CFO革新

FP&A組織の未来を切り開くために
~実務家部隊を生まれ変わらせる!~

現状の経理財務組織からFP&A組織を目指していきたいという想いをお持ちの方は多くいらっしゃいます。しかし、その想いをお持ちでも、膨大な実務が目の前にあると実務をやりきることに工数が割かれてしまい、組織として何を求めどのようなバランスで配置すべきか等をお困りではないでしょうか。
そこで今回は、組織の形を自社にあった形で構想し、FP&Aに注力できる組織になるためのエッセンスをご紹介いたします。
 
【CFO組織とは】
CFOを核に熱き思いと冷徹な計算で企業価値創造をドライブする集団
広くは、経営戦略、経営管理、財務会計、ファイナンス戦略、税務戦略、内部統制、リスクマネジメント、監査、サステナビリティ、IR等の領域を担当

CFO組織の役割と現状

現状の日本企業の構造は縦割りとなっている体制が多く、CFOと経営企画、事業部門が分断され、コミュニケーションが取りづらい環境になっていることも多いのではないでしょうか。そのため、CFO組織は通常、事業部門の中の様々な意思決定にはあまり関与することができない実情があると思います。

しかし、あるべき姿としてはCFOが経営企画を統括し、事業部門・CHROと連携し望ましい意思決定に関与することで、経営の高度化を図っていかなければなりません。コーポレート部門に加え、各部や拠点・子会社に対してもFP&Aを配置し、意思決定に関与・コントロールする役割を担える体制の構築を目指すことが必要です。

【図1】事業部FP&Aのレポートライン

各事業部に設置された事業部FP&Aは、事業部の中で事業部の目標達成のために活動する一方で、CFOの命を受けて全社最適の観点から望ましい意思決定を事業部長が行えるように事業部をコントロールする役割を担います。したがって、事業部コントローラー機能=CFO組織による横串機能が実現されます。

ただし、あるべき姿を目指すにあたっては大きな壁があります。CFO組織における必要機能を当社では御三家モデルと称し、戦略家、専門家、実務家の3つに分けて考えておりますが、現状は実務家(オペレーション機能)が大半を占めています。戦略家(ビジネスアドバイザー機能)、専門家(専門家・企画機能)業務へリソースをシフトしていく必要があります。特に、FP&A組織を推進するにあたっては、専任で戦略家を登用していくことが非常に重要です。一部でも、実務家としての役割を担ってしまうと、ピーク時の対応や普段のなじみのある業務への取り組みに注力してしまい、期待しているほどの効果が見いだされないためです。

CFO組織のミッションの定義

上述のとおり、FP&A組織の推進には戦略家や専門家機能にリソースをシフトすべきですが、実務が目の前にあるとそちらに注力してしまい、実務家機能がリソースの大半を占めてしまいがちです。このようなことを避け、自社にあった配置を検討するためには、経営層や他部門からの期待を反映・加味したうえで、CFO組織のミッションを再定義することが重要です。

【図2】経理財務部門のミッション再定義

今までの経理財務部門の主たる役割は、伝票処理や連結決算等の「期限内に正しい数字を作り出す」実務家としての意味合いが強いものでした。今後FP&A組織として企業価値向上のために意思決定に関与していくためには、実務家部隊から戦略家部隊となる人材を醸成していく必要があります。具体的には、事業部門やグループ各社に対して計数での評価・助言者、事業業績のアナリスト、資金戦略の指南役、各組織の駆り立て役に慣れる人材を目指していくべきです。
実際に、一部の企業様ではCFOの直下に、戦略家部隊を配置しグループ会社も含めローテーションしながら戦略家人材を配置し、意思決定にCFO組織が関与できる体制の構築を目指している事例もございます。

次世代SSCやBPOを利用した効率化

CFO組織のリソースを実務家から戦略家へシフトするためには、オペレーション業務の効率化や削減、外部化により余力を生み出す必要があります。その推進役として次世代型SSCの組成が重要です。次世代型SSCとは、コスト削減が主眼ではなく、業務の高度化と業務の継続性を担保できるよう実務領域において常に最適な実施方法を検討し推進する部隊を指しています。

【図3】従来のSSCと次世代型SSC

従来型SSCはコスト削減を目指し、いかに安い賃金で効率的に業務を行うかに注力していました。したがって、業務の受け皿となる認識しか生まれず、単純反復作業などいわれたとおり忠実に実行することが求められ、社員のモチベーション低下・流出・採用力低下等の問題を抱えておりました。そのような従来型SSCではなく、自己改善機能を持つ次世代型SSCとして、実務領域の舵取り役として実行できる部隊を目指していくことが重要です。その際には、単純反復作業については内製化だけではなくアウトソーシング(BPO)も踏まえた検討も行い、最適な実務のやり方を検討していくべきです。

リソースシフトにより生まれた人員は各社へ配置し、意思決定に必要な情報の調整、SSC内でのレポーティング等の分析業務、準間接業務(調達・購買・物流等)の集約及び更なる標準化・効率化を行います。上記の取り組みにより、戦略に携わるべき本社/各社の人材が、戦略や経営判断・意思決定に注力できる環境の実現が目指せます。

企業により異なる適正な機能配置

リソースシフトの実現にあたっての手段として、SSCの設置やBPOの活用についてご紹介いたしましたが、どのような組み合わせが正解となるかは業態や目的によって異なります。SSCの設置やBPOの活用を目的としないためにも、グループの業種的特徴/目的に応じて、生産性向上のための適正な配置について検討する必要があります。レイヤーズでは以下のとおり子会社の規模、業界範囲を指標として4つに区分できるのではないかと考えております。

【図4】機能配置の検討パターン

まず、子会社の規模が大きく業界が単一な①の場合、親会社と同じ運用プロセス・システムへの集約統一が目指しやすいため、親会社による集約とBPOの活用により、集約化効果及び大幅コスト削減を期待できます。
次に、子会社の規模が大きく業界も多岐にわたる②の場合、グループ個社独自の文化・背景に依存するため、パターンを設ける必要があります。SSCを設置し、パターンに応じた業務プロセスの確立とBPOの活用により、集約化効果、大幅コスト削減、業務リスク低減を期待できます。
3番目に、親会社に対して子会社の規模が小粒で業界が単一な③の場合、戦略家・専門家機能のみ本社に集約している場合もあります。実務家機能については規模が違いすぎるため親会社の方法がマッチしないケースも多く、集約するよりもそのままBPOを活用することで、早期のコスト削減及び業務の継続性の担保を期待できます。
最後に、親会社に対して子会社が小粒で業界も多岐にわたる④の場合、SSC子会社設置により、ガバナンス強化、グループの業務継続性担保を期待できます。

以上、①~④の4区分については、親会社のやり方にグループ全体として統一化が目指しやすいか、パターンを設ける必要があるか、現有人材による業務の継続性の担保ができるのかがポイントとなります。機能配置についての正解は各社によって異なるため、上記のような状況と目指したい目的にしたがって、再配置の検討を行うことが重要となります。

高度化に向けたアプローチ

最後にリソースシフトのために、SSCをどう高度化していくかについてご紹介いたします。
高度化に向けた基本的なアプローチとしては、集約→余力創出→リスキル→改革実行の4段階になります。まずは、人や業務を集約し、集約した業務のうち定型化しやすいものをBPO化することで余力を創出します。次に、創出された余力を利用して改革に必要なリスキルプログラムを実行し、改革を実行します。改革のポイントとしては、SSCに残した業務については機能別担当制とし、業務改善を図りやすくすること、自己改善機能の保持・強化のため全社員で取り組むべきテーマ設定・更新や業務改革の検討・実行に時間を割くことです。これらの基本的なアプローチのサイクルを繰り返すことで、高度化を推進していきます。

【図5】高度化に向けた基本アプローチ

高度化の促進のためには、業務の集約や均一化のために基盤を整える必要があります。例えば、個社によって制度・ルールが異なると、業務がバラバラになってしまっています。制度・ルールを整えることで業務を均一化し、集約することが可能となります。
このように、業務や制度・ルール、組織等のグループ共通の業務基盤を整えることで、高度化をスピーディーかつ柔軟に実施することが可能となります。高度化への取り組みはやりっぱなしにしないことが重要です。行った改革や取り組みは定量評価または定性評価を行い、KPI管理することにより、更なる高度化につながります。

 

今回は、FP&A組織を目指すにあたって、現在の実務部分をどう考えていくかについて述べさせていただきました。文中でも触れさせていただいたとおり、各企業によって正解は異なります。しかし、今後の労働人口等も加味すると以下に実務部分を高度化し、人数をかけずに行っていくかは非常に重要なテーマになると思います。是非取り組みに悩まれている際には、お気軽にお問い合せください。

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