2024/12/19NEW
アフターサービスが成長のエンジン! 製造業のビジネスモデル変革
本記事では、アフターサービスの位置づけ、現状課題とその解決策、さらに成功事例を通じて、製造業におけるアフターサービスの目指すべき姿について解説します。
アフターサービスの製造業における重要性
アフターサービスとは、製品を購入した顧客に対して、販売後に提供される一連のサポートやサービスを指します。
アフターサービスは、企業と顧客との長期的な関係構築において欠かせないものであり、企業・製品に対する信頼性向上やブランド価値強化にも直結します。そのため、高品質なアフターサービスを提供することによって、顧客満足度を高め、リピート購入や新規顧客の獲得につなげることができます。製品そのものの品質や性能だけでなく、購入後のサポート体制の構築が企業の競争力を左右する重要な要素となっています。
【図1】アフターサービスの重要性
グローバルで厳しい競争に晒されている製造業において収益拡大に向け、製品を製造して販売する「モノ売り」から、サービスを提供することによって生まれる価値を売っていく「コト売り」に活路を見出している製造業も少なくありません。
アフターサービスの主な業務
アフターサービスは販売した製品がその機能(付加価値)を維持できるよう、消耗品の交換や顧客からの製品不具合に関する問い合わせを踏まえ、当該製品を適切に使用できるようにすることが主な業務になります。
① 受付:顧客から販売した製品に関する不具合・問い合わせ情報がもたらされる。この段階で可能な限り事象を見極め、一次切り分けを実施したうえで適切な担当者に引き継がなければならない。
② 部品選定・見積もり:製品の復旧に必要な作業・部品を検討し、見積もりを作成・提示する。見積もりについて顧客と合意した場合は、当該作業・部品購買に関する指示書を作成する。
③ 在庫引当・部品手配:当案件作業に必要な部品について引当処理を行い、予約する。在庫に必要な部品がない場合は発注処理を実施する。
④ 日程計画:当案件作業の対応日を、サービスエンジニアのスケジュール、作業に必要な治工具、顧客希望を踏まえ、調整を行う。サービスエンジニア・治工具については当案件作業場で必要な条件を基に選定する。
⑤ 作業実施:当案件に対する修理作業を行う。修理作業は、出張作業、引取修理、遠隔修理等が存在する。製品の復旧を確認したうえで、顧客から検収を受領する。当案件に関する実施内容について作業報告書にまとめる。
⑥ 売上請求:顧客に対し、当案件に関する費用の請求を実施する。請求内容に対し入金を管理する。
このような交換・修理対応サービスに加え、点検サービス、予防保全サービス、追加改造サービス、移転サービス等も実施します。
【図2】アフターサービス業務の全体像
アフターサービスの実態と今日的課題
製造業におけるアフターサービスは、会社の中で長らく傍流として扱われてきました。
ところが、経営環境が厳しくなる中で、売り切りビジネスではなく、ユーザーの利用に付加価値を見出し数少ない収益拡大事業と捉えられ、急に注目を浴びることになりました。そのため、経営から事業拡大を求められつつも、業務・組織・システムインフラ等が整っていないケースが多く見受けられます。
会社の中におけるアフターサービス部門の位置づけを見直すとともに、必要な投資を行うことが収益力向上の必要条件となります。
【図3】アフターサービスの位置づけの変遷
アフターサービスにおける課題例
- 業務の属人化:製品ごとの専門的な知識とスキルが必要な一方、こういった知見が体系的にまとまっていないケースが多く、作業が属人化している。そのため、社員の退職等により、技術継承が追いついていない状況。
- サプライチェーンの複雑化:グローバルでの製品製造・販売が前提となり、アフターサービスにおいても部品供給・在庫管理、作業員手配等をグローバルに対応する必要がある。復旧までのリードタイム長期化や在庫過多などの問題が生じ、顧客満足度の低下につながる。
- 事後対応から事前予防強化:不具合発生後からの迅速な対応よりも、点検の充実や予防保全等の実施によって、製品の不具合を未然に防止することがより求められている。加えてIoT技術の発達により、製品の使用状況をリアルタイムに把握することが可能になり、ますます事前の防止が求められている。
こういった課題に対し、アフターサービス部門自身が主導して、自部門の強みを見極め、業務改革・DX等を推進していく必要があります。
アフターサービス業務見直しの成功事例紹介
当社クライアントにおいては、アフターサービス部門における収益力向上が課題になっていました。
当社支援の下、現状業務課題の洗い出しから変革テーマを抽出。
業務変革とDXを同時に進めることで、工数削減とL/T削減を実現し、顧客満足度向上に寄与しています。
【図4】アフターサービスの改革事例
まとめ
現代の製造業は、「作って・売って終わり」ではなく、販売後のアフターサービスまで含めた製品が生涯にわたって稼ぐ売上を最大化する必要があります。
加えて、売上だけではなく費用についても、製品企画・開発を含めた製品の生涯で発生する費用を管理し、トータルとしての利益を最大化しなければなりません。
【図5】製品ライフサイクル利益・コスト管理
アフターサービスは、製品ライフサイクル全体での利益に直結します。当初赤字だった製品が、アフターサービスでの収益によって黒字になったり、またその逆も発生しうるのです。
収益力向上のためには、製造業における新しい収益モデルを踏まえた製品プロセスに変更していく必要があります。アフターサービスでの収益を踏まえた売価設定や、アフターサービスでの修理や点検を意識した製品設計等、今までの製品プロセスの優先順位・業務を大きく変える必要があります。
このように、製造業においてアフターサービスを基軸とした収益モデルに転換していくためには、製造業としての在り方を変えていかなければいけません。
アフターサービス事業は新たな成長のエンジンになりうる可能性を秘めた、原石とも言えます。原石は磨き上げることによって、価値のある宝石になります。
同様にアフターサービス事業も現状維持ではなく抜本的な改革を行うことによって、自社の成長戦略を支えるコア事業に変貌していくことになります。