【第8回】
会計システムの一般会計って何のこと?(後編)
◆この記事の要約
会計システム刷新の土台となる一般会計サブシステム(仕訳帳・総勘定元帳)の標準機能を整理し、ERP/会計パッケージ導入で差が出やすい「制限」と、「導入時に確認が必要」な論点(総勘定元帳転記、他通貨対応、複数元帳、配賦機能)を解説します。
- 総勘定元帳転記:元帳残高テーブルのキー項目、更新(計算)タイミング、会計期間、ドリルダウン、年度繰越・再オープン制限を確認。
- 他通貨対応:記帳通貨と換算レート(TTS/TTB)、外貨建資産・負債の元帳残高、為替換算損益/期末評価替えの自動計算・自動仕訳を確認。
- 複数元帳/他通貨元帳:日本基準とIFRS、財務会計仕訳と管理会計用仕訳、子会社の現地通貨と円など、残高を別に計算・保持できる範囲を確認。
- 配賦機能:配賦元・配賦先、配賦基準/配賦率、非会計データ(人数・面積等)、多段階配賦、予算と実績での配賦条件差の可否を確認。
そこで今回は、ERPや会計システムパッケージによる「会計システム刷新のキホンのキ」として、会計システムにおける一般会計サブシステム(後編)についてご紹介します。
一般会計サブシステムの主要機能
会計システムの中心的な機能を果たすのが一般会計サブシステムです。会計における仕訳帳と総勘定元帳の役割を担うサブシステムを一般会計サブシステムといいます。
【図1】会計システムのシステム構成イメージ
※「一般会計」はあまり耳慣れないですが、総勘定元帳のことです。システム開発の世界で「General Ledger」を直訳し、総勘定元帳を「一般会計」と呼んだとの説もあります。
一般会計サブシステムは、会計における仕訳帳と総勘定元帳の機能を果たすため、下記の機能を基本的に保持しています。
【図2】一般会計サブシステムの主要機能
まず初めに、会計として記帳すべき取引が発生したら、会計システムに担当者が入力します。担当者が入力した仕訳を通常担当者の上長が承認します。この承認段階は複数ありますが、最終承認が終わった段階で正式な仕訳(直接修正・削除できません)となります。正式な仕訳に基づき、仕訳に関連した勘定科目の元帳残高が更新されます。
「会計システムの一般会計って何のこと?(前編)」では、仕訳入力、仕訳承認を中心に説明しましたが、今回は総勘定元帳転記、外貨の取り扱い、費用等の配賦機能などをご紹介します。
総勘定元帳転記
総勘定元帳は、元帳残高テーブルとして記録されます。元帳残高テーブルは、一定期間の総勘定元帳残高を仕訳データを元に計算し、記録(転記)していきます。
【図3】元帳残高テーブルのイメージ
元帳残高のキー項目
元帳残高テーブルの残高は、勘定科目や取引先、組織等のデータ項目に応じて細かい組み合わせで管理できます。この残高を持てる項目を「元帳残高(テーブル)のキー項目」ということもあります。
元帳残高のキー項目としては、勘定科目、取引先、組織、事業セグメント、製品、プロジェクト、ユーザー指定項目等があります。キー項目の種類や残高のキー項目の組み合わせは、ERPや会計パッケージの標準機能として制限がありますから、どのような残高が持てるか確認が必要です。
元帳残高の更新(計算)タイミング
元帳残高テーブルの残高の更新(計算)タイミングは、ERPや会計パッケージよって異なります。
例えば、リアルタイムで更新するものや、一定期間(例えば日、月ごと)に更新するものもあります。
元帳残高の会計期間
また、残高として記録する会計期間(間隔)も、ERPや会計パッケージよって異なります。
例えば、月単位で残高を記録するもの、年間で残高を記録するもの、ユーザー側の設定期間(任意)で残高を記録するものなどがあります。また、会計期間中の残高は記録せずに、計算値として表示するなどして、期首残高のみを保持するものもあります。こうした元帳残高を保持する会計期間は、会計期間の設定と関係します。したがって、元帳残高と会計期間の関係は、導入時に確認が必要です。
元帳残高のドリルダウン
総勘定元帳残高から、その残高計算の元の仕訳にさかのぼることをドリルダウン機能といいます。
どのようなドリルダウンを行えるかは、ERPや会計パッケージで異なるため、導入時に確認が必要です。
組織変更対応
組織変更時に、旧組織から新組織に残高を振り替える仕訳を自動で処理する機能がある場合もあります。この場合も、組織を合併する場合には対応できますが、組織を分割する場合には対応できないようです。
残高の年度繰越
会計年度が変わった段階で、元帳残高の年次繰越処理などの特別な処理が必要なERPや会計パッケージもあります。また、年度繰越処理により過去の会計期間が再オープンできないなど制限がある場合ものもありますので、年次繰越の内容や制限の有無などについて、導入時に確認が必要です。
他通貨対応
会計システムでは、金額を記帳するための記帳通貨を設定します。この記帳通貨以外の通貨で入力等ができることを他通貨対応といいます。他通貨対応のためには、事前に複数の通貨レートを設定しておくことが必要です。また他通貨対応の内容は、ERPや会計パッケージで異なるため、導入時に確認が必要です。
外貨建取引の仕訳入力
ある組織で設定された記帳通貨が、入力時のデフォルトの通貨になります。
外貨建取引の仕訳入力においては、このデフォルトの記帳通貨以外の取引通貨で入力ができます。
例えば、記帳通貨が円の場合、ドル建で入力しても、換算レートを用いて、円換算した記帳ができます。また、換算レートを複数もち、取引に応じてTTSやTTBなどに換算レートを変えることができるものもあります。
外貨建資産・負債の元帳残高
外貨建取引をした場合、外貨建で計算する必要がある資産・負債(主に金融商品)について、元帳残高を外貨建で保持できるものもあります。また、債権サブシステム、債務サブシステム、資金サブシステム等では、外貨建資産・負債について計上明細単位で増減を管理できるものもあります。
【図4】外貨建元帳残高テーブルのイメージ
外貨建資産・負債の換算損益
外貨建資産・負債を他の通貨に変えた場合、為替換算損益が発生します。外貨建て取引における換算損益を自動計算・自動仕訳できるものもあります。また、一般会計サブシステムと債権サブシステム、債務サブシステム、資金サブシステム等では、為替換算損益の計算ロジックが異なる場合があるため、導入時に確認が必要です。
外貨建資産・負債の期末評価替え
外貨建資産・負債の期末残高に対して、期末日レートで評価替えを行い、評価差益を自動計算・自動仕訳できるものもあります。また、一般会計サブシステムと債権サブシステム、債務サブシステム、資金サブシステム等では、為替評価損益の計算ロジックが異なる場合があるため、導入時に確認が必要です。
複数元帳
IFRSを採用している場合、日本基準での会計処理とIFRSでの会計処理をそれぞれ行う必要がある場合が発生します。この場合、日本基準の仕訳とIFRSの仕訳を入力でき、それぞれ日本基準の残高とIFRSの残高を別に計算できる複数元帳機能を持つERPや会計パッケージもあります。
【図5】複数元帳のイメージ
複数元帳機能は会計基準だけでなく、財務会計仕訳と管理会計用仕訳といったように、ユーザーの要件に応じて設定できるERPや会計パッケージもあります。
他通貨元帳
記帳通貨とは別の通貨での元帳(他通貨元帳)を設定できる場合もあります。
例えば、親会社が日本で円を記帳通貨にしているが、子会社は所在地の通貨を記帳通貨にしている場合、子会社の元帳残高が現地通貨と円で持てるといったことです。
【図6】他通貨元帳のイメージ
グローバルに展開している企業では便利な機能ですが、これもERPや会計パッケージで異なるため、導入時に確認が必要です。
配賦機能
配賦機能とは、元帳残高(勘定科目、組織等)を、他の組織や勘定科目に配賦できる機能です。
配賦を行うためには、事前に配賦元の勘定科目・組織などは何か、配賦先の勘定科目・組織などは何か、配賦基準や配賦率はどうするのかを設定することが必要です。配賦基準としては、会計データ以外に非会計データ(人数、面積など)を持てるものが一般的です。
配賦機能として、多段階に配賦(複数回、順序を持って配賦)する機能がある場合もあります。
また、配賦前と配賦後の比較をするために、配賦仕訳を通常仕訳と区分して集計が行えるものもあります。会計システムのデータとしては、予算と実績があるので、それぞれ同じ配賦条件または異なる配賦条件で配賦できるものもあります。それゆえ配賦機能は、ERPや会計パッケージで異なるため、導入時に確認が必要です。
まとめ
今回は、ERPや会計システムパッケージによる「会計システム刷新のキホンのキ」として、会計システムにおける一般会計サブシステム(後編)についてご紹介しました。今後の会計システム刷新は、ERPや会計パッケージに限らず様々なクラウドサービスやAIサービスを活用して「真に経営に資する情報システム」として実現する必要があります。レイヤーズ・コンサルティングでは多数のご支援実績を持っておりますので、個別のERPや会計パッケージ、クラウドサービスの活用のポイントについては、是非お問い合わせください。


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この記事の執筆者
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村井 泰三経営管理事業部
バイスマネージングディレクター -
山本 晶代経営管理事業部
ディレクター -
飯田 稜大経営管理事業部
シニアマネージャー
職種別ソリューション


