データドリブン経営を推進する思考プロセス

現代はまさに先行きが見えない、変化が激しいVUCAの時代と言われています。そのなかで企業はデータを活用した意思決定を推進するデータドリブン経営への転換が求められています。
しかしながら多くの企業において「役に立つ」データ活用はまだまだできておらず、その効果は限定的と言えます。
今回はどういう考え方でデータと相対すればよいのか。その心構え・思考についてご紹介いたします。

データドリブン経営とは

データドリブン経営とは、カンコツ経験による意思決定ではなく、「データに基づいて意思決定を行い、業務上のアクションを起こす」ことです。「経営」という言葉がついているので勘違いされやすいですが、経営レベルの意思決定だけをいっているのではなく、現場レベルの意思決定も含まれます。
また、データはこれまでの構造化された一般的なデータ(文字列、日付、数値など)だけではなく、昨今では動画や音声、ファイルといった非構造化データも取り扱うようになってきました。
実際には各種AIやBI(ビジネスインテリジェンス)ツールを用いて、表やグラフでビジュアル化することによって意思決定を促進していくことになります。

データ活用の現状と阻害要因

では企業におけるデータ活用の現状はどうでしょうか。コロナ禍によって企業は望む望まないにかかわらず、リモートワークを余儀なくされました。従来の仕事のやり方が通用しなくなり、現場レベルでは一気にデジタルトランスフォーメーションが進みました。それによって多くのデータが生み出され始めています。
また、多くの企業でBIツールが導入され、分析環境も整いつつあります。

現場層やミドル層を中心にセルフBIによるデータ活用が進んでいる一方で、ビジネスに有効利用できているかというと、まだまだ成果が出ていないという状況ではないでしょうか。

この乖離こそがデータドリブンで解決されるべき大きな課題のひとつです。

ではなぜこのような課題が生まれているのでしょう。それは大きく
・目的の曖昧さ
・リソース不足
・サイロ化・風土・マインド
・データ三重苦
の4つに分類できると考えています。これらを解決しない限り本当の意味で役に立つデータ活用はできません。

【図1】データドリブン経営実現の阻害要因

データドリブン成功のポイント

ではどうすればその阻害要因に立ち向かうことができるのでしょうか。当社のこれまでの事例から次の4つが重要であると考えています。

①ゴール・戦略の明確化

データはとてつもないスピードで増えています。その爆発するビッグデータから無作為に抽出し何か示唆を得るといったことは困難を極めます。データドリブンであったとしても解決したい課題ドリブンであるべきです。目的やゴール、戦略を明確にし、その中で仮説を立案したうえでデータを活用する必要があります。

②意思決定プロセスの改革

変化に柔軟に対応するための一番単純なやり方は意思決定ポイントを増やすことです。意思決定が年4回しかない組織と50回ある組織と比べた場合、後者のほうがより変化に対応できる活動が可能になるのは明白です。
それを可能にするために、権限を現場に移譲していくことや、データの正確性を求めすぎないマインドチェンジも必要になります。

③全員参加によるデータ活用推進

全社員が自分自身で必要なデータを活用、ビジネス上の課題解決に活かすことができればかなり強いデータ組織に変革ができます。多くの企業でBIツールやデータ活用トレーニングが開始されていますが、まだまだトレーニング体系の一部に組み込まれているだけで即効性があるとは言えません。
一方でデータドリブン経営を実現している会社においては、入社後数か月間、徹底的にシステムやデータ活用のトレーニングを実施する企業も出てきています。
データドリブンへの変革を目指すのであれば、抜本的な変革が求められるかもしれません。

④データ整備・データマネジメント

データサイエンティストなど一部の上級エンジニアを除き、多くの一般社員にとってはデータを使いたい時に使える状態に整備されていることはデータドリブンを推進するうえで非常に重要なファクターです。
データカタログなどを利用してどんなデータが存在し、それがどんな意味なのか、どういうコード体系になっているかなど見える化することが活用を促進することに大きく寄与します。
ただし、気を付けなければデータの整備やマネジメントのレベルを上げれば上げるほど、活用開始に至るまでのスピードが遅くなります。意思決定ポイントを増やしたところでデータを使えなければ意味がありません。スピードと正確性はトレードオフになるため、そのバランスを常に見極めながらデータ整備を進めるべきでしょう。

データドリブンを推進する考え方

冒頭で述べた通りデータドリブン経営とは「データに基づいて意思決定を行い、業務上のアクションをおこすこと」です。意思決定をするためにデータドリブン経営に変革するとも言い換えることができるでしょう。
しかし多くの人は闇雲にデータを収集し、多大な時間をかけて分析をし、今までわからなかったことが何かわかるとそれで満足して終わってしまっています。まさに分析が目的となってしまっているわけです。これこそがデータの活用とビジネスへの成果との乖離の根本原因になっているのではないでしょうか。
ビジネスへの成果を上げるためには、どんな意思決定をすることが、課題解決に寄与するのかを明確にすることが重要です。意思決定とは複数のシナリオ・選択肢から最適なものを選び実行していくことです。現状分析だけでは満足せず、あるべき意思決定プロセスはなにか、その定義した各プロセスのどの場面でどんなデータが必要かを明確化すると、一気にビジネスの成果につなげることができるようになります。

【図2】データドリブン思考プロセス

事例:大手製造業生産コックピットによる現場改善

大手製造業では生産現場の数値をKPIとして定め、定期的にモニタリングを実施していました。ただし、KPIを見える化するだけではなかなか現場の効率化や改善にはつながらず、いわゆる「見るだけシステム」になってしまっていました。
そこで現場における課題を5W1Hに分解し、誰がいつどんなデータをみて何のために、どんな判断(意思決定)をしたいのかを明文化。さらにその意思決定をするためのプロセスまで落とし込むことで各プロセスで必要なデータを明確化しました。それにより、一気にデータ活用が推進し、現場でのプロセス改善に役立てることができるようになりました。
今ではこの考え方をワールドワイドに展開し、各生産拠点でデジタルマニュファクチュアリング推進の一環として取り組まれています。

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