働かないおじさんと本音を言えない若手
お互いの知能を生かすには

仕事をする中で得意なこと、不得意なことはありますか?
実は人間には年齢とともに変化する2つの知能があり、若手とベテランで強みとする能力が異なります。最近働かないおじさんという言葉も耳にしますが、ベテランの役割、能力を生かし若手と融合することが大切です。今回は若手とベテランが融合し成果を出すためのステップをご紹介します。

おじさんは働かないのか

書店に行くと、働かないおじさんをテーマとした書籍をよく目にします。働かないおじさんとは生産性が低く企業に居座り続ける主に50代~60代社員を指します。
こうした社員が企業に出現する理由に日本企業の体質があります。終身雇用を前提とし、若手のうちは給与が低く設定され、年齢が上がるにつれて給与が高くなる給与後払いであること。また、上位下達つまり上司の命令が絶対であるという風潮から、部下に仕事を丸投げし押し付けることによってベテラン社員が働かないことも問題となっています。

【図1】働かないおじさん問題

実際に働かないおじさんへの対策として、優秀な新卒には高額の給与を払う一方で50代社員には希望退職を促し、企業の若返りのために黒字リストラを実施した企業もあります。では、働かないおじさんは使い物にならないといって敬遠してよいのでしょうか。
企業によってはベテラン社員をうまく活用しているところがあります。退職後に設立した新会社と業務委託契約を結び、新しい分野での挑戦ができる制度を導入している事例です。年齢を問わず学び直しの機会を提供し、ベテラン社員の新しい価値を発掘しています。また、若手には案件を新しく獲得するといった狩猟的な仕事を任せ、ベテラン社員には顧客とのリレーション維持といった農耕的で長期的目線が必要となる仕事を任せるなど、それぞれの強みを生かした働き方を行っている企業もあります。

2つの知能を融合せよ!

若手社員とベテラン社員ですが、お互いに得意・不得意は異なります。なぜなら、年齢とともに変化する2つの知能があるからです。
1つ目が流動性知能です。新しい情報を獲得し、それを処理・操作していく知能です。直感力や図形処理能力などを指し、情報処理のスピードに影響します。アイデアを生む力がこれにあたります。この流動性知能は20代前後がピークとなり年齢とともに減少していきます。つまり若手の強みであるといえます。
2つ目が結晶性知能です。知識や経験の豊かさから獲得していく知能です。理解力や洞察力、交渉力などがこれにあたり、アイデアをビジネス化していく力です。この結晶性知能は50代がピークであり、年齢とともに増加・安定していきます。つまりベテランの強みであるといえます。

【図2】流動性知能と結晶性知能

ビジネスの場において、両者の知能を融合しそれぞれの強みを生かすことが大切です。若手のアイデアをを生む力と、ベテランのアイデアをビジネス化していく力を融合することが新たな価値を生み出す源泉となります。
また、当社実施のアンケート結果より、若手、ベテランのお互いが融合を求めていることがわかりました。20歳~26歳の若手社員600人に自身の弱みとベテランの強みは何かを調査したところ、自身の弱みとして認識している「人脈」「業務知識・能力」「失敗をリカバリーする力」「責任感」についてベテランの強みであると認識していました。若手はベテランの力を必要としているといえます。
反対に、42~57歳のベテラン社員600人に自身の弱みと若手の強みは何かを調査したところ、自身の弱みとして認識している「新しいものへの抵抗感のなさ」や「斬新なアイデア」「柔軟性」「吸収力」について同時に若手の強みであると認識していました。
つまり、ベテランも若手の力を必要としているといえます。ここで若手とベテランはお互いに求め合っていることがわかりましたが、どのように融合すればよいのでしょうか。

融合の落とし穴

ただ単に融合するだけでは、相乗効果は得られません。例えば、若手が上司にアイデアを提案した際に、上司は具体的なイメージがなく認知外のアイデアであるため批評ばかり行い、若手は大人しく受け入れるしかないといった状況が考えられます。つまり、上司の一方的な答え合わせといえます。上位下達の文化がある日本企業でよく見られるパターンではないでしょうか。
このように両者の意見の相違や長所を生かさない結果、妥協案が生まれてします。妥協案とは、上司の知識の範囲内で導き出されるリスクを取らない仕方ない案のことを指します。

では、融合の相乗効果を生み出すにはどのようにすればよいのでしょう。それにはお互いの考えを知り、更に意見を引き出し、そして自分の意見を述べる必要があります。若手とベテランがお互いを理解し、学び合うことが大切です。そうすることで信頼関係が生まれ、融合の成果である第三の案を生み出すことにつながります。第三の案とは、お互いの案を相互に磨き上げた結果生まれるものです。

【図3】第三の案(融合の成果)

実際に融合の成果を出した企業の事例をご紹介します。A社は20代社員を中心とした若手のプロジェクトを立ち上げ、経営層と相互に理解を図りながら、経営理念を再構築するという取り組みをしました。自由な議論、自由な発想を大切にし、様々な年代、役職が共感できる言葉で経営理念を考え直しました。その結果新たな経営理念発表以来、売上高は年々上昇し続けています。

融合の成果を出すための3つのステップ

それではどのようなステップを踏めば、お互いを理解し、学び合うことができるのでしょうか。第三の案を生み出すための3つのステップをご紹介いたします。
1つ目は、自分を理解すること。2つ目は、自分を理解した上で相手を理解すること。そして3つ目は、両者で思いをぶつけ合うことです。

1つ目の自分を理解する取り組みとして、「自分ブランディング」があります。具体的には、過去の自分を振り返ることで自分の価値観や軸を把握します。そこで分かった軸をもとに、人生のパーパスを考えていきます。自分のいない場所で自分について語ってもらうなど、様々な角度から自分らしさを表出することが大切です。
2つ目の相手を理解する取り組みとして、「若手ワークショップ」と「上司とメンバーの同化プロセス」があります。前者は若手社員の仕事・会社への満足度といった本音を引き出し、ニーズや考え方を解明します。後者では上司についてメンバーから率直に疑問や懸念、依頼といった意見を述べ、上司からフィードバックをもらい課題をその場で解決していきます。普段本音を聞く機会が少ない部下や上司について理解を深めることができます。
最後の取り組みでは、両者で思いを語り合います。企業・組織の方向性をハンドリングしているベテランと、働きがいや生きがいを大切にしている個の方向性をすり合わせ、なぜその会社でその仕事をするのかの意味づけ、腹落ちを行います。
以上のステップを実施することで、相互の信頼関係が築け融合の成果へと繋がっていきます。

【図4】第三の案(融合の成果)を生み出すための3つのステップ

今回は、ベテランの役割、能力を生かし若手と融合することの大切さや、若手とベテランが融合し成果を出すためのステップをご紹介させて頂きました。詳細についてご興味のある方は、是非お問い合わせいただければ幸いです。

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