「昭和の旅館システム」からいかに脱却するか
~クラウド時代の基幹システム刷新~
今回は、クラウド時代においていかに効率的・効果的にシステムを構築するかの要諦をご紹介します。
クラウド時代において基幹システムを刷新するポイント
DXと叫ばれてからもう数年経っています。しかし、日本企業のDX化はまだまだ立ち遅れています。
例えば、未だに「昭和のシステムが動いている」ことです。失われた30年の間に情報システムはコスト削減の対象とされ、投資対効果を問われ続けたがゆえにツギハギだらけのシステムとなり、未だに「黒い画面」のシステムが動いているのです。これが「昭和の旅館システム」といわれたり、「スパゲッティ・システム」といわれたりする所以です。これはひとえにコストカット中心の経営がもたらした大失敗であり、日本企業のDXが一向に進展しない大きな要因です。
こうした企業で基幹システムを刷新する場合、ERPだけが選択肢ではありません。様々なクラウドサービスを活用することも大きな選択肢です。一般に、ERPや個別のパッケージシステムは一つの会社が使うことを前提として作られています。一方、クラウドサービスは複数の会社が同時に利用することが前提であり、そうした会社間の商取引自体もサービス対象としているため、ステークホルダーをマネジメントするには逆に優れた面も有しています。例えば、ERPでは相手先の情報のメンテナンスは自社でやりますが、クラウドサービスでは相手方が実施するケースもあります。
したがって、今後の基幹システム刷新はクラウドサービスを前提に検討していくことが重要です。
今回は、こうしたクラウド時代において基幹システムを構築するポイント①~⑤をご紹介します。
ポイント① 色々なサービスを組み合わせる
ポイント② サービスをシンプルに使う
ポイント③ ローコードやRPAを活用する
ポイント④ データ連携を事前に考える
ポイント⑤ データ活用を事前に考える
ポイント① 色々なサービスを組み合わせる
基幹システムの機能領域に該当するクラウドサービスは、様々なものが登場しています。ERPのような全ての業務機能を有したもの、販売・購買・会計といった複数の業務機能をカバーしたもの、会計だけといった特定の業務機能に特化したもの、企業間の商取引を対象としたもの(契約締結、電子商取引、証憑授受等)、データ保存など特定のシステム機能に特化したものなど、無数のようにクラウドサービスが存在し正にカオス的な様相を呈しています。
したがって、こうしたクラウドサービスを使って基幹システムを刷新する場合、複数のサービスを組み合わせることは避けて通れません。逆に、組み合わせがうまくできれば、業務的にもコスト的にも有意義なシステムが構築できるということです。
【図1】クラウドサービスの組み合わせ事例
クラウドサービスの選定にあたっては、不足している機能を補完できるクラウドサービスが他に無いかを十分調査する必要があります。クラウドサービスが対象とする機能の範囲はどこまでか、その中で自社が利用する機能は何か、不足する機能は何か、不足機能を持っているクラウドサービスはないかといったことを繰り返す必要があります。こうしたクラウドサービスの選定を自社だけでやるには限界がありますので、当社のようなDXの水先案内人を活用してはいかがでしょうか。
ポイント② サービスをシンプルに使う
クラウドサービスは色々なユーザが使っているサービスですから、多くのユーザが共通して使う業務機能が実装されています。換言すれば、少数の企業の特殊な業務機能は余程の事がない限り実装されていないということです。したがって、クラウドサービスの活用ポイントは、クラウドサービスが提供する標準機能をシンプルに使うということです。このようにクラウドサービスの標準機能だけで賄うことを「Fit to Standard」と呼びます。
しかし、これは言うは易し行うは難しです。ほとんどの企業ではユーザの要求は絶対視され、使い勝手が悪いシステムはダメなシステムとして烙印を押され続けてきました。先ずは、ここを変えなくてはいけません。クラウドサービスが提供しない業務機能は本当に必要なのか、昔ながらの慣習や惰性ではないのか、ユーザの単なるわがままではないのかなどを繰り返し問わなければいけないのです。
【図2】業務の必要性を繰り返し問う
こうした改革を自社で実施することが難しい場合、当社のような外部を活用するのも一つの方法です。
ポイント③ ローコード開発やRPAを活用する
業務工数の大幅な増加や、取引先との関係などでどうしても不足機能に対応しなければいけないケースも出てきます。こうした場合には、ローコード開発ツール(難しいプログラミングが不要なシステム開発ツール)や、RPA(Robotic Process Automation)などを活用するのも効果的です。
【図3】ローコード開発の活用事例
こうしたローコード開発やRPAといったデジタルテクノロジーの活用は、システム部門主導からユーザ部門主導へと移ってきています。しかし、ここで注意しなければいけないことは、ITガバナンスです。ITガバナンスをしっかりしていかないと、20年以上前に流行った「EUC(エンドユーザコンピューティング)の悪夢」の再現となり、野放図なシステムが各部門に溢れかえってしまうからです。
ポイント④ データ連携を事前に考える
クラウドサービスを選定するにあたっては、色々なものを組み合わせることを前提に、サービス間の連携部分がしっかりしているかを十分評価することが重要です。クラウドサービスとオンプレミスのシステムとの連携、クラウドサービス間の連携などを見極めます。
クラウドサービスを直接連携することには限界がありますので、こうした連携には連携ツールを活用することが必要です。データ連携では、販売データのようなトランザクションデータ(取引データ)と、顧客マスタのようなマスタデータがあります。特に問題となるはマスタデータです。顧客や勘定科目のように複数のクラウドサービスで共通して使うマスタもありますので、どこで正本としてのマスタを管理し、それのコピーをどう各サービスに連携するかを考える必要があります。
【図4】統合型マスタデータマネジメント(MDM)
ポイント⑤ データ活用を事前に考える
様々なクラウドサービスを組み合わせて使うということは、トランザクションデータが様々なクラウドサービスに分散してしまうということです。このままでは有益な経営情報としての活用は難しくなってしまいます。したがって、クラウドサービスを利用する前に経営情報としてどのような情報が必要かを検討する必要があります。これが、我々がいう「データアプローチ=Fit to Data」です。
【図5】経営情報として必要な管理指標
次に、こうした経営情報を格納するデータ基盤を、どう構築するかを検討する必要があります。すなわち、経営情報として必要なマスタデータ、トランザクションデータを特定していき、これらを格納するデータ基盤構想を固めていきます。そのうえで、様々なクラウドサービスを選定していき、これらの情報をこのデータ基盤に格納していきます。
今回は、クラウド時代においていかに効率的・効果的にシステムを構築するかの要諦をご紹介しました。詳細については是非お問い合わせください。
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この記事の執筆者
-
田平 智規経営管理事業部
マネージングディレクター -
村井 泰三経営管理事業部
バイスマネージングディレクター -
富重 成顕経営管理事業部
マネージャー
職種別ソリューション