コーポレート機能のプロ化とSSCの果たすべき役割
~経営・事業に資するには~

昨今、人不足やガバナンス強化に向けた要求から、生産性を向上させることや、コーポレート機能による改革・事業への貢献がより一層求められています。本記事においては、コーポレート機能改革の方向性と、その際にグループのシェアードサービスセンター(SSC)が果たしていくべき役割について示していきます。

なぜ、いま、コーポレート機能のスリム化と強化が求められているのか

VUCAと言われている時代、ますます進むグローバル化や経営環境の変化がある中で、ビジョン・方向性を共有しているリーダーに“任せる経営”が求められています。またアフターコロナ、人財の流動化に伴い、働き方・価値観の変容も生じています。さらに、コロナ禍において急速にデジタル化・業務の標準化が進展したことで“社内でやるべきことへ集中”しないと競争に勝てない状況になってきつつあります。つまり、これまで以上にコーポレート機能をスリム化・強化し、生産性を上げ、改革や事業へ貢献することが強く求められるようになってきています。

【図1】コーポレート機能スリム化と強化

強いコーポレート機能とは

現状、本社部門と事業部門、関係会社との間に“組織の壁”があり、それぞれが“個別最適”となっていて、経営から求められる“全体最適”としてのコーポレート機能が設計されていないことが多いのではないでしょうか。例えば、本社部門において事業・関係会社の管理業務がアンコントロールで、その各管理部門の業務レベルに高低のバラつきや、リソースのバラつき(要員の過不足)もあるのではないでしょうか。
この本社部門と事業部門、関係会社の間の“組織の壁”を壊し、グループの横串機能を強化した、強いコーポレート機能の設計が必要です。そして目指すべきは、この強いコーポレート機能がヒト・カネ両面において横串で事業をサポートし、グループとしてプレミアム創出(生産性の向上、改革・事業への貢献)をしていくことです。
ここで、強いコーポレート機能の設計にあたっては、仕組み・業務から設計していくのではなく、まずは“勝つため”のミッション・ポリシーを再定義し、価値観・考え方を共有することが肝要です。

【図2】ミッション・ポリシーを再定義

また、コーポレート業務の現場には、ヒト(タレント)、カネ(財務)、顧客等の各種データが集まってきますが、現状はそのデータを活用しきれていないことも多いのではないでしょうか。強いコーポレート機能においては、それらのデータを「戦略資産」として可視化し、経営・事業支援に活用することが求められてきます。

【図3】データ活用による経営・事業支援

オペレーショナル業務の削減の必要性

コーポレート機能を強化していくにあたり、現状、多くの会社の担当者が日々追われているオペレーショナル業務をスリム化する必要があります。当社の調べでは、担当者の実施している業務のうち、人事74.2%、経理79.1%が3ピラーモデルにおけるOPE(日常のオペレーション業務)に分類されます。その結果、戦略の担い手としてのCoEや、各事業部門に対する具体的サポート機能であるBP業務に手が回っていない状態です。また、当社が経理部門に対して実施した調査によると、今の部署で仕事を続けたい年数が「3年未満」とした回答者が55%にものぼり、業務へのモチベーションが維持できていないという実情も浮かび上がってきます。

【図4】3ピラーモデル

コーポレート機能改革の方向性

これまで述べてきたように、コーポレート機能改革の方向性として、オペレーショナル業務に追われる担当者の業務をスリム化し、そこで創出された余力をCoEやBPにシフトし、モチベーションを上げていくことが求められます。その際に、グループSSCの活用や、外部化可能なものは外部化を徹底することが肝要です。その前提としては、業務の標準化・DX化が必要になってきます。
また、CoEやBPは“プロ化”し、業務の現場で集まったデータを「戦略資産」としてグループ全体で活用していくことが必要不可欠になってきます。

グループSSCの変遷と役割の変遷

オペレーショナルな業務の集約・移管先として活用すべきグループのシェアードサービスセンター(SSC)の変遷、及び役割の変遷について整理したのが下記図です。

【図5】グループSSCの変遷と役割の変遷

過去20年以上にわたり、SSCは「業務の受け皿」としての役割でありました。そのため「できる範囲で」、「業務はそのままで」集約・移管という考え方で活用されてきました。しかし今後は、コーポレート部門のスリム化へ貢献する役割、すなわち人事・会計の“デジタルトランスフォーメーションの担い手”としての役割が求められるようになります。

コーポレート機能のスリム化の目的とグループSSCの役割

コーポレート機能のスリム化の目的として大きく4つに分け、それぞれに対してグループSSCの果たすべき役割を整理したものが下記表です。

【図6】コーポレート機能のスリム化の目的と改革方針

今後は、目的に応じて、余剰人員の他業務へのシフト・最適化(アウトプレースメント)、及び専門人財の育成等、一段の取り組みが必要になってきます。本内容については、後日別の記事にて改めてご紹介します

コーポレート機能のスリム化の考え方・進め方

コーポレート機能のスリム化には、何の業務をSSCに“集め”、何の業務を“各々”(各社)に残すかの切り分けが重要になってきます。

【図7】コーポレート機能におけるOPEのスリム化の考え方

スリム化の進め方として、まず現状の業務を標準化・DX化し、基本的には外部化することを検討します。ここでは、バリューチェーン上の重要な業務、つまり競争優位性に影響する業務をコア業務とし、各々(各社)に残します。一方のノンコア業務を外部化し、コーポレート機能のスリム化を進めていきます。
ただし、現時点ではコストを理由に外部化している業務であっても、将来的には、デジタル化の進展等により内部化させることの方が経済的になることも想定されます。本内容についても、第2回目でご紹介します。
スリム化の先にあるコーポレート機能の強化を見据えた施策を設計していくことが重要です。

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