コングロマリット・プレミアム創出のカギは非財務資本
~非財務資本の中からコアコンピタンスを発掘せよ~

現在、多くの日本企業が事業の多角化によって、それぞれの事業の価値の合計よりもグループの企業価値が低い、コングロマリット・ディスカウントと言われる状態に陥っています。
この原因には、各事業に統一感を与える企業の強み、いわゆるコアコンピタンスの欠落があるのではないでしょうか。

今回はコアコンピタンスの発掘に必要不可欠な非財務資本の活用とマネジメントに関してお伝えします。

埋もれる非財務資本とコングロマリット・ディスカウント

2014年のコーポレートガバナンス・コード制定以降、企業において様々なガバナンス改革が行われました。特に2017年の伊藤レポート2.0では、企業の競争力の源泉は非財務資本であり、イノベーションを生み出し、企業価値を高めるために非財務資本への投資が必要とされています。逆に言えば、日本企業は非財務資本への投資や管理ができていないため、イノベーションを起こせていないという指摘になります。

多くの日本企業は事業の多角化によって、企業価値が各事業の価値の合計よりも低い、いわゆるコングロマリット・ディスカウントに陥っています。個々の事業が独立して運営されていて、事業の複合体としてのシナジー効果が生み出されていないのです。
本来、事業の多角化は事業間シナジーを生むことを期待されますが、本社によるマネジメントが不足し、シナジー効果を明確化できていないため、投資家にとってはアナジー効果(マイナスのシナジー効果)となり、各事業の事業価値の合計より企業価値が低い評価を受けているのです。

【図1】コングロマリット・ディスカウントとコングロマリット・プレミアム

コングロマリット・ディスカウントをコングロマリット・プレミアムに転換するためには、非財務資本への積極的な投資と管理が不可欠です。そして、グループ本社のコーポレート部門の本来の役割は、非財務資本に投資して、その投資の結果をマネジメントすることなのです。

事業間シナジーを創出するコアコンピタンス

事業間のシナジー効果を生み出すためには、現在のように単純に複数の事業が並列して存在しているだけの状態から、グループ内の各事業が結合して一体となった複合体になる必要があります。
一体化するには、企業独自の強みが各事業に貫かれていることが必要です。コアコンピタンスであるグループの特長、独自性によって複数事業が一つの統合的なビジネスモデルとなることで、シナジー効果が生まれます。

そして、このコアコンピタンスは非財務資本の中に隠れています。各事業に共通するその企業らしさ、強みは何かというと、製造資本、知的資本、人的資本、社会・関係資本いったような非財務資本なのです。そのため、自分たちの強みを認識してコアコンピタンスとなる非財務資本を特定することが、事業シナジーを生み出し、コングロマリット・ディスカウントを解消するカギとなります。事業シナジー創出には、コアコンピタンスを再認識することが始めの一歩なのです。

コアコンピタンスを再認識してコングロマリット・プレミアムを創出した例としては、ソニーが挙げられます。創業理念に立ち戻りつつ「感動」や「量より質」といったグループ共通のキーワードを打ち出して、感動を届けられる製品やサービスの開発という視点で、変革していきました。
そして、事業ポートフォリオ見直しとともに、イノベーションの促進のための仕組みを立ち上げるなど、社内に眠る新規事業の種を掘り起こして事業化する取り組みを行って、次の芽を育てていました。事業ポートフォリオの管理においては、事業を削減するだけでなく、グループとしての強みを伸ばす取り組みが重要なのです。

【図2】複数事業の展開を統合的な一つのビジネスモデルとして捉えた一例

コアコンピタンスの発掘

非財務資本は、ノウハウ、プロセス、人材、ブランド、顧客、取引先とのネットワーク等のビジネスの結果として獲得されたアウトカム(成果)です。自社のコアコンピタンスを再認識する際に、社内の非財務資本を改めて棚卸して分類し、どこに自社の強みがあるのかを見直しする作業が必要になります。

競争力の源泉である非財務資本ですが、現状では多くの企業において非財務資本マネジメントの必要性はほとんど意識されていないと言えます。

人的資本だけは唯一、有価証券報告書での開示が必要になったことから取り組み始める企業が増えてきています。しかし、ほとんどはまた開示対応を中心とした取り組みに留まっており、実質的な取り組みを行おうとしても、社内の理解がなかなか得られなかったり、データが揃っていなかったりといった問題によって思ったように進んでいないケースが多数見受けられます。本格的な人的資本マネジメントへの道のりはまだ遠いというのが現状です。

非財務資本を棚卸した後、何がコアコンピタンスかという社内での徹底的な議論も必要不可欠な手順です。ある企業では、SDGsの前身であるMDGsのころからESG・SDGsに取り組んでいましたが、グループ全体への浸透度はそれほど高くありませんでした。しかし、社会的にESG・SDGsへの関心が高まってきた事を受け、取締役会などでの議論を1年かけて行った末、改めてESGを経営の中心に据える事を決定しました。この1年に及ぶ議論にあたっては、本社コーポレート部門が協力して調査やディスカッションを行い、取締役会での議論の叩き台を作成していました。この様に、本来のグループ本社は、非財務資本の棚卸とコアコンピタンスを見極める議論を積極的にリードしなければならない立場にあるのです。

【図3】価値創造プロセスと非財務資本

非財務資本マネジメント構築はまず見える化から

自社の強みや独自性の原点で、コアコンピタンスのカギであるにも関わらず、現時点で非財務資本は殆どマネジメントされていません。グループ内の非財務資本を整理してまとめ、活用できるようなビジネスプラットフォームの一部として整えておく必要があります。

ビジネスプラットフォームとは事業の統廃合、再構築、新事業開発をスピーディかつ柔軟に実施するためにコーポレートが用意すべきインフラのことで、制度、ルール、プロセス、組織、情報・ICT、といったようなものが該当します。そして、各領域で自社の競争力の源泉となる非財務資本を棚卸し、議論を行い、シナジーを創出する活動に利用できるように、非財務資本マネジメントもこの一環として整備していくことが重要です。

しかし、多くの企業において非財務資本は全く管理されていないため、まずは非財務資本の見える化が必要です。CEO、CFOといったCXOを中心としたグループ本社が主導して非財務資本を見える化したうえでマネジメントしていくことで、事業間シナジーを創出することができるのです。

 

以上のような非財務資本マネジメントを実践し、コングロマリット・プレミアムの創出を是非皆様と実現していきたいと思っております。詳細については是非お問い合わせください。

【図4】経理財務領域のビジネスプラットフォーム(例)

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