AI時代における経営管理の変化と、人間がフォーカスすべきポイント

この記事の要約

本記事では、AIエージェント時代における経営管理の変化について解説します。生成AIからAIエージェントへの進化、マルチエージェントによる組織・レポートラインやデータ活用方式の変化、人間が意思決定にフォーカスするポイント、CFO・FP&Aの役割変化を整理します。

この記事を読むとわかること

  • AIエージェントとは何か、従来の生成AIとの違い
  • マルチエージェント時代に経営管理のレポートラインがフラット化する理由
  • AIエージェントによって経営管理のデータ活用方式がどう変わるか
  • AI時代に人間が作業ではなく意思決定にフォーカスすべき理由
AIエージェント時代と呼ばれる現代では、AIは「答える存在」から「自律的に考え、実行する存在」へと進化しています。こうした変化に伴い、経営管理や組織構造、人間に求められる役割も大きく変わり始めています。本記事では、AI時代における経営管理の変化と、人間がフォーカスすべきポイントについて解説します。

最新のAIトレンド ~AI進化の歩みと最新のAIトレンド~

生成AIの登場により、AIを取り巻く環境はここ数年で劇的に変化しています。特に大きな転換点となったのが、2023年頃のChatGPTの登場です。これを契機に、個人のAI活用が浸透し、AIは一部の専門家だけが扱う技術ではなく、誰もが日常的に活用する存在へと変わりました。

【図1】AIの進化の歩み

さらに2025年は、「AIエージェント元年」と呼ばれるほど、AIの進化が次のフェーズへ進んだ年でもあります。
実際に世界最大のTechイベントであるCESにおいてもAIエージェントやフィジカルAIが大きなテーマとなりました。
これまでのAIは人間の質問に対して答えることが中心でした。しかし現在は、自律的に考え、計画し、実行する「AIエージェント」へと進化し、いよいよ実用段階に入りつつあります。
AIは今、「答える存在」から「自ら判断し実行する存在」へと変化を始めているのです。

AIエージェントとは

AIエージェントとは、目的達成に向けて自律的に行動するAIを指します。従来の生成AIは、ChatGPTやGeminiなどに代表されるように、人間からの指示に対してアウトプットを返すものでした。一方、AIエージェントは、人間から与えられたゴールに対して、必要なプロセスを自ら考え、実行します。

ただし、現在のAIエージェントは、まだ発展途上の段階にあり、実際には一つの業務や特定領域に限定して活用されるケースが中心です。むしろ、役割を限定した方が、安定した結果を得やすいという側面もあります。しかし今後は、複数のAIエージェント同士が連携しながら業務を遂行する「マルチエージェント」の世界へ進化していくと考えられています。

【図2】将来的にはエージェント同士が連携する

例えば、営業AI、生産管理AI、財務AIなど、それぞれ専門性を持つAI同士がリアルタイムで対話しながら、全体最適を実現していく世界です。AIは単一業務を支援するだけではなく、企業全体の意思決定や業務運営そのものに関与する存在へ変化していく可能性があります。

このようにAI同士が連携し、ビジネス全体を最適化する時代になることで、会社全体の組織構造や人間の役割、さらにはCFOラインやFP&Aに求められる役割も大きく変化していくことが想定されます。
では、マルチエージェント時代において、経営管理や人間の役割はどのように変化していくのでしょうか。

経営管理の変化と、人間がフォーカスすべきポイント
① レポートラインがよりフラットに変わる

具体的にAIエージェント時代に何が変わるのでしょうか。
AIエージェントが自律的に業務を実行するということをAIエージェントが従業員の一部になると考えるならば、大きく組織構造が変わることが想定されます。
大きくは以下の3つが変わると考えています。

【図3】AIエージェント時代に何が変わるのか?

1つ目の変化として、レポートラインと組織がよりフラットに変わることが考えられます。
多くの企業では、現在も事業別・部門別の階層型組織が採用されています。現場で発生したデータは、中間管理層や各統括部門を経由しながら加工・集約され、最終的に本社FP&Aや経営層へ報告されるという構造が一般的です。しかしその過程では、独自マクロや中間ファイル、複数バージョンのレポートが乱立し、「どれが正しい数字なのか分からない」という状況が発生しやすくなります。
また、メールベースでの複雑なやり取りによって、情報共有のスピードも低下します。さらに、多くの人が介在することで、それぞれが“報告したいストーリー”に沿って数字を加工してしまうリスクも存在します。その結果、複数の“真実”が生まれてしまうことも、従来型レポーティングの大きな課題でした。

【図4】①レポートラインと組織がよりフラットに変わる(AsIs)

しかし、マルチエージェント時代になると、この構造そのものが変わる可能性があります。ERPなどのデータソースに情報が発生した瞬間、AIエージェントが自動的にデータを収集・クレンジング・分析し、必要な人へ必要な形で即時共有する世界が現実味を帯び始めています。
そうなると、多段階のレポート作成業務そのものが不要になり、「報告型組織」から「即時共有型組織」へ変化していく可能性があります。FP&A組織においても、全社FP&Aは横断的な経営管理機能を強化し、部門FP&Aは実行・改善をリードする役割へシフトしていくことが想定されます。

【図5】①レポートラインと組織がよりフラットに変わる(ToBe)

経営管理の変化と、人間がフォーカスすべきポイント
② データ活用方式が変わる

2つ目の変化として挙げられるのが、データ活用方式の変化です。これまでのデータ活用は、人間がダッシュボードや定型レポートを確認し、「何かおかしい」と気づいた後に分析を行うスタイルが中心でした。しかし実際には、自ら分析を行える人材は限られており、多くの人は決められたレポートを参照するだけに留まっていたのが実情です。そのため、本当の真因までたどり着けないケースも少なくありませんでした。

しかし現在は、生成AIやAIエージェントによって、データ活用の在り方が大きく変わり始めています。ChatGPTに話しかけるように自然言語で問い合わせを行うことで、AIが分析を実施し、必要なインサイトを返してくれる時代になりつつあります。専門的な分析スキルがなくても、自分の知りたい情報を自由に取得できる環境が整い始めているのです。
さらに将来的には、AIが常時データを監視し、必要な分析を自動実行する世界も想定されています。その中でAIが意思決定に対して直接提案を行う存在へ進化していく可能性があります。

【図6】②データ活用方式が変わる

また、従来のデータ分析では、分析前の前処理に多くの工数が必要でした。しかし今後は、AIがデータ整形や分析準備の多くを肩代わりすることで、分析スピードが飛躍的に向上していくと考えられます。

実際に、弊社のお客様でもAIを活用したデータ分析基盤のPoCを進めていますが、「想像以上に実用的である」という評価も出始めています。これまで時間を要していたデータ分析やレポーティングが、AIとの対話によって迅速に実行できるようになりつつあり、経営管理におけるデータ活用は大きな転換点を迎えています。

経営管理の変化と、人間がフォーカスすべきポイント
③ 人間の役割が変わる

3つ目は人間そのものの役割です。
AIエージェントが業務を担うようになることで、人間の役割も大きく変化していきます。これまで多くの時間を費やしていたデータ収集や前処理、集計、分析といったスタッフ業務は、今後AIによって自動化されていく可能性があります。

その結果、人間には“より上流の役割”が求められるようになります。つまり、「どの意思決定を行うべきか」「どの戦略を選択するべきか」といった、意思決定へシフトし、その意思決定のスピードも求められるようになります。AI時代において、人間の主戦場は“作業”ではなく、“意思決定”になると言えるでしょう。

一見すると、AIによって仕事が楽になるようにも見えます。しかし実際には、意思決定のスピードや責任がより重くなるため、求められる難易度はむしろ高くなる可能性があります。AIが複数の選択肢を提示する中で、「最終的にどの意思決定を行うか」を人間が担う必要があるためです。

例えばCFOには、意思決定の品質そのものに対する責任が求められるようになるでしょう。FP&A部門には、分析を行うだけではなく、「どのような判断を支援するべきか」を設計する役割が期待されます。またIT部門には、AIが正しく機能するためのデータ基盤や環境整備が求められるようになります。

【図7】③人間の役割が変わる

実際に、AIと協働する人材に関する求人も増え始めています。今後重要になるのは、「AIに仕事を奪われるか」ではなく、「AIを使いこなす側になれるか」です。

レイヤーズでは、AIエージェントおよび生成AIを活用した経営管理・業務改革支援を多数推進しています。

例えば、エネルギー会社では、人事領域における給与計算や異常値チェックを自動化するAIエージェントを構築中で、人員50%削減を目指しています。また、自動車メーカーでは、複数部門・複数システムにまたがる物流費分析業務をAIエージェントによって自動化し、PoC対象業務において業務時間の95%の削減を実現しました。
さらに、食品メーカーでは得意先に対する月次商談資料の自動生成による営業間接工数40%削減・提案の品質向上に向けた支援を行っています。
加えて、自動車部品メーカーでは顧客要求から設計仕様パラメータを生成し3Dモデル生成・解析まで行う設計AIのPoCを実施しており、開発リードタイムの70%削減を見込んでいます。

上記事例以外にも、レイヤーズでは、AIエージェント・生成AIを活用した業務改革や経営管理高度化を幅広く支援しています。AI時代の経営管理高度化をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事の執筆者

お仕事のご相談や、ご不明な点など、お気軽にお問い合わせください。
セミナー開催予定など最新ニュースをご希望の方はメルマガ登録をお願いいたします。