過剰なPDCAが首を絞めていませんか?
~VUCA時代のシン・マネジメントとは~

どの企業でもPDCAマネジメントを実施していますが、本当に上手くいっているのでしょうか。
一説によれば、過剰なPDCAが日本企業の活力を削いでいるとも言われています。例えば、一橋大学の野中郁次郎名誉教授は、日本企業はオーバー・プランニング(過剰計画)、オーバー・アナリシス(過剰分析)、オーバー・コンプライアンス(過剰法令順守)の3大疾病に陥っていると指摘しています。即ち、PDCAマネジメントにおける表面的で過剰な数値至上主義や分析至上主義が日本企業を縮こまらせているのです。
 
今回は、こうしたPDCAマネジメントの功罪とそれに代わるマネジメント・フレームワーク(CAPDo Proactive Management)をご紹介します。

PDCAマネジメントのダークサイド

PDCAマネジメントとは、計画(Plan)→実行(Do)→分析(Check)→改善(Action)までの4つの活動を1つのサイクルとして繰り返し行うことで、継続的に改善活動を進めようとするものです。

【図1】PDCAサイクルとは何か

このPDCAマネジメントは、日本のどの企業においても当たり前のように行われています。当然計画もなにもなく、闇雲に実行していたのでは、闇夜に目隠しをして全力ダッシュをするようなものですから、PDCAマネジメントのそれぞれの活動は企業活動を行う上では不可欠なものと言えます。しかし、日本企業の企業価値があまり増大していないことから考えると、このPDCAマネジメントが上手くいっていないのではないでしょうか。
ここでは、PDCAマネジメントの問題点を3つ挙げさせていただきます。

経営計画や予算に労力と時間を掛け過ぎている

日本企業は、Plan(経営計画や予算など)の策定に余りにも大きな労力と時間を掛け過ぎています。経営計画や予算の策定に4か月以上も掛けている企業も珍しくありません。
更に問題がある点としては、大きな戦略的方向性の議論を十分にしないまま、表面的な数字の積上げとトップダウン目標の擦り合わせに、多くの労力と時間を掛けていることです。しかし、不透明な経営環境の中では、このような数値遊びのような擦り合わせを実施しても意味がありません。
本来経営計画においては、中長期的な観点から次年度の戦略的方向性を検討していくといったことが最も重要です。しかし、多くの企業では、戦略的方向性の検証を十分に行わないまま、詳細な数値目標や数値計画を表面的に作ることに終始しています。これでは不透明な経営環境において、機動的な運営はできません。 不透明な経営環境において、数値目標や数値計画が当たる方がおかしいのです。当たらない数値目標や数値計画に対して多くの労力と時間をかけているのは、あまり意味がありません。

結果分析に労力と時間を掛け過ぎている

経営計画と実績のCheck(計画・実績分析)に多くの労力と時間を掛け過ぎていることも問題です。先程言ったように計画そのものが当たらないのに、その計画と実績の差を細かく分析しても、あまり意味がありません。
しかし多くの企業では、本社や事業会社における経営管理部門が結果の分析作業に熱狂しています。経営管理部門が、表面的な差異原因を分析するために、現場に対して追加の情報提供や資料作成を依頼し、現場を混乱させていることも見受けられます。その結果、皆さんが分析作業に疲れてしまい、対応策検討に余力が残っていない、というようなことになっていないでしょうか。

計画前提が曖昧なまま計画を策定している

本来Checkにおいては、結果としての計画と実績の差異を検討するのではなく、その計画を策定した時の計画前提(経営環境や戦略要因など)が現時点でどのように変化し、それによって戦略や施策のどこを軌道修正するかを判断すべきです。
しかし、多くの企業においては、そもそも計画策定段階で前提条件を明確化にせずに数値計画が立案されているが故に、経営環境や戦略要因の変化を分析し対応を検討しようにも、その変化が分からないのです。結果として数字だけが目的化し、その数字に拘って、本来の目的を見失ったまま誤った方向に突っ走っているケースが多いと言えます。
従ってCheckの段階では、結果数字ではなくその前提となっている経営環境や戦略因子を検討しなければいけないのですから、計画段階においてもそうした前提条件を明確にしておくべきです。

 

以上のようにPDCAマネジメントは、経営環境が比較的安定している時代では経営手法として有用でしたが、VUCA時代と言われる経営環境が不透明で不確実な時代では有用性を失いつつあると言えます。

CAPDo Proactiveマネジメントとは

では、このような環境の中でどのようなマネジメントを行っていくべきでしょうか。レイヤーズ・コンサルティングでは、こういった経営環境においてはCAPDo Proactiveマネジメントを推奨しております。
CAPDo Proactiveマネジメントは、CAPDo(キャップ・ドゥ)マネジメントとProactive(プロアクティブ)マネジメントで構成されます。

【図2-1】CAPDo Proactiveマネジメントの全体像

CAPDoマネジメントとは

CAPDoマネジメントとは、細かい計画作りから出発するのではなく、現実の状況をチェックしながら(Check)、それに対する対応策を考え(Action)、そしてその対応策の実行計画を立て(Plan)、それを実行していく(Do)、これがCAPDoマネジメントです。昨今OODAマネジメントと呼ばれる経営手法に近い考え方です。

【図2-2】CAPDoマネジメントのイメージ

ただ、CAPDoマネジメントで目先の状況だけに対応していては、大きな戦略の方向感や環境の変化といったものを間違えて捉えてしまうリスクがあります。そこで登場するのがProactiveマネジメントです。

Proactiveマネジメントとは

Proactiveマネジメントは、CAPDoマネジメントにおける将来的な結果を想定して、将来どのように変化していくかという、先を見越した管理(Proactive)を行うことです。先程のCAPDoマネジメントでは、このProactiveマネジメントでの方向感や先読み、見通しを前提に、現在の状況をチェックして、それに対する施策立案、実行計画策定、実行というように繋げていき、更に次のProactiveマネジメントで先読みをしていくというようなマネジメントを繰り返すことです。

【図2-3】Proactiveマネジメントのイメージ

次にCAPDo Proactiveマネジメントのポイントを4つご紹介します。

ポイント①KPIストラクチャーを構築する

CAPDoマネジメントは、常に状況をCheckしていかなければいけません。ただ単に漠然と情報を見ていただけでは、状況の変化や異常点などを見抜けません。そこで利用するのが、KPIストラクチャーです。
 
KPIストラクチャーは、管理視点を頂点に結果から原因という関係性で指標をつないだ階層構造です。このKPIストラクチャーを事前に定義しておくことにより、必要十分な視点やKPIをトリガーにし、変化点に気付き易くし、課題に対する原因事象の迅速な把握と迅速なアクションを実現することができます。

【図3】KPIストラクチャーのイメージ

ポイント②アクションシナリオを用意する

アクションシナリオとは、将来起こりうる課題又は実際に起こってしまった課題に対し、影響を受けるKPIを明確化し、実行すべきアクションパターンを設定した一連の流れです。アクションシナリオを予め用意することにより、発生した課題に対して全体最適につながるアクションを迅速に行うことができます。

【図4】アクションシナリオのイメージ

ポイント③マネジメントの実行組織・役割・業務を定義する

CAPDo Proactiveマネジメントの実現に当たっては、属人的な都度対応ではなく、企業全体として実効性を高める中央管制塔としての実行組織とその役割や主要業務を定義することが重要です。

【図5】CAPDo Proactiveマネジメントの運用イメージ

ポイント④マネジメントシステムをDX化する

CAPDo Proactiveマネジメントを全て手作業でやっていては、工数負荷も大きく、タイムリーな分析と打ち手の実施を行うことはできません。CAPDo Proactiveマネジメントを実行するためのデータ・プロセスをDX化し、最小の工数でスピーディなアクションにつなげることが重要です。

【図6】CAPDo ProactiveマネジメントのDX化イメージ

以上のように、今回は過剰なPDCAマネジメントの問題とそれに代わる新たなマネジメント・フレームワークとしてCAPDo Proactiveマネジメントのポイントをご紹介しました。詳細については是非お問い合わせください。皆様と一緒にVUCA時代の新しいマネジメントを構築していきたいと思っております。

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