ERP導入をコアとした経営・国内外サプライチェーン改革

クライアントが抱えていた課題

当クライアントが抱えていた課題として、以下の点がありました。

【図1】当クライアントが抱えていた課題

《 データ上の課題 》

  • 売上見通し・原価・在庫が見えづらい
  • 上記データ間の相関ストーリーが見えない

 

《 プロセス上の課題 》

  • データ不足で顧客との事前・事後交渉の不全
    • 顧客由来のコスト増や需要変動、特急納品経緯の把握が不十分。
    • 例証を挙げた討議にならず、力関係勝負に。
  • 多種の類似製品の乱立
    • 顧客個々の要請に応じた製品づくりを繰り返した。
    • コスト・製造に係る競争力の下落リスク。
  • 生産計画の日々組み直しや、低利益案件の発生
    • 営業担当に操業度や実際原価の通知不全。
  • グループ統制に弱さ
    • 国内外拠点が独自に動き、パワーが分散。

レイヤーズのアプローチ

レイヤーズが行ったアプローチとしては、主に5点あります。
エンタープライズアーキテクチャーと、プロジェクトマネジメントを用いて説明します。

【図2】レイヤーズが行ったアプローチ

① ビジネス改革

  • 上記「課題」群は、ERP導入をもって自動的に解決するものではないと認識合意。
    ※例: ERPは在庫の可視化は可能。しかし、在庫を減らす指示・実行・モニタリングは人間の役割。
  • ERP導入後のKGIを定める一方で、上例でいう、「在庫を減らすプロセス・データセンスを持つ人間」を育成するために、各部門からプロジェクト専任者をアサイン。仮に製造出身メンバーであっても、営業から製造・会計までのプロセス全体の検討に関与。専任者が、経営改革マインドと横串のプロセス・データ知見を持つべく、プロジェクト活動を通じ育成。

② データ改革

  • 錯綜したデータの流れを、可能な限り一方通行化。
  • 「現在のシステム導入効果は、『インプットの効率化』ではなく、『アウトプットの高度化』である」という思想に基づき、経営判断ポイント・アクションを整理、そのためのマスタ/トランザクションの絞り込み、絞り込み結果に関係しないインプットの削除、と進めた。
  • この結果、「今の入力画面がいい」や「今はこういうデータを使っている(のにERPに入力できない)」という失敗要因を排除。
  • 同様に、システム稼働の2大阻害要因であるデータ移行の量を絞り込み。データ利用用途があるものだけを現行システムから移行。
  • また、時の経過に応じ、マスタの値と管理目的はずれてくる。管理目的に沿った値に見直すとともに、マスタ値の意味内容を入力者が感覚的に理解できるよう見直し、正確な値選択・入力を企図。

③ アプリケーション改革

  • ERPの機能にあわせるFit to standardの断行。単純に申せば、ERPはデータさえ入れれば動くもの。よって、ユーザーテストシナリオを要件定義段階で用い、引き合いから出荷・会計計上まで繰り返し実行。新業務イメージを専任者がつかみ、「なぜERP機能にFitできないのか」「どうすればFitするのか」「この機能を現行踏襲すると、後続業務の影響はどうなるか」を徹底討議。
  • ERP機能でFitしないか、機能が足りないものについては、個別ソリューションを採用し、アドオン開発は回避。現行システムを存続させる手もあるが、将来の人手不足・機能アップコストを鑑み、現行対応は最小化。
  • システム稼働のもう一方の阻害要因であるインタフェース開発量を削減。インタフェースの実数の削減と共に、ETLツールを用い、インタフェース個々の開発作業を効率化。

④ テクノロジー改革

  • 自社開発・オンプレ環境からの部分脱却。ERPと個別パッケージ部分はクラウド化。
  • クラウド化による拠点間トラフィック量増加を見積もり、ネットワークを増強。
  • 一方で、現行がセキュリティリスクの低いオフコン環境であったものをオープン化したため、あらためて機密性・可用性リスクを分析、リスク対処とリカバリ、オフライン業務手続きを設定。
  • コミュニケーション基盤の整備。ERPに代表される基幹システム領域の改革は上記のとおりだが、DTP/コミュニケーション基盤も並行して見直し。WEBミーティングやファイル共有、チャット等を統合基盤に移行。

⑤ プロジェクトマネジメント

  • PMBOKによる伝統的なプロジェクトマネジメントに加え、「プロアクティブマネジメント」と「プロジェクトマーケティング」を意識。
  • 担当役員とは毎月、社長とは隔月の報告機会を設け、「推進思想」「現況」「見通し」「外部の成功/失敗事例とポイント」「カネ・ヒト・時間の増援要請(の可能性)」を伝達。信頼関係構築のもとで、「バッドニュースファースト」を可能な限り実施することで、「プロアクティブマネジメント」を実現。
  • 担当役員・社長が、報告資料を利用して部長級以下に語りかけられるように意識。また、合宿や飲み会などを企画し、プロジェクトメンバーの慰労と結束を維持。「面白そうなことをやっている」や「私もまぜて」となるような情報伝達を「プロジェクトマーケティング」として意識。

成果と顧客満足

既出のとおり、新システムの稼働をもって「在庫減」などのKGI達成が即時・自動的に起きることはありえません。KGI達成は、新システムのアウトプットも用いながら、人が指示・実行していくものです。
このため、下記の成果には「実現したもの」と「実現に向けて検討中のもの」が混在している点をご理解ください。また、主要なものにつき記述しましたので、図中の記載と一部乖離がございます。
ご容赦ください。

 

① ビジネス改革

  • 売上見通しの管理。いつ、だれが、何の根拠で見通し、情報を更新したのか、信頼度に応じフォーキャスト管理。
  • 生産スケジュールの週次締め化。引き合い・受注変動の日々反映を停止。また、工場別の生産スケジュール立案を廃止し、企業グループワイドで統合スケジュール化。
  • 標準生産する製品と、顧客別オプションの切り分け。これまでは、顧客別オプションの単位で製品と定義していた。
  • 製品群別原価から製品別原価へ。標準原価を導入し、実際原価と目標原価と対比し、原低活動可能に。
  • 製品の販社在庫の削減。特に、月をまたいで為替リスクを背負うことの禁止。工場倉庫から客先へ直送することで、金流と物流を分離。外部倉庫を縮小。
  • 個別決算1営業日、連結決算5営業日化。
  • 間接部門人員の半減。
  • 営業部門・製造部門・管理部門の役割の明確化。営業部門は利益計画、製造部門は原価計画、管理部門は販管費計画に切り分け、製販の部門間受け渡しマージンも見直し。これまでは、製造部門が製品群別粗利の責任を負っていた。

② データ改革

  • 経営管理の観点から、マスタの標準化。拠点別に個別設定していたマスタの管理を統合。
  • データアクセスに係る部門の壁を撤廃。
  • トランザクションの管理単位を標準化。これは、シングルインスタンス化により自然と実現。

③ アプリケーション改革

  • ERP導入によるシンプルアーキテクチャー化。メンテナンスフリー化。
  • Fit to standardによる業務の標準化、整流化⇒人員の最適配置。

④ テクノロジー改革

  • オフコンレガシー環境からの脱却目途。

⑤ プロジェクトマネジメント

  • ほぼ無風のシステム稼働。実は、稼働を2度延期し、予定より1年後の稼働となったが、プロアクティブマネジメントにより、苦渋の決断ながら経営には稼働延期を混乱なく決断いただいた。
  • 昨今の「新システム稼働による出荷停止」事故の教訓を他山の石とし、「製造出荷物理検証」の実施。これは、システム操作というバーチャルな検証のみで「テストをした」と満足することなく、新システムのピッキングリストをもとに倉庫に行き、梱包指示をもとに梱包や出荷等の業務を実地・物理的に行うことで、「頭で理解しているが実際には動けなかった」という事態を回避。これにより、データ移行ミスの発見や、「困ったら誰に尋ねればよいか」などの実地訓練が「ほぼ無風稼働」につながった。

【図3】本プロジェクトの成果

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