簡単に取り組めるが成功するのが難しい「サブスクリプション」

「利益イノベーション」とは、収益多様化×価値獲得パターンの観点から利益を生み出すことを目指す考え方です。今回は価値獲得パターンの1つである「サブスクリプションモデル」について、Netflixを例に解説します。

サブスクリプションは成功するのが難しいビジネスモデル

これまで、「ビジネスモデル変革」や「利益イノベーション」について解説してきました。「ビジネスモデル変革」とは、提供する顧客価値は変えずにビジネスモデルの要素を少しづつ変化させながら収益構造・利益構造を再構築する方法論です。また、「利益イノベーション」とは、ビジネスモデルを再構築するにあたり、収益多様化と価値獲得パターン(主に課金方法)に着目し、利益を生み出すことを目指す考え方です。

今後は具体的なビジネスモデルを取り上げ、何が利益の源泉になっているのか、成功と失敗に分かれるポイントは何か、事例等も踏まえて解説していきます。

今回取り上げるビジネスモデルは、「サブスクリプション」です。「サブスクリプション」は、一時期新しいビジネスモデルの代名詞となり、様々なサービスが展開されました。しかしながら、多くのサブスクリプションサービスが収益・利益を上げられずに撤退しています。「サブスクリプション」は、なぜ導入が容易でありながら収益・利益に結びつかないのか、成功するためには何が必要なのか。「サブスクリプション」の本質に迫ります。

【図1】サブスクリプションの収益・利益構造

そもそもサブスクリプションとは

映画・音楽、新聞・雑誌、車、家電等、世の中には多くのサブスクリプションが溢れています。

サブスクリプションは継続的に収益が発生するビジネスモデルで、利用量に応じて課金する「従量制」と一定利用期間に課金する「定額制」があります。「従量制サブスクリプション」にはluup等のシェアリングサービス、「定額制サブスクリプション」には音楽・動画ストリーミングサービスがあります。

サブスクリプションが注目されている理由は、「成功すると継続して安定した収益・利益が生まれる」ことにあります。デジタル商材のサブスクリプションでは、利用者数の拡大に応じて原価を回収し、利益を創出。モノのサブスクリプションでは、利用期間に応じて原価を回収し、利益を創出。サブスクリプションが成功した場合、企業が提供する付加価値(商品・サービス)自体は変えることなく、大きな収益・利益が見込めます。

新たなテクノロジーが次々に開発される現代、商品ライフサイクルは年々短縮しています。価値観も多様化している中でヒット商品を生むこと自体も難しく、仮にヒット商品を生み出してもその状態がいつまで続くかも分からない、もはやすぐに終わりが来る時代です。モノ・サービスを作って売るだけでは利益が確保できない時代になってきており、新しいビジネスモデル・収益の立て方を各社が模索している状態であり、サブスクリプションは比較的導入しやすいビジネスモデルです。

なぜサブスクリプションでの成長が難しいのか?

長続きしているサブスクリプションビジネスは意外にも少ないということはご存知でしょうか。その理由は、「一定数以上の顧客を獲得する必要があるおよび一定期間以上顧客に利用し続けてもらう必要があるという2条件をクリアできない」ことにあります。

サブスクリプションが広がっている理由の1つに「ユーザー側のお得感」があります。

①コストの予測可能性:サブスクリプションは定期的に支払う金額が固定されているため、ユーザーはコストを予測しやすくなります。
②便利な利用体験:サブスクリプションを利用することで、ユーザーは常に最新のコンテンツやサービスにアクセスできます。
③カスタマイズ性と柔軟性:サブスクリプションは通常、複数のプランやオプションが提供されます。ユーザーは自分のニーズや予算に合わせて適切なプランを選ぶことができます。
④新しいビジネスモデルの創出:サブスクリプションは、ビジネスにおいて継続的な収益を見込めるため、企業にとっても魅力的なビジネスモデルです。
⑤選択肢の増加:サブスクリプションの台頭によって、ユーザーにとって多様な選択肢が生まれました。ユーザーは自分の好みや利便性を考慮して選ぶことができます。

実に、④以外がユーザー側のメリットです。企業側はサブスクリプションを始めるにあたり、利益が出るような価格設定を考えるだけでは不十分で、ユーザーにとってメリットがある(=ユーザーが常に価値を認め続ける)状態を作る必要があるのです。

飽きさせないコンテンツで価値提供:Netflix

Netflixは、サブスクリプションで大きな成功を納めています。事業内容はオンデマンドビデオストリーミングサービスで、今やオリジナルコンテンツの制作にも力を入れています。

Netflixは、1997年に設立され、当初はDVDレンタル事業を行っていました。ユーザーがWeb上でDVDを選び、郵送で手元まで届けられ、視聴後は郵送で返すという形式でユーザー自身が実店舗に足を運ばなくてもDVDが借りられる便利さから非常に人気を得ていました。2007年には現在のオンデマンドビデオストリーミングサービスを開始し、2013年にはオリジナルコンテンツの制作に乗り出します。

冒頭で「サブスクリプションは企業が提供する付加価値(商品・サービス)自体は変えることなく、定期的な収益が見込めるモデル」だと説明しましたが、Netflixはユーザーに価値を認めさせ続けるために能動的に業態を変えています。

更にユーザーに価値を認めさせ続ける仕組みとして、Netflixはオリジナルコンテンツの制作手法においても工夫をしています。ただ単に新たなコンテンツを作り提供しているわけではなく、数千万人の会員から収集されたデータを分析し、ユーザーの興味や傾向などを把握することで需要の高いジャンルやストーリーテリングの傾向を特定し、それに合ったコンテンツを制作しているのです。

【図2】Netflixビジネスモデルの変遷

NetflixとSpotifyからみる儲けの構造の違い

Netflixはどのような儲けの構造を持っているのでしょうか。

収益に関しては、月額利用料金と広告収入で成り立っていますが、収益の90%が月額利用料金です。費用に関しては、一番大きいコストがコンテンツ費用です。Netflixの場合、自社で多くのコンテンツを制作しているため、コンテンツ制作費は資産計上し、毎年コンテンツ資産償却費として費用計上しています。

Netflixのビジネスモデルは、固定費型といわれるコンテンツ配信のビジネスモデルで、会員数×月額利用料金が一定金額を超えると急速に利益が拡大します。リスクを取ってコンテンツの固定費化を図り、利益最大化を目指しています。他社コンテンツ調達では、ストリーミング回数等により調達コストを変動費化できますが、事業拡大しても利益最大化しません。

一方、SpotifyはNetflixと同じ規模の会員数を持ちながら、過去に1回しか黒字化していません。Spotifyのビジネスモデルは、変動費型といわれるコンテンツ配信のビジネスモデルで、コンテンツ原価が収益と連動しているので、会員数×月額利用料金が増えても販管費等を賄えない構造になっています。

Netflix:サブスクリプションによる利益イノベーションの実現

①自社コンテンツ比率を上げる⇒Netflix会員であり続ける理由を作る
②顧客を増やすためにグローバル化⇒コンテンツもグローバル化するため更に魅力が向上する
③料金プランの多様化⇒顧客のニーズに合わせて加入ハードルを下げる
④広告収入で収益多様化⇒料金プランに組み込むことで安いプランへの移行リスクをカバーする
⑤顧客が沼にハマった段階で徐々に値上げ⇒顧客価値が高まった時点で価格転嫁する

今回は、Netflixを例にサブスクリプションについて解説しました。

【図3】NetflixとSpotifyの儲けの構造

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