お客様の声の変化で市場の変化の予兆をとらえる
そこで本記事では、世の中にあふれるお客様の声を「VoC(Voice of Customer)」として捉え、その重要性を探ります。VoCは、顧客の期待や不満、新たなニーズを把握するための貴重な情報源です。これらの情報を無視することは、競争の激しい市場において致命的な結果を招く恐れがあります。
さらに、VoCを効果的に活用するための手法として、尺度データとテキストデータの分析方法について詳しく解説します。尺度データは数値的な情報を提供し、テキストデータは顧客の感情や意見を深く理解するための手段となります。これらの分析を通じて、企業は顧客の期待に応え、ブランドの信頼性を高めることができます。顧客の声をしっかりと活用することで、企業は持続的な成長を実現し、競争優位を築くことができるでしょう。
世の中にあふれるお客様の声
マーケティングにおいて、お客様の声を収集・分析することは、お客様のニーズや要望、行動原理を把握するために以前より非常に重要な手段の一つでした。従来のアンケートやインタビュー、問い合わせに加え、近年では、インターネットやSNS上での投稿やコメント、レビューなど、様々な形でお客様の声を集めることが可能になりました。しかし、集めた量が増えたからといって、企業が自社のサービスに活かしやすくなったかというと、必ずしもそうではありません。
よくある事例として、定期的にお客様アンケートを実施しているものの、結果を蓄積しているだけで、分析をして施策に結びつけられていないケースや、世間の流行を参考に商品開発したものの、実際にはあまり売れなかったというケースもあります。そのほかにも、SNS上での炎上が続き、ブランドイメージに大きなダメージを与えたケースも見受けられます。これらの事例から、顧客の声が多く収集できているにもかかわらず、企業がそれを適切に活用できていない理由は何でしょうか。
一因として考えられるのは、データの分析が不十分であることです。収集したデータを適切に分析し、顧客のニーズや行動を理解することができなければ、企業は市場の変化に迅速に対応することが難しくなります。したがって、企業は単に声を集めるだけでなく、その声をどのように分析し、施策に結びつけるかが重要な課題となります。
VoCとは
前章で述べたようなお客様の声を、マーケティングでは「VoC(Voice of Customer)」と呼びます。
VoCは、エンドユーザーのニーズや要望、行動原理を把握するための重要な情報源です。顧客の声を正しく理解することで、企業は製品やサービスの改善点を見つけ、顧客満足度を向上させることができます。
しかし、実際にはVoCを収集したものの、適切な分析が行われず、施策に結びつけられていないケースが多いのが現状です。多くの企業がアンケートやSNS、レビューサイトなどから顧客の声を集めていますが、その後の分析プロセスが不十分であるため、貴重な情報を活用できていないのです。例えば、定期的に実施される顧客アンケートの結果が蓄積されているにもかかわらず、分析が行われずに放置されていることがよくあります。
VoCの収集は簡単になったものの、企業がその情報を活用するためには収集したデータをどのように分析し、どのように施策に結びつけるかが重要です。次章以降では、VoCの分析プロセスの具体例を紹介し、どのようにして企業が顧客の声を活用できるかを探っていきます。
尺度データの分析
VoC分析をする際によく使われるのが、満足度を尺度で評価する手法です。
このような手法のうち、特に注目すべきはNPS®(Net Promoter Score)という指標を用いたものです。NPS®は、製品やサービスに対する顧客ロイヤルティの度合いを測定するための指標であり、売上高や成長率との相関が強いことが実証されています。具体的には、以下の手順で算出されます。
- 顧客に「あなたはこの製品を友人や同僚にどの程度勧めますか?」と尋ね、0~10点のスコアを付けてもらいます。
- 0~6点と回答した人を「批判者」、7~8点と回答した人を「中立者」、9~10点と回答した人を「推奨者」と3つのグループスコアに分類します。
- 推奨者の割合から批判者の割合を引いた値をNPS®とします。
より高度な分析としては、【図2】のように他の項目との相関を分析する手法があります。NPS®に影響を与えるのはどのような項目なのかを分析し、より効果的な施策に結び付けることが可能です。補足にはなりますが、日本人特有の性質として、他人へのお勧め度のスコアが中央寄りになってしまうことで、NPS®の値が低く出てしまう傾向があります。実際の分析においては、各社の状況に応じて質問の仕方を変えてみたり、スコアを補正してみたりする等アレンジして活用することで、より効果的な分析となります。
【図1】NPS®の算出方法
【図2】NPS®と他の定量項目との相関分析
テキストデータの分析
VoC(Voice of Customer)の分析には、尺度データだけでなくテキストデータも重要な役割を果たします。顧客からのフィードバックやレビューは、数値だけでは捉えきれない感情や意見を含んでおり、これらの情報は企業にとって非常に貴重です。テキストデータを分析するためには、テキストマイニングの手法が有効です。テキストマイニングを用いることで、顧客の意見にラベル付け(アノテーション)を行い、分類し分析することができます。例えば、テキストマイニングの自然言語処理により感情分析を行うことで、顧客が持つ感情を把握し、ポジティブなフィードバックやネガティブな意見を識別できます。これにより、企業は顧客の満足度や不満の原因を明確にし、迅速な対応が可能となります。
また、テキストデータを用いた予兆分析により、顧客のニーズの変化を早期に察知することができます。例えば、特定のキーワードやフレーズの出現頻度を統計的に追跡することで、顧客の不満などがクリティカルマスを達する前に問題を把握し対処することで、顧客の不満を解消するのみではなく、ブランドイメージの毀損を最小限におさえるとともに、問題への対応コストを最小限に抑えることが可能となります。さらに、NPS®(Net Promoter Score)とテキストデータを組み合わせることで、NPS®に影響を与える要因を詳細に分析できます。顧客のロイヤルティに影響を与える要因を明らかにすることで、効果的な施策を立案することが可能です。
テキストデータの分析は、顧客との関係を深めるための重要な手段です。顧客の声を適切に分析することで、企業は顧客の期待に応え、持続的な成長を実現することができるでしょう。テキストマイニングを活用することで、企業は顧客の真のニーズを理解し、よりよい製品やサービスを提供する基盤を築くことができます。
【図3】テキストデータの分析の例
まとめ
VoCの収集と分析は、企業が市場の変化を捉えるための重要な手段です。顧客の声には、製品やサービスに対する期待や不満、さらには新たなニーズが含まれています。これらの情報を無視することは、競争の激しい市場において致命的な結果を招く可能性があります。顧客の声を真剣に受け止め、その価値を最大限に引き出すことが、企業の成長に直結するのです。
また、VoCの分析結果を基にした施策は、顧客の期待に応えるだけでなく、ブランドの信頼性を高める効果もあります。顧客が自分の意見が反映されていると感じることで、ロイヤルティが向上し、リピート購入や口コミによる新規顧客の獲得につながります。
このように、VoCを適切に活用することは、企業にとって非常に重要です。顧客の声をしっかりと受け止め、その情報を基にした施策を実行することで、企業は市場の変化に迅速に対応し、持続的な成長を実現することができるでしょう。今こそ、VoCの収集と分析に取り組み、その価値を最大限に引き出す方法を検討してみませんか。当社では、コールセンターの品質向上やメーカー機器のアフターサービスの品質向上等、様々な手法を用いてVoC分析を行い、顧客の真のニーズを理解し、よりよい製品やサービスを提供する基盤を築くことを目的としたコンサルティングサービスを提供しています。




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この記事の執筆者
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藤原 七海DX事業部
マネージャー -
髙杉 遼太郎DX事業部
マネージャー
職種別ソリューション