人的資本経営の価値創造の道筋で社会価値も同時達成
以下、2025年5月16日に開催した当社セミナーより、上記考え方の骨子をお伝え致します。そのポイントは3点であり、すなわち、①サステナビリティ経営に際しヒトは重要かつ不可分、②ベースとなるのは、経済価値と社会価値の達成をゴールに据えた人的資本経営の骨太ナラティブ、③「S」・ヒトに関する社会課題を広く捉え直しマテリアリティの特定に反映することです。
なぜ、人的資本経営がサステナビリティ経営の基軸か?
企業価値を高め続けるうえで、人的資本経営の考え方をサステナビリティ経営の基軸に据えるべきと当社が考える理由は、以下3点です。
第一の理由は、「企業価値の源泉は古今東西ヒトとカネであり続けている」ことです。IIRCが提唱した統合報告フレームワークの価値創造プロセスにおいて、人的資本と財務資本を含む「6つの資本」が同列のように位置付けられています。しかし実際には、人的資本(ヒト)と財務資本(カネ)は、それ自体が価値創造プロセスのインプットであると同時に、他の4つの資本(製造資本、知的資本、社会・関係資本、自然資本)の源泉でもあると考えます。
第二の理由は、「どんな企業にも必ずヒトは存在し、それゆえに、企業価値を高めるうえで人の活性化・差別化がなければ競争に勝ち抜けないと考えられる」ということです。以前その例として、ワーク・エンゲージメントが高い組織ほど生産性・イノベーション・精神的健康が高いことをご紹介いたしました。(詳細はこちらのリンクより→https://www.layers.co.jp/solution/workengagementvalue/)
ワーク・エンゲージメントとは、「仕事に誇り(やりがい) を感じ、熱心に取り組み、仕事から活力を得て活き活きしている状態」を指し、科学的エビデンスをもって企業価値向上のナラティブを補強するうえで有用な考え方でもあります。
第三の理由は、「ヒトに関する経営課題は社会課題と関係が深く、人的資本経営かつサステナビリティ経営による課題解決に貢献可能」なことです。少子高齢化による生産人口の減少、労働生産性の伸び悩み等は、経済価値向上を阻害する経営課題であると同時に、社会価値を毀損する社会課題でもあります。よって、人的資本経営における戦略・施策を適切に立案するうえでは、ヒトにまつわる社会課題解決をより広く捉え直すことが重要であり、それは社会のサステナビリティ向上にも資するものとなります。
「人的資本経営をサステナビリティ経営の基軸に据える」
当社は、「人的資本経営をサステナビリティ経営の基軸に据える」要諦は3点と考えています。
まず、第1の要諦に「あくまでベースは人的資本経営の骨太ナラティブ」であること、第2の要諦に「企業価値創出に社会価値の観点を明確に追加」すること、第3の要諦に「より広い視点でS・ヒトの社会課題を捉えて、マテリアリティの特定に反映し、ナラティブに反映」することです。以下、順を追って概略をご説明いたします。
【図1】人的資本経営の全体像イメージ
要諦1:ベースは人的資本経営の骨太ナラティブ
「あくまでベースは人的資本経営の骨太ナラティブ」とは、人的資本経営のナラティブと戦略・施策のマネジメント体系を、ステークホルダーと双方向で腹落ちできる対話として構築することともいえます。
その構築とは、社内外との愚直な対話を通じて、経営理念・戦略~人事ポリシー~人財戦略・施策とKGI・KPIを腹落ちできる体系として紡ぎ上げることです。これは、人的資本経営の強化をご支援するうえで、当社が従前から大切にしてきた考え方であり、サステナビリティ経営の基軸に人的資本経営を据えるうえでもその重要性は揺るぎません。
要諦2:企業価値創出に社会価値の観点を追加
第二の要諦「企業価値創出に社会価値の観点を明確に追加」とは、人的資本経営を通じて高める企業価値が、経済価値と社会価値の和であると認識することです。人的資本経営は、これまで企業の経済価値向上の文脈で議論されてきましたが、これからは社会価値向上=サステナビリティ向上にも資する考え方と認識して、その道筋を描くべきでしょう。例えば、経済価値の定量的なKGIに加えて、創造性が高い人材の(社会に対する)輩出を経済価値のKGIとして設定することが考えられます。
なお、優先すべきは企業のサステナビリティであり、すなわち経済価値です。企業自体の存続なしに、社会課題解決への貢献は困難であり、「先立つもの」である経済価値があってこその社会価値向上への貢献と考えます。よって、経済価値に貢献しない戦略・施策をナラティブに組み込む必要はなく、2つの価値に貢献する戦略・施策が社会価値にも結び付く道筋を描出すべきです。
【図2】経済価値と社会価値を向上する道筋
要諦3:より広い視点でS・ヒトの社会課題を捉える
第三の要諦「より広い視点でS・ヒトの社会課題を捉えて、マテリアリティの特定に反映し、ナラティブに反映」とは、マテリアリティが「持続的な企業価値向上のために取り組むべき重要経営課題」と位置付けられることを踏まえています。この点に関しては、労働人口の減少率が日本よりも低い欧州において、大手企業が労働人口減少を重要な経営課題と捉えて、テクノロジー活用等の打ち手を急いでいることが示唆的です。日本企業も、人事部門の視点にサステナビリティ部門や経営企画部門の視点を加え、より広い視点で協働して社会課題ならびにマテリアリティを捉えて行くことが望ましいと考えます。
終わりに
逆風が吹いているからこそ、かつ開示対応がある程度進んだからこそ、経済価値と社会価値を同時達成する観点より「我が社のサステナビリティ経営・人的資本経営」を見つめ直してはいかがでしょうか?
是非皆様方との意見交換を通じて、2つの価値を高めるサステナビリティ経営・人的資本経営に貢献できますと大変幸いです。ご不明の点や気になられた点がございましたら、お気軽にお声がけください。
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この記事の執筆者
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小宮 泰一HR事業部
ディレクター -
大島 直樹HR事業部
マネージャー
ISO30414コンサルタント
職種別ソリューション