2023/05/08

SDGsでビジネスチャンス!?取り組みにおける成功のポイントとは

#経営管理
SDGsが誕生して早8年。その間、日本では誰一人として取り残さない持続可能な社会の在り方を模索するSDGsの考え方が浸透し、多くのSDGs関連ビジネスが緒に就いています。ただ、社会を構成する一企業としてSDGsへの着手はマストとなった一方、いまだに企業の本業や理念にSDGsを紐づけた新規ビジネスの創出に苦心する企業が一定数存在することも事実です。この記事ではSDGsをビジネスに組み込むべき理由やSDGsビジネスの成功ポイントについて解説します。

1.SDGsとは

SDGsとは、「Sustainable Development Goals」の頭文字を取った略称で、「持続可能な開発目標」と訳されます。2015年開催の「国連持続可能な開発サミット」において、全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に盛り込まれた国際目標です。2030年までに多様性と包摂性のある持続可能な社会を実現するための17の目標と169のターゲットで構成され、ターゲットの達成状況を測る201の指標を設定しています。
 
2030アジェンダを紐解けば、「全ての人が(no one will be left behind)」「自分らしく(freedom)」「良く生きる(well-being)」「世代を超えて(present and future generation)」の4つのキーワードに集約できます。SDGsの根幹には、先進国、発展途上国を問わず、全ての国を対象に誰一人として取り残さない世界を目指す姿勢があります。

2.SDGsが企業に求められる経緯

SDGsは、2000年に国連サミットで採択されたMDGs(ミレニアム開発目標)の流れを受けて策定されました。MDGsでは、極度の貧困と飢餓の撲滅、環境の持続可能性の確保など2015年までに達成すべき8つの目標を掲げ、世界全体で取り組みました。その結果、極度の貧困で暮らす人々が19億人(1990年)から半数以下の8億3600万人(2015年)に減少し、途上国の初等教育就学率は80%(1990年)から91%(2015年)に上昇するなど一定の成果を上げました。しかし、国や地域、性別、年齢、経済状況などによる格差やその目標から取り残されてしまった人々の存在が明らかになったことで、誰一人として取り残さないSDGsが誕生したのです。

3.SDGsを組み込むべき理由やメリット

主に3つの理由が挙げられます。1つは新たなビジネス機会の獲得です。SDGsが掲げるターゲットを達成するためには、再生エネルギーへの転換や廃棄物の再利用、金融やIT分野の技術革新などが必要となります。SDGsを追求することに付随して新たな市場の創出が見込まれます。
 
2つ目は、企業のリスク低減・最小化です。SDGsが策定されて以降、気候変動対策や人権保護の様々な規範が生まれました。それらは企業の事業活動を縛るものではなく、SDGsに取り組むこと自体が企業ブランドの毀損やビジネス機会を喪失するリスクを低減させます。
 
最後はビジネスの土台形成です。企業活動は安定した社会基盤があってこそ成り立ちます。仮に著しく生態系が破壊されたり、紛争が多発する世界になれば、企業活動は大打撃を受けます。SDGs達成への取り組みを進めることで、企業活動を担保する安定した社会を築くことにつながります。また、社会課題に敏感な人材獲得にも寄与し、信用力や企業ブランドが高まるでしょう。機関投資家が重視するESG投資において高く格付けされれば、投資家からの評価も高まり、資金調達のハードルも下がります。

4.SDGsビジネスの成功ポイント

SDGsビジネスを成功させるためには、①SDGs経営の「構え」の構築、②「打ち手」で企業価値を向上、③ステークホルダーへの非財務情報開示 の3つのポイントがあります。

① SDGs経営の「構え」の構築

SDGsと理念の整合性の確保

SDGsへの取り組みのファーストステップは、“脳”である企業理念と“手足”である現場の整合性を取ることです。 “経営のど真ん中”である理念に社会価値やサステナビリティを据え直し、独自ターゲットを設定します。多くの日本企業の理念はSDGsと高い親和性を持ちます。その一方で経営層の中には利益優先で社会価値を理解していない方もいます。何も取り込まないことがリスクであることを丁寧に伝えつつ、SDGsと企業理念とを結び付けて言語化し、全社的にコミットメントすることが重要なプロセスとなります。

「潮流」をつくる仕掛けづくり

従業員の実感を端緒に自分事化し、行動に移せる環境を整備しなければなりません。例えば、イノベーションのアイデアを募る社内コンテストを行ったり、SDGsのゴールに対して自社の目標を宣言し、SNSからの盛り上げを仕掛ける企業もあります。中期的にサステナビリティ指標を設定するほか、従業員のモチベーションを上げるために、人事部門は評価・報酬制度の改定にも取り組む必要もあります。

推進部署を企業の中心に位置付け

SDGsを経営のど真ん中で実行するためには、中心的な部署が強力に推進しなければ成功の確率は上がりません。SDGsの担当者を経営企画の部署に配置する企業も増えてきています。機能しているケースが多いのは、先進的な欧州や国連に近い北米の役員をトップに据えている企業です。

② 「打ち手」で企業価値を向上

社会課題解決につながる製品開発・新規事業創出

E(環境)・S(社会)の領域での新製品・新規事業開発において、自社の技術やノウハウを活用する前提で、どのような社会課題を解決できるかという視点を取り入れます。例えば、SDGsに積極的に取り組む花王では、社会課題である水保全を実現した食器洗剤がヒットしました。食器洗いの負担を軽減と節水による環境負荷を減らそうと、「泡立ちのよさ」による高い洗浄力とすすぎ時の「泡切れのよさ」による節水を両立させた製品を開発し、大きな支持を受けました。

社会価値視点での事業ポートフォリオ評価

既存事業について、経済価値と社会価値視点の両面で評価し、ビジネスモデル変革や事業ポートフォリオの見直しを図ることも重要になります。経済価値が高くてもSDGsリスクが大きい事業はビジネスモデルを変革する対応を行い、持続可能な事業にシフトすることで、中長期的な企業価値の向上につながります。

③ ステークホルダーへの非財務情報開示

SDGsの取り組みを非財務情報として、どのようにステークホルダーへ開示するかも重要なポイントとなります。ESG投資関連では、2023年から有価証券報告書に、サステナビリティに関する情報開示が追加されました。機関投資家への非財務情報の開示は進みつつありますが、顧客や従業員らに対してどのように開示し、コミュニケーションを図っていくのかステークホルダー別に検討する必要があります。
 
例えば、顧客に対しては、社会課題を解決する新しい製品やサービスを遡及するマーケティングやSDGsに対する取り組みを積極的に開示することでブランドイメージ向上が見込めます。従業員に対しても、自社の取り組みをアピールすることでエンゲージメントを高め、社会課題に関心の高いZ世代の優秀な人財獲得にもつながるでしょう。ESGとは異なり、SDGsは取り組みの開示基準がなく、うまくアピールできれば一層の企業価値が高まります。

5.SDGsビジネス事例

コマツ

大手建設機械のコマツは建設機械の生産技術のノウハウを生かして開発した対人地雷除去機を活用した地雷除去プロジェクトに取り組んでいます。地雷や不発弾に苦しむカンボジアやラオス、アンゴラなどで機械の提供だけにとどまらず、非営利活動法人とパートナーを組み、除去作業を支援し、復興に寄与しています。

レイヤーズ・コンサルティング

当社のドローン事業では、広島県のカキの養殖場で水中ドローンを活用し、カキの育成度合いを測定しています。従来は船舶で測定していたため、CO2削減に寄与し、海も汚しません。この取り組みはSDGsの『海の豊かさを守ろう』という14番目のゴールに該当します。

6.まとめ/ストーリーを説明できるテーマ選定を

SDGsビジネスのテーマ選定では、縦軸に企業が持つノウハウや技術、横軸にSDGsのゴールを並べ、親和性が高いテーマを分析するのが有効です。その結果を基に、その企業が有するビジネスノウハウを使い、社会課題を解決していくストーリーを説明できるテーマに注力することが成功の近道となります。“無駄”を“無駄”にしない視点も大切ですし、欲張らず、地に足をつけて自分たちができることに取り組むことも肝要です。社会を形成するあらゆるステークホルダーが社会課題に対して関心が高い今、企業がSDGsに取り組むのは当たり前と言えるフェーズに入っています。

この記事の執筆者

徳永 大
徳永 大
株式会社レイヤーズ・コンサルティング
経営管理事業部
マネージャー