企業データの約8割を占める
「非構造化データ」をなぜ活用できていないのか
この記事の要約
本記事では、企業データの約8割を占める非構造化データの活用方法について解説します。メール、議事録、提案書、設計書、問い合わせ履歴などに含まれる知識やノウハウを、ナレッジグラフとグラフDBによって関係性のある知識として再構成し、生成AIや業務判断に活用する考え方と手順を紹介します。
この記事を読むとわかること
- 非構造化データとは何か、企業データの約8割を占めるメール・議事録・設計書などに知識やノウハウが蓄積される理由
- 非構造化データを知識として活用できていない理由と、関連情報が散在することで文脈や判断経緯を把握しにくくなる課題
- ナレッジグラフによって非構造化データを関係性のある知識に変える方法と、生成AIに文脈や根拠を与える考え方
- 業務で使えるグラフDBを構築する方法と、ナレッジグラフが適する活用場面・既存技術との使い分けのポイント
企業データの約8割は非構造化データ
多くの企業で、日々の業務を動かしている情報は、表形式の数値データやコード化されたデータだけではありません。テキストデータの代表格であるメールや議事録、報告書、お客様とのやり取りである問い合わせ対応、図表やテキスト、数値を含んだ提案書や見積書、図面が含まれている設計書等。実はこうした非構造化データにこそ、個々の業務の判断理由や対応経緯、現場の暗黙知が含まれています。
NIST(米国国立標準技術研究所)は、近年、非構造化データの量が急増しており、そこから追加の価値を生み出す必要性が高まっていると指摘しています。さらに近年の研究においても、企業データの約8割が非構造化データと言われています。
私たちの日常の業務シーンを想像してみた場合、「類似案件の設計書を再利用したい」、「トラブル発生時に前回の対応記録や類似事例を探したい」、「問い合わせ対応時に背景を含めて正確に回答したい」といった、背景や原因、判断理由といった結果だけでは分からない情報を、横断的に探索したいというニーズが高いのではないでしょうか。基幹システムが「記録の正しさ」を担うなら、非構造化データは「判断の文脈」を担っているとも言えます。
近年の爆発的な生成AIの普及により、公開されている外部情報を検索、加工する能力は飛躍的に進化しました。しかし、企業にとって真の価値は外部公開情報ではなく、これまでに社内に蓄積された知見、経験を伴う情報にあるのではないでしょうか。今後のデータ活用の焦点は、サーバー内に眠っている情報をそのまま放置するか、意思決定と実行に役立つ知識へと変換できるかになります。そのため、今後取り組んでいくべきことは、未活用の情報を「再利用性があり、利益を生み出す資産」に変えるための仕組み作りだと考えます。
なぜ非構造化データを知識として活用できていないのか?
非構造化データを活用できていない最大の理由は、情報量が足りないからではなく、むしろ情報は十分にあっても、利用、活用するための仕組み作りができていないためです。従来の構造化された数値データを活用するための仕組みでは、非構造化データにはほとんど対応できません。
例えば、問い合わせ対応において、顧客に関する情報はCRM(顧客関係管理)システム、導入されている製品の仕様は設計書、過去のトラブル履歴は保守報告書、その対応経緯や決定事項はメールや議事録、といったように、関連する情報が関係性が希薄なままに散在していることが通例ではないでしょうか。仮にこの状態で全文検索をしたとしても、膨大な情報が引っかかり、あるいは見るべき情報が引っかからない可能性があります。「何が何の原因で発生し」、「どのように判断、対応し」、「結果どうなったのか」という文脈まで把握することができません。
非構造化データを使える知識に変える技術
少し話はそれますが、そもそもなぜ非構造化データの活用が必要なのでしょうか。企業内に存在するデータの約8割は、基幹システムには保持されていない非構造化データであると言われています。メール、議事録、提案書、見積書、報告書、設計書、問い合わせ履歴といったマルチモーダルなデータにこそ、知識やノウハウが詰め込まれています。そして企業の競争力や差別化の源泉になっているのは、こうした知識やノウハウであるに違いありません。
では、どのようにしたら非構造化データを知識として活用できる情報に変えることができるのでしょうか。ここで近年注目されている「ナレッジグラフ」という技術を紹介します。ナレッジグラフは、非構造化データを単なるエンティティの集合としてではなく、顧客、案件、課題、原因、対応策、担当者、結果といった業務上の対象をノード(点)として、相互関係をエッジ(線)で表現することにより、「意味のある繋がり」として再構成する技術です。
ナレッジグラフを活用することにより、社内情報は「個々人がその時その時のキーワードで引っかける検索対象」から、「いつでも誰でも同じ関係で辿れる知識資産」へと変わります。また生成AIに対しては、文脈と根拠を与えることができます。
【図1】業務上の知識・ノウハウは非構造化データに蓄積
ナレッジグラフ活用の基盤となるグラフDB構築
ナレッジグラフを業務で使える形にするためには、グラフDBの構築が必要になります。
以下がグラフDBの構築手順であり、この一連の流れにより、散在していた情報は関係性を持った知識として再構成されます。
<グラフDB構築手順>
① 目的定義
類似案件検索、影響範囲分析、問い合わせ対応の高度化、等、
解決したい業務課題の定義
② データソース整理
構造化データ・非構造化データのソース整理
・構造化データ:顧客マスタ、案件マスタ、等
・非構造化データ:議事録、提案書、見積書、報告書、設計書、問い合わせ履歴、等
③ オントロジー設計
顧客、案件、課題、原因、対応策、担当者、結果、等をノード(点) 、
関係性をエッジ(線)として定義
④ データ取り込み・モデル構築
OCR・AIを用いてエンティティと関係性を抽出し、表記揺れや重複を補正
⑤ グラフDB格納
出所、更新日、信頼度、権限情報、等の付与
⑥ 検証・調整
定義した目的に対し、正しく機能するかを検証・調整
ナレッジグラフの活用
ナレッジグラフは、あらゆるデータ活用を置き換える万能な技術ではありません。その真価を発揮するのは、「個々の文書を検索すること」ではなく、「複数の情報の関係性を辿り、知識として活用すること」が求められる場面です。さらに近年では、生成AIやAIエージェントに企業固有の文脈や根拠を与える基盤としても注目されています。
一方で、売上・利益の集計、定型レポートの作成、文書の保管、紙文書のデジタル化等は、BI(ビジネスインテリジェンス)、DWH(データウェアハウス)、文書管理システム、OCR(光学文字認識)といった既存技術の方が適しています。
重要なのは、ナレッジグラフを「検索ツール」や「データベース」として捉えるのではなく、企業内に散在する情報を「繋がりのある知識」として再構成し、意思決定や業務判断に活用するための基盤として位置付けることです。
レイヤーズ・コンサルティングでは、これまでお客様のデジタル改革を数多く支援してまいりました。
非構造化データの活用に踏み出したいが、具体的な進め方が描けていない、といった課題をお持ちであれば、ぜひ一度ご相談ください。貴社にとっての最適解をご提示いたします。
【図2】データの分析から、知識の活用へ
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この記事の執筆者
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小池 宗彦DX・ERP事業部
マネージングディレクター -
和田 拓磨DX・ERP事業部
シニアコンサルタント
職種別ソリューション





