事業構造転換や積極投資のための「攻めのガバナンス」とは!

日本企業の持続的成長と中長期的企業価値向上のために、2014年にコーポレートガバナンス・コードが制定されてから10年が経ちました。その後の様々な提言や改訂が行われ、ガバナンス改革の重要性はますます高まっております。
しかし、東証が「資本コストと株価を意識した経営」として、PBR1倍割れの企業に改善を強く求めるなど、日本企業のコーポレートガバナンス改革は道半ばといえます。
 
今回は、大胆な事業構造の転換、中長期的な企業価値向上のための積極的投資など強力に推進し、資本効率を向上するための柔軟で強靭な「攻めのガバナンス」をご紹介します。

ガバナンス改革の本丸は、攻めのガバナンス

ガバナンス改革とは、会社が株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえたうえで、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みについて改革していくことです。
日本企業の持続的成長と中長期的企業価値向上のために、2014年にコーポレートガバナンス・コードが制定されました。その後の様々な提言や改訂が行われ、ガバナンス改革の重要性はますます高まっております。ESG投資が盛んになり、ESGの観点からも企業が評価される今日においては、G(Governance)を改革していくことは、資本市場からの評価の面からも重要です。

ガバナンス改革を推進していくためには、ステークホルダーとの協働と対話、取締役会等の機関設計、コンプライアンスやリスクマネジメントへの対応、適切な情報開示など様々な取り組みが必要です。
また、取締役会の役割が、経営の意思決定から経営陣による執行の監督に移行していく中では、経営陣の執行を担保するマネジメントシステム(広義の内部統制)が不可欠です。

【図1】攻めのガバナンスと守りのガバナンス

ここでは特に、大胆な事業構造の転換、中長期的な企業価値向上のための積極的投資などを強力に推進していくために、経営陣がアクセルとブレーキをスピーディに踏み分けられる柔軟で強靭な「攻めのガバナンス」を中心にご説明します。

ガバナンス改革の全体像を明確化して取り組む

攻めのガバナンスを進めていくためには、経営陣の執行を担保するマネジメントシステムの全体像を明確化し、それぞれを具体的に整備・運用する必要があります。
レイヤーズでは、マネジメントシステムを下記の図のように6つの領域から捉え、具体的なマネジメントシステムとして整備しています。

【図2】マネジメントシステムの全体像

経営理念やミッションを明確化し、組織の末端まで浸透させる

経営理念やミッションは、投資家、従業員、顧客、取引先、債権者、地域社会をはじめとする様々なステークホルダーとの協働の基盤となるものですから、これを明確化しグループ内に浸透することが不可欠です。
また、不確実性の高い環境で健全な意思決定をスピーディに行っていくためには、経営理念やミッションからみて、正しいことや大切なことを判断できる価値観やバリューも定め、これらを国内外の事業活動の第一線にまで広く浸透させ、遵守されるようにすべきです。

【図3】経営理念やミッションの一気通貫での浸透

これらは日常的には見えない部分ですから、これらを具体的に表すもの(見える部分)として業務プロセス、マネジメント方法や組織体制などをグループの構成員に示していくことが重要です。

ストーリーを持った経営戦略・経営計画を創り上げる

経営戦略・経営計画がない会社は、ほとんどないと思いますが、例えば中期経営計画が数回に渡って未達であったり、選択と集中、DX化、DE&Iなどの用語が先行したりして、その実行性に疑問がつくケースも多く見受けられます。
経営戦略・経営計画においては、投資家や従業員にとって、納得性・合理性があり、それらの実行性が担保されているものになっているか、再度チェック・検討すべきです。特に、大胆な事業構造の転換、中長期的な企業価値向上のための積極的投資などについては、より具体的で実行性のあるストーリーを語ることが重要です。

【図4】ストーリーを持った経営戦略・経営計画の策定

また、資本市場や投資家との対話と自社内の経営指標や経営計画が違うという「ダブルスタンダード経営」も見受けられますが、社外と社内でストーリーが異なることは避けるべきといえます。

マトリクス組織における横串機能を強化する

経営のグローバル化に伴い、日本企業においても、製品、顧客、エリア、機能といった観点からのマトリクス組織を採用せざるを得なくなっています。しかし、マトリクス組織は、その設計・運営が難しい組織形態であり、それが十分機能している企業は少ないと言えます。
経営環境の変化や目指す戦略から見て、マトリクス組織の各次元(事業、製品、エリア、顧客、ファンクション等)から有効かつ十分な管理体制となっているかを再評価し、マトリクス組織が機能不全を起こしていないかを検証する必要があります。

特に、激しく変化する経営環境においては、アクセルとブレーキを頻繁に踏み分けるためには、CXOにより事業やエリアへの横串マネジメント機能を強化することが重要です。

【図5】マトリクス組織におけるマネジメント

グループ各社の意思決定プロセス(各社の権限・責任)を再設計する

グループ会社においては、グループ会社間の意思決定範囲・方法が曖昧なケースが多く見受けられます。
事業のライフサイクル上の位置付け、事業リスク、事業規模などを考慮していない画一的なマネジメントをしていては、戦略的な企業価値の向上はできません。
グループ各社の戦略的位置付けと関与度を明確化したうえで、親会社、子会社、関連会社の各社の意思決定範囲・方法を再設計すべきです。

【図6】戦略的位置付けと本社の関与度

KGI・KPI管理をうたっている会社は多いですが、経営戦略が曖昧で経営目標達成KGIへの道筋が見えなかったり、KPIは設定されているが現場の施策における重点と異なっていたり、現場施策の具体性や実効性などに疑問がつくケースもよく見受けられます。
経営戦略・経営計画の実行性や実現性を担保するためには、収益力・資本効率からの経営目標(KGI)を、現場レベルまでKPIとして落とし込み、これらの具体的な改善活動につなげることが重要です。

【図7】KGIからのKPIや具体的施策への落とし込み

以上のように今回は攻めのガバナンスを実現するポイントをご紹介させていただきました。詳細についてはお問い合わせください。是非、皆様の中長期的成長と企業価値向上のために貢献したいと思っております。

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