意思決定を加速するデータ統合基盤の構築
◆この記事の要約
本記事を読むと、社内に散在する「情報の孤島(データのサイロ化)」が意思決定のスピードを奪う理由と、SSOT(Single Source of Truth)を実現するデータ統合基盤の構築アプローチが分かります。アジャイル導入とデータガバナンスで「使える」基盤へ導きます。
- サイロ化が生むボトルネック:ERPやSFA/CRM等でデータ定義・更新タイミングがずれ、「どの数字が正しいのか」の議論が戦略対話を圧迫
- SSOTの狙い:構造化データ/非構造化データを統合し、データリネージを明確化。誰もが同じデータ・同じ意味で信頼して使える状態へ
- アジャイルな導入ステップ:価値の高い領域(例:案件別ROIの可視化)から着手し、8〜12週間でELT・ダッシュボードをリリース→効果検証で段階拡張
- 「データの沼」を防ぐ:データマネジメント(5S)とデータガバナンスを整備し、データスチュワード/DMOで品質を維持してデータの民主化を実現
本記事では、全社で「同じ言葉」を語り、スピーディーな意思決定を実現するSSOTの構築アプローチを、具体的なアーキテクチャや導入ステップ、成功事例を交えて解説します。
※SSOT:Single Source of Truth 信頼できる唯一の情報源
「データのサイロ化」が意思決定のスピードを奪う
経営会議の資料を作るために、各部門からExcelファイルを集め、集計作業に追われる…といった光景が繰り広げられている会社もまだまだ多いのではないでしょうか。ERP、SFA/CRM、POSシステム、Web解析ツールなど、それぞれのシステムが持つデータは貴重な資産です。しかし、それらがバラバラに管理されている「サイロ化」状態では、部門ごとにデータの定義が異なったり、更新のタイミングがずれていたりするため、いざという時に信頼できる情報として活用することができません。
近年のFP&Aに関する調査でも、「複数システムに分散したデータが意思決定のボトルネックになっている」という回答が常に上位を占めています。これは、単に情報収集に時間がかかるという物理的な問題だけではありません。「どの数字が正しいのか」という議論に終始してしまい、本来行うべき「次の一手をどう打つか」という戦略的な対話の時間を奪ってしまう、深刻な経営課題なのです。FP&Aが真の価値を発揮するための第一歩は、この「見ているデータの違い」を根本から解消することにあります。
【図1】データの「サイロ化」状態
SSOT(信頼できる唯一の情報源)とは何か?
SSOT(Single Source of Truth)とは、社内に散在するあらゆるデータを一元的に管理し、誰もが同じデータを、同じ意味で理解し、信頼して使える状態を指します。
これを実現するのが「データ統合基盤」です。この基盤は、財務データのような構造化データだけでなく、画像やSNS、IoTセンサーから得られる非構造化データまで、あらゆる情報を取り込むための「器」となります。顧客、製品、営業活動、マーケティング、製造といった事業活動のすべてがデータで繋がり、経営層から現場の担当者まで、役職や部門の壁を越えて、同じ指標に基づいた対話と意思決定が可能になるのです。
SSOTがもたらすのは、単なる業務効率化に留まりません。データリネージ(データの出所や加工履歴)が明確になることで、分析の再現性と説明責任が向上します。これにより、データに基づいた仮説検証のサイクルが加速し、組織全体のデータリテラシー向上にも繋がるのです。
【図2】SSOT(Single Source of Truth)
「壮大な計画倒れ」を避ける、アジャイルな導入アプローチ
「データ統合基盤」と聞くと、数年がかりの大規模プロジェクトを想像し、二の足を踏んでしまうかもしれません。しかし、重要なのは「壮大な計画倒れ」のリスクを避け、小さな成功を積み重ねていくことです。
そのために有効なのが、価値の高い領域から着手し、短期間で成果を出しながら段階的に拡張していく「アジャイル」なアプローチです。
例えば、以下のようなステップで、8〜12週間といった短期間で「使える」領域をリリースしていきます。
- 基本構想と要件定義:
まずは、最もビジネスインパクトの大きいテーマ(例:案件別ROIの可視化)に絞り、必要なデータを定義します。 - 基盤構築と活用層の実装:
データテーブルやELTを構築。定義したデータを統合し、ユーザーが直接触れるダッシュボードなどを構築します。 - 効果検証と次のテーマへ:
リリースした機能の効果を測定し、ユーザーからのフィードバックを元に改善を加えながら、次のテーマの開発へと進みます。
このサイクルを繰り返すことで、投資対効果を早期に実感しながら、着実に全社的なデータ活用基盤を育てていくことができるのです。
【図3】データ統合基盤構築の進め方
「データの沼」にしないためのデータマネジメント
注意すべきは、ただデータを一箇所に集めるだけでは、かえって混乱を招く危険性があることです。データの意味や定義が不明確なまま無秩序に放り込まれた結果、どこに何があるか分からず、誰も使えない「データの沼(データスワンプ)」と化してしまうのです。
この「沼」を避けるためには、データを常に整理・整頓し、いつでも使える状態に維持し続ける「データマネジメント」活動が欠かせません。これは、製造業における「5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)」の考え方に通じます。 さらに、組織的な「データガバナンス」体制も重要です。例えば、各事業部門にデータの品質や定義に責任を持つ「データスチュワード(データの番人)」を任命し、全社横断でデータ活用を推進する「DMO(データマネジメントオフィス)」がそれを支援する、といった役割分担を明確にすることで、データは初めて持続可能な経営資産となるのです。
【図4】データスワンプ化を回避するためのデータマネジメント活動
【図5】データガバナンス体制の構築
【事例】全社データ統合がもたらした、データの民主化と意思決定プロセスの変革
ある大手商社では、会計システムの刷新を機に、全社的なデータ統合基盤の構築に踏み切りました。ERPを中核としながら、これまで各事業部に散在していた販売データや外部の市場データなどをすべて統合。全社員が統一されたBIツールを通じて、必要な情報にセキュアにアクセスできる環境を整備しました。
この変革により、全社で約10万時間/年の業務時間削減効果を生みだしました。しかし最大の成果は、データが一部の専門家のものではなくなり、現場の社員一人ひとりがデータに基づいて自律的に判断・行動できるようになったことでした。
まとめ
このようなデータ統合基盤の構築は、単なるシステム導入プロジェクトではありません。それはデータの民主化と、全社の意思決定プロセスそのものの変革です。技術的な知見と、業務改革の経験を併せ持つパートナーと共に、自社のデータ資産を最大限に活かすための一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
ご興味のある方は、ぜひレイヤーズにお問い合わせください。
【出典】
図4:一般社団法人 日本データマネジメント・コンソーシアム
(JMDC 『データマネジメントの基礎と価値』研究会 2019年)
データマネジメントを進めるための「5S」とは?
https://japan-dmc.org/wp-content/uploads/2020/03/5s_tema2.pdf
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この記事の執筆者
-
佐藤 美穂子経営管理事業部
ディレクター -
広瀬 亜未SCM事業部
マネージャー -
増田 凪紗経営管理事業部
シニアコンサルタント
職種別ソリューション


