レベルに限定されるものと誤解されがちですが、そうではなく会社における全ての意思決定、すなわち、「戦略的意思決定」「管理的意思決定」「業務的意思決定」が対象になります。

【図1】「データドリブン経営」の各有識者による定義と本質的な意味合い

データドリブン経営の意義 ① 直接的価値

では次に、「データドリブン経営」を実現することが、会社にとってどのような良いことがあるのでしょうか?まずは、データ活用の直接的価値として、意思決定プロセスへの効果からみていきましょう。
データ活用によりもたらされる効果は、大きく4つに整理されます。

データ活用による意思決定プロセスへの効果

  1. 透明化:
    従来のKKD(勘・経験・度胸)といった属人的な判断ではなく、データによりロジックベースで形式知的に判断することで、思考プロセスが透明化され不正リスクや技術承継リスクを回避可能
  2. 精緻化:
    上述のロジックベース化に加え、従来まで人の頭で処理できる情報量で判断していたところを、データにより膨大な情報量をベースに判断することで、予測等の精度が向上し判断の成功確率が向上
  3. 効率化:
    従来まで1件1件を個別的にじっくり判断していたところを定型化することに加え、情報収集~アクションまで全て人手で実行していたところをシステム等で自動化することで、意思決定にかかる負荷を軽減、または、人の関与を不要化
  4. 高速化:
    上述の定型化・自動化により、情報収集~アクションまでの実行スピードを高速化

 

なお、データドリブン経営を検討する際は、前述の「何の意思決定を変革するか」と合わせ、その意思決定プロセスにおける課題として、上記4つの効果観点うち最も解決が必要なものはどれかを考えることが重要となります。

【図2】「データドリブン経営」による意思決定プロセスの変化と導入効果

データドリブン経営の意義 ② 経営的意義

また、アメリカやイギリスでの先行研究によると、データに基づく意思決定を重視している企業、すなわち「データドリブン経営」を実現している企業ほど、そうでない企業に比べ生産性が5~15%高いことが明らかになっています。
なお、データドリブン経営の恩恵は、GAFAをはじめとしたデジタルビジネスやBtoCビジネスだけに限定されるものだと思われがちですがそうではありません。リアルビジネスやBtoBビジネスにも十分に適用できるものであり、それぞれの事例を経営的意義を踏まえ、簡単にご紹介させていただきます。

リアルビジネスでの実現事例:USJのGPS・ビーコン等によるパーク内の顧客行動の可視化と活用

USJでは、顧客のパーク内での体験価値を高めるべく、パーク内の顧客行動をデータとして可視化するとともに、そのデータに基づき顧客に対してパーソナライズしたサービスを提供しています。
具体的には、顧客行動のデータ化として、パーク内で縦横無尽に動き回る人の流れを把握すべく、GPS、ビーコン、Wi-Fiなど、さまざまなソリューションを組み合わせて計測を実施しています。また、そのデータの活用として公式アプリ内で、当日のパーク内行動に応じてアトラクションやグッズのレコメンドを行う、1to1の「コンシェルジュ」機能を提供しています。

BtoBでの実現事例:キーエンスのデータドリブン営業組織

キーエンスは、10%を超える成長率や、50%を超える営業利益率を誇っておりますが、データ活用がその業績を支えているとも言われています。
例えば営業活動においては、電話や訪問・プレゼンの回数・時間などを徹底してデータ化・管理していることは有名なところですが、それらのデータをもとに成約・勝ちパターンの分析をし、トークスクリプト等としてナレッジ化していると言われています。

データドリブン経営の実現に向けた壁

最後に、各企業における「データドリブン経営」の取り組みは、実際上手く進んでいるのでしょうか?
残念ながら十分に進んでいないというのが実情です。少し前の調査になりますが、2020年の経済産業研究所による調査結果を見ると、データの利活用により事業で具体的に成果が得られたとする企業は2割程度に留まっています。一方で、データドリブン経営の取り組み状況として、同じく2020年の総務省による調査結果を見ると、データ分析人材・組織の設置や、データ活用戦略の策定、データ分析に基づいた経営判断の実施など、必要な体制整備を実行済みの企業は4割程度にのぼります。
従って、データドリブン経営で成果を得られていない企業は、「そもそも必要な体制整備ができていない企業」と「体制整備ができているが成果に結び付けられていない企業」の、大きく2つが存在しています。

ただ、いずれの状況にせよ根源的に実現を阻む壁は、当社のこれまでのコンサルティング経験から、7S観点に対する対応漏れ・不足として、いくつかに大別できると考えています。

データドリブン経営の実現を阻む壁

  1. データ戦略欠如の壁:
    データ活用の目的として、解決すべき課題が明確化されていない
  2. 経営スタイル不一致の壁:
    データ活用の意義・必要性が十分に浸透せず、旧来型のKKD(勘・経験・度胸)の意思決定プロセスから脱却ができない
  3. 組織サイロ化の壁:
    データがサイロ化し、他組織のデータを活用できない、または、分析に向けて事業部側とIT側で互いに協力関係が築けない
  4. スキル・人材不足の壁:
    最適な分析・解析の手法が分からない、または、それが分かる人材が社内にいない
  5. システム・データ不足の壁:
    システム等の問題から分析に必要な情報を、データ化できていない、または、必要なデータ量を蓄積・整備できていない

 

ただし、これらは並列ではなく更にこの中でも、対応の優先順位があります。データドリブン経営の実現に向けて、より上位の位置付けとなるのは、「①データ戦略欠如の壁」「②経営スタイル不一致の壁」です。これらが解決できていないと、それ以外の壁に対する対応の方向性も定まりませんし、また、そもそも対応しようという動きすら起こりません。

【図3】「データドリブン経営」の実現を阻む壁

では、これらの壁をいかに乗り越えていけばよいのでしょうか?
次回「課題解決編」では、具体的な解決の方向性から成果を上げるための打ち手(詳細)をご説明させていただきます。
まず今回は、「データドリブン経営」の概要と実現に向けた課題までをご紹介させていただきましたが、詳細内容のご質問やお悩み事項のご相談等ございましたら、是非お問い合わせください。

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