会計システム刷新

会計システム刷新シリーズ総集編(その3)

この記事の要約

本記事では、会計システム刷新シリーズ総集編(その3)として、ERPや会計パッケージ導入時に重要となる原価管理、連結会計、管理会計、システム連携の要点を整理し、経営判断に資する情報システムを実現するための検討ポイントを解説します。

この記事を読むとわかること

  • 原価管理サブシステムでは、費目別計算、部門別計算、製品別計算に加え、実際原価計算、標準原価計算、BOM・BOP、原価差異分析の設計が重要となる
  • 連結会計サブシステムでは、連結データ取り込み、資本連結、内部取引消去、連結財務諸表作成などを、自社要件と標準機能を踏まえて検討する必要がある
  • 管理会計サブシステムでは、FP&A機能を支える多次元セグメント管理、予算実績管理、KPI分析、シナリオ別シミュレーションが経営管理の高度化に有効となる
  • 会計システム刷新では、購買管理、生産管理、販売管理、人事給与管理など上流システムとの明細単位連携や、インターフェースサブシステム、ETLツール、IT統制の設計が重要となる
2000年前後に各社で構築された会計システムは、四半世紀が経ち大きく老朽化し、刷新の必要性が高まっています。レイヤーズ・コンサルティングでは、ERPや会計システムパッケージによる「会計システム刷新のキホンのキ」として、35回に分けて会計システムの刷新の秘訣をご紹介してきました。
 
特に、 ERPや会計システムパッケージの導入にあたっては、原価管理、管理会計、連結会計などのサブシステム導入やシステム間の連携も問題になります。
 
今回は、会計システム刷新シリーズ総集編(その3)として、第14回~第19回を振り返り、原価管理、管理会計、連結会計などのサブシステム導入やシステム間の連携のポイントをご紹介します。

【第14回】原価管理ってシステムでどうやるの?(前編)

会計システムのサブシステムとして原価管理サブシステムがあります。
原価管理サブシステムは、製造業をはじめとした多くの業種で、製品やサービスの原価を正確に把握し、コスト管理や利益分析、経営判断を支援するための重要なシステムです。特に、原価管理サブシステムは、製造業や建設業・ソフトウェア業のようなプロジェクト型の事業においては不可欠なシステムです。

原価管理サブシステムは、ERPや会計パッケージの一部として提供されるものもありますが、専用パッケージとして提供されるものもあるため、ERPや会計パッケージの導入にあたっては、それらがどのような標準機能をもっているか、ERPや会計パッケージと同じものを選ぶか、違う提供企業のシステムを選ぶかなどの検討が重要となってきます。

そこで「第14回 原価管理ってシステムでどうやるの?(前編)」では、原価管理サブシステムについて、原価計算の流れ、各種マスタ設定、実績データ取得、費目別計算、部門別計算までのポイントを解説しました。

主なポイント

  • 原価管理サブシステムの主要機能
    生産管理や会計システムと連携し、費目別計算→部門別計算→製品別計算の3段階で原価計算を実施し、棚卸資産・売上原価・損益関連の仕訳を会計システムに連携
     
  • 原価管理サブシステムの各種マスタ設定
    品目マスタ、原価費目マスタ、原価部門マスタ、チャージレートマスタ、標準原価マスタなど原価管理に必要なマスタを設定
    実際原価計算や標準原価計算の採用に応じて、計算ロジックや計算手順等も設定
     
  • 実績データ等取得処理
    会計システム、購買管理システム、生産管理システム、販売システムなどからインターフェースで原価管理に必要データを取り込み
     
  • 費目別計算処理
    実際原価計算や標準原価計算の採用に応じて、材料費、労務費、経費を一定のロジックで計算
    実際原価計算であっても、予定価格や予定賃率を採用する場合は、これらを事前にマスタに設定することが必要
     
  • 部門別計算処理と配賦
    原価部門(製造部門・補助部門)を定義し、配賦基準・配賦率・配賦順序などをマスタに設定
    部門共通費配賦や補助部門費配賦を、原価管理システムと会計システムのどちらで実施するかも検討

【図1】原価管理サブシステムの主な機能

【第15回】原価管理ってシステムでどうやるの?(中編)

原価計算サブシステムの原価計算方法としては、製造指図書等の特定の原価計算対象に原価を集計する実際個別計算が広く用いられています。実際個別原価計算には、建設や大型機械のようなプロジェクトを対象に原価を集計するプロジェクト型実際原価計算と、工程ごとの生産品の製造指図書を対象に原価を集計する指図書別実際原価計算があります。

そこで「第15回 原価管理ってシステムでどうやるの?(中編)」では、実務で広く使われる「プロジェクト別実際原価計算」と「指図書別実際原価計算」について、データ連携や処理プロセスを具体的に解説しました。

主なポイント

  • プロジェクト別実際原価計算処理
    最終的な完成品を原価集計単位としてのプロジェクトとして設定
    建築物、航空機、船舶、大型機械装置、ソフトウェア等の顧客仕様に基づく、一品一様型の製品では一般的に多く採用
    規格品を受注し、この受注単位でモノを手配し生産する場合、受注単位をプロジェクトとして設定する場合もあり
    プロジェクト単位で直接費・加工費を集計し、完成時に一括して売上原価へ計上
     
  • 指図書別実際原価計算処理
    規格品を生産する場合、各工程における生産効率のよい生産量をまとめ(ロット)、製造指図書を発行して生産
    規格品のロット生産において、製造指図書を原価集計単位として設定
    製造指図書単位で直接費・加工費を集計し、工程間の転がし計算や受払計算を経て、製品原価を算出

【図2】指図書別実際原価計算における品目別原価(中間生産品・完成品)の受払計算

【第16回】原価管理ってシステムでどうやるの?(後編)

原価計算サブシステムの原価計算方法としては、規格品を生産している組立メーカーなどでは、一般的に指図書別標準原価計算が採用されています。指図書別標準原価計算は、品目ごとに製品単位あたりの標準原価を設定したうえで、品目の製造指図書ごとに実際原価と標準原価を集計し、生産効率を評価する原価計算方式です。

そこで「第16回 原価管理ってシステムでどうやるの?(後編)」では、指図書別標準原価計算について、BOM(部品表)やBOP(工程表)を用いた標準原価設定から、製造指図書に基づく計算、原価差異分析、さらには一般会計サブシステムとの仕訳・データ連携まで、導入時に検討すべき要件を体系的に解説しました。

主なポイント

  • 指図書別標準原価計算処理
    BOM・BOPによる標準原価設定、製造指図書ごとの標準価格・標準加工費率での費目別実績計算、標準原価による仕掛品・完成品原価計算、完成時の原価差異計算(数量差異・時間差異等)といった一連の計算処理
     
  • 会計システム連携処理
    一般会計から費用発生額として勘定科目残高データをインターフェース
    原価管理システムから計算結果としての受払仕訳や売上原価仕訳を一般会計へインターフェース
     
  • 導入上のポイント
    生産管理機能を持たないERPや会計パッケージでの制約を踏まえ、原価管理専用パッケージの導入も検討

【図3】標準原価設定のイメージ

【第17回】連結決算ってシステムでどうやるの?

複数の子会社や関連会社を持つ企業グループが、グループ全体の財務状況を一元的に把握・報告するためのシステムが連結会計サブシステムです。上場企業は連結ベースでの財務諸表開示が義務付けられているため、連結会計サブシステムが必要です。

連結会計サブシステムは、ERPや会計パッケージの一部として提供されるものもありますが、専用パッケージとして提供されるものもあるため、ERPや会計パッケージの導入にあたっては、それらがどのような標準機能をもっているか、ERPや会計パッケージと同じものを選ぶか、違う提供企業が提供するものを選ぶか、といった検討が重要となってきます。

そこで「第17回 連結決算ってシステムでどうやるの?」では、連結会計サブシステムの全体像、各種マスタ設定から連結データ取り込み、資本連結・内部取引消去などの連結処理、連結財務諸表(P/L・B/S・C/F)作成までを、ERPと会計パッケージ選定の観点で解説しました。

主なポイント

  • 連結会計サブシステムの主要機能
    企業グループの財務状況を一元的に把握・報告し、連結決算データを作成する基盤
    各種マスタ登録、連結データ取り込み、連結調整処理、連結財務諸表作成処理などの機能を保持
     
  • 連結会計サブシステムの各種マスタ設定
    グループ会社マスタ、連結勘定科目マスタ、科目変換マスタ、セグメントマスタ、会計期間マスタ、通貨マスタ等連結処理に必要なマスタを設定
     
  • 連結データ取り込み処理
    グループ会社の仕訳・勘定残高を、手動入力、Excelインポート(連結パッケージ:連結PKG)、会計システムのインターフェースデータで取り込み
    ETLツールや取り込みステータス管理で運用性を確保
     
  • 連結処理
    資本連結(のれん・非支配株主持分)、内部取引消去、債権・債務消去、未実現利益消去を連結仕訳として計上
    投資履歴や取引先情報など事前登録がポイント
     
  • 導入上のポイント
    ERPや会計パッケージが保有するサブシステムか、連結専用パッケージかを、自社要件と標準機能を踏まえて選定
    管理会計ニーズ(データ分析、ガバナンス等)を満たすための明細データ蓄積の可否(保持データ量・データ変換方法)も導入時に確認

【図4】連結会計サブシステムの主な機能

【第18回】管理会計ってシステムで何ができるの?

管理会計サブシステムは、企業グループや各社の短期的・中長期的な業績管理するために財務会計とは別に行われる各種内部管理を支援するサブシステムです。昨今、CFO組織の重要な機能としてFP&A機能(Financial Planning & Analysis)が求められていますが、FP&A機能を十分発揮するためには、この管理会計サブシステムが不可欠です。

管理会計サブシステムは、ERPや会計パッケージの一部として提供されるものもありますが、CPMツール(Corporate Performance Management)として提供されるものもあるため、ERPや会計パッケージの導入にあたっては、それらがどのような標準機能をもっているか、ERPや会計パッケージと同じものを選ぶか、違う提供企業が提供するものを選ぶかなどの検討が重要となってきます。

そこで「第18回 管理会計ってシステムで何ができるの?」では、FP&A機能を支える管理会計サブシステムについて、システムの構成、仕訳・勘定残高・取引明細データの取り込みから、連結処理、多次元セグメント管理、予算実績管理までを整理し、ERP/会計パッケージかCPMツールかの選定ポイントも解説しました。

主なポイント

  • 管理会計サブシステムの主要機能
    企業グループがグループ全体または各社の経営管理や意思決定を支援するため基盤
    各種マスタ登録、データ取り込み、連結処理、多次元セグメント管理、予算実績管理などの機能を保持
  • 各種マスタ設定
    グループ会社マスタ、連結勘定科目マスタ、科目変換マスタ、セグメントマスタ、会計期間マスタ、通貨マスタ等管理会計に必要なマスタを設定
     
  • データ取り込み処理
    グループ会社の仕訳・勘定残高・取引明細データを、手動入力、Excelインポート、インターフェースデータで取り込み
    画面入力やExcelインポートは誤謬リスクあり
    インターフェースデータはETLツールとAPIで自動化しやすく、IT統制を担保すれば最も信頼性が高い(大量の明細データ保有にも有効)
     
  • 連結処理
    管理会計としての資本連結(のれん・非支配株主持分)、内部取引消去、債権・債務消去、未実現利益消去を実施
    ただし、管理会計は迅速性・有益性を重視し、簡便処理で実施
     
  • 多次元セグメント管理
    事業セグメント、製品・サービス、組織、地域、取引先で分析
    セグメント分析のための配賦処理(配賦基準・配賦率、非会計データ取り込み)を実施
     
  • 予算実績管理
    計画編成、計画と実績の比較・差異分析、ダッシュボード表示、KPI分析、シナリオ別シミュレーション・予測(AIを活用した予測も含む)で意思決定を支援

【図5】多次元セグメントのイメージ

【第19回】会計システムのシステム連携にはどんなのがあるの?

企業には、会計システムのほかに購買管理システム、生産管理システム、販売管理システム、人事管理システム等の基幹システムがあります。会計システムは下流に位置し、上流のシステムからのデータを連携し、会計処理を行うことが一般的です。

したがって、会計システムを刷新するうえでは、この上流システムから情報を理解することが重要になります。特に、上流システムにスクラッチ開発の古いシステムを使っている場合、システム連携が複雑になります。また、会計システム刷新に合わせ上流システムを刷新したり、ERPを導入したりすることもありますが、これらの刷新がうまくいかず、会計システム刷新に影響がでたプロジェクトも少なくありません。

そこで「第19回 会計システムのシステム連携にはどんなのがあるの?」では、基幹システムとのシステム連携について、購買管理・生産管理・販売管理・人事給与管理からの取引データのインターフェース、インターフェースサブシステムで仕訳データへ変換、IT統制のポイントを解説しました。

主なポイント

  • 基幹システムの全体像
    会計システムは下流に位置し、上流システム(購買管理、生産管理、販売管理、人事給与管理)のデータを連携して会計処理
    スクラッチ開発の古いシステムが残っているとデータの流れが複雑化
     
  • 連携タイミングとデータ粒度
    検収・入庫、支払、出荷(検収)、入金、給与支払など「会計上の取引」を取引データとして連携
    従来のサマリー連携(合計仕訳)から、品目・数量・単価を含む明細単位連携が増加
     
  • 機能配置のポイント
    債務管理や債権管理は、請求条件・サイト等が複雑な場合は購買システムや販売システム側に機能配置されることもあるため、システム刷新時の早い段階で切り分けを検討
     
  • インターフェースサブシステム
    上流の取引データをERPや会計パッケージのデータ形式(仕訳の形式)へ変換して登録
    IT統制が担保されれば承認済仕訳として計上可能
    ETLツールで送受信・変換を自動化

【図6】基幹システムの全体イメージ

まとめ

今回は会計システム刷新シリーズ総集編(その3)として、第14回~第19回を振り返り、原価管理、管理会計、連結会計などのサブシステム導入やシステム間の連携のポイントをご紹介しました。

今後の会計システム刷新は、ERPや会計パッケージに限らず様々なクラウドサービスやAIサービスを活用して「真に経営に資する情報システム」として実現する必要があります。個別のERPや会計パッケージ、クラウドサービスの活用のポイントについて、レイヤーズ・コンサルティングでは多数のご支援実績をもとに、貴社の課題感に合った内容をご紹介することが可能です。是非お気軽にお問い合わせください。

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