「なら、何も言いません」症候群になっていませんか
この記事の要約
本記事では、「なら、何も言いません」症候群について解説します。しゃべりすぎる上司や否定的な対応によって、部下が意見を言えなくなる背景をはじめ、心理的安全性を高めるための1on1の考え方や、上司と部下が互いの意見を掛け合わせて第三の案を生み出す方法などを紹介します。組織風土を改革し、従業員の声を引き出すための考え方を示します。
この記事を読むとわかること
- 「なら、何も言いません」症候群とは何か
- 部下が意見を言えなくなる理由
- 心理的安全性を高める1on1の考え方
- 上司と部下が互いの意見を掛け合わせ、妥協案ではなく第三の案をつくるポイント
これは、従業員の意識の問題なのでしょうか。それともそのような組織風土を作ってきた上司の方々の責任なのでしょうか。
今回は、日本企業に根深く巣食う「なら、何も言いません」症候群とその処方箋をご紹介します。
しゃべりすぎ上司が招いた文化
私も含めてですが、どうしても1on1などを実施していると上司側がしゃべりすぎてしまうことが多いと思います。さまざまな調査結果を見ても、上司と部下のどちらが多くしゃべっているのかというと、上司のほうが多くしゃべっているという結果になります。学校が先生から生徒に知識を伝えるという一方通行の形であるため、会社でも上司から部下へという一方通行になりがちなのでしょうか。
このように日本社会において、チームとして一体となってディスカッションをしながら作り上げていくという風土が、徐々に不足してきているように思えます。
VUCA時代でスピードが速く、成果を求められている中で、上司は部下に多くの指示を出して仕事を進めています。そして、もし失敗すると、「どうしてこんな失敗をしたのか」と取り調べ型の追及が始まります。部下の育成のつもりでも、上司がしゃべりすぎて自分の考えを押し付け、結局部下が思考停止の状態になってしまうのです。
例えば、「ミスが起こった理由として、どんなことが考えられますか」という聞き方であれば、部下も思考停止にならずに、原因と再発防止策を検討できるようになるかもしれません。
しゃべりすぎる上司、取り調べ型の質問、これが繰り返されると、部下は思考停止になり、何も言えなくなります。すると、何も言えない部下を見て、今度は上司が「うちの社員は意見がない、考えていない、変えていこうという意思がない」といった発言をすることにつながっていきます。
【図1】しゃべりすぎる上司、何も言えない部下
「言わないのではない、言えないのだ」従業員の本音
従業員は本当に、何も意見がない、考えていない、変えていこうという意思がないのでしょうか。
我々は各企業でワークショップを実施していくと、従業員の皆様には、本当はいろいろな意見があり、考えもあり、変えていきたいという想いがあることが分かります。我々の実施するワークショップは上司の方を含めずに当社メンバーと選抜されたメンバーで実施します。現状把握で2時間×2~3回、改革の方向性検討で2時間×2~3回、合計8~12時間かけて実施していきます。最初は愚痴のような発言が多い中で、深掘りをしていくと、しっかりとした意思があり、意見があり、会社を変えていきたいという想いがあります。
その意思や意見、想いが素晴らしいことをお伝えし、なぜそれを会社に伝えないかを聞いていくと、
- 昔は言っていたが、ほとんどがすぐに否定された
- 提案しても、それは昔やってダメだったと言われた
- 上司のやりたいように結局方向転換させられてしまう
- やってもみないのに、リスクばかり挙げられて前に進ませてくれない
といった声が上がってきます。
そして最後に口にするのは
- 「なら、もう何も言わないよ!」となってしまう
とのことでした。
つまり、何も言わないのではなく、言えないのが実態であり、その状況にしてしまったのは、組織の風土や、しゃべりすぎる上司の対応が原因です。
各企業で「なら、何も言いません」症候群が根深く発生してしまっています。
【図2】「なら何も言いません」症候群
魔法の言葉化した「心理的安全性」
心理的安全性はハーバード・ビジネス・スクールのエイミー・エドモンドソン教授によって提唱されました。実際にGoogleのアリストテレスというプロジェクトで実証実験が行われ、「成果の出るチーム」「生産性の高いチーム」に共通する要素として最重要項目に位置づけられたのが、この「心理的安全性」です。
心理的安全性とは、「チームの中で、ほかのメンバーの反応への懸念、つまり、『こんなことを言って非難されるのでは!?』『変なことを言って恥ずかしい思いをするのでは!?』といった懸念がなく、誰でもそのチームの中では安心して能力や個性を発揮でき、自分の考えや気持ちを素直に発言できる状態」を言います。
ところが最近、魔法の言葉のように使われてしまっている状況が見受けられます。「このチームは心理的安全性が高いから何でも言っていいよ」と上司が言って、実際、部下がついてこないという事象が起きています。いくら口頭で「このチームは心理的安全性が保たれているから!」と言っても、実態が異なっていては何も変わりません。誰も何も言えない状況です。まして、しゃべりすぎる上司が変わらず、否定から始まる話をしていたら、結局「なら、何も言いません」状態になってしまいます。
心理的安全性が高いチームを作るのに、それこそ魔法の杖はありません。しっかりとリーダーが率先して変わり、そしてチームメンバーと一緒になって、心理的安全性を高めていく必要があります。
【図3】心理的安全性が高いチームへ
1on1で心理的安全性を高める
1on1を取り入れる企業は多く、レイヤーズでも実施しています。1on1はあくまでもメンバーのための時間であることを強く意識することが大切になります。しゃべりすぎる上司の場合には、大半の時間を自分の話に費やしてしまう状態になってしまいます。しっかりと相手の話に耳を傾けることが大切になります。
コロナ禍を経て、Web会議ツールを使った1on1を実施している企業も多いと思います。Web会議の場合には、対面よりもさらに本音を言いづらいため、雰囲気作りが非常に大切になります。最初のアイスブレイクなどはしっかりと準備しておくことが重要となります。
1on1を定期的にやりましょう!といろんな本にも書いてありますが、週に一度、予定を入れて、会議室を押さえて、実施している1on1は真の1on1ではありません。それはまだ1on1を習慣化させるための途中過程です。人事部などが旗を振り、制度化・ルール化して、やっている、やっていないをモニタリングして、やっていない上司にやってくださいと依頼している「やらされ型の1on1」は一番よくありません。それでは心理的安全性は高まりません。また、しゃべりすぎる上司の時間になっている1on1や取り調べ型1on1では、もちろん心理的安全性は高まりません。
真の1on1は必要な時に、必要に応じて実施するものです。部下から上司に対して、「ちょっと1on1してもらえますか」とか、上司が部下の状況を見ていて、「ちょっと1on1しようか」といった適時適切なタイミングで、その都度実施する1on1が真の1on1です。その状態は心理的安全性が非常に高い状態です。
定期的にやるということで週1回などとルールを決めた「やらされ型1on1」ではなく、適時適切なタイミングでのスポット的に実施する「真の1on1」ができるように目指していくことが重要です。
【図4】やらされ型1on1から脱却
妥協案ではなく第三の案をつくれるか
そもそも心理的安全性を高める目的は、組織として、成果を高めるため、生産性を高めるためです。心理的安全性を高めて、みんなが素直に意見を言えるようになり、新しいアイデアが生まれる状態にしていくことが重要です。
しゃべりすぎる上司と何も言えない部下で生まれた「妥協案」では成果は生まれません。心理的安全性が高いチームで生まれた互いの案を掛け合わせた「第三の案」によって初めて成果は生まれます。
【図5】妥協案から第三の案へ
心理的安全性を高めていくために重要なポイントを最後にご紹介します。
パーパス(存在意義)
企業としてのパーパスと、そのパーパスからブレイクダウンされた各組織、チームのパーパスが重要となります。どこを目指している企業で、何を大切にしているのかをしっかりとメンバーと共有することが重要です。
決して間違ってはいけないのが、心理的安全性を高めることは、ぬるま湯職場を作ることではありません。高い目標を実現するために成果の出せるチームを作っていくことが狙いとなります。
DE&I(Diversity:多様性、Equity:公平性、Inclusion:受容性)
多様な考えについて、公平に受け入れる文化が重要となります。「もしかしたら、ありかも」と受け入れることで、新たな発見、気づきが生まれます。
リスペクト
メンバー一人ひとりに対して感謝の気持ちを持ち、相手をリスペクトする気持ちが非常に重要となります。リソースではなく、一人の人間として接していきます。「ありがとう」の感謝の気持ちを伝えることが重要です。当たり前と思わないことが大切です。
他にも重要なポイントがありますし、組織風土改革の事例などもご紹介できますので、ぜひご興味がございましたら、レイヤーズ・コンサルティングまでお問い合わせいただければ幸いです。
【引用文献】
図5:竹村富士徳「タイムマネジメント4.0」
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この記事の執筆者
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石井 哲司経営管理事業部
マネージングディレクター
税理士 -
小野 智貴HR事業部
コーポレート業務改革ビジネスユニット
シニアマネージャー
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