【第18回】管理会計ってシステムで何ができるの?
◆この記事の要約
本記事では、FP&A機能を支える「管理会計サブシステム」で何ができるかを解説します。
仕訳・勘定残高・取引明細データの取り込みから、連結処理、多次元セグメント管理、予算実績管理までを整理し、ERP/会計パッケージかCPMツールかの選定視点も提示します。
- データ取り込み処理:画面入力やExcelインポートは誤謬リスクがある一方、インターフェースデータはETLツールとAPIで自動化しやすく、IT統制を担保すれば最も信頼性が高い(大量の明細データ保有にも有効)。
- 連結処理:資本連結(のれん・非支配株主持分)、内部取引消去、債権・債務消去、未実現利益消去を実施。
ただし、管理会計は迅速性・有益性重視で簡便処理も多く、未実現利益消去の省略は利益変動に注意。 - 多次元セグメント管理:事業セグメント/製品・サービス/組織/地域/取引先で分析し、配賦処理(配賦基準・配賦率、非会計データ、予算と実績、複数回配賦)や、データマート作成で分析のレスポンスを確保。
- 予算実績管理:計画編成、計画と実績の比較・差異分析、ダッシュボード表示、KPI分析、シナリオ別シミュレーション・予測(AIを活用した予測も含む)で意思決定を支援。
管理会計サブシステムは、ERPや会計パッケージの一部として提供されるものもありますが、CPMツール(Corporate Performance Management)として提供されるものもあるため、ERPや会計パッケージの導入にあたっては、それらがどのような標準機能をもっているか、ERPや会計パッケージと同じものを選ぶか、違う提供企業が提供するものを選ぶかなどの検討が重要となってきます。
そこで今回は、ERPや会計システムパッケージによる「会計システム刷新」のキホンのキとして、会計システムにおける管理会計サブシステムについてご紹介します。
管理会計サブシステムの主要機能
管理会計サブシステムは、企業グループがグループ全体または各社の経営管理や意思決定を支援するための内部管理用のサブシステムです。管理会計サブシステムには、個社単体の管理会計とグループ全体の管理会計がありますが、ここではグループ管理会計を中心にご説明します。
【図1】会計システムのシステム構成イメージ
管理会計サブシステムには、以下のような機能があります。
【図2】管理会計サブシステムの主な機能
管理会計サブシステムを構築する場合、グループ会社のシステムの状況や求める管理会計機能などに応じて以下のパターンがあります。
【図3】グループ管理会計の構築パターン
パターン①を採用している会社も多いですが、グループ管理会計を充実させるために、パターン②または③を目指すことが重要です。
各種マスタ等設定
管理会計サブシステムを利用するためには、会計システムと同様に管理会計として下記のマスタを登録することが必要です。
【図4】管理会計サブシステムのマスタ
登録するマスタ類や設定項目等は、管理会計サブシステムごとに異なるため、導入時に確認が必要です。
データ取り込み処理
各グループ会社の仕訳や勘定残高、販売等取引明細データ等を管理会計サブシステムに取り込む処理です。管理会計データの取り込みには、画面からの手動入力、Excel等からのインポート登録、会計システムからのインターフェースデータの登録などがあります。
画面からの手動入力
ユーザーが画面上で管理会計用データとして、財務諸表の各項目やKPI等を直接入力する方法です。
通常は、親会社が指定した入力項目に対して、各社データの変換加工(人間系が多い)した結果を画面から入力します。なお、画面からの入力は、人間系のオペレーションがほとんどであるため、誤謬等のリスクがあります。
Excel等からのインポート登録
子会社の管理会計データを、Excel等インポートファイルに入力する方法です。
Excel等の形式は、管理会計サブシステムが用意したインポートファイル形式に準拠します。
インポート登録は、インポートファイルを親会社に送付して親会社が登録する場合と子会社が直接登録する場合があります。なお、Excel等からのインポート登録は、人間系のオペレーションがほとんどであるため、誤謬等のリスクがあります。
子会社システムからのインターフェースデータからの登録
子会社システム(会計システム、販売管理システム等)から直接管理会計に必要なデータを出力し、それをインターフェースデータとして管理会計サブシステムに取り込む方法です。
子会社システムのデータから管理会計データへの変換は、下記のとおり2つあります。
(1)管理会計サブシステムの外で、子会社システムデータを管理会計サブシステムデータに変換して、変換後のデータを取り込む。
(2)会計システムからの元データをそのまま管理会計サブシステムに取り込み、管理会計システム側で変換する。
【図5】グループ管理会計データへの変換パターン
データ変換のためには、データ変換テーブル(コード等の読み替え表)を事前にマスタ登録しておくことが必要です。グループで同一のERPで統一していても、各社の設定が異なるため、この変換で苦労している企業は少なくありません。グループ管理会計を高度化させるためには、グループ各社のマスタ等の統一を合わせて進める必要があります。また、データの送受信変換等については、通常ETLツール※など用いて管理会計サブシステムのAPIを通じで行います。
※ETLツールとは、データ抽出(Extract)、変換(Transform)、ロード(Load)の3つのプロセスを自動化するソフトウェアです。
IT統制をしっかり担保していれば、インターフェースデータからの取り込みが最も信頼性が高いといえます。特に、大量の明細データを管理会計サブシステムで保有する場合は、インターフェースデータの取り込みが不可欠といえます。
連結処理
グループ間での株式の売買やモノの売買等の取引をしている場合、グループ全体で見る場合にグループ間取引を消去する必要があります。管理会計での連結処理は、財務会計での連結処理に準じますが、一般的には正確性よりも迅速性や有益性を重視し、簡便な処理が行われることも少なくありません。
資本連結
親会社の投資と子会社の純資産を相殺消去します。
親会社が投資した子会社の株式と、子会社の純資産を相殺し、その差額を「のれん」として計上します。親会社の持ち分以外は、非支配株主持分として計上します。
(借方)純資産(子会社) XXX (貸方)投資勘定(親会社) XXX
(借方)のれん XXX (貸方)非支配株主持分 XXX
資本連結処理のためには、親会社の投資履歴(持ち分比率、持ち分額等履歴)や、子会社純資産履歴等を事前に登録することが必要です。なお、管理会計では独自の資本連結を行わず、財務会計の連結における資本連結を利用する場合もあります。
内部取引消去
グループ内の会社間で行われた取引を消去(相殺)する処理です。
売上・仕入取引の相殺や配当金の相殺などが代表的です。
(借方)売上(子会社A) XXX (貸方)売上原価(子会社B) XXX
内部取引消去処理のためには、取り込んだ連結データ(損益取引)にグループ会社情報(取引先)が付与されていることが必要です。財務会計では、両社間の金額の違いを細かく確認しますが、管理会計では一定の範囲であれば細かい確認を省略することも少なくありません。
債権・債務消去
グループ内の会社間の債権と債務を消去(相殺)する処理です。
売掛金・買掛金の相殺や貸付金・借入金の相殺などが代表的です。
(借方)買掛金(子会社B) XXX (貸方)売掛金(子会社A) XXX
債権債務消去処理のためには、取り込んだ連結データ(債権・債務)にグループ会社情報(取引先)が付与されていることが必要です。財務会計では、両社間の金額の違いを細かく確認しますが、管理会計では一定の範囲であれば細かい確認を省略することも少なくありません。
未実現利益消去
グループ会社間の損益取引で、取引された資産がグループ内に存在する場合の未実現利益を消去する処理です。グループ間で売買された棚卸資産や固定資産に含まれる未実現利益が代表的です。
(借方)売上原価(子会社B) XXX (貸方)棚卸資産(子会社B) XXX
未実現利益消去処理のためには、グループ会社間取引の資産残高や未実現利益(利益率)などが未実現消去処理の前に登録されていることが必要です。管理会計では未実現利益の消去を省略することも少なくありません。ただし、内部取引による棚卸資産残高が多く未実現利益が多額の場合、簡便処理を行うと期末の利益が大きく変動することがあるので注意してください。
多次元セグメント管理
多次元セグメント管理は、各社の会計データに基づき事業セグメント、製品・サービス、組織、地域、取引先などの管理軸から多次元でセグメント管理を行うことです。
【図6】多次元セグメントのイメージ
多次元セグメント管理を行うためには、会計データにそれらデータ項目が付属されている必要があります。また、各社のマスタが統一されていない場合、事前にグループ統一マスタに基づきデータ変換しておくことが必要です。
配賦処理
多次元セグメント管理において、収益・費用・資産・負債の配賦が必要な場合があります。
例えば、セグメント別ROICを出す場合、各セグメントの投下資本を計算するために、投下資本を配賦したりします。配賦を行うためには、事前に配賦元の勘定科目・組織・セグメントなどは何か、配賦先の勘定科目・組織・セグメントなどは何か、配賦基準や配賦率はどうするのかを設定することが必要です。
管理会計サブシステムのデータとしては予算と実績があるので、それぞれ同じ配賦条件または異なる配賦条件で配賦できるものもあります。また、配賦基準として非会計データ(人数、面積など)も持てます。
さらに配賦機能として、多段階に配賦(複数回、順序を持って配賦)する機能がある場合もあります。
配賦前と配賦後の比較をするために、データを区分して集計が行えるものもありますし、管理会計サブシステムのデータとしては予算と実績があるので、それぞれ同じ配賦条件または異なる配賦条件で配賦できるものもあります。加えて配賦機能は、管理会計サブシステムで異なるため、導入時に確認が必要です。
多次元分析用データ作成
各種観点から多次元分析を行う場合、大量データを常に処理するのではレスポンス等に問題がでるため、ユーザーがデータを扱いやすい形に加工して、小規模な分析用データ(データマート)を作成します。
どのような分析用データがつくれるのか、分析用データが扱いやすいか等は、管理会計サブシステムで異なるため、導入時に確認が必要です。
予算実績管理
管理会計では、事業や組織ごとの業績を把握するため計画実績管理を行います。管理会計サブシステムでは、計画実績管理を行うために下記の機能を持つことが一般的です。計画・実績管理機能は、管理会計サブシステムによって異なるため、導入時に確認が必要です。
計画編成機能
年度初めやプロジェクトごとに計画を策定し、セグメント・組織・勘定科目などの計画値を入力し、全体計画を集計します。計画値入力は、過去データを参照・加工したり、計画テンプレート(計画間・項目間を関連付けて計算するロジックのテンプレート等)などの活用ができたりするものもあります。
また、組織間で計画調整をする場合、計画指示・修正指示や承認のワークフロー機能を持つものもあります。複数のシナリオで計画作成する場合、シナリオ別(楽観・悲観・成行等)の計画値が複数登録できるものもあります。
計画と実績の比較・差異分析
多次元セグメントで計画と実績を分析します。計画実績差異の閾値登録・アラート通知、明細へのドリルダウン、グラフや表によるダッシュボード表示などが行えます。また、各種KPIを設定し、KPIを分析することにより様々なパフォーマンスを的確につかむこともできます。
シミュレーション・予測
不確実な環境では複数のシナリオで計画をシミュレーションすることが必要になります。このために、販売・生産・在庫・損益等の各計画を連動させ、変動要因(物価上昇、為替)の影響をモデル化し、シナリオに応じたシミュレーションができるものもあります。
【図7】計画連動のイメージ
また、過去の実績に応じて、今後の業績を予想したりするものもあります。昨今、特にAIを活用した予測は、管理会計サブシステムの提供会社がアピールしています。
導入上のポイント
ERPや会計パッケージも管理会計サブシステムを持っているものもありますが、個社の管理会計を対象としたものが多いようです。グループを対象とした管理会計サブシステムは、所謂CPMツール(Corporate Performance Management)として提供される製品・サービスの方が、機能も豊富です。また、前述のように管理会計サブシステムの構築パターンも①~④まで4つあり、どのパターンを目指すかで必要な製品・サービスも異なってきます。
したがって、ERPや会計パッケージの導入にあたっては、それらがどのような管理会計サブシステムの標準機能をもっているか、管理会計サブシステムとしてERPや会計パッケージと同じものを選ぶか、違う提供企業が提供するものを選ぶか、構築パターンはどれを目指すかなどの検討が重要となってきます。
まとめ
今回は、ERPや会計システムパッケージによる「会計システム刷新」のキホンのキとして、会計システムにおける管理会計サブシステムについてご紹介しました。今後の会計システム刷新は、ERPや会計パッケージに限らず様々なクラウドサービスやAIサービスを活用して「真に経営に資する情報システム」として実現する必要があります。個別のERPや会計パッケージ、クラウドサービスの活用のポイントについては、是非レイヤーズ・コンサルティングにお問い合わせください。


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この記事の執筆者
-
村井 泰三経営管理事業部
バイスマネージングディレクター -
山本 晶代経営管理事業部
ディレクター -
飯田 稜大経営管理事業部
シニアマネージャー
職種別ソリューション




