リソースシフトを適切に
~ヒトを減らさず高度化するシェアードサービスセンター(SSC)の実現~

シェアードサービスセンター(SSC)の設立によって管理部門の間接業務を巻き取る取り組みが行われてきましたが、成功している事例はなかなか少ないのが現状です。
原因の一つとして考えられるのは、日本企業は余力創出の後に人員を削減することをためらい、コストダウンを目的にSSCを推進することが難しいためです。
今回は、余力創出・コストダウンではなく、効率化と高度化を両立させ、役割分担およびリソースシフトを目的とした組織を実現するSSCの在り方をご紹介いたします。

20年前から変われていないSSC

1990年代のバブル崩壊を契機に一般管理費削減を狙いSSCが設立され始めました。
その後は大きく2つの分岐があります。

1つ目は、純粋な「業務遂行者」という立場ではなく、専門家・企画機能としての役割が求められるようになりました。2つ目は、外部化の波に伴うSSC解散(もしくはBPOへの置き換え)の流れです。

いずれにしても、純粋なコストカット先という位置づけから発展はしたものの、あくまでSSCの立場としては業務の「受け皿」であり、またSSCに渡せる範囲のみのシェアード化や、業務をそのまま外部化するようないわば「人の付け替え」にしかならないケースが多く、求めていた効果に到達できない会社が多いのが現状です。

これから求められるSSCは、「人事・会計の“デジタルトランスフォーメーション”の担い手としてのSSC」です。SSCは、BPO・デジタライゼーションも考慮した最適な「構え」を検討し、業務標準化の徹底および対象範囲の拡大を目指さなければなりません。

【図1】20年前から変われていないSSC

適切な役割分担・リソースシフト

では、なぜ業務標準化の徹底および対象範囲の拡大をしなければいけないのでしょうか?
またそれを行った後に何をすればいいのでしょうか?そのイメージについてご紹介させていただきます。

ポイントとしては、「役割分担」と「リソースシフト」です。SSC人財の向かう先としては、高付加価値を提供できるような“経営支援業務および専門性の高いプロフェッショナル業務ができる人財”への移行です。そのため、単純なオペレーション業務については、徹底的な標準化やRPA等による自動化(さらにその中でも判断を伴わないような定例、かつ低付加価値業務については外部化)などによりリソースシフトを目指します。

リソースシフトにより生まれた人員を各社へ配置し、意思決定に必要な情報の調整、専門機能の提供、業務改善、SSC内でレポーティング等の分析業務、準間接業務(調達・購買・物流)の集約およびさらなる標準化・効率化を行います。これにより、戦略に携わる本社/各社の人財が本来業務である戦略や経営判断・意思決定に注力できる環境を実現できます。

【図2】適切な役割分担・リソースシフト

切り分けたはずなのに効果が生まれない

目指すべきイメージもついて、実際に切り分け・役割分担に伴うリソースシフトを行うのですが、次にぶつかる課題としては思ったより効果が発現されないことです。なぜなのでしょうか?

原因の一つは、当初のイメージに比べて標準化の徹底化がうまくできないことです。どうしてもSSC自体が「受け皿」としてのスタートのため、各社の意向に沿った業務設計にしてしまう(過去からの慣習で受け取った業務から変革できない)ケースや、標準業務は定義したが実際に交渉をうまく行えず、結局各社各様のやり方で受け続けてしまい、結果として見込んでいたようなリソースシフトができず、いつまでもオペレーショナルな業務に人財が停滞してしまうのです。

もう一つの原因は、結局オペレーション業務をやっていた方が楽なために、なかなか自身の手から剥がさないことです。特に、長い間在籍されている方で“熟練者”となっている方に多く見られます。人員数の都合上、リソースシフトを目指す際の過渡期対応時にオペレーショナルな業務と専門機能支援業務を兼務させて実施することが多いのですが、そのような場合にはつい馴染みのない業務よりもオペレーショナルな業務に意識が流れがちになってしまいます。これはある種仕方のないことですが、そのままでは想定していたスピード感で推進できず効果も発現しないため、何のためにやらなければいけないのか?と現場が思ってしまう悪循環に陥ってしまいます。

機能別組織のススメ

では、悪循環に陥らないようにするためにはどうすればいいのでしょうか?

それは、オペレーショナルな業務と専門支援業務を剥がすことです。方法として機能別組織について説明させていただきます。機能別組織として組成する際に意識してほしいことは、「オペレーション業務実施者」と「経営支援業務・専門機能業務実施者」に分けることです。SSCから完全にオペレーショナルな業務をなくすことは難しいため、兼務することによってオペレーション業務に結局注力する状況を打破するために、まずは役割を分離しましょう。

「オペレーション業務実施者」は、定型的な業務単位で担当を設け、標準化されたプロセスに沿って一元的に業務を遂行することを目指します。SSCとして業務を受託した際には、会社単位で担当を割り振って実施することが多いかと思いますが、その方法だとせっかく標準化されてどの会社でも一元的に遂行できるようになっている業務方法であっても効果を発揮しづらくなってしまいます。そのため、“プロセス担当”での実施を目指すべきです。

「経営支援業務・専門機能業務実施者」は、まず“集約部隊”として課題対応および徹底的な集約・標準化を行い、“プロセス担当”の負荷を軽減できるように努めます。その後、経営支援機能の高度化や、“各社配置”人員として各社の現場の立場から業務改善や専門機能の提供をします。そうなることで、すでに述べたような各社の人財が本来業務へと注力できるようなリソースシフトが実現できると考えております。

【図3】機能別組織イメージ

以上のように、今回はSSCが目指すべき在り方とは何か、またそれを推進するうえでのポイントは何かについてご紹介しました。詳細については事例を交えながらご説明させていただきますので、是非お問い合わせください。また、組織論や人員シフトイメージに限らず、実際の業務における集約化・標準化の設計方法についてもお問い合わせいただければと思います。

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この記事の執筆者

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