経営者の本音と人的資本経営
今回は経営者の本音から、開示といった形式的対応ではなく、人的資本経営として本当にやっていくべきことについて説明をさせていただきます。
経営者の本音~投資家からのプレッシャー
企業経営者は、企業の活動によって影響を受ける人や組織、団体などの利害関係者であるステークホルダーに対して、対応を求められます。顧客、株主、従業員、金融機関、地域社会、それぞれに対応をし、最終的には企業価値の最大化を達成しなければなりません。
【図1】ステークホルダー
その中でも経営者の本音としては、株価の上昇が一番気になります。
株価が上昇するということは、結局投資家がその企業の「未来」に期待して投資をしてくれることで上がっていきます。そのため経営者は企業の未来について、対話を通じてステークホルダーに具体的に理解してもらう必要があります。
いくら素晴らしいパーパスを掲げ、サステナビリティ経営として環境や社会への配慮をした事業を展開していったとしても、株価が下がってしまったら、解任されてしまいます。
解任されないためにも株価を上げていきたいというのが経営者の本音です。
【図2】経営者の解任
企業価値を高めるための人的資本経営
人的資本経営というと、いろんな企業で言われるのは「開示」です。結局開示することが「目的」になって取り組みを進めている企業が多くあります。
例えば、ISO30414に従って、離職率や女性管理職割合とか、従業員のエンゲージメント指標などを単に開示しても、企業価値は高まりません。開示することが目的ではなく、企業価値を高める、そして株価を高める、そのために手段として、開示をしていくのです。
つまり、開示した内容から、その企業がどう「未来」を見据えているのか、その企業の未来が明るいものなのか、が伝わることが非常に重要となります。その企業ならではの独自性がある人的資本に関するストーリー、ナラティブをしっかりと作り、そして様々な数値と合わせて開示していくことが重要です。
人的資本に関するストーリーを描いていく際に、重要となってくるのが、企業と人財の関係の見直しです。日本企業の場合には終身雇用制度から、人財を抱え込み、企業への忠誠心を求めて、内部人財を育てて、管理していく視点になっておりました。
しかし、時代は大きく変わり、人財は内部のみならず外部人材の活用も重要なポイントとなります。
【図3】企業と人財の関係性の見直し
人的資本経営強化 集中合宿
人的資本経営を強化していくために、魔法の杖はありません。繰り返しになりますが開示が目的ではなく、企業の未来をどうするのかしっかりとストーリーを描き、そのために必要な施策を愚直に1つ1つ進めていくしかありません。
そこで我々の人的資本経営強化を進めていくための一つの手法として、集中合宿を定期的に繰り返して実施します。普段から人的資本経営強化のための施策検討、推進はもちろん行っていきますが、定期的に合宿を実施します。その合宿では、各部門の人的資本経営に関する検討施策や、実施した施策の結果、推進上の課題について共有し、次のステップについて議論をしていきます。さらに人的資本経営強化の議論だけではなく、チームビルディングの一環としていろんな取り組みを実施します。
例えば、プロジェクト参画メンバー全員で、それぞれの自分史を作り共有をしていきます。そもそも人的資本経営強化プロジェクトで個人として成し遂げたい目標や、人生の目標、生まれてから今までの人生におけるモチベーションの変動とその理由、人生において心に残っている体験や言葉などを共有することで、自分自身も理解し、相手にも自分を理解してもらいます。
他の例では、体験学習ということで、チームに分かれて、1本の柱にどうやって全員が登り切り、体験学習上のミッションをクリアするかなどを実施していきます。そこでは、話し合うチーム、まずはやってみるチーム、意見が分かれてまとまらないチーム、情報が共有されないチームなど様々な傾向がみられます。
このようなワークショップを繰り返して実施していくことで、人的資本経営強化プロジェクトメンバーが本音で議論できる土壌を作っていきます。これによってチームビルディングがなされ、自分事化され、人的資本経営強化のための施策について議論が深まっていきます。そしてその企業の未来についてストーリーを、独自性を持って作っていくことができるようになります。
【図4】自分史
人的資本マネジメントレベルの現在地アセスメント
以上のように、経営者の本音は株価を上げること、そのためには企業の未来についてしっかりとしたストーリーを描くことです。単なるデータの開示では意味がなく、人的資本経営をすることで描かれる未来の姿をしっかりと作っていかなければいけません。そのためには魔法の杖はありません。1つ1つの施策を愚直に実施していくことです。また人的資本経営強化プロジェクトメンバーのチームビルディングも大きなポイントです。
人的資本経営強化のための取り組みは、非常に時間もかかり、経営者や多くの関連部署を巻き込んでいく必要があります。まずはどこから手を付けていけばよいか迷うこともあるかと思います。
そこで我々は人的資本マネジメントレベルの現在地アセスメントを最初に実施させていただくこともあります。社内の情報やベンチマーク競合の開示情報から、人的資本マネジメントの現在地をアセスメントしていきます。
現在地をしっかりと評価してから人的資本経営強化としてどのような施策を実施していくべきか議論をしていきます。そして最終的に企業の未来を描き、それを投資家に伝え、株価上昇につなげていきたいと思います。
詳細については、お問い合わせをいただければお打ち合わせの場をいただきご説明をさせていただきます。
【図5】人的資本マネジメントレベルの現在地アセスメント
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この記事の執筆者
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石井 哲司経営管理事業部
マネージングディレクター
税理士 -
小宮 泰一HR事業部
ディレクター -
木村 圭佑HR事業部
マネージャー
職種別ソリューション