【第14回】業務運用整備フェーズの秘訣は何か(後編)
◆この記事の要約
本記事では、基幹システム刷新における業務運用整備フェーズ(後編)として、ERP導入をユーザー部門主導で成功させるためのユーザー教育と運用テストの進め方・ポイントを、クラウド時代のFit to Standardの観点で整理します。
- ユーザー教育:キーユーザー/一般ユーザー/システム運用者に分け、システム操作・新業務手順・ハンズオン・パラメーター設定や権限設定まで、役割別に教育プログラムを設計。
- 教育のポイント:ユーザーのスキルに応じた内容、余裕をもった教育の実施、Q&A対応のサポート窓口/ヘルプデスクなどユーザーサポート体制の確立。
- 運用テスト:業務シナリオで標準機能とアドオン機能を検証し、データの整合性チェック、エラー・例外処理、ユーザーからのフィードバック収集で業務適合性を確認。
- 運用テストのポイント:機能ごとに適切なテスト参加者を選定し、受注登録→在庫引当→出荷指示→出荷など一気通貫でテストシナリオとテストデータを用意して成立性を検証。
業務運用整備フェーズは、ユーザー部門であるユーザー部門が中心となって行います。新システムの導入に向けて、ユーザー教育や運用テストも行っていきます。これらはシステムの本番稼働前の大切な準備ですから、主管部門であるユーザー部門が責任(自覚)をもって推進することが不可欠です。
そこで今回は、「クラウド時代!ユーザー主導のERP導入とは」として、基幹システム刷新における業務運用整備フェーズの秘訣(後編)をご紹介します。
業務運用整備フェーズとは
業務運用整備フェーズの位置付け
業務運用整備フェーズは、新システム稼働前ならびに新システム稼働後の安定した業務運用を支えるためのフェーズです。
【図1】業務運用整備フェーズの位置付け
業務運用整備フェーズの進め方
業務運用整備フェーズには、新システム導入に向けての業務改革施策(ルール・プロセス・体制等)を具体化する業務改革推進、新システムを前提とした業務マニュアル・手順書等を具体化する業務運用設計、新システムを前提としたマスタ定義、新システムや新業務を行うためのユーザー教育、新システムを実際に使って新しい業務を検証する運用テストがあります。
【図2】業務運用整備フェーズの内容
その中で今回は、業務運用整備フェーズの後編として、ユーザー教育と運用テストを中心に説明します。
ユーザー教育とは
ユーザー教育は、新システムの円滑な導入と安定稼働を支えるために、新システムのユーザー(利用者)に必要な知識・技能を習得させる重要な活動です。
ユーザー教育の対象者
キーユーザー
基幹システム刷新プロジェクトにおいて、中心的な役割を担うユーザーです。
一般的には、ユーザー部門から選任されたプロジェクトメンバーが該当します。
キーユーザーは、詳細なシステム機能や操作方法などを習得し、一般ユーザーへの教育担当(トレーナー役)にもなります。また、キーユーザーは、システム要件の確定に参加し、要件の確認や承認なども行います。したがって、キーユーザーに対しては、選定したERPの教育をシステム要件定義の開始に合わせて実施することが一般的です。
一般ユーザー
基幹システム利用するエンドユーザーです。
一般ユーザーは、基幹システムの利用する機能を中心にシステム機能や操作方法などと習得します。
一般ユーザーの教育は、本番稼働前に実施することが一般的です。
システム運用者
基幹システムの設定や運用を行うユーザーです。
システム運用者は、パラメーター設定、権限設定、メニュー設定、システム運用設定(スケジューラー設定等)などを習得します。
システム運用者は、一般的に情報システム部門のシステム運用担当者が該当します。しかし、昨今のクラウドサービスでは、利用ユーザーとしてユーザー部門のメンバーがシステム運用教育を受け、自らが設定変更していくことも増えてきました。利用ユーザーであるユーザー部門のメンバーがどこまで習得できるか否かは、ERPによって異なりますので、導入時に確認が必要です。例えば、ERPの中には基本的に利用ユーザーが設定することを前提として数日から数週間で習得できるものや、習得に数か月かかるものもあるからです。
教育の内容
教育内容には、下記のようなものがあります。
システム操作の教育
新システムの基本操作や業務フローを教育します。
新業務手順の教育
業務マニュアル等をもとに、新しい業務プロセスや運用ルールを教育し、これらの理解促進を行います。
実機を使ったハンズオン
実際のシステムを操作しながらの実践的な訓練(ハンズオン)をします。
運用テストの参加者については、運用テストに向けテストが効率的に実施できるように事前に収集します。一般ユーザーについては、本番稼働に向けて事前に教育を実施します。
システム設定の教育
システム運用者に対し、システム設定の教育を行います。
- パラメーター設定
- ユーザー登録
- 権限設定
- メニュー設定
- システム運用設定(スケジューラー設定等) 等
ユーザー教育の具体的な手順
教育は、下記の手順で実施します。
【図3】教育の具体的な手順
ユーザー教育におけるポイント
ユーザーのスキルに応じた教育プログラムの準備
基幹システムのユーザーは、初心者から上級者までいます。初心者から上級者まで、理解度や役割に応じた教育プログラム設計が重要です。特に、基幹システムはサブシステムごとに使用するユーザー部門が異なるため、そうした点も考慮して教育することが必要です。
余裕をもった教育の実施
教育の実施タイミングも重要です。教育が本番移行の直前となると思わぬトラブル等により、スケジュールが変更されることもあります。ユーザー部門の業務負荷等を考慮したうえで、余裕を持って適切なタイミングで実施することが重要です。
ユーザーサポート体制の確立
教育に関するQ&Aなどのサポート体制を確立することが重要です。前述のように、基幹システムのユーザーは、様々なスキルレベルの方々がいます。したがって、ユーザーの質問などに対し、迅速かつ丁寧に答えられる専任のサポート窓口やヘルプデスクを設置します。また、研修後のシステム利用状況や、ユーザーからのフィードバックを収集し、システムが想定通りに利用されているかを確認することも重要です。
運用テストとは
運用テストは、導入予定のシステムがユーザーの業務要件や期待に合致しているかを確認する最終段階のテストです。
【図4】運用テストの位置付け
ERPの標準機能は、システム要件定義フェーズやユーザー教育の中で確認できますが、ユーザー部門によるアドオン機能の確認は主に運用テストの段階になります。ユーザー部門は、運用テストで標準機能とアドオン機能を十分検証し、業務運用に耐えられるか検証することが重要です。
※アドオン機能は、システムテストにユーザー部門も参加し、事前に確認しておくことを推奨します。
運用テストの内容
業務シナリオに基づくテスト実施
実際の業務フローに準じたシナリオで新システムの操作検証を実施します。
機能・画面の操作確認
ユーザーが日常的に使用する機能や画面の動作を確認します。
データの整合性チェック
入力・出力データの正確性や一貫性を確認します。
エラー・例外処理の検証
想定されるエラー発生時の挙動やメッセージを確認します。
ユーザーからのフィードバック収集
操作性や業務適合性に関する意見や要望を収集します。
運用テストの具体的な手順
運用テストは、下記の手順で実施します。
【図5】運用テストにおける主な手順
運用テストにおけるポイント
適切なテスト参加者の選定
運用テストでは、システムの機能ごとにテスト参加者を適切に選定することが重要です。
参加者としては、ユーザー部門と一般ユーザーを入れて行う場合と、ユーザー部門を中心に行う場合があります。経費管理サブシステムのように多くの一般ユーザーが利用する場合には、一般ユーザーも対象とすることもあります。また、受注確定から生産指示といったように一連のフローに複数部門が係わる場合、それぞれのユーザー部門が参加し、連携して運用テストを行うことも必要です。
一気通貫での検証
運用テストは、受注確定から生産指示といったように一気通貫で検証を行うことも重要です。
例えば、販売部門の受注登録から生産部門の引当処理、生産指示処理などを一連でテストします。
テストシナリオの作成にあたっては、業務の一連の流れ応じた形でシナリオを作成し、運用テストで業務の成立性を検証していきます。例えば、受注登録→在庫引当処理→出荷指示→出荷といった流れを、ビジネスパターン(商品や顧客による流れや条件の違いなどによるパターン)に応じたシナリオとテストデータを用意し、検証します。
まとめ
今回は、「クラウド時代!ユーザー主導のERP導入とは」として、基幹システム刷新における業務運用整備フェーズの秘訣(後編)をご紹介しました。今後の基幹システム刷新は、情報システム部門やベンダーへ丸投げはできません。ユーザー部門が主導して、ERPを Fit to Standardで導入していくことが成功の秘訣といえます。詳細な Fit to Standard でのERP導入のポイントについては、是非レイヤーズ・コンサルティングにお問い合わせください。


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この記事の執筆者
-
村井 泰三経営管理事業部
バイスマネージングディレクター -
山本 晶代経営管理事業部
ディレクター -
飯田 稜大経営管理事業部
シニアマネージャー
職種別ソリューション





