会計システム刷新

【第15回】
原価管理ってシステムでどうやるの?(中編)

◆この記事の要約

本記事では、会計システム刷新の成否を握る「原価管理サブシステム」の仕組みと、具体的な計算処理のシステム実装手法がわかります。ERPや会計パッケージ導入時に検討すべき原価管理サブシステムの役割を整理し、費目別・部門別・製品別という原価計算の手続きに加え、実務で広く使われる「プロジェクト別実際原価計算」と「指図書別実際原価計算」について、データ連携や処理プロセスを具体的に解説します。

  • 原価管理サブシステムの主要機能:生産管理や会計システムと連携し、費目別計算・部門別計算・製品別計算の3段階で原価計算を実施し、原価の見える化を実現。
  • プロジェクト別実際原価計算処理:一品一様の製品やソフトウェア開発に対し、プロジェクト単位で直接費・加工費を集計し、完成時に売上原価へ計上する流れを提示。
  • 指図書別実際原価計算処理:規格品のロット生産に対し、製造指図書に基づいて原価を集計し、工程間の転がし計算や受払計算を経て、製品原価を算出するポイントを解説。
会計システムのサブシステムとして原価管理サブシステムがあります。
原価計算サブシステムは、ERPや会計システムの一部として提供され、原価計算方法としては、製造指図等の特定の原価計算対象に原価を集計する実際個別計算が広く用いられています。その中で、実際個別原価計算には、建設や大型機械のようなプロジェクトを対象に原価を集計するプロジェクト型実際原価計算と、工程ごとの生産品の製造指図書を対象に原価を集計する指図書別実際原価計算があります。また、規格品を生産している組立メーカーなどでは指図書別標準原価計算も多く採用されています。
 
そこで今回は、ERPや会計システムパッケージによる「会計システム刷新」のキホンのキとして、会計システムにおける原価管理サブシステム(中編)~プロジェクト型実際原価計算と指図書別実際原価計算~についてご紹介します。

原価管理サブシステムの主要機能

原価管理システムは、製造業をはじめとした多くの業種で、製品やサービスの原価を正確に把握し、コスト管理や利益分析、経営判断を支援するためのサブシステムです。生産管理や会計システムと連携しながら、原価の見える化と効率的な管理を行います。

【図1】会計システムのシステム構成イメージ

原価計算の手続き

原価の計算において製造原価は、原則としてその実際発生額をまず費目別に計算し、次いで原価部門別に計算し、最後に製品別に集計します。販売費および一般管理費は、原則として一定期間における実際発生額を費目別に計算します。

【図2】原価計算の手続き

(1)費目別計算
原価の費目別計算とは、一定期間における原価要素を費目別に分類・集計する手続きです。財務会計における費用計算であると同時に、原価計算における第一次の計算段階です。

(2)部門別計算
原価の部門別計算とは、費目別計算において把握された原価要素を、原価部門別に分類・集計する手続きです。費目別計算に次ぐ原価計算における第二次の計算段階です。

(3)製品別計算
原価の製品別計算とは、原価要素を一定の製品単位に集計し、単位製品の製造原価を算定する手続きです。部門別計算に次ぐ原価計算における第三次の計算段階です。

原価管理サブシステムの機能

原価管理サブシステムには、原価計算手続きに沿って以下のような機能があります。
会計システムや購買・生産システム等から必要データを取り込み、原価管理サブシステムで費目別計算、部門別計算、製品別計算を行い、棚卸資産・売上原価・損益関連の仕訳を会計システムに連携します。

【図3】原価管理サブシステムの主な機能

※原価計算サブシステムには、予算編成機能(予算段階での部門別計算や原価を配賦するための予定チャージレート計算等)があるものもありますが、今回は割愛します。

製品原価の計算方式

原価の製品別計算は、原価要素を一定の製品単位に集計し、単位製品の製造原価を算定する手続きです。部門別計算に次ぐ原価計算における第三次の計算段階です。

製品別計算には下記の方法があります。
  個別原価計算:製造指図ごとに原価を集計、建設や大型機械に多く採用
  総合原価計算:期間単位で原価を集計、化学や食品など連続生産に適用
  標準原価計算:能率基準を用いた予定原価、部品構成や工数をもとに算出
  直接原価計算:変動費のみ集計、意思決定支援用に活用

実務的には、製造指図等の特定の原価計算対象に原価を集計する実際個別計算が広く用いられています。実際個別原価計算には、建設や大型機械のようなプロジェクトを対象に原価を集計するプロジェクト型実際原価計算と、工程ごとの生産品の製造指図書を対象に原価を集計する指図書別実際原価計算があります。また、指図書別標準原価計算も多く採用されています。
  プロジェクト型実際原価計算
  指図書別実際原価計算
  指図書別標準原価計算

その中で今回は、「会計システム刷新」のキホンのキ、会計システムにおける原価管理サブシステム(中編)として、実際原価計算のプロジェクト型実際原価計算と指図書別実際原価計算をご説明します。

プロジェクト別実際原価計算処理

プロジェクト別実際原価計算では、最終的な完成品を原価集計単位としてのプロジェクトとします。
プロジェクト別実際原価計算は、建築物、航空機、船舶、大型機械装置、ソフトウェア等の顧客仕様に基づく、一品一様型の製品では一般的に多く採用されています。また、自社内で使う建物、機械、工具等の製作、試験研究開発、ソフトウェア開発、試作、仕損品の補修や代品の製作などでもプロジェクト別実際原価計算は採用されます。

しかし、こうした一品一様型の製品だけなく、規格品(組立型生産プロセス、装置型生産プロセスのどちらでも)でも採用されます。例えば、規格品Aを100個受注し、この受注単位でモノを手配し、生産する場合、その受注単位をプロジェクトとして個別的に原価を集計します。

※製造業の場合は、受注単位に対して製造指図書が発行される場合が多いため、指図書別実際原価計算といえますが、後述の生産工程単位の製造指図書別実際原価計算と区別するため、ここではプロジェクト別実際原価計算と称しています。

プロジェクトの登録

プロジェクト別実際原価計算では、特定の製品の原価を集計するために、まずプロジェクトを登録します。受注生産の場合には、営業部門が顧客からの注文を受けてプロジェクト番号を登録します。また、実務上プロジェクトは、オーダー、ロット、工事指令、製番等ということもありますが、それぞれの会社で用語の意味や使い方が異なることがあるので注意してください。

費目別計算

また、プロジェクト別実際原価計算では、プロジェクトごとに直接材料費、直接労務費、直接経費、製造間接費を把握して計算します。なお、材料費について月次総平均法を採用した場合、また直接労務費や製造間接費について実際チャージレートを採用した場合は、費目別計算は一般的に月次単位になることは注意してください。

直接材料費の計算
直接材料費は、当該プロジェクトに関する実際消費量に、その消費価格を乗じて計算します。

【図4】直接材料費の集計

加工費の計算
加工費は、当該プロジェクトに関する実際の作業時間または作業量に、加工費率を乗じて計算します。
※ここでは、説明を簡略化するため、直接労務費と製造間接費を分けずに加工費として計算しています。

【図5】加工費の集計

仕掛品・完成品原価計算

プロジェクト別実際原価計算では、プロジェクト全体が完成した段階で仕掛品から完成品に計上します。プロジェクトの中に、完成品が含まれていても全体が完成するまで仕掛品として計算します。

【図6】仕掛品・完成品計算

原価管理サブシステムでは、生産管理システムからの完成実績データ等のインターフェースデータに基づき完成品原価を計上するか、原価管理システムにプロジェクトのステータス変更等を入力し完成品原価を計上することが一般的です。

売上原価計算

プロジェクト別実際原価計算では、完成したプロジェクト全体を顧客に引き渡した時点で、売上原価を計算します。また、プロジェクト別実際原価計算では、仕掛品から完成計上した製品原価が、売上原価として計上されます。

【図7】売上原価計算

原価管理サブシステムでは、販売管理システムからの販売実績データ等のインターフェースデータに基づき売上原価を計上するか、原価管理システムにプロジェクトのステータス変更等を入力し売上原価を計上することが一般的です。

指図書別実際原価計算処理

一般的に製造メーカーは自らの仕様を決めた製品(規格品)を生産・販売します。B2Cのモノについてはそのほとんどが規格品ですし、B2Bの製品でもメーカー仕様の製品から選択することが多いといえます。

規格品を生産する場合、通常生産効率のよい生産量を1つのロット(まとまり)として製造指図書を発行して生産に着手し、製造指示数が完成した段階で完成処理します。実務的には、製造指図ごとに材料ロス率、作業時間効率、不良品率等を把握して、生産性の向上に役立てます。

このような規格品を製造指図書に基づきロット単位で生産する場合は、製造指図書別に原価を集計する指図書別実際原価計算が採用されます。指図書別実際原価計算には、製造指図単位での実際原価計算も標準原価計算もありますが、ここでは指図書別実際原価計算を説明します。

製造指図書の登録(発行)

特定の製品や内製部品等をつくるために、まず製造指図書が登録(発行)されます。見込生産の場合には、生産部門が生産計画に基づき特定品番の製造を特定工程に指示する製造指図書を発行します。

【図8】製造指図書のイメージ

生産工程における製造指図書は生産管理システムで発行します。したがって、原価管理システムでは、製造指図書マスタや製造指図書別生産実績データ等をインターフェースすることにより、製造指図書データを登録します。

費目別計算

指図別別実際原価計算では、製造指図書ごとに直接材料費、直接労務費、直接経費、製造間接費を把握して計算します。なお、材料費について月次総平均法を採用した場合、また直接労務費や製造間接費について実際チャージレートを採用した場合は、費目別計算は一般的に月次単位になることについては、注意してください。

直接材料費の計算
直接材料費は、当該製造指図書に関する実際消費量に、その消費価格を乗じて計算します

【図9】直接材料費の集計

加工費の計算
加工費は、当該製造指図書に関する実際の作業時間または作業量に、その加工費率を乗じて計算します。
※ここでは、説明を簡略化するため直接労務費と製造間接費を分けずに加工費として計算しています。

【図10】加工費の集計

仕掛品・完成品原価計算

指図書別実際原価計算では、製造指図書全体が完成した段階で仕掛品から完成品に計上します。製造指図の中に、完成品が含まれていても全体が完成するまで仕掛品として計算します。

【図11】仕掛品・完成原価計算

原価管理サブシステムでは、生産管理システムからの完成実績データ等のインターフェースデータに基づき完成品原価を計上することが一般的です。製造過程の中間品である工程完成品は、一旦品目単位で完成品原価計上され、先入先出法や平均法等に基づく受払計算をして、次工程(製造指図)に払い出す金額を計算します。この計算を最終製品になるまで各工程で繰り返し計算(転がし計算)していきます。

【図12】品目別原価(中間生産品・完成品)の受払計算

売上原価計算

指図別実際原価計算では、完成した製品を顧客に引き渡した時点で、売上原価を計算します。売上原価は、先入先出法や平均法等に基づく受払計算をして、売上原価として計上されます。原価管理サブシステムでは、販売管理システムからの販売実績データ等のインターフェースデータに基づき売上原価を計上することが一般的です。

まとめ

今回は、ERPや会計システムパッケージによる「会計システム刷新」のキホンのキとして、会計システムにおける原価管理サブシステム(中編)についてご紹介しました。今後の会計システム刷新は、ERPや会計パッケージに限らず様々なクラウドサービスやAIサービスを活用して「真に経営に資する情報システム」として実現する必要があります。個別のERPや会計パッケージ、クラウドサービスの活用のポイントについては、是非レイヤーズ・コンサルティングにお問い合わせください。

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