簡単に取り組めるが成功するのが難しい
「サブスクリプション」

◆この記事の要約

本記事では、簡単に始められるが成功が難しい「サブスクリプション」の本質と実務課題を整理します。収益モデル、顧客維持(チャーン率低下)、主要メトリクス(LTV/ARPU)設計、価格・価値訴求の整合を中心に、実務で使える施策と本記事独自の「初期の顧客経験投資が成功確率を左右する」視点を示します。

  • サブスクリプションは立ち上げが容易でも「継続的な顧客維持」が成功の鍵であり、チャーン率管理が最優先課題である。
  • 収益モデルではLTV/ARPUとCACの均衡が重要で、短期の売上拡大より継続率改善投資を優先すべきである。
  • 価格戦略と価値訴求は顧客セグメントごとに設計し、オンボーディングや初期体験への投資が長期継続を決める。
  • 成功のための実務指標(継続率・分割チャーン、アップセル率、顧客満足度)と、改善のためのPDCA設計を提示。
「利益イノベーション」とは収益多様化×価値獲得パターンの観点から利益を生み出すことを目指す考え方です。今回は価値獲得パターンの1つである「サブスクリプションモデル」について、Netflixを例に解説します。

サブスクリプションは成功するのが難しいビジネスモデル

これまで、「ビジネスモデル変革」「利益イノベーション」について解説してきました。「ビジネスモデル変革」とは、提供する顧客価値は変えずにビジネスモデルの要素を少しずつ変化させながら収益構造・利益構造を再構築する方法論です。また、「利益イノベーション」とは、ビジネスモデルを再構築するにあたり、収益多様化と価値獲得パターン(主に課金方法)に着目し、利益を生み出すことを目指す考え方です。
今後は具体的なビジネスモデルを取り上げ、何が利益の源泉になっているのか、成功と失敗に分かれるポイントは何か、事例等も踏まえて解説していきます。
今回取り上げるビジネスモデルは、「サブスクリプション」です。「サブスクリプション」は、一時期新しいビジネスモデルの代名詞となり、様々なサービスが展開されました。しかしながら、多くのサブスクリプションサービスが収益・利益を上げられずに撤退しています。「サブスクリプション」は、なぜ導入が容易でありながら収益・利益に結びつかないのか、成功するためには何が必要なのか。「サブスクリプション」の本質に迫ります。

【図1】サブスクリプションの収益・利益構造

そもそもサブスクリプションとは

映画・音楽、新聞・雑誌、車、家電等、世の中には多くのサブスクリプションが溢れています。
サブスクリプションは継続的に収益が発生するビジネスモデルで、利用量に応じて課金する「従量制」と一定利用期間に課金する「定額制」があります。「従量制サブスクリプション」にはLUUP等のシェアリングサービス、「定額制サブスクリプション」には音楽・動画ストリーミングサービスがあります。
サブスクリプションが注目されている理由は、「成功すると継続して安定した収益・利益が生まれる」ことにあります。デジタル商材のサブスクリプションでは、利用者数の拡大に応じて原価を回収し、利益創出。モノのサブスクリプションでは、利用期間に応じて原価を回収、利益創出。サブスクリプションが成功した場合、企業が提供する付加価値(商品・サービス)自体は変えることなく、大きな収益・利益が見込めます。
新たなテクノロジーが次々に開発される現代、商品ライフサイクルは年々短縮しています。価値観も多様化している中でヒット商品を生むこと自体も難しく、仮にヒット商品を生み出してもその状態がいつまで続くかも分からない、もはやすぐに終わりが来る時代です。モノ・サービスを作って売るだけでは利益が確保できない時代になってきており、新しいビジネスモデル・収益の立て方を各社が模索している状態であり、サブスクリプションは比較的導入しやすいビジネスモデルです。

なぜサブスクリプションでの成長が難しいのか?

長続きしているサブスクリプションビジネスは意外にも少ないということはご存知でしょうか。
その理由は、「一定数以上の顧客を獲得する必要がある、および一定期間以上顧客に利用し続けてもらう必要がある」という二つの条件をなかなかクリアできないことにあります。サブスクリプションが広がっている理由には、下記のようなものが挙げられます。

「サブスクリプションが広がっている理由」

① コストの予測可能性 ⇒ サブスクリプションは定期的に支払う金額が固定されているため、ユーザーはコストを予測しやすくなります。
② 便利な利用体験 ⇒ サブスクリプションを利用することで、ユーザーは常に最新のコンテンツやサービスにアクセスできます。
③ カスタマイズ性と柔軟性 ⇒ サブスクリプションは通常、複数のプランやオプションが提供されます。ユーザーは自分のニーズや予算に合わせて、適切なプランを選ぶことができます。
④ 新しいビジネスモデルの創出 ⇒ サブスクリプションはビジネスにおいて継続的な収益を見込めるため、企業にとっても魅力的なビジネスモデルです。
⑤ 選択肢の増加 ⇒ サブスクリプションの台頭によって、ユーザーにとって多様な選択肢が生まれました。ユーザーは自分の好みや利便性を考慮して選ぶことができます。

実に、④以外がユーザー側のメリットである“お得感 ”です。企業側はサブスクリプションを始めるにあたり、利益が出るような価格設定を考えるだけでは不十分で、ユーザーにとってメリットがある(=ユーザーが常に価値を認め続ける)状態を作る必要があるのです。

飽きさせないコンテンツで価値提供:Netflix

Netflixはサブスクリプションで大きな成功を納めています。事業内容はオンデマンドビデオストリーミングサービスで、今やオリジナルコンテンツの制作にも力を入れています。
Netflixは1997年に設立され、当初はDVDレンタル事業を行っていました。ユーザーがWeb上でDVDを選び郵送で手元まで届けられ、視聴後は郵送で返すという形式で、ユーザー自身が実店舗に足を運ばなくてもDVDが借りられる便利さから非常に人気を得ていました。2007年には現在のオンデマンドビデオストリーミングサービスを開始し、2013年にはオリジナルコンテンツの制作に乗り出します。
第二章で「サブスクリプションは企業が提供する付加価値(商品・サービス)自体は変えることなく、定期的な収益が見込めるモデル」だと説明しましたが、Netflixはユーザーに価値を認めさせ続けるために能動的に業態を変えています。
さらにユーザーに価値を認めさせ続ける仕組みとして、Netflixはオリジナルコンテンツの制作手法においても工夫をしています。ただ単に新たなコンテンツを作り提供しているわけではなく、数千万人の会員から収集されたデータを分析し、ユーザーの興味や傾向などを把握することで需要の高いジャンルやストーリーテリングの傾向を特定し、それに合ったコンテンツを制作しているのです。

【図2】Netflixビジネスモデルの変遷

NetflixとSpotifyからみる儲けの構造の違い

Netflixはどのような儲けの構造を持っているのでしょうか。
収益に関しては、月額利用料金と広告収入で成り立っていますが、収益の90%が月額利用料金です。費用に関しては、一番大きいコストがコンテンツ費用です。Netflixの場合、自社で多くのコンテンツを制作しているため、コンテンツ制作費は資産計上し、毎年コンテンツ資産償却費として費用計上しています。
Netflixのビジネスモデルは、固定費型といわれるコンテンツ配信のビジネスモデルで、会員数×月額利用料金が一定金額を超えると急速に利益が拡大します。リスクを取ってコンテンツの固定費化を図り、利益最大化を目指しています。他社コンテンツ調達では、ストリーミング回数等により調達コストを変動費化できますが、事業拡大しても利益最大化しません。
一方、SpotifyはNetflixと同じ規模の会員数を持ちながら、過去に1回しか黒字化していません。Soptifyのビジネスモデルは、変動費型といわれるコンテンツ配信のビジネスモデルで、コンテンツ原価が収益と連動しているので、会員数×月額利用料金が増えても販管費等を賄えない構造になっています。

Netflix:サブスクリプションによる利益イノベーションの実現

① 自社コンテンツ比率を上げる⇒Netflix会員であり続ける理由を作る
② 顧客を増やすためにグローバル化⇒コンテンツもグローバル化するためさらに魅力が向上する
③ 料金プランの多様化⇒顧客のニーズに合わせて加入ハードルを下げる
④ 広告収入で収益多様化⇒料金プランに組み込むことで安いプランへの移行リスクをカバーする
⑤ 顧客が沼にハマった段階で徐々に値上げ⇒顧客価値が高まった時点で価格転嫁する

今回は、Netflixを例にサブスクリプションについて解説しました。

【図3】NetflixとSpotifyの儲けの構造

【出典】
・【図3】:「Netflix」、「Spotify」

ソリューションに関するオンライン相談ソリューションに関するオンライン相談 最新情報をお届け!メルマガ登録最新情報をお届け!メルマガ登録

この記事の執筆者

お仕事のご相談や、ご不明な点など、お気軽にお問い合わせください。
セミナー開催予定など最新ニュースをご希望の方はメルマガ登録をお願いいたします。