【第10回】会計システムで債務管理ってどうやるの?
◆この記事の要約
会計システム刷新で欠かせない「債務管理サブシステム」について、ERP/会計パッケージの標準機能で何ができるかを、債務管理業務の流れに沿って整理します。買掛金・未払金の計上から支払、消込まで、導入時に確認すべき論点を押さえます。
- 主要機能の全体像:債務明細を起点に、計上処理→支払決定処理(締め処理)→支払処理→消込処理→相殺処理→残高管理を一連で理解
- 計上処理の勘所:取引先マスタ/勘定科目(買掛金・未払金)/支払条件(締め日・支払サイト・支払手段)の設定、手動入力・Excel(CSV)・インターフェースデータの使い分けと内部統制/IT統制
- 支払・消込の設計ポイント:支払通知書の要否、ファームバンキングデータ/でんさいデータ連携、支払仕訳・消込仕訳のタイミング差(ERP/会計パッケージで相違)
- 本稿独自の視点(導入判断):標準機能の制限でアドオン開発が増えるなら、購買管理システム側に債務管理機能を持たせる選択肢も検討(支払パターン・支払手段が多岐なケース)
債務管理サブシステムの主要機能
債務管理サブシステムは、主に買掛金、未払金等の損益取引に基づく債務の管理に利用します。
債務であっても、仮受金、前受金等の勘定科目の管理ができるかは、ERPや会計パッケージによって異なるので、確認が必要です。また、借入金等も一般的には対象としていません。
【図1】会計システムのシステム構成イメージ
債務管理サブシステムは、業務の流れに合わせて、下記の機能を基本的に保持しています。
【図2】債務管理サブシステムの主要機能
ここでは、債務管理業務の流れにそって、主要機能をご紹介します。
計上処理
債務管理サブシステムでは、取引先ごとに債務明細(個々の取引明細)の入力を行って計上します。
【図3】債務計上のイメージ
債務管理サブシステムで債務管理を行うためには、管理する取引先や勘定科目(買掛金、未払金等)、支払条件(締め日、支払サイト、一括支払・分割支払、支払手段等)を取引先マスタに事前に設定することが必要です。
債務計上の入力項目
債務計上の入力・登録においては、一般的に下記の項目を入力します。
【図4】債務計上の入力・登録
入力項目のうち、借方・貸方の勘定科目、支払予定日、支払手段、支払口座等については、取引先ごとに取引先マスタに事前に登録したり、入力時に伝票タイプ等を指定したりすることにより、システムがデフォルト値を設定する場合もあります。債務計上の入力項目は、ERPや会計パッケージによって異なるので、どのような項目が入力できるか、どの項目が必須項目か任意項目かなどの確認が必要です。
また、ユーザーが設定できるフリーの項目があるものもありますので、それらがどれくらいあるかも確認が必要です。
債務計上の入力・登録の方法
債務計上の入力・登録には、画面からの手動入力、Excel等からのインポート登録、他システムからのインターフェースデータの登録などがあります。
画面からの手動入力
ユーザーが画面上で債務計上として取引先、勘定科目や金額等を直接入力する方法です。
購買管理システム等で債務取引を管理していない債務の計上入力の基本的な方法です。手動入力の場合、内部統制の観点から、入力者と別の人の確認や承認を得た後に、正式な債務計上となることが一般的です。なお、債務計上の承認は一般会計サブシステムに準じます。
また、電子帳簿保存法対応のため、会計システムに証憑を電子保存したい場合は、取引先からの納品書や請求書等の証憑を電子的に添付できるか否か、添付操作がしやすいかなども確認が必要です。
一方手入力の場合、ユーザーがコード類を入力する必要があるため、画面入力時に取引先・組織・勘定科目等の入力支援機能(ポップアップ画面、日本語名称検索等)があるかも確認が必要です。
Excel等からのインポート登録(CSV形式で仕訳の登録)
ユーザーが画面からExcel等(CSV形式など)のデータをアップロードし、債務を登録する方法です。Excel等の形式は、ERPや会計パッケージが用意したインポートファイル形式に準拠します。インポートファイルに債務を入力(Excelに入力)して、これをアップロードします。Excel等からのインポート登録は、大量データをユーザーが直接入力しなければならない場合、便利な登録方法です。
また、Excel等からのインポート登録は手動入力と同じですから、内部統制の観点から、入力者と別の人の確認や承認を得てから正式な債務計上となることが一般的です。
他システムからのインターフェースデータの債務登録
購買システム等の債務を管理するシステムから、債務計上が必要なインターフェースデータ(検収データや請求データ等の取引明細データ)を会計システムに送り、このインターフェースデータをもとに債務を登録する方法です。インターフェースデータの形式は、ERPや会計パッケージが用意したインターフェースデータ形式に準拠します。
製造業や商社など大量の購買・仕入取引データを扱う場合は、購買システム等を利用していることがほとんどですから、インターフェースによる債務計上が一般的に多いといえます。インターフェースによる債務計上の場合、支払予定日や支払手段等を購買システム側で設定するか、会計システムで設定するかを検討することも必要です。例えば、これらを購買システム側が管理している場合、支払予定日や支払手段等の情報を含んだインターフェースデータが送られ、会計システムでこれらを設定しないこともあります。
また、他システムからのインターフェースデータの債務登録は、IT統制がしっかり担保されていることを前提に、登録時点で正式な債務計上とすることができます。IT統制が担保されていない場合(インターフェースの途中で改竄のリスクがあるなど)は、人間系で確認や承認が必要になります。
以前は取引明細データを集約(サマリー)して仕訳計上(債務計上)することが多かったのですが、昨今は取引の分析や統制を行うため、明細単位での計上が多くなってきています。購買システムも会計システムと同じERPを利用する場合は、そもそも取引明細単位で仕訳計上(債務計上)することが一般的です。
支払決定処理
支払額の決定
支払決定処理は、取引明細から取引先ごとに支払条件(締め日、支払サイト、一括支払・分割支払、支払手段等)を加味して、支払額を決定する処理です。債務の締め処理ともいいます。
【図5】支払決定処理のイメージ
締め日の設定、支払サイトの設定、一括支払・分割設定の設定、支払手段(現金、小切手、振込、期日払、でんさい等)の設定などについては、ERPや会計パッケージの標準機能では制限がありますので、導入時に確認をする必要があります。同様に、支払額の減額や支払留保、支払日や支払手段の変更が可能かなども確認する必要があります。
支払通知の発行
取引先ごとに支払通知書を作成し、送付する機能があるERPや会計パッケージもあります。
送付方法としては、電子メールや紙での送付がありますが、請求書送付のクラウドサービス等と連携できる場合もあります。
しかし、会計システムで支払通知書を発行したいとの要望がある場合には、請求処理ができるERPや会計パッケージは限られているため、会計システムに請求処理をアドオン開発することが必要になりますが、購買システム等を同時に利用している場合には、あえて会計システムで支払通知を大量処理するアドオン開発をすることはあまりお勧めできません。購買システム等を利用しており、支払額決定や支払条件設定等を購買システム側で制御している場合、購買管理システムでの支払通知発行機能を持たせた方が、これらの機能との連携がしやすいからです。そのため、会計システムでの支払通知発行は、ERPや会計パッケージにその機能があった場合だけ利用したほうが望ましいといえます。
支払処理
支払処理は、支払決定がされた債務データに基づき、支払用のファームバンキングデータやでんさいデータを作成・出力する処理です。出力された支払データは、ファームバンキング等に取り込み支払います。
【図6】支払処理のイメージ
支払仕訳(買掛金/預金など)が計上されるタイミングは、ERPや会計パッケージによって、支払決定処理が完了した時点か、支払データを作成した時点か、ファームバンキングで支払を行った後かといったことも異なるため、導入時には確認が必要です。
ここでは、支払処理で下記の仕訳を行うことを前提としています。
(借方)仮払金 XXX (貸方)預金 XXX
消込処理
消込処理は、支払結果から債権明細を個々に消し込む処理です。
【図7】消込処理のイメージ
消込処理は、ERPや会計パッケージによって、支払決定処理が完了した時点か、支払データを作成した時点か、ファームバンキングで支払を行った後かといったことも異なるため、導入時には確認が必要です。ここでは、消込処理で下記の仕訳を行うことを前提としています。
(借方)買掛金 XXX (貸方)仮払金 XXX
※支払決定時に債務明細を消し込む場合は、支払決定時と支払処理時の仕訳は下記になります。
支払決定処理時 (借方)買掛金 XXX (貸方)仮払金 XXX
支払処理時 (借方)仮払金 XXX (貸方)預金
相殺処理
債権と債務を相殺する場合に用いる処理です。例えば、サプライヤーに材料の有償支給をしている場合、有償支給時の債権(未収金等)と、部品買い戻し時の債務(買掛金)を相殺する場合などです。
(借方)買掛金 XXX (貸方)売掛金 XXX
【図8】相殺処理のイメージ
債権と債務の相殺処理は、ERPや会計パッケージによって、どのような相殺パターンが標準機能として備わっているか異なるため、導入時に確認が必要です。相殺処理については、債権の請求処理段階で相殺する場合や消込段階で相殺する場合、債務の支払決定処理段階で相殺する場合などがあり、ERPや会計パッケージによって処理の可否が異なるため、導入時に確認が必要です。
※説明上ここでは債務の最後のプロセスとしていますが、通常の取引で常に債務>債権の場合は、債務の支払決定段階が多いようです。
なお、昨今では相殺処理自体が煩雑で業務工数を増やすことから、相殺をやめ債権回収と債務支払を両建取引とするケースも増えてきています。
残高管理
債務の残高を取引先別に管理する機能です。取引先別の残高だけでなく、債務計上データごとの残高も管理を行う点が、一般会計サブシステムの残高管理との違いです。
【図9】残高管理のイメージ
未払債務については、滞留期間管理(年齢調べ)なども行います。また、ERPや会計パッケージによっては、滞留期間によるアラームや残高確認状作成などの機能をもったものもあります。
会計システム連携処理
一般会計における債務管理に係わる仕訳等を、債務管理サブシステムに取り込みます。
また、債務管理サブシステムにおける債務計上処理、支払決定処理、相殺処理等にともなう仕訳を生成し、一般会計に連携します。さらに支払データは、ファームバンキング等に連携します。
債務管理サブシステムと一般会計サブシステムの仕訳やデータの連携は、ERPや会計パケージによってシステム構成とデータの流れが異なりますので、両者間でどのようなタイミングでどのような動きになるのか、業務運用上留意すべき点は何かなど、導入時に確認することが必要です。
導入上のポイント
債務管理サブシステムは、通常一般会計サブシステムと同じ会計システムを導入することが一般的です。
ただし、購買システム等を独自にスクラッチ開発で構築している場合、債務管理機能は購買システム側に構築した方が効率的な場合も多くあります。特に、独自の債務処理(支払パターン、支払手段が多岐にわたる場合)が多く、債務管理サブシステムに対するアドオン開発が多くなる場合には、購買システム側での構築も検討してください。
まとめ
今回は、ERPや会計システムパッケージによる「会計システム刷新のキホンのキ」として、会計システムにおける債務管理サブシステムについてご紹介しました。今後の会計システム刷新は、ERPや会計パッケージに限らず様々なクラウドサービスやAIサービスを活用して「真に経営に資する情報システム」として実現する必要があります。個別のERPや会計パッケージ、クラウドサービスの活用のポイントについては、是非レイヤーズ・コンサルティングにお問い合わせください。


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この記事の執筆者
-
村井 泰三経営管理事業部
バイスマネージングディレクター -
山本 晶代経営管理事業部
ディレクター -
飯田 稜大経営管理事業部
シニアマネージャー
職種別ソリューション


