FP&Aの価値を最大化させるためのデータ基盤整備

近年、FP&A(Financial Planning & Analysis)という言葉を耳にすることが多くなりました。
欧米企業では一般的に導入されているFP&Aですが、日本企業においてもここ数年で導入企業が増加しています。
しかし、FP&Aの存在意義を理解し、経営の意思決定に役立てている企業はどれくらいあるでしょうか。
今回は、FP&Aの真の価値を3つのポイントとともにご紹介いたします。

FP&Aを配置したCFO組織の理想形

近年、FP&A(Financial Planning & Analysis)が日本企業でも注目を集め始め、導入率は徐々に増加しています。

【図1】日米の経営管理組織比較

しかし欧米企業と比較すると、FP&AをCFOラインに直結させ、経営管理の中核に組み込むという組織形態は日本ではまだ一般的ではなく、戦略的経営を支える理想形とされています。

欧米先進企業では、CEOの下にCFOが配置され、FP&AがCFOラインに直結する構造が一般的です。FP&Aは経営陣と各部門を結び、リアルタイムの財務分析を行い、戦略的支援を提供します。これにより、企業全体のパフォーマンスを監視・支援し、俊敏な意思決定を可能にします。
FP&Aが事業CFOと連携し、事業部門にも配置されていることが多く、二重レポート体制で各部門の戦略と実行をサポートします。この仕組みは迅速な情報伝達を促し、全社戦略の遂行における一貫性を生み出します。

一方、日本企業ではCFOの下に経理・財務部門があり、本社の経営企画と事業部門の計数管理が分断されることが多いです。そのためFP&Aの役割が十分に発揮されず、経営計画の具現化や部門連携が弱い傾向にあります。この結果、情報共有の遅れや戦略の一貫性が欠如する場合が多く見られます。

FP&Aを効果的に配置し、本社と事業部の連携を強化することが、日本企業に求められています。単に欧米流の模倣ではなく、自社の経営目標に適した組織設計が重要です。

FP&Aを戦略的に組み込むことで、経営全体の可視化、迅速な意思決定支援、予測精度の向上が実現し、企業の競争力を高めることができるのです。

FP&Aの役割と価値

FP&Aの真の価値は、企業の「ビジネスパートナー」としての役割を果たし、「マネジメント・コントロール・システムの設計および運用」を支えることにあります。
これは、単に組織にFP&Aを配置するだけでは達成できません。真のビジネスパートナーとなるためには、財務の視点を持ちながら現場の近くで業務に深く関わり、意思決定のリーダーシップを発揮する必要があります。

【図2】FP&Aの役割

「真のビジネスパートナー」のフレームワークは、FP&Aが企業内でどのような存在であるべきかを示しています。
FP&Aは単なるサポート役ではなく、意思決定の当事者としてリーダーシップを発揮し、意思決定を委任され、プロセスに参加することで、信頼と尊敬を獲得します。
このポジションは付加価値を生み出し、意思決定への影響力を最大化することで、企業の中長期的な成長を実現します。
最も価値の低い無関連な立場から、信頼され、尊重されるパートナーへと進化することが求められるのです。

「マネジメント・コントロール・システムの設計者および運営者」としてのFP&Aの役割は、組織全体の戦略を実行に移し、管理者としての影響力を発揮するために不可欠です。
目標や業績指標を設定し、進捗をモニタリングして報告を行い、計画の作成やアクションを決定し、業績を評価してフィードバックを行うといった一連のプロセスを通じて、FP&Aは業務を監視し、振り返り学習を通じて組織の成長を支援します。この循環的なプロセスを設計・運用することで、FP&Aはビジネス全体のパフォーマンス管理に大きく貢献します。

FP&Aが「真のビジネスパートナー」として組織に根付くためには、ファイナンスの知見をもって事業に深く入り込み、戦略的な意思決定に参加し、変化への追従性を高めることが必須です。
こうした取り組みにより、FP&Aは企業の経営パートナーとして、価値を最大化させる存在となるのです。

FP&Aの価値最大化の3つのポイント

FP&Aの価値を最大化するためには、具体的なアプローチが必要です。本章では、そのための3つのポイント「型作り」「解像度」「連動性」に焦点を当てて説明します。

1. 型作り
FP&Aの基盤を形成するために必要な「型作り」は、【図3】に示されている「FP&Aの12の原則」によって示されます。これらの原則を体系化し、標準的なフレームワークとして組織全体に適用することで、FP&Aの価値は格段に高まります。
型がしっかりと整備されると、KPIの変化を素早く検出し、その影響を迅速に分析して即座に対応策を実行できるようになります。こうした初動の速さは、経営における意思決定の精度向上につながり、全社的なデータ活用の品質保証にも寄与します。結果として、企業は市場の変化に柔軟に対応でき、競争力を高めることができます。

【図3】FP&Aプロセスの12の原則

2. 解像度
情報の質と量を高めるためには「解像度」の向上が欠かせません。【図4】が示すように、解像度は深さ・広さ・構造・時間の4つの視点から考えることが重要です。
深さは根本原因や詳細な分析を意味し、広さはさまざまな観点から情報を包括的に捉えることです。
構造は要素間の関係性を把握し、時間軸は将来の変化を見据えた視点を持つことを指します。
これらの視点を組み合わせることで、FP&Aは単なるデータ分析を超え、企業全体の戦略的意思決定を支援するためのより具体的なインサイトを提供できます。結果として、企業は計画策定や予測においてより高い精度と深みを持つことが可能になります。

【図4】解像度を考える4つの軸

3. 連動性
最後に、連動性は経営管理業務の効率と精度を高める重要な要素です。【図5】にあるように、日本企業にありがちなExcelの数珠繋ぎによる計画業務は、透明性の欠如や人的エラーリスク、スピードの遅さといった課題を抱えています。
これに対し、今後求められるのは、xP&A(Extended Planning & Analysis)システムによってデータを連携・連動させ、業務をスムーズに進める体制です。
これにより、予算業務が効率化され、計画と実績の解像度が一致するため、部門間の協調が容易になり、迅速な対応が可能となります。数ヶ月かけて予算を策定し、手動で調整する従来の方法では、有事の際に迅速な再計画は困難です。しかし、データ連携が確立されれば、経営管理業務のスピードと正確性が飛躍的に向上します。

【図5】一般的な計画業務と今後求められる計画業務

このように、FP&Aが型を持ち、解像度を高め、連動性を強化することで、企業は経営の俊敏性を手に入れ、長期的な成長を実現するための基盤を築けるでしょう。

FP&Aを支えるデータ基盤整備

企業が真のデータドリブンな経営を実現するためには、FP&Aを支えるデータ基盤の整備が欠かせません。

【図6】FP&Aを支えるデータ基盤整備

【図6】に示されているような、複雑な情報を包括的に管理できるデータプラットフォームを構築することで、経営意思決定の質を高めることができます。
現状、弊社のお客様の中には、このようなデータ基盤の構築に着手している事例が増えています。
この基盤では、社内のオペレーションデータ(Oデータ)、顧客情報や従業員のフィードバックなどの経験データ(Xデータ)、さらには関連会社のデータまでも統合され、一元管理されています。これにより、財務データと非財務データの両方が揃い、組織全体でのデータ活用が強化されます。

この統合されたデータプラットフォーム上には、中期計画からの予算策定、実績収集、見込シミュレーションなどの機能を持つアプリケーションが構築されます。これにより、予算の策定や修正がスムーズに行えるだけでなく、施策の管理とKPIの可視化が実現され、戦略的な管理プロセスが標準化されます。特に、これらのプロセスを支える施策管理は、組織が計画の遂行をリアルタイムでモニタリングし、適宜修正するための重要な仕組みです。

こうしたデータ基盤は、FP&Aチームのみならず、経営陣や各事業部門にも広く活用されます。経営層はこの基盤を通じて分析と洞察を得て、データドリブンな意思決定を迅速かつ的確に実行することができます。FP&Aが経営のアクセルやブレーキとして適切な提案や判断を下せるのは、このような高品質なデータに基づくものです。

FP&Aが活躍できる環境を整えることで、企業は市場変化に対して柔軟に対応し、持続的な成長を目指せるのです。

FP&Aを導入したがうまく機能していない、どのようなデータ基盤を構築してよいかわからないといったお悩みをお持ちの方、是非お問合せください。

ソリューションに関するオンライン相談ソリューションに関するオンライン相談 最新情報をお届け!メルマガ登録最新情報をお届け!メルマガ登録

この記事の執筆者

お仕事のご相談や、ご不明な点など、お気軽にお問い合わせください。
セミナー開催予定など最新ニュースをご希望の方はメルマガ登録をお願いいたします。