御三家モデルによるコーポレート復活の道
~コーポレートはコストセンターではない!~

コーポレート本社(グループ本社)は、本当にコストセンターなのでしょうか?
日本企業の経営テーマである中長期的な企業価値向上、コングロマリットプレミアムの創出、大胆な事業構造改革、グループガバナンス強化等は、強いコーポレート本社無くしては実現できません。逆に、日本企業はコーポレート本社をコストセンターとして軽視し弱体化させていたため、中長期的な低迷に陥っているのではないでしょうか。
 
今回は、コーポレートが強力な横串機能でグループ各社をマネジメントし、企業価値を向上させていくためのコーポレート改革のポイントをご紹介します。

グループ各社をグリップする横串機能を持つグループ本社への変革

VUCA時代(Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguityの略)と呼ばれる不透明な経営環境下で、コーポレート(グループ本社)が強力な横串機能でグループ各社をマネジメントしていくことが不可欠となっています。

【図1】横串機能としてのコーポレート本社

しかし、日本企業のコーポレートは弱く、実質的には親会社の本社に過ぎず、グループ全体を束ね、企業価値向上に邁進させる本社にはなっていません。これは、失われた30年において本社が単なるコストセンターと見なされ、人員削減の対象となり、経理・人事・法務・調達などの各機能の専門的人財も十分育成できない、疲弊した部門になってしまっているからです。今こそコーポレートを改革し、強いコーポレートを創り上げ、企業価値向上に取り組むべきではないでしょうか。

事業部側の不満を解消し、ビジネスに集中させる

このようにコーポレート本社が本来機能を強化し、変革の担い手になっていくことが求められている中で、事業部側の本社に対する2つの不満が存在しています。

1つ目は、本社費として事業部側に配賦されるコーポレート本社のコストに対して、事業部側としては配賦されたコストに見合うメリットを十分に享受できていないという不満です。
2つ目は、コーポレート本社から事業部側にレポートや資料の報告を求めるため、事業部側からすれば本来業務に集中させてほしい、本社の雑務で邪魔をしないでほしいという不満です。

変革を迫られているコーポレート本社と、現状の延長で不満を抱えている事業部側、コーポレート本社の抱える病巣は根が深いといえます。コーポレート改革を推進するためには、そのことが事業部側にとってもどのような意義があるか、どのような効果があるかを示して進めなければいけません。そうしなければ、またコーポレート本社はコスト削減への道を歩んでしまいます。

御三家モデル(戦略家・専門家・実務家)とは

前述のように、日本企業の本社はどうしても親会社単体のコーポレート機能となっており、ヘッドクォーターとしての役割を果たしていない、それどころか親会社単体としても単に事務処理的な組織となってしまい、事業部側のお世話係になってしまっているケースも多く見受けられます。
さらには、事業部側からの相談に対して、『できません。我が社の制度・規則ではできません。』と、前例踏襲の抵抗勢力になってしまうケースも少なくありません。

そこでレイヤーズでは、御三家(戦略家、専門家、実務家)の観点から各コーポレートのミッション・役割を明確にし、コーポレート変革を進めることを推奨しています。実際に当社クライアントにおいても、「優れたコーポレートの組織モデル」として導入しています。

【図2】御三家モデル(戦略家、専門家、実務家)

コーポレート本社における各部門の御三家業務内容の例は以下のとおりです。

【図3】戦略家、専門家、実務家の担当業務例

経理財務の戦略家は、昨今ではFP&A(Financial Planning & Analysis)とも呼ばれます。CEOやCFOを支える役割です。従来、経営企画や経営管理と呼ばれる組織が担当することがメインでしたが、コーポレート改革においては、従来の組織にとらわれず改革していくことが求められます。また、SSC(シェアード・サービス・センター)は、実務家機能もしくは専門家機能をグループで集約したものです。
このように、コーポレート本社を戦略家、専門家、実務家の観点から組織設計し、これらの機能を巡りながらキャリアアップして専門的人財を育成していきます。

御三家モデルによるコーポレート改革の事例

大手グローバルの精密機器メーカーにおいて、SSCを念頭に人事機構改革を検討していました。しかし、本社人事、事業部人事、子会社人事のミッション・役割も不明瞭で、結果的に業務の押し付け合いも発生してしまい、検討が進まない状態となっていました。その中で当社にお声がけいただき、御三家モデルによるコーポレート改革を実施しました。

我々が実施したことはまず、人事機能そのもののミッションから検討を進めました。経営理念、中期経営計画、経営者へのトップインタビュー、ビジネス環境の変化などを踏まえて、人事機能に求められるミッション・役割を明確にし、そこから戦略家・専門家・実務家のミッション・役割を検討し、明確化していきました。

苦労したのは戦略家機能の役割のすり合わせ、浸透

事業部側に人事の戦略家機能という概念がなく、事業部側、コーポレート側においても事業部の戦略家が何をどこまでするのか、認識のすり合わせ、浸透には時間と労力を要しました。

経営層は、戦略家には事業部側の戦略策定・推進を支援し、事業部長のマネジメントをサポートすることを期待しておりました。しかし、実際は従来の実務家の役割から抜け出せず、またビジネスの知識・経験も乏しいことから、事業部への制度・ルールの展開・浸透や従業員のキャリア相談対応などがミッションと認識してしまっていました。事業部側も今までのお世話型人事のイメージが払拭できず、事務処理対応と認識していました。

そのため事業部長との繰り返しのミーティング、ニーズの確認、業務レベルでの実施内容のすり合わせを実施し、また人事部内でも繰り返しのすり合わせも実施し、ようやく戦略家の役割が浸透し、機能を発揮していきました。

実務家の効率化とモチベーション向上

また、実務家機能はIT化を進め、SSC化とBPO化を実現し効率化に成功しました。社員数に対して「人事部門の人数が多い」と感じていた経営層に対して、ベンチマーク人員数を提示し、目標を設定して効率化施策を実施していきました。

しかし、これはコストダウンのための効率化ではありません。どうしても戦略家や専門家と比較し実務家は事務処理型となるためモチベーションが低下する傾向があります。そこで実務家のミッションは、『競争優位性になるオペレーション力をつける』として、とにかく事業部側の業務も含めて業務改革を推進し、効率性や生産性を高める効率化イノベーションチームという位置付けにして、グループ子会社の業務改革・巻き取りを推進していくようにしました。その結果、メンバーのモチベーションは高まり、誇りを持つようになっていきました。

こうした業務変革の役割は、一般的には専門家機能が担いますが、モチベーションや育成を考え、実務家機能が担うことも一つの方法です。また、生み出された余力は戦略家や専門家のリソースとして活用しました。つまり、「人事部門の人数が多い」のではなく、「人事事務の人数が多い」ということです。

他のコーポレート機能へ横展開

その後、人事機能での成功を、経理、IT、調達などコーポレート機能に横展開を実施していきました。継続して改革していくことで、最終的にはグループ全体でのコーポレート機能人員数の適正化と専門性の向上を実現し、スリムで強靭なコーポレート本社になりました。
さらには、事業部側に役立つコーポレート機能となることで、コーポレート本社の従業員のモチベーションも高まり、離職率も低下しました。

今回は、コーポレートが強力な横串機能でグループ各社をマネジメントしていくためのコーポレート改革のポイントをご紹介しました。詳細については、是非お問い合わせください。

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この記事の執筆者

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