MDM(マスターデータマネジメント)

MDMとは

MDMとは、マスターデータを管理する方法論またはそれを実現するためのソフトウェアのことです。マスターデータとは、組織、勘定科目、商品など、企業の業務システムにおいて基本となるデータのことを指します。
マスターデータは複数のシステム間で整合していなかったり、重複していたりする場合があります。MDMでは、それらマスターをシステム横断での整合性を確保しつつ、統合的に管理します。

MDMが求められる背景

マスターデータは、複数の業務システムで使用されており、それぞれのシステムで頻繁に追加や変更が行われます。それらの整合性が取れていない場合、意思決定に必要な分析ができない、業務においてシステム間の連携が取れずトレーサビリティを担保できない、などの問題が生じる可能性があります。そのような状態を解消するために、MDMの構築が必要になります。
 
例えば、ERPでは、企業の生産、販売、購買、会計、原価、人事給与、等々の基幹業務の領域をカバーしていますが、マスターはERPの中で唯一無二に管理されているために、ERP導入により少なくともそのカバー範囲においてはマスターデータが統合された状態が担保されることが大きなメリットになります。業務横串でのデータ活用、意思決定のための分析、などマスター不整合や更新時差による問題は発生しません。ところが、フロントのSoE系システムはERPとは別のソリューションであったり、企業グループ内で異なるERPが散在していたり、サプライチェーンにおける取引先まで含めたリアルタイムな連携が必要だったり、ERPのマスターが統合マスターにならない現実があり、SAPやOracleからもMDMソリューションは提供されています。
 
企業内・企業間のサプライチェーンにおける全体最適を意図するデータ連携、データ活用が、コロナ禍で一層重要性が増しており、MDMは今や企業内だけでなく、企業をまたがるデータ活用の重要なテーマの一つと考えるべきでしょう。

MDMのモデル

MDMのモデルにはガートナーが提唱する4つのモデルがあります。

 

  • 集権型 コントロールのレベルが高く、トップダウンの環境(ERPなど)
    全社の共通マスターとして、各システムが利用するマスターを一極集中化する統合モデルを目指す。マスターが保有する項目数が多く、項目の中には業務要件との整合性の要請もあり、マスターの構築だけでなく、維持・管理に業務スキルを保有する専任組織化が必要。
     
  • 集約型 BI、DWH内のレポーティングやアナリティクスに最適(データ活用指向)
    各システムのマスターを集約、ミラーリングするマスターを構築するモデル。各システムから情報を集約するため、冗長的で重複する情報を許容する傾向がある。
     
  • 共存型 大規模な分散モデル(SOA(Service Oriented Architecture)指向)
    上記集約型のマスターを、グループ会社や様々なシステムに正味必要となる情報を配信し、分散利用するモデル。マスターの連携基盤構築が必要になる。
     
  • レジストリ型 コントロールのレベルが低く、自律的な環境
    マスターの読替え用台帳(読替えキーの対応表)を管理し、それぞれのシステムでコードを読替える。モデルの中では最も原始的なレベルであり、多くのシステムがこの方式を採用している。

 

集権型は難易度が高く、ERPパッケージのケースを除くと事例は希少となります。BIやDWHのデータ蓄積・分析が注目された時期に集約型が志向され、SOAによる全社システム連携基盤に注目が集まった時期に共存型を志向するようになりました。社内外のビッグデータ活用、更にはデータレイクのような最近のIT技術動向を踏まえ、モデルの選択が重要になってきます。何れのモデルが優れているかという論点よりも、データ特性やデータ活用の目的に合わせ、4つのモデルを複合的に選択するアプローチが現実的ではないでしょうか。

MDM導入の流れ

MDMはそれ自体には価値がなく、システム横断でのデータ連携やデータ活用を行う為の手段として用いられます。MDMの構築自体を目的として推進すると、システム間のデータマッピング、データ項目の属性整理、業務特性の識別など膨大且つ手間のかかる作業が必要であるため、途中で挫折したり、停滞したりしてしまう事例が多く発生しました。
 
MDMの目的は、システム横断でのデータ連携やデータ活用を行うための手段として位置付けることが大原則です。先ず、MDMの目的を基本構想の段階で明確にし、次にロードマップを策定(導入のステップ、優先順位付け)することが必要になります。そして、重要なことはクイックウィンを積み重ねながら、成功体験からのノウハウをインプットし、当初の目的を達成するための手段をローリング(見直し)しつつ、各社、各システムにあったモデルを段階的に構築し、粘り強く成長させていくことです。

MDMの今後

ITやシステムの高度化・複雑化は今後も拡大していき、より一層の蓄積したデータの有効活用は重要視されていきます。しかし、DXにおいて、マシンラーニング・AIを駆使して、ビジネス利用を図るためのビッグデータ・データレイク上の膨大なデータは、マスター管理が行われていないと理解できないデータの羅列になってしまいます。そこで、データを有効活用するために、先ずはデータを構成要素(エンティティ)に分解し、それぞれのエンティティに属性を定義する必要があります。例えば、コードであれば冗長化するのか、或いは参照先マスターを定義付けするのか等の、データ発生時点からの管理方法の改善に取り組んでいくことが、今まで以上に重要になってきます。データ活用において、MDMが求められるようになって数十年ですが、まだまだMDMは進化が求められ、時代にあったソリューションとして期待されるところです。

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