2023/02/21

製造業のSDGs、ESGとは?必要性と取り組み状況を解説

#経営管理
SDGs、ESG、サステナビリティ(持続可能性)…。
近年さまざまな言葉が生まれ、人々の日常生活にも溶け込みつつあります。これらの概念に共通するのは、社会という大きな共同体を構成するステークホルダーに対し、個々の利益を追求するだけでなく、並行して社会課題への取り組みを促していることです。経済的価値だけにとどまらず、地球環境や人権などの社会課題を解決することにより、企業の社会的価値を向上させることが重視されています。
 
製造業にフォーカスすれば、最も求められているのが気候変動への取り組みでしょう。
この記事では、SDGsに取り組むべき理由と、特に製造業に情報開示が求められているSCOPE3の温室効果ガスサプライチェーン排出量などについて解説します。

1.ESGとSDGsとの違い

SDGsは「Sustainable Development Goals」の頭文字を取った略称で、「持続可能な開発目標」と訳されます。国連が、2030年までに持続可能で多様な社会を実現するための17の目標と169のターゲットを設定しました。企業や投資家だけでなく、国や自治体、国際機関、NGO等のあらゆるステークホルダーが関わりを促しています。『一般市民目線』の基準と言えるでしょう。
 
一方ESGは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字を取った略称です。2006年に国連が提唱した責任投資原則(PRI)を契機に生まれました。現在は企業が長期的に成長していくため、ESGの観点から事業機会やリスクを把握し、ESGに積極的に取り組んでいくことが重要だと考えられていることから、企業の収益創出を評価する『投資家目線』の基準と言えます。
 
企業視点に立てば、SDGsは消費者向け、ESGは投資家向けの概念と言えます。今後、環境に配慮していない製品は売れない流れになると予測される中、将来への投資という意味でも取り組まなければならない喫緊の企業課題です。

2.SDGsに取り組むべき3つの理由

SDGsの視点を経営に取り込むことによって、ビジネス機会を創出できるとともに、道徳的な企業倫理やコンプライアンス視点でのリスクを軽減できます。
 
1つ目の理由であるビジネス機会の創出は、再生可能エネルギーや省エネによる製品・サービスの付加価値が向上し、高価格化が望めます。また、廃棄物の再利用やプラスチック代替製品を活用することで市場も拡大します。社会課題の解決を起点に、新規事業や新たな製品・サービスも生まれるでしょう。
 
2つ目の理由がリスク最少化です。仮にサプライチェーン内で人権問題が発生すれば、企業イメージの低下や不買運動は免れませんし、環境に配慮した認証義務化等によってビジネス機会を喪失するリスクもあります。SDGsに取り組むことは、結果としてこれらのリスクを低減することにつながります。
 
3つ目の理由が、経済活動の土台形成です。社会課題に敏感なミレニアル世代やZ世代など、新たな人財確保や取引先からの信頼獲得、従業員のエンゲージメントやモチベーションの向上にも寄与します。さらに投資家の評価も上がれば、資金調達コストも下がるでしょう。
 
また、『カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)』の格付けなどが機関投資家を中心に活用されていますが、今後は投資家だけでなく、取引先などから一定以上の格付取得を求められるケースも多くなっています。環境や人権などへの配慮はただの社会貢献ではなく、ビジネスを継続するための必須条件となっています。

3.製造業に求められる温室効果ガス排出量の削減

温室効果ガス排出量(GHG)に関しては、事業者自らの排出だけでなく、事業活動に関係するあらゆる排出を合計したサプライチェーン全体での測定・削減が求められています。
 
サプライチェーン排出量といって、サプライチェーン排出量=SCOPE1排出量+SCOPE2排出量+SOPE3排出量という3つのカテゴリーに分けられています。SCOPE1は事業者自らが化石燃料や天然ガス等で排出するGHG排出量、SCOPE2は他社から供給された電力や熱などの使用に伴い排出するGHG排出量です。日本の省エネ法等ではSCOPE1とSCOPE2の管理が企業に義務付けられていました。
 
これら2つに対して、SCOPE3はSCOPE1とSCOPE2を除いたサプライチェーンからのGHG排出量です。SCOPE3は15のカテゴリーに分類され、自社を起点に『上流』が8カテゴリー、『下流』が7カテゴリーで構成されています。主なカテゴリーは、『上流』でいえば原材料、輸送・配送、従業員の通勤などが挙げられます。『下流』には、製品の加工、製品の使用、フランチャイズなどがあります。それらすべてのGHG排出量を測定するには多くのステークホルダーとの連携が必須となり、多大な工数の前に、及び腰になる企業も少なくないのが実情です。
 
現状では、比較的簡易な算出方法で大まかな排出量を算出している企業が多数派です。削減策の検討に向けて、まずサプライチェーン全体での排出量を把握することが必要な為、現時点では有効な方法と考えられます。しかし、将来的にはより正確な排出量の測定が求められると考えられています。また、削減策の実施効果を測定するため、継続的に削減量を把握し、具体的な削減量を測定するためには、より厳密な方法で排出量を算出・集計する必要があります。したがって、サプライチェーン全体で測定するプラットフォームの構築が必要になります。取引先など各ステークホルダーの理解も欠かせません。多くのステークホルダーとの合意形成を図る上で、事前に策定する戦略的なロードマップの設計が肝要です。

4.まとめ

現代社会において、企業には経済的価値と社会的価値の同時実現が求められています。その実現のためには、SDGs、ESGを基軸としたサステナビリティ経営を推進していくことが一番の近道になります。サステナビリティ経営への本格的な取り組みを推進することが、企業の長期的かつ持続的な成長につながっていくのです。

この記事の執筆者

山本 晶代
山本 晶代
株式会社レイヤーズ・コンサルティング
経営管理事業部
ディレクター