2023/05/08

サステナビリティの意味や活動のメリットとは?企業の取り組みを紹介

#経営管理
環境、人権、貧困、教育…。今、私たちは人類の営みを絶やさないために、リスクを内包する社会課題の解決に向け、社会を構成するあらゆるステークホルダーが共存・持続していくための取り組みが求められています。そして、それらを大きく包括するのが、持続可能性を意味するサステナビリティという概念です。では、サステナビリティは国連が提唱し、日本に定着したSDGsと何が違うのか。サステナビリティが重要視される背景や取り組むメリットについて解説します。

1.サステナビリティとは

サステナビリティ(Sustainability)とは、「持続可能性」を意味する幅広い概念です。企業と社会の関係性に変化が生まれた中、環境・社会・経済の持続可能性に配慮した企業・事業活動を行うことが、企業や手がける事業の持続可能性を担保するという考え方です。

 

このサステナビリティは1987年、「環境と開発に関する世界委員会」の報告書で初めて用いられ、1992年の「地球サミット」で重要視されたことをきっかけに、広がり始めました。しかしながら、近年はSDGsやCSR、気候変動など取り巻く用語が増えてきており、欧米では「アルファベットスープ」と揶揄されることもあります。

 

サステナビリティは非常に幅広い概念ですが、「持続的」の主体によって意味合いが変わってきます。人間を含めたすべての生き物は地球が存続しないと生きていけません。つまり地球の存続、地球環境の維持・保全が概念の一丁目一番地となります。

 

その上で、人間は生きていくために、食事をしなければいけません。それを現代社会に置き換えると、ご飯を食べるためにはお金が必要で、それを稼ぐためには健康で、教育を受け、仕事をして高い報酬を得ることと言い換えられます。つまり、生きとし生けるものがあらゆる活動を持続的に営むために必要なことと定義できます。

 

これらの解釈を基に当社としては、企業が持続的に存続していくための視点が大切だと考えます。企業存続とは、利益が出て従業員に給与を支払うサイクルが続いていくことです。そして、多くの企業が存続するためには一定のルールが必要です。ルールがなければ、特定の企業が利益を独占してしまい、不公平でいびつな構造になってしまいます。正当な競争により、倒産する企業が出てしまうこともあるでしょうが、健全な社会情勢の下、できるだけ多くの企業が多くの従業員を抱えて持続していく観点が企業目線のサステナビリティだと考えます。

2.サステナビリティとSDGs、ESGの関係性

SDGsは、「Sustainable Development Goals」の頭文字を取った略称で、「持続可能な開発目標」と訳されます。国連が、2030年までに持続可能で多様な社会を実現するための17の目標と169のターゲットを設定しました。企業や投資家だけでなく、国や自治体、国際機関、NGO等のあらゆるステークホルダーに対して関与を促しており、「国・企業・一般市民目線」の基準と言えます。目標とターゲットのアジェンダを分類すると、「全ての人が」「自分らしく」「良く生きる」「世代を超えて」の4つのキーワードに集約できます。

 

一方のESGは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字を取った略称で、2006年に国連が提唱した責任投資原則(PRI)を契機に生まれた用語です。今では企業が長期的に成長していくため、ESGの観点から事業機会やリスクを把握し、ESGに積極的に取り組んでいくことが重要だと考えられるようになっています。企業の収益創出を評価するベンチマークであり、「企業・投資家目線」の基準となります。昨今、投資家の間でESGを注視して投資するトレンドが加速しており、企業はその対応を求められています。

 

そして、サステナビリティは「国・企業・一般市民目線」のSDGs、「企業・投資家目線」のESGなどの考え方を包括したより大きな概念という位置づけとなります。

3.サステナビリティとCSRの違い

CSRとは、「Corporate Social Responsibility」の頭文字をとった略称で、「企業の社会的責任」と訳されます。CSRは2003年ごろから広がり始め、利益を上げた企業が財務余力を使い、社会貢献をする色合いが濃い企業活動です。ある意味、その活動はコストとして見なされていた面も否定できません。例えば、環境保全の一環として、森に植栽をしたり、文化・芸術の普及の観点からコンサートホールを整備したりするなどがCSRにあたります。

 

それに対して、サステナビリティは企業の取り組み自体が企業の存続に関わり、取り組むからこそ利益向上につながるという考え方です。CSRは経営に直接的な影響は少ないですが、サステナビリティは経営判断が求められる「経営の中枢」であり、企業の生き残りと成長に大きく影響を及ぼします。

4.サステナビリティが重要視される背景

機関投資家がESGに注目する風潮が強まり、特にE(環境)やS(社会)の視点を重視して企業を評価し、格付けする傾向にあります。現状、欧米企業を中心にEやSの領域での積極的な開示が進んでいます。

 

遡って振り返れば、地球環境については1980年代からCO2排出が悪影響を及ぼすことが指摘されていました。そして、特に最近、世界各地で山火事や長雨による洪水など地球温暖化が原因と考えられる災害が頻繁に起きています。それに危機感を覚えた欧米の機関投資家を中心に、サステナビリティの観点を重視して企業を評価する潮流が生まれました。

 

一方、投資家から評価を受ける企業もサステナビリティを意識する流れはできつつあります。例えば、工場で製品を製造する過程で多くのCO2を排出すれば、いずれ地球環境に影響を及ぼして存続できなくなる可能性を予見できます。つまり、投資家だけでなく、当事者側もいよいよ“待ったなし”の状況だと、危機感を持つ市井の人々が増えたこともサステナビリティが推進される一つの背景です。

 

もう一つにサステナビリティに関する非財務情報の注目度の高まりが挙げられます。これまで企業価値を評価する基準は貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書などの財務諸表が基準でしたが、現在では企業価値はサステナビリティに関連する非財務の指標を反映させなければ、真の企業価値は見極められないと考えられ始めています。

 

非財務情報とは、従業員らに関わる人的資本の指標や企業ノウハウなどの知的資本、取引先との関係性などの社会関係資本などがあります。財務的な数字には表れず、目に見えない資本でもあり、企業がこれまで詳細に収集していなかったこともあり、サステナビリティに取り組むことで自社の非財務情報を正確に把握できる副産物的な効果もあります。

5.サステナブル経営のメリット

最大のメリットは企業価値の向上です。前述しましたが、サステナブル経営を推進し、機関投資家から評価されれば、上場企業であれば株価上昇につながります。また、社会的課題、環境への配慮と経済活動を両立させることで、企業ブランドも向上していきます。

 

優秀な人財の確保にも寄与します。特にZ世代と呼ばれる大学生はサステナビリティへの関心が高く、サステナブル経営に取り組めば、就職先の候補に選ばれるでしょう。逆に言えば、サステナビリティに関心のない企業は優秀な人財を獲得できず、中長期的な観点で持続可能な経営に黄色信号が灯りかねません。つまり、サステナブル経営に取り組むメリットよりも、取り組まないデメリットの方が大きいと言えます。

6.サステナブル経営の目標設定

財務資本ではROEなどの経営指標に対して、そのプロセスの中で達成度合いを計測していくKPI管理の重要性は従来から叫ばれています。それに準ずる形で非財務資本であるサステナビリティに関する取り組みもKPIを設定して目標達成をするのが代表的な手法となります。例えば、最近の社会的要請でもある女性管理職の比率の向上であれば、目標達成に向けてプロセスを逆算し、下流まで落とし込んだ上で詳細に目標を設定します。CO2排出量の削減であれば、原材料の変更や工場の仕組みの変更、社員の通勤方法の見直しなど、実効性のある施策まで分解し、一つずつ達成していけば、削減目標を達成できるでしょう。

 

全社的にサステナビリティを推進する取り組みとしては、国連グローバル・コンパクトなどが策定したSDG Compass(SDGsの企業行動指針)などのフレームワークを活用し、全社的な取り組みを再構築する手法があります。一方で、サステナビリティの領域は非常に広く、各テーマに対する理解や価値観にも個人差があり、一朝一夕に実現することはできません。多くの企業が目標設定に苦心しており、目標設定の手法やスキーム構築についても、まだまだ検討の余地があるので、今後、一層ブラッシュアップされていく見通しです。

7.サステナビリティの計測指標

ESGの色合いが強くなりますが、2023年度から有価証券報告書にサステナビリティに関する非財務情報の記載が必要となります。そして、将来的にはBS(貸借対照表)やPL(損益計算書)と同じく、詳細に表現されることが理想です。現状の大きな課題は企業グループ内で統一した仕組み作りと社内環境の整備です。グループ全体での情報開示について、責任の所在を明らかにするとともに、開示資料を作成するためのスキームとプロセスを策定することが多くの企業の共通課題となっています。

 

指標を計測する手法としては、近年増加しているESGレーティングが挙げられます。MSCI、FTSEなどが代表例です。それらのスコア算出方法は、ホームページやレポートで開示している非財務情報を一つ一つ調査したり、企業にサステナビリティに関する取り組みについてインタビューやアンケートを行い、格付けを行っていきます。そのスコアが高ければ高いほど、サステナビリティ経営に取り組んでいることが裏付けられます。つまり、企業がサステナビリティに関する情報を開示していなければ、スコアが算出されないため、企業は間接的にサステナビリティに伴う非財務情報の開示を迫られているとも言えます。

8.サステナビリティの取り組み事例(4例)

パタゴニア:漁猟網を衣類に再利用

使用済みの漁猟網を再利用したダウンジャケットや帽子を販売しています。プラスチックが原材料の漁猟網を100%リサイクルした素材を使用することで、海への流出を884トン以上防ぐ効果がありました。

ファーストリテイリング:GHG排出量の少ない素材へ転換

温室効果ガス(GHG)排出量の少ない素材の利用割合を30年度までに50%に増やす目標を掲げています。22年9月には、イギリスの店舗で「リ・ユニクロスタジオ」を設置し、リペア(補修)やリメイク(お直し)サービスを開始し、国内でも同10月に期間限定でサービスを実施しました。

ユーグレナ: 「最高未来責任者(CFO)」設置

19年から「最高未来責任者(CFO)」を設置しています。 企業として、未来を持続可能な形に変えていくため、未来を生きる当事者世代が経営に参加していくべきという理念の下、CFOを創設しました。

企業内保育所

企業内保育所は21年3月時点で全国3,869カ所設置され、年々増加傾向にあります。保育所・託児所不足問題への対応をはじめ、女性従業員の出産・育児による離職防止や育休からの職場復帰の支援等が主な目的です。今後、従業員の働きやすさや子育て女性の社会参加促進の観点からも導入企業の増加が見込まれます。

9.まとめ

サステナビリティは非常に広範にわたる領域です。そのため、まずは企業各々の経営理念、さらには業種・業態に応じしっかりと深掘りした上で、その企業に見合ったテーマ設定や取り組みの絞り込みが重要となります。さらに現在、環境(E)と社会(S)のテーマを中心に機関投資家から非財務資本の情報公開の圧力も高まっており、特に上場企業は公開情報の収集や開示資料の作成のスキーム構築へ残された時間は多くありません。サステナビリティを重視する社会的トレンドが加速していく中、取り組むメリット以上に、取り組まないデメリットの方が大きいのは自明でしょう。サステナビリティ分野への出遅れ感の否めない日本企業も覚悟を持って、真正面から真摯に向き合わなければいけません。

この記事の執筆者

徳永 大
徳永 大
株式会社レイヤーズ・コンサルティング
経営管理事業部
マネージャー