2023/09/13

BPRとは?業務改善との違いや手法・導入ステップを紹介

#事業戦略
BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)は元来、企業の事業目的をより効果的・効率的に実現するために組織・業務全体を俯瞰して業務プロセスを改革することを第一義としていましたが、今では従業員の満足度や自社へのエンゲージメントを高める手法としても取り組むことがあります。人口減少時代に突入し、今後さらに国内労働人口は右肩下がりの傾向が強まっていく中、各企業は優秀な人財の確保に頭を悩ませています。業務の生産性を改善するBPRを通じて働きやすい環境を整え、ひいては従業員のやる気アップを促し、定着率の向上にもつながります。
経営者目線でも、生産性の向上と労働力の確保が見込めるBPRは事業環境を整備する格好の手法でしょう。この記事ではBPRのメリットとデメリット、導入ステップについて解説します。

1.BPRとは

BPRとは、『Business Process Re-engineering』の略称です。業務の効率性や生産性を改善・向上することを目的に、既存の組織や制度を抜本的に見直し、職務、業務フロー、管理機構、情報システムなどを再構築する業務改革を指します。現状について否定的に捉え、ゼロベースで本来あるべき体制・業務プロセスを再構築していきます。ビジネスプロセスの改善だけではなく、経営戦略をはじめ、組織制度や人事制度など経営に関わるすべての要素が対象となります。
 
BPRが広まったのは、米国で1993年に出版された書籍『リエンジニアリング革命』がきっかけと言われています。当時、景気が悪かった米国で経営改革の手法として注目を浴びました。BPRはその企業のミッション、ビジョン、バリューを実現するため、聖域を作らず、あらゆる業務、制度、組織を全社的に見直していくのがポイントです。

2.BPRと業務改善の違い

経営課題を抜本的に解決するためにビジネスプロセスを変革するBPRに対し、業務改善は業務プロセスの一つのパーツである入力作業において、手作業から自動ツールで入力する改善・効率化など、オペレーションの部分最適やコスト削減の効率化の取り組みが該当します。
BPRでビジネスプロセスを変革する際のテーマの一つに業務の効率化も含まれ、その効率化には作業レベルで検討を行う場合もありますので、BPRのパーツの一つが業務改善との見方もできるでしょう。
 
BPRは業務プロセスの改善に始まり、組織や制度も含めて全般的に変革します。これまで業務プロセスごとの業務改善は、多かれ少なかれ多くの企業で検討がなされてきました。
一方で、BPRでは企業の目標を達成するために、企業全体の組織・制度も含めて検討を行います。例えば、付加価値を高めるためには、より顧客に寄り添う形で営業活動を行うことが重要な成功要因である場合、いま以上に営業活動に投入するための余力を創出することが必要になります。そのためには作業を効率化するだけの業務改善にとどまらず、事務作業を他の組織や職種に移管するための組織の再編や人事制度の見直しまでリエンジニアリングの対象とします。

3.BPR導入のメリットとデメリット

BPRのメリットは生産性や効率性といった業務品質の向上です。いかに少ないリソースで最大の効果を得るかが、大きな狙いであるのは今も昔も変わりません。一方、以前はそこが最もフォーカスされていましたが、イキイキとした会社作りの一環でBPRを活用するのが最近のトレンドです。将来的に労働人口が縮小していく中、従業員にいかに長く働いてもらえるかは経営視点でも重要な要素です。採用するにも、新たに獲得した人財に業務内容を教え込む時間とリソース、コストがかかります。外部から新たに人財を獲得するよりも、すでに在籍する従業員に対し、BPRでの組織再編や権限移譲等の役割分担の見直しを通じて新たな仕事を提供することで活躍の場や新しいキャリアプランを提示したり、よりスムーズに業務・作業ができるようにすることで従業員の満足度を向上させ、イキイキと働たける環境を整えるほうが効果的です。
 
デメリットは、伝え方を間違えると、1990年代~2000年代に流行したリストラクチャリング(リストラ)と同じように、従業員にクビ切りやコストカットと勘違いされてしまう恐れがあることです。
また、これまでの業務や体制を変えていくことになるので、従業員には過去の“自分”や今までやってきた業務を否定されたと受け取られる可能性もあります。
BPRの狙いや目的について、従業員と密にコミュニケーションを取りながら改革を推進していくことが重要となります。

4.BPRの手法と導入ステップ

構想

BPRの最初のステップとなるのが構想を練ることです。その材料として業務のフローチャートを作成することも効果があります。業務全体の流れを可視化することで、問題がどこにあるのかを見極めやすくなります。問題は一つとは限らないので、じっくりと丁寧に分析することが大切です。この問題のあぶり出しとともに、会社の現況を鑑み、ビジョン、ミッション、バリューや経営環境を踏まえながら改革の方向性を定義していきます。
また、構想のステップは自社のあるべき姿を深掘りしていく作業とも言えます。会社が目指すべき方向性に沿って、業務の位置づけ(不要な業務は廃止、注力すべき業務の明確化等)や役割分担のあり方等を少しずつ具体論に落としていきます。

AsIs調査

現状分析に不可欠なのがAsIs調査です。業務量や組織運営の実態をあぶり出すことで、策定した構想とのギャップから課題を発見し、解決することが狙いとなります。
AsIs調査の一つには業務量調査があります。業務内容や各業務に割く時間の割合など定量的に従業員の業務実態を把握します。もう一つの調査に、従業員の満足度を測る『イキイキ度調査』があります。労働人口が縮小傾向にある中、既存の人的リソースを効率的に活用しない手はありません。従業員一人ひとりの業務への適性、職務に対する姿勢、裁量や自由度に対する考え方など定性的な情報を得ることができます。これらの定性情報は業務に前向きな人財を増やすためには欠かせません。例えば、裁量を与えるとやる気がアップする従業員には、業務を再設計する際に付加価値の高い業務を組み込んだり、ある程度の裁量を与えたりすることで前向きに業務に取り組んでもらうなど、従業員の特性に合った一手を打つようにします。定量的な業務量調査と定性的な『イキイキ度調査』を掛け合わせることで、より精度の高い現状分析を行うことができ、改革施策を検討することができるようになります。

課題発見に基づくビジネスプロセス設計

現状分析により色々な問題や課題が発見できます。その種類は大きく業務プロセス上の課題と、人事・組織の課題に分別できます。前者は業務の煩雑さや非効率性、後者は体制や業務と従業員の組み合わせ、人員配置の問題をはじめ、非効率な組織設計などが典型的な例となります。そこにDXツールを活用しながら課題解決を図るのが基本的な考え方です。
 
レイヤーズでは、業務量調査や『イキイキ度調査』の結果を深掘りして分析します。例えば、業務量調査では5時間かかる見積業務に対し、計算業務に1時間、入力業務に2時間、上司への説明を含めた申請業務に2時間と、作業別の割合も併せて確認します。作業別の時間を把握することで、新たなビジネスプロセスを立案する際、どのようなDXツールや改革手法が使えるかが整理できるのです。さらに、さまざまな部署の他の業務にある入力作業(例えば契約締結業務における契約内容の入力等)に対しても同様のDXツールを導入すれば、まるでオセロのように全社の入力作業全体を効率化することを検討することも可能になります。
また、『イキイキ度調査』の結果からは、従業員がよりイキイキと働けるように働く場所や時間を調整できる(在宅勤務制度、フレックス勤務)ように制度を導入しても生産性が低下しないように業務の割り当てを見直す等の制度や体制の変更を検討することも可能になります。

5.事例

①営業BPR

メーカーの営業担当が製品に加えて、“モノ”から“コト”へ付加価値の高いサービスを販売していきたいケースでは、営業先に製品のパンフレットを持っていくような従来の営業方法では達成できません。営業先固有の課題を検討し、それを解決する“コト”を提案して受注していくことが求められます。そのためには、1件当たりの商談時間だけでなく、社内で顧客の課題を解決するための“コト”を検討したり、説明資料を作成したりする時間も必要となります。一方、一般的に営業担当は意外と多くの雑務を抱えています。その営業事務をすべて自身で担うと、時間が取れず、付加価値の向上に足かせが出てしまいます。
 
そこでレイヤーズでは、まず営業担当につく営業アシスタントにスポットをあてます。営業アシスタントの業務に対してDXツールといったBPRの手法を使って作業を効率化することで、元々100時間を要していた業務量を70時間ほどに削減できます。その空いた30時間へ営業担当が抱える事務作業を組み込むことで、営業担当に余力を創出できるため、この余力に付加価値化のための業務に充てることにより、顧客に対して付加価値の高いサービスを提案できるようになります。

②本社・間接業務改革

本社の管理部門である経理や人事も基本的には営業部門と同じロジックで改革を進めていきます。
例えば経理部門は財務的な分析をしながら経営に利する提言を行うのが本来のあるべき姿と考えます。人事部門も採用や給与計算のみならず、従業員一人ひとりに応じて育成支援やキャリアパス設計をしていくのが本来のあり方でしょう。しかし、多くの企業ではそれができていません。
これまでのコスト削減の取り組み等により余力のない体制になっている一方で業務量は多いままになっており、手が回らないのが大きな理由です。
それらの事務業務を分析すれば、効率化できる業務が必ずあります。営業BPRと同様、DXツールの駆使以外にも、より安価な体制で実施できるようにBPOを活用する方法もあります。これらにより、100ある業務量を70程度に圧縮して30の余白を活用し、人事部門であれば、適材適所の人財の取り替えや人財戦略、経理部門では経営的な財務戦略の立案に貴重な従業員の時間と能力を使うことを促すことができます。
現状のリソースで付加価値を高めていくためにはBPRによる効率化は欠かせません。

6.まとめ

PRは企業のビジョンやミッションを実現するために改めて全社の業務プロセスだけでなく制度や組織を変革する取り組みです。これを成功させるポイントは、社内に賛同者をいかに増やせるかがカギとなります。
レイヤーズでは、BPRのメリットを宣伝する従業員を“伝道師”と呼んでいます。同じ従業員の立場からBPRの取り組みについて、「良い未来に繋がるんだ」というメリットを多くの従業員に伝えてもらう方が理解を得られます。その“伝道師”を育てていくのが理想的なプロセスです。
生産性の向上や効率化はもちろん、働きやすさ改革が叫ばれて久しい今、従業員の満足度も高められるBPRは社会的要請とも合致した手法と言えるでしょう。

この記事の執筆者

中谷 賢治
中谷 賢治
株式会社レイヤーズ・コンサルティング
事業戦略事業部
プロフェッショナルディレクター