FP&Aへの旅

FP&A導入の土台となる経営情報基盤構築

FP&A(Financial Planning & Analysis)の導入を目指す日本の企業はここ数年増加しています。
しかし、FP&Aの導入を目指し、情報基盤の構築を進める企業の中で、本当の意味で経営の意思決定に役立つ経営情報基盤を構築し、またそれらを充分に利活用できている企業はどのくらいあるでしょうか。
そこで今回は、経営情報基盤の構築のポイントと、今後FP&Aに求められる経営情報基盤の機能についてご説明した後、経営情報基盤を確立しようとしている当社のご支援先の事例を紹介いたします。

経営情報基盤構築のためのシステム構成

経営情報を分析する際に、「品目」「仕向け先」等の情報が必要だけれども、会計システムのデータだけでは不足の場合、フロント側のシステムで保持している事業明細データを持ってくる必要があります。

一つの方法として、財務会計に使う会計システムと、管理会計に使う統合データベースに対し、それぞれ各フロントシステム側からのI/Fを構築する方法が考えられます。しかしこの方法では、システムが非常に複雑になってしまいますし、財務会計と管理会計でデータの不一致が起こる可能性もあります。

もう一つの方法として、財務会計と管理会計でデータを一致させるために、会計システムに明細データを持たせるという方法があります。構成としては綺麗で、会計システムと経営情報基盤との整合性も担保されます。ただし、そもそも会計システムに手を加えるのは、システム刷新のタイミングでないと難しいでしょうし、できたとしても仕訳量が何十倍にも増え、業務負荷が増大する懸念があります。

そこである企業では、フロントシステムから財務会計に使う会計システムと、管理会計に使う統合をデータベースに、必要なデータを流すアーキテクチャを採用しました。
この方法では、上記二つの方法であがっている懸念点をどちらも払拭できます。

【図1】経営情報基盤構築のためのシステム構成

意思決定プロセスの変革

FP&Aを導入する際には、情報基盤の構築だけでなく、意思決定プロセスも同時に見直す必要があります。意思決定のタイミングが少ないと、せっかく鮮度の高いデータがあっても、そのデータを活用する機会が限られてしまいます。例えば、事業環境が急速に変化している中で意思決定が遅れると、競争優位性を失うリスクが高まります。気づいた時には手遅れとなり、他社に先を越されることも考えられます。

一方で、意思決定のタイミングが多いと、こまめに最新データを参照しながら軌道修正を行うことが可能になります。これにより、状況に応じた柔軟な対応が可能となり、必要に応じて戦略を見直すことができます。タイミングを増やすことができれば、変化に素早く対応できることに加え、もしあらぬ方向へ行きかけたとしても、やり直しが効きやすくなります。

特に、VUCAといわれる変化の激しい今は、意思決定のタイミング・スピードは重要です。
経営側としては、現場から時間をかけて正確無比な情報を報告させるのではなく、時にスピードを重視し、7割~8割の精度でもアラートレベルで報告させるといった、より執行を重視した経営サイクルに変えていく必要があると思います。

【図2】意思決定プロセスの変革

事例:FP&Aを支える経営情報基盤の整備

ここまでご紹介したシステム構成や、意思決定プロセスの改革などのポイントを踏まえ、経営情報基盤を構築している当社のお客様の事例をご紹介します。
この事例では、社内の各種オペレーションデータなどのOデータ、顧客情報などのXデータ、さらには自社だけではなく関連会社の各種データなどを集め、財務・非財務の明細データを一元管理します。

そのデータプラットフォーム上に、中計から連動した連結での予算策定→実績収集→見込みに関するシミュレーションができるような仕掛けと、それを裏付けるための施策の管理とKPIの視える化を実現することで、それらをもとにFP&Aや経営陣、各事業がデータドリブンに意思決定を行い、施策を実行することができます。FP&Aを支える経営情報基盤というと、理想はまさにこのような形であると思います。

【図3】事例:FP&Aを支える経営情報基盤整備

FP&Aに求められる経営情報基盤の機能

最後に、AIが世間のホットワードとなり、経営において分析手法が大きく変わる可能性を秘めている昨今、今後FP&Aに求められる情報基盤の機能を6つご紹介します。

【図4】FP&Aに求められる情報基盤の機能

① データ連携機能:
異なるシステムやデータソースから情報を統合し、一元的に管理するための機能です。
例えば、ERP・CRMシステムからのデータを自動的に取り込み、分析に活用することも可能になります。

② 明細データ保持機能:
詳細なトランザクションデータを長期間にわたり保存する機能です。
これにより、過去のデータを基にした分析やトレンドの把握が可能となります。

③ 連結機能:
連結予実や連結製品別損益など、企業全体のパフォーマンスを把握することを可能にします。
グループ横串での戦略的な意思決定を行うために必要不可欠な機能です。

④ BI機能:
データの可視化や分析を行うための機能です。
ダッシュボードやレポートを通じて、迅速に予実差異の推移や異常値を確認し、要因分析できます。

⑤ 計画・シミュレーション機能:
予算策定や、最適な戦略の検討のための様々な条件下のシミュレーションを可能にします。

⑥ AI機能:
分析や予測の精度を向上させたり、単純作業を自動化させたりするといったことを可能にします。
業務の効率化が進めば、シナリオや施策の検討など、より戦略的な活動にリソースを集中できます。

今後はこれらの機能を視野に入れつつ、経営情報基盤の構築やさらなる高度化を目指し、変革を進めていく必要があります。

今回は、経営情報基盤の構築のポイントと、今後FP&Aに求められる経営情報基盤の機能について事例を踏まえてご紹介しました。詳細については、是非お問い合わせください。

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この記事の執筆者

  • 富重 成顕
    富重 成顕
    経営管理事業部
    マネージャー
  • 矢島 紀保
    矢島 紀保
    経営管理事業部
    シニアコンサルタント

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