マーケティング活動の高度化を支えるAI技術と活用事例

◆この記事の要約

マーケティングはバリューチェーン全体の価値最大化に不可欠であり、AI活用により顧客ニーズの把握から需要創出、営業支援、顧客維持まで効率化と高度化が進んでいます。そこで本稿では、マーケティング活動とバリューチェーンの関係を整理し、AIの具体的な活用ポイントと事例を独自視点で解説。今後のAIとマーケティングの協働による競争優位創出の可能性に言及します。

  • バリューチェーンにおけるマーケティングの役割
    顧客接点を通じて価値提案と需要創出を担い、企業の競争優位を支える重要な活動。
  • AI活用ポイント
    市場調査、ターゲット分析、パーソナライズ広告、チャットボットなどで効率化と精度向上を実現。
  • マーケティング活動の具体例
    環境分析、STP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)、4P戦略、実行計画策定を体系的に展開。
  • 今後の展望
    AIの感情認識や自然言語処理の高度化とヒューマン・イン・ザ・ループによる創造性強化が、顧客体験の深化と競争優位の源泉に。
マーケティング戦略は単なる広告活動の計画にとどまらず、顧客獲得や顧客満足度の向上に直結する非常に重要な経営要素であるものの、人手不足に悩む多くの企業は効率的なマーケティング活動について悩まれていると思います。 一方で、近年のAIの進化により、データ分析や顧客行動の予測、パーソナライズされた広告配信など、マーケティングの多くの側面で効率化と精度向上が可能となりました。AIは膨大な情報を高速で処理し、最適な戦略立案や施策の自動化を支援するため、限られたリソースでの効果的なマーケティング活動を後押しします。 そこで本記事では、企業活動に不可欠なマーケティングと昨今注目されているAIを組み合わせ、マーケティング活動とAIの活用ポイント、実際の活用事例について解説します。

バリューチェーンにおけるマーケティングの役割とAI活用ポイント

まずは、バリューチェーンの中でのマーケティングの役割を整理します。マーケティングは、顧客ニーズの把握と価値提案を担い、製品やサービスの需要を創出して企業の競争優位を支えます。つまり、バリューチェーン全体の価値最大化において、マーケティングは顧客との接点を通じて重要な役割を果たします。そのため、バリューチェーン(顧客発掘~獲得~継続受注)と紐づけたAI活用ポイントを解説した後、マーケティングにおけるAI活用の詳細ポイントと事例をご紹介します。

1.マーケティング:ターゲット層への認知獲得や見込み顧客の創出を行い、自社製品やサービスの最初の接点を作り出す。

  • 市場調査
    AIが大量の消費者データを高速で分析し、トレンドや顧客の嗜好を予測。また、自然言語処理を用いてSNSやレビューの感情分析を行い、リアルタイムで市場の声を把握。
  • ターゲット分析とセグメンテーション
    AIによるビッグデータ解析で顧客属性や行動パターンを抽出し、効果的なターゲティングを実現。
  • パーソナライズド広告配信
    機械学習を活用し、顧客の興味・関心に合わせた広告やコンテンツを自動生成・配信。
  • チャットボットによる初期接点の自動化
    ウェブサイトやSNS上での問い合わせ対応を自動化し、見込み顧客の獲得効率を向上。

2.営業(セールス):見込み顧客に対する評価や優先順位付けを行い、実際の顧客へと育て上げる。

  • リードスコアリング
    AIで顧客の行動履歴や属性を分析し、購買意欲の高いリードを自動で抽出・優先順位付け。
  • 営業予測と提案支援
    過去の商談データを基に成約確率を予測し、最適な営業アプローチや提案内容を提示。

3.カスタマーサクセス:実際の顧客の自社製品/サービスの使用満足度を最大化するため、継続的な価値提供を行い、アップセル・クロスセルを促進する。

  • 顧客行動のモニタリングと異常検知
    AIが顧客のサービス利用状況や問い合わせ内容を分析し、離脱リスクや問題兆候を早期に検知。
  • パーソナライズドなフォローアップ提案
    顧客のニーズや利用状況に応じたアップセル・クロスセル提案、フォローメール内容を自動生成。
  • 自動応答システムの活用
    FAQやトラブルシューティングをAIチャットボットで対応し、顧客満足度を向上。

【図1】各サービスバリューチェーンの役割

マーケティングの具体的な活動とポイント

前章のバリューチェーンにおけるマーケティングの役割にもあったとおり、マーケティングは企業が市場で成功するために不可欠な一連の活動です。それゆえここでは、マーケティングの代表的な5つの活動について解説します。

① 環境分析
環境分析は、企業を取り巻く外部および内部の状況を把握するプロセスです。
外部環境分析ではPEST分析(政治・経済・社会・技術の視点からの分析)や、3C分析(顧客・競合・自社の分析)を用いて、市場の動向や競争環境を理解します。内部環境分析では自社の強み・弱みを評価し、SWOT分析で外部機会・脅威と組み合わせて戦略の方向性を検討します。

② セグメンテーション・ターゲティング
市場を細分化(セグメンテーション)し、顧客の属性やニーズに基づいてグループ分けを行います。
そのうえで、自社の商品やサービスに最も適した顧客層(ターゲット)を設定します。これにより、限られたリソースを効果的に活用し、的確なマーケティング施策が可能になります。

③ ポジショニング
ポジショニングは、ターゲット顧客に対して自社の製品やサービスがどのような価値を提供し、競合他社とどのように差別化されているかを明確にする活動です。
明確なポジショニングは、ブランドイメージの形成や顧客の購買意欲向上に寄与します。②のセグメンテーション・ターゲティングとポジショニングの活動を合わせ、「STP【図2】」と表現されることがあります。市場を自社にとって意味のある単位で捉え、自社の差別化された価値を明確にすることがSTPにおけるポイントとなります。

④ 4P(製品・価格・流通・プロモーション)
4Pはマーケティングミックスの基本要素です。
製品(Product)は顧客ニーズに合った商品開発、価格(Price)は市場や競合を踏まえた製品/サービスの適正価格設定、流通(Place)は顧客に商品を届けるチャネルの選定・構築、プロモーション(Promotion)は製品/サービスの価値を適切な方法かつ正しいタイミングで顧客に届ける活動を指します。これらをバランスよく組み合わせることが重要です。

⑤ 実行計画策定・実行
4Pの戦略を具体的な行動計画に落とし込み、営業、製造、物流、カスタマーサポートなど各部門と連携して実行します。計画の進捗管理や効果測定を行い、必要に応じて改善を図ることで、戦略の実現性と成果を高めます。

これらそれぞれのステップで、マーケティング戦略を立案し実行に移すことで、企業は市場での競争優位を築き、持続的な成長を目指すことができます。

【図2】STPとは

マーケティング活動とAIの関係

では、前章におけるマーケティングの①環境分析~⑤実行計画策定・実行の活動の中で、AIはどのように活用され、どの程度効果を出しているのでしょうか。

BtoBマーケティングにおける生成AI活用の実態と提言2025|調査レポート(株式会社才流)では、BtoBマーケティング業務で生成AIを活用したことにより、外注費の削減にどの程度寄与したか調査した結果、「やや削減された」が47.5%と最も多くなり、「大幅に削減された」と合わせると、外注費の削減効果を感じている人は65.7%という結果が示されています。

加えて、toBマーケターへのインタビュー結果では、SEO記事の外注費(月20万〜30万円)がゼロになった事例や、SEO記事のテーマの壁打ちから構成案作成、ライティングまでの一連のプロセスで生成AIを活用したことで、制作の外注費を月400万円ほど削減することができた事例も示されています。

また以下は、マーケティング活動によるAI活用事例です。

■事例1(光ファイバー・ネットワークを中心に、法人向け広帯域ネットワーク、音声サービス、データセンターを提供)

  • AI活用対象のマーケティング活動:①環境分析、②セグメンテーション・ターゲティング
  • 内容:AIにより顧客リスト、売上データ、SNSデータ、ニュース記事などを分析し、分析結果をもとに顧客を3つのセグメントに分類。分類した各セグメントに最適なアプローチを実施することで、案件規模が前年比の120%〜400%成長した。

■事例2(国際的な広告・マーケティング・テクノロジーサービスを提供)

  • AI活用対象のマーケティング活動:④4P(製品・価格・流通・プロモーション)
  • 内容:Googleの生成AI「Gemini」を活用しSNSデータを分析することで、超パーソナライズ広告の実現に成功し、広告クリック率80%増、広告制作コスト97%削減につながった。

【図3】外注費の削減効果

今後のマーケティング活動とAIの関係について

今後、あらゆる業界でのマーケティング活動で、マーケティングとAIの関係はさらに深化し、より高度で柔軟な顧客体験の創出がされていくと思われます。AI技術の進化により、単なるデータ分析や自動化にとどまらず、感情認識や自然言語処理の高度化を通じて、顧客の潜在的な感情や意図をリアルタイムで把握し、よりパーソナルかつ共感的なコミュニケーションが可能になります。

また、AIと人間の協働(ヒューマン・イン・ザ・ループ)が進むことで、マーケターはAIが提供する洞察を活用しつつ、創造性や戦略的判断に集中できる環境が整います。これにより、マーケティング施策の質とスピードが飛躍的に向上し、競争優位の源泉となります。

さらに、プライバシー保護や倫理的配慮がますます重要視される中で、AIの透明性や説明責任を担保しつつ、顧客との信頼関係を築くことがマーケティング成功の鍵となります。

【出典】
・【図3】:株式会社才流 “BtoBマーケティングにおける生成AI活用の実態と提言2025|調査レポート”
https://sairu.co.jp/method/99664/

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この記事の執筆者

  • 神鳥 菜々
    神鳥 菜々
    事業戦略事業部
    シニアコンサルタント

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