
FP&Aのキホンのキ ~そもそも原価って何?~
そこで今回は、FP&Aのキホンのキとして原価管理や原価計算の基本となる「原価とは何か?」をご紹介します。
原価にはどんな本質があるのか?
原価とは、簡単にいえば製品やサービスを顧客に提供するためにかかった費用のことです。
企業会計審議会が定めた「原価計算基準」では、下記のように定義されています。
原価とは、経営における一定の給付にかかわらせて、は握された財貨または用役(以下これを「財貨」という。)の消費を、貨幣価値的に表わしたものである。
※企業会計審議会制定の「原価計算基準」より抜粋
また、「原価計算基準」では原価の本質として【図1】のように4つを挙げています。
【図1】原価の本質
(一) 原価は、経済価値の消費である。経営の活動は、一定の財貨を生産し販売することを目的とし、一定の財貨を作り出すために、必要な財貨すなわち経済価値を消費する過程である。原価とは、かかる経営過程における価値の消費を意味する。
(二) 原価は、経営において作り出された一定の給付に転嫁される価値であり、その給付にかかわらせて、は握されたものである。ここに給付とは、経営が作り出す財貨をいい、それは経営の最終給付のみでなく、中間的給付をも意味する。
(三) 原価は、経営目的に関連したものである。経営の目的は、一定の財貨を生産し販売することにあり、経営過程は、このための価値の消費と生成の過程である。原価は、かかる財貨の生産、販売に関して消費された経済価値であり、経営目的に関連しない価値の消費を含まない。
財務活動は、財貨の生成および消費の過程たる経営過程以外の、資本の調達、返還、利益処分等の活動であり、したがってこれに関する費用たるいわゆる財務費用は、原則として原価を構成しない。
(四) 原価は、正常的なものである。原価は、正常な状態のもとにおける経営活動を前提として、は握された価値の消費であり、異常な状態を原因とする価値の減少を含まない。
※企業会計審議会制定の「原価計算基準」より抜粋
上記のように、原価には様々な概念がありますが、ここでは下記【図2】についてご紹介します。
【図2】原価の種類
製品原価と期間原価とは何か、どう違うのか?
原価には、収益との対応関係(期間対応)から、製品原価と期間原価に分かれます。
【図3】製品原価と期間原価
原価は、財務諸表上収益との対応関係に基づいて、製品原価と期間原価とに区別される。
製品原価とは、一定単位の製品に集計された原価をいい、期間原価とは、一定期間における発生額を、当期の収益に直接対応させて、は握した原価をいう。
製品原価と期間原価との範囲の区別は相対的であるが、通常、売上品およびたな卸資産の価額を構成する全部の製造原価を製品原価とし、販売費および一般管理費は、これを期間原価とする。
※企業会計審議会制定の「原価計算基準」より抜粋
一般に財務諸表においては、製品原価は、損益計算書の売上原価と貸借対照表の棚卸資産として計上され、期間原価は、損益計算書の販売費および一般管理費として計上されます。
全部原価と部分原価とは何か、どう違うのか?
原価には、集計される原価の範囲から、全部原価と部分原価に分かれます。
【図4】全部原価と部分原価
原価は、集計される原価の範囲によって、全部原価と部分原価とに区別される。
全部原価とは、一定の給付に対して生ずる全部の製造原価またはこれに販売費および一般管理費を加えて集計したものをいい、部分原価とは、そのうち一部分のみを集計したものをいう。
部分原価は、計算目的によって各種のものを計算することができるが、最も重要な部分原価は、変動直接費および変動間接費のみを集計した直接原価(変動原価)である。
※企業会計審議会制定の「原価計算基準」より抜粋
要するに原価の集計対象が、全ての原価を対象としていれば全部原価、一部の原価を対象としていれば部分原価になります。ただし、先ほどの製品原価と期間原価の区分けも留意しなければいけません。期間原価である販売費および一般管理を含まない製品原価である製造原価に対して、全ての原価を対象としていれば全部原価、一部を対象としていれば部分原価という場合もあります(実務的には製品原価を対象に全部原価、部分原価ということが多いといえます)。
実際原価と予定原価とは何か、どう違うのか?
原価には、価格および消費量の算定基準を実際にするか予定にするかによって、実際原価と予定原価に分かれます。
【図5】実際原価と予定原価
原価は、その消費量および価格の算定基準を異にするにしたがって、実際原価と標準原価とに区別される。
1. 実際原価とは、財貨の実際消費量をもって計算した原価をいう。ただし、その実際消費量は、経営の正常な状態を前提とするものであり、したがって、異常な状態を原因とする異常な消費量は、実際原価の計算においてもこれを実際消費量と解さないものとする。
実際原価は、厳密には実際の取得価格をもって計算した原価の実際発生額であるが、原価を予定価格等をもって計算しても、消費量を実際によって計算する限り、それは実際原価の計算である。ここに予定価格とは、将来の一定期間における実際の取得価格を予想することによって定めた価格をいう。
2. 標準原価とは、財貨の消費量を科学的、統計的調査に基づいて能率の尺度となるように予定し、かつ予定価格または正常価格をもって計算した原価をいう。この場合、能率の尺度としての標準とは、その標準が適用される期間において達成されるべき原価の目標を意味する。
※企業会計審議会制定の「原価計算基準」より抜粋
原価計算基準では、予定原価の代表として標準原価が示されていますが、一般的には実際原価に対するものとしては予定原価と考えてください。予定原価には、実務的には何のための予定かによって、予算原価(予算策定のための予定原価)、見積原価(価格決定のための予定原価)、標準原価(原価の目標管理のための予定原価)などと呼ばれています。いずれにしても、予定原価は、予定価格×予定消費量によって計算された原価になります。また、原価計算基準に示されているように、実際原価は実際価格×実際消費量だけでなく、予定価格×実際消費量で計算された原価を含むことには注意してください。
個別原価と総合原価とは何か、どう違うのか?
製品原価には、原価の集計単位によって個別原価と総合原価に分かれます。
【図6】個別原価と総合原価
個別原価は、原価の集計単位が特定の製品単位です。総合原価は、原価の集計単位が期間生産量です。個別原価でいう特定の製品単位は、単に特定の製品1個を指すというよりも、特定された製品の集合体を指すものと捉えてください。
なお、個別原価と総合原価の詳細については、別の機会でご紹介します。
原価の種類のまとめ
個々では製品原価を、全部原価と部分原価、実際原価と予定原価、個別原価と総合原価の観点からまとめると以下の【図7】のようになります。
【図7】製品原価における原価の種類
したがって、原価の組合せとしては下記に8つなります。
① 全部原価×実際原価×個別原価
② 全部原価×実際原価×総合原価
③ 全部原価×予定原価(標準原価)× 個別原価
④ 全部原価×予定原価(標準原価)× 総合原価
⑤ 部分原価×実際原価×個別原価
⑥ 部分原価×実際原価×総合原価
⑦ 部分原価×予定原価×個別原価
⑧ 部分原価×予定原価×総合原価
原価計算制度としては、製品原価は全部原価が前提になるため、財務会計上は①~④が採用されます。また、原価計算基準では、予定原価を標準原価としているため、③と④の予定原価は標準原価になります。
今回は、FP&Aのキホンのキとして原価管理や原価計算の基本となる「原価とは何か?」をご紹介しました。詳細については別途お問い合わせください。




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この記事の執筆者
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上山 吾郎経営管理事業部
マネージングディレクター -
佐藤 美穂子経営管理事業部
ディレクター -
徳永 大経営管理事業部
シニアマネージャー
職種別ソリューション