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有事時代の新調達戦略
~リスクに打ち勝つ3つのポイント~

近年、製造業を取り巻く環境変化は激しさを増しています。ウクライナ危機による国際情勢の急変、相次ぐ自然災害など、予期困難な問題が頻発する現代はまさに有事の時代と言えるでしょう。有事の時代で生き残るためには、平時の考え方から脱し、調達機能を根本から見直す必要があります。今回は、有事において調達機能を見直す際の重要な3つのポイントをご紹介します。

リスクに柔軟に対応する調達戦略

調達戦略の策定は、リスク対応の根幹となる最重要施策です。調達戦略という言葉を言い換えるならば、事業活動に必要なQCD要件を安定的に確保することを目的に、調達カテゴリ別に調達方針とサプライヤ管理方針を定めることだと言えます。従って調達戦略を考える際は、構成要素となる「調達カテゴリ」・「調達方針」・「サプライヤ管理方針」の3点を下記のように策定することが重要です。

 

調達カテゴリ・・・調達方針を定める活動単位として、部材の特性や調達国・地域、サプライヤの業界特性などを踏まえて設定する部品群を指します。有事においては四半期ごと、少なくとも半期に一度はカテゴリ毎のリスクを分析し、短サイクルでカテゴリの見直しを行うことが重要です。

 

調達方針・・・調達カテゴリごとの施策実行優先度や、調達活動として推進する施策を指します。有事において方針を策定する際は、サプライチェーン全体を見渡し、資源まで遡及してリスクヘッジ策を考える必要があります。

 

サプライヤ管理方針・・・製品戦略や販売戦略に基づき、新規サプライヤ探索や技術動向調査の計画を策定することを指します。特に有事では、重要部材やリスクヘッジ策を検討・推進している部材のサプライヤの環境変化をタイムリーに捉えるために、サプライヤとの緊密な情報交換を実施することが重要です。

 

加えて、有事においてはリスクの捉え方を根本から見直しましょう。コスト交渉を優先する平時と異なり、有事では安定的な資材確保を優先する必要があります。従って、リスク分析をする際は内部環境の分析より外部環境の分析に重点を置き、供給変動要因を中心に分析を行うことがポイントです。とりわけ、供給リスクが大きいカテゴリは重点管理カテゴリとして指定し、グローバル視点でサプライチェーンの多重化やリスクヘッジ策を講じておくことがリスク回避に繋がります。
資材調達におけるリスクはDelivery/Cost/Quality/Sustainabilityの4つに大別出来ますので、各リスクに対するヘッジ策、および発生時の対策を事前に策定しておくことが必要です。また、対策によっては部署を横断した取り組みが必要になります。リスクへの迅速な対応を可能とするために、あらかじめ関係者内で対策の共有・シミュレーションをしておくことが重要です。

【図1】資材調達リスクに対するヘッジ策と発生時の対策

【図1】資材調達リスクに対するヘッジ策と発生時の対策

サプライチェーンを可視化するBOS

有事において調達戦略の策定・実行を行うためには、予めサプライチェーン全体の情報を把握しておくことが重要です。そこで実施すべき施策が、サプライヤからの情報を部材に紐づけた上で、Tier2以降(TierN)の部材情報までを調達視点の管理範囲に含めるBOS(Bill of Supplier)の整備です。

【図2】BOSの管理範囲

【図2】BOSの管理範囲

ここでは、製品の量産前/後の視点から、BOSを整備する際の具体的な施策と課題、および課題への対策をご紹介します。

量産前においては、製品・部品仕様の確定に従い、サプライヤ開拓・確定時にサプライヤへ部品種ごとのTierNリストの提出を促し、リスクアセスメントを実施する必要があります。この際、サプライチェーンの下流に行くほど納入先が広がり、管理工数が膨大化してしまうケースもあるため、完成メーカーが主導してBOS整備を推進していくと共に、部材特性・地域などでリスク強度に濃淡をつけて管理することで、管理工数を削減していくことが重要です。
海外サプライヤなど力が強いサプライヤに関しては、情報の収集が困難となることも想定されます。その場合は、完成メーカーと共同で情報収集を行ったり、メーカー支給・指定購買を行うことで、情報を取得出来るよう対策することが有効です。

量産期以降は、取引継続条件にTierNリストの提出を加え、年次計画時や仕様変更時にリスト提出を求めていくことで、情報の鮮度を維持することが重要です。中小サプライヤ・町工場など、管理体制が十分でないサプライヤをどうフォローするかという課題に対しては、緩やかな系列化や地域企業連合化を通じてIT化を推進し、管理体制を整えていく必要があります。

調達組織の機動力が事業存続の鍵

前述の通り、有事においては安定的な資材確保が調達ミッションになることから、調達組織はリスク回避を念頭に戦略的・機動的に立ち回る必要があります。そのためには、生産活動に付随する購買活動と戦略的な調達活動を分離し、調達戦略組織を事業・業務部門から独立させることで、調達戦略組織を全社的なサプライチェーンのコントロール機能へ昇華させることが重要です。加えて、調達戦略組織にはCPO (Chief Procurement Officer)を擁立し権限を付与することで、調達戦略の機動力・執行力が向上します。

【図3】調達戦略組織の独立

【図3】調達戦略組織の独立

しかしながら、現状の調達組織では、調達領域へのIT投資が実行できておらず、結果的に調達部門が日々のオペレーション業務で手一杯となり、戦略的業務へシフト出来ていないというケースが多く見受けられます。有事の今こそ、調達領域へのIT投資、業務標準化・効率化を推進し、調達組織の業務を戦略的業務へ変換することが必要です。
弊社支援経験では、調達部門の業務のうち50~70%が日々のオペレーション業務に費やされており、さらに未だに各担当者が個別に手作業で実施している業務も多く、改善余地は多いと推察します。これらの業務は、AI/RPAの活用やSSC/BPOの導入を通じた標準化と効率化・自動化を進めて行くことが大切です。加えて、ERP/EDI/サプライヤコラボレーション等のDXソリューションを用いてサプライヤを巻き込んだ効率化を推進し、調達組織が戦略的業務にシフトできるような余力創出と環境構築が重要になります。

以上のように、有事の時代においては調達戦略の再考と共に、サプライチェーン全体を俯瞰した鮮度の高い情報把握と、機動性の高い組織づくりを全社一丸となって実行する必要があります。今回ご紹介した新たな調達戦略・調達改革の詳細については、是非お問い合わせください。皆様と共に有事を乗り切る強い企業を創っていければと考えております。

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