【第7回】
会計システムの一般会計って何のこと?(前編)
◆この記事の要約
会計システム刷新で重要な「一般会計サブシステム」は、仕訳帳・総勘定元帳(General Ledger)を中核に、仕訳入力→承認→元帳転記(残高更新)までを統括する機能です。そこで本記事(前編)では、ERP/会計パッケージ導入時に確認すべき標準機能(入力項目、登録方法、入力画面、補助機能、承認ルート)の要点を、内部統制の観点も含めて整理します。
- 一般会計サブシステム:仕訳帳/総勘定元帳の中核機能
- 仕訳入力:入力項目、手動・CSV・IF・自動計上
- 入力画面・仕訳形式:振替伝票、T字/表型、n:m/1:n/1:1
- 承認・統制:多段階承認、修正仕訳、承認ルート/API連携
そこで今回は、ERPや会計システムパッケージによる「会計システム刷新のキホンのキ」として、会計システムにおける一般会計サブシステム(前編)をご紹介します。
一般会計サブシステムの主要機能
会計システムの中心的な機能を果たすのが一般会計サブシステムです。会計における仕訳帳と総勘定元帳の役割を担うサブシステムを一般会計サブシステムといいます。
【図1】会計システムのシステム構成イメージ
※「一般会計」は余り耳慣れないですが、総勘定元帳のことです。システム開発の世界で「General Ledger」を直訳し、総勘定元帳を「一般会計」と呼んだとの説もあります。
一般会計サブシステムは、会計における仕訳帳と総勘定元帳の機能を果たすため、下記の機能を基本的に保持しています。
【図2】一般会計サブシステムの主要機能
まず初めに、会計として記帳すべき取引が発生したら、会計システムに担当者が入力します。担当者が入力した仕訳を通常担当者の上長が承認します。この承認段階は複数ありますが、最終承認が終わった段階で正式な仕訳(直接修正・削除できません)となります。正式な仕訳に基づき仕訳に関連した勘定科目の元帳残高が更新されます。その中で今回は、仕訳入力と仕訳承認を中心にご紹介します。
仕訳入力
会計システムにおける仕訳入力機能は、企業の取引を正確に記録し、財務諸表作成や経営分析の基礎となる重要な機能です。以下に仕訳入力機能の概要と主な特徴、種類、注意点をご説明します。
仕訳入力の入力項目
仕訳入力・登録おいては、一般的に下記の項目を入力します。
【図3】仕訳入力・登録
入力項目は、ERPや会計パッケージによって異なるため、どのような項目が入力できるか、どの項目が必須項目か任意項目かなどの確認が必要です。特に、ユーザーが設定できるフリーの項目もあるので、それらがどれくらいあるかも確認が必要です。また、仕入取引、売上取引、入出金取引、資産取引等の取引種類(伝票のタイプ等)に応じて、入力項目が異なったり、入力項目に制限がかかったりする場合もあるので、導入時に確認が必要です。
仕訳入力・登録の方法
仕訳入力・登録には、画面からの手動入力、Excel等からのインポート登録、他システムからのインターフェースデータの仕訳登録、会計システムでの自動仕訳登録などがあります。
画面からの手動入力
ユーザーが画面上で勘定科目や金額等を仕訳として直接入力する方法です。
仕訳入力の基本的な方法であり、人間か介在するので柔軟性が高く、複雑な取引にも対応可能です。
手動入力の場合、内部統制の観点から、入力者と別の人の確認や承認を得てから正式な仕訳となることが一般的です。なお、仕訳承認の詳細については後述します。
また、電子帳簿保存法対応のため、会計システムに証憑を電子保存したい場合は、証憑を電子的に添付できるか否か、添付操作がしやすいかなども確認が必要です。なお、最近では少なくなりましたが、入力データを紙に出力して承認のために回覧するなどを行う場合には、仕訳伝票の出力ができるか否かも確認が必要です。手入力の場合、ユーザーがコード類を入力する必要があるため、画面入力時に組織・勘定科目等の入力支援機能(ポップアップ画面、日本語名称検索等)があるかも確認が必要です。
Excel等からのインポート登録(CSV形式で仕訳の登録)
ユーザーが画面からExcel等(CSV形式など)のデータをアップロードし、仕訳を登録する方法です。
Excel等の形式は、ERPや会計パッケージが用意したインポートファイル形式に準拠します。インポートファイルに仕訳を入力(Excelに入力)して、これをアップロードします。ERPや会計パッケージによっては、仕訳形式ではないデータでもインポートすれば、仕訳形式に変換するものもあります。
Excel等からのインポート登録は、大量のデータをユーザーが直接入力しなければならない場合などに便利な入力方法です。Excel等からのインポート登録は手動入力と同じですから、内部統制の観点から入力者と別の人の確認や承認を得てから正式な仕訳となることが一般的です。
他システムからのインターフェースデータの仕訳登録
他システムから仕訳計上が必要なインターフェースデータ(売上データ、購買データ等)を会計システムに送り、このインターフェースデータをもとに仕訳を登録する方法です。インターフェースデータの形式は、ERPや会計パッケージが用意したインターフェースデータ形式に準拠します。
他システムからのインターフェースデータの仕訳登録は、IT統制がしっかり担保されていることを前提に、登録時点で正式な仕訳とすることができます。IT統制が担保されていない場合(インターフェーズの途中でかいざんのリスクがあるなど)は、人間系で確認や承認が必要になります。
会計システムでの自動仕訳登録
会計システムに予め設定した要件に基づき、会計システムが自動で仕訳を計上する方法です。
例えば、リースの支払や減価償却費の月次計上などごと、月と同じタイミングで発生する同一の仕訳を事前に登録することにより、会計システムがその仕訳を自動計上したりします。また、前受収益や前払費用などの収益・費用の見越・繰延の仕訳を計上した場合、翌期に反対仕訳を自動計上したりします。
どのような自動仕訳ができるかはERPや会計パッケージで異なるので、導入時に確認が必要です。
仕訳入力画面
入力画面の形式
入力画面としては、振替伝票形式が一般的です。ただし、振替伝票形式のほかに、入金伝票や支払伝票等の特定取引に応じた画面があるERPや会計パッケージもありますので、どのような画面があるか導入時に確認が必要です。
標準画面の設定とアドオン開発
標準画面の表示項目や入力項目をパラメーター設定等によって変更できるERPや会計パッケージもあります。しかし、このような標準画面では対応できない場合、アドオン開発が必要になります。アドオン開発でも仕訳を格納するデータベース項目を新たに追加することは一般的には難しいため、標準の入力項目をベースに、ユーザーの入力要件にあった画面(見た目や操作性の向上)をアドオンすることになります。
入力画面の形式
振替伝票の入力画面の形式としては、仕訳の形式と同じく借方と貸方の勘定科目等を右と左にわけて明細入力するT字型フォームと、借方と貸方の勘定科目等を右と左の区別なく上下の明細に入力する表型フォームがあります。どちらの仕訳の明細入力形式かはERPや会計パッケージで異なるので、導入時に確認が必要です。
【図4】仕訳入力イメージ
※画面の上部にある共通的な項目の部分を仕訳ヘッダー部、明細行の部分を仕訳明細データ部と呼ぶこともあります。
また、借方と貸方の区分けについてもいくつかのタイプがありますので、導入時に確認が必要です。
- 入力フィールドが借方と貸方で別々
- 入力フィールドは同じで借方と貸方の区分を入力
- 入力フィールドは同じで借方と貸方を金額のプラス・マイナスで入力
加えて、仕訳明細の行数に制限があるか否かについても確認が必要です。明細の行数制限については、画面入力では余り問題にはなりませんが、Excel等からのインポート登録や他システムからのインターフェースデータの仕訳登録など大量の明細行がある場合に問題になることがあるので注意してください。
仕訳形式のタイプ
仕訳形式は、借方と貸方の勘定科目の数に応じて、n:m、1:n、1:1の3つのタイプがあります。
n:m仕訳
n:m仕訳は、借方と貸方でそれぞれ複数の勘定科目があるタイプです。
(借方)現金 (貸方)売上
(借方)売掛金 (貸方)仮受消費税
1:n仕訳
1:n仕訳は、借方と貸方のどちらか一方が一つの勘定科目で反対側が複数の勘定科目があるタイプです。
(借方)現金 (貸方)売上
(貸方)仮受消費税
1:1仕訳
1:1仕訳は、借方と貸方がともに一つの勘定科目となるタイプです。
(借方)現金 (貸方)売掛金
会計システムでは、一般的にはn:m仕訳が入力できます。ただし、特定の取引等については、1:n仕訳や1:1仕訳としなければいけない会計パッケージもあるので、導入時にそのような制限があるか否かの確認が必要です。また、各種帳票や照会画面で1つの仕訳レコード(明細行)において、相手科目が表示できているか、相手科目が複数の場合にどの相手科目を表示するかなども異なりますので、導入時に確認が必要です。
消費税の仕訳
消費税については、外税入力(本体価格+消費税を別計算)と、内税入力(価格に消費税が含まれている)のどちらでも画面入力ができるのが一般的ですが、内税入力であっても、本体価格と消費税を分けて自動仕訳します。また、仕訳時に消費税区分(不課税、非課税、免税、税率等)を入力する場合もあります。消費税の仕訳については、ERPや会計パッケージにおいて入力方法や処理が異なるため、導入時に確認が必要です。
仕訳の補助機能
仕訳の補助機能としては、各種機能が標準機能としてあります。ERPや会計パッケージによって標準機能の範囲は異なるため、いずれの機能も機能の有無や制限等について、導入時に確認が必要です。
仕訳パターン登録機能(仕訳テンプレート機能)
勘定科目、取引先、摘要、金額等をパターン化した仕訳を登録し、仕訳時にそのパターンを呼び出して入力できる機能です。また、既存の仕訳を仕訳パターンとして登録できるものもあります。仕訳パターン登録は、組織や個人等の登録権限の制限が必要な場合がありますので、制限ができるか導入時に確認が必要です。
仕訳コピー機能
仕訳入力時に過去の類似仕訳を呼び出し、その仕訳をコピーして修正・入力できる機能です。また、入力済みの仕訳の明細行をコピーできるものもあります。
定期定例仕訳自動計上機能
一定のタイミングで同じ仕訳が発生する場合、その仕訳を事前登録することによって、特定タイミングで自動計上する機能です。リース料等支払ごとに月繰り返し発生する仕訳や、長期前払費用や減価償却費などを期間按分して計上する仕訳などに利用します。
入力仕訳配賦機能
仕訳の入力時に、費用等をある一定のルールで複数の部門等に配賦する機能です。例えば、電力費を各部のフロア面積で按分して計上したい場合などに利用します。配賦のルールは、事前に設定したり、仕訳入力時に設定したりします。
反対仕訳自動生成機能
確定仕訳の訂正削除に関して、反対仕訳を自動生成する機能です。反対仕訳としては、赤黒仕訳(マイナス仕訳)と逆仕訳の2つのタイプがあります。
仕訳入力制限機能
ユーザーの所属組織や計上組織に応じて、計上できる仕訳パターンや勘定科目を制限できる機能です。
組織の権限・責任等に応じて、仕訳入力の可否を制限したい場合に用いる機能です。
決算入力制限機能
決算の際に、あるタイミングから特定の組織(例えば経理部)しか入力できないように制限する機能です。入力制限方法としては、会計期間のオープン・クローズで制御するなど、ERPや会計パッケージで異なるため、導入時に確認が必要です。
決算仕訳区分機能
通常仕訳と決算仕訳を区分して管理することができる機能です。これは決算仕訳の影響額等を分けて管理したい場合などに用いられます。
経過勘定自動計上機能
通常決算で計上される前受収益・前払費用等の経過勘定について、翌期の洗替仕訳(反対仕訳)を特定のタイミングで自動計上する機能です。
仕訳承認
仕訳承認
入力された仕訳は、内部統制の観点から複数の段階で承認を経て、正式な仕訳となります。途中過程では、仕訳の修正・削除は可能ですが、正式な仕訳となった段階で修正や削除はできません。修正や削除は、修正仕訳を新たに起こして行います。正式な仕訳となった段階で、一般的には元帳転記(残高計算)の対象となります。逆に、承認前の仕訳は、元帳転記(残高計算)の対象から外れます。
※修正や削除はシステム統制上の観点から、タイムスタンプやユーザー等が記録されていること望ましいといえます。また削除の場合でも、仕訳レコードを物理的に削除するのではなく、ステータス変更(削除)で処理する場合もあります。
仕訳の承認ルート
仕訳の承認ルートは、会社によって複雑なルートをとる場合もあります。例えば、現場入力者→現場上長→現場部門長→経理担当承認→経理責任者承認→会計担当承認など多段階にわたる場合です。
しかし、ERPや会計システムの承認ルート設定や承認段階設定には制限がありますので、自社の承認ルートに対応できるかは、導入時に確認が必要です。また、承認のワークフローは、API連携で会計システムとは別のワークフローシステムで行う場合もあります。ERPや会計パッケージの標準機能だけを使うか、API連携で別のシステムを使うかは、導入時に検討が必要です。
承認方法
承認方法には、個別承認(個々の仕訳ごとに承認)と一括承認(仕訳リストから承認)がありますが、一般的にはどちらも実施できるケースが多いようです。
まとめ
今回は、ERPや会計システムパッケージによる「会計システム刷新のキホンのキ」として、会計システムにおける一般会計サブシステム(前編)についてご紹介しました。今後の会計システム刷新は、ERPや会計パッケージに限らず様々なクラウドサービスやAIサービスを活用して「真に経営に資する情報システム」として実現する必要があります。レイヤーズ・コンサルティングでは多数のご支援実績を持っておりますので、個別のERPや会計パッケージ、クラウドサービスの活用のポイントについては、是非お問い合わせください。


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この記事の執筆者
-
村井 泰三経営管理事業部
バイスマネージングディレクター -
山本 晶代経営管理事業部
ディレクター -
飯田 稜大経営管理事業部
シニアマネージャー
職種別ソリューション





