会計システム刷新シリーズ総集編(その1)
◆この記事の要約
本記事では、老朽化した会計システムを「経営に資する情報基盤」へ刷新するために、ERP・会計パッケージ活用、Fit to Standard、クラウドサービス、標準機能設定の基本を解説します。経理財務部門が押さえるべきシステム構造や導入時の吟味ポイントについて整理します。
- 会計システム刷新は、単なる老朽化対応ではなく、DX・AI時代の経営判断を支える「意思決定システム」への転換が重要です。
- ERPや会計パッケージの導入では、Fit to Standardを前提に、標準機能を活用し、カスタマイズ開発やアドオン開発を最小限に抑えることが成功の鍵となります。
- 会計システムの基本構成、オンプレミスとクラウド、一般会計・債権管理・債務管理・固定資産管理などのサブシステム構成を理解することが刷新の前提です。
- データベース構造、マスターとトランザクション、仕訳テーブル・元帳残高テーブル、会計期間・勘定科目・組織などの基本設定を導入時に吟味する必要があります。
こうした背景から、レイヤーズ・コンサルティングでは、ERPや会計システムパッケージによる「会計システム刷新のキホンのキ」として、35回にわたり会計システムの刷新の秘訣をご紹介してきましたが、その総集編として全5回でそのポイントを振り返ります。
会計システム刷新にあたっては、プロジェクトの推進責任部門である経理財務部門が、会計システムのシステム構造、標準機能設定やカスタマイズ・アドオン開発などの基本を理解しておくことが重要です。
そこで会計システム刷新シリーズ総集編(その1)では、第1回から第6回を振り返り、会計システムの基本的なポイントについてご紹介します。
【第1回】古くて新しい会計システム刷新の秘訣とは
会計システム刷新は、単なる老朽化対応ではなく「経営に資する情報基盤」への再構築が求められています。
また、2000年前後のERP導入期の失敗から四半世紀を経て、今日の会計システム刷新ではFit to Standardによる業務変革が成功の鍵を握ります。
そこで「第1回 古くて新しい会計システム刷新の秘訣とは」では、DX時代の経営管理に直結する会計システム刷新の要諦を解説しました。
主なポイント
- 2000年前後のERP導入の失敗
業務効率化偏重によるアドオン過多と不十分な経営情報活用(高いが使えないシステム)
- Fit to Standard(FTS)による会計システム刷新の実現
ERPや会計パッケージの標準機能に業務を合わせることで、開発コストを抑え全体最適を実現する
- DX・AI時代の会計システム刷新の再定義
会計システムは“記録システム”から“意思決定システム”へ転換し、経営スピードを高めることに主眼を置く
- プロジェクト成功の鍵はグランドデザイン策定
「経営・業務・システム」という3つの観点から、ブレのない刷新方針すなわち「グランドデザイン」を描くことが成功を左右する
【図1】グランドデザインの3つの観点
【第2回】会計システムとは何か?知っておきたいキホンのキ
老朽化した会計システムの刷新が求められる中、ERPや会計パケージ、会計クラウドサービスなど様々な製品・サービスが提供されています。会計システムを刷新するためには、まずは会計システムの基本を理解することが重要です。
そこで「第2回 会計システムとは何か?知っておきたいキホンのキ」では、会計システムの基本構造から、基幹システムとしての会計システムの位置付け、サブシステム構成、クラウドサービス選定の要点まで、会計システム刷新の前提となる全体像を解説しました。
主なポイント
- 会計システムの役割
企業の財務データを効率的に管理・処理するためのソフトウェア。日々の取引記録から財務諸表の作成、税務申告などの処理を行い、経営判断に役立つ経営情報を提供。企業の財務会計と管理会計を担う重要なシステム
- 会計システムの基本構成
会計システムもハードウェア(サーバー、ストレージ、ネットワーク)とソフトウェア(OS、ミドルウェア、データ、アプリケーションソフト)で構成される
- オンプレミスとクラウド(IaaS・PaaS・SaaS)
オンプレミスとクラウド(IaaS・PaaS・SaaS)の違いと留意点。セキュリティやTCO(Total Cost of Ownership)などの観点からクラウドサービスの活用が主流
- 基幹システムとしての位置づけ
販売管理・購買管理・生産管理など上流システムとの連携に重要な基幹システム。ERP(Enterprise Resource Planning)の実態は、これらを統合した各種伝票処理システム
- 会計システムにおけるサブシステム構成
一般会計、債権管理、債務管理、固定資産管理、管理会計など主要モジュール(サブシステム)で構成。会計システム刷新では、それぞれどのような製品サービスを導入するかがポイント
【図2】会計システムのサブシステム構成イメージ
【第3回】今どきの会計システム刷新方法の秘訣とは
老朽化した会計システムの刷新方法には、スクラッチ開発、ERP活用、会計パッケージ活用、クラウドサービス活用など様々な手段があります。
そこで「第3回 今どきの会計システム刷新方法の秘訣とは」では、スクラッチ開発とERP・会計パッケージ活用の違い、統合型パッケージ(ERP)と専用型パッケージの違い、密結合か疎結合かというERPの設計思想の違い、オンプレミス型とクラウド型(SaaS含む)の違いなどを体系的に整理し、今どきの刷新方法の秘訣を解説しました。
主なポイント
- スクラッチ開発とERP・会計パッケージ活用の違いと選択ポイント
会計システム開発の実現手段は、「スクラッチ開発(作る)」と「ERP・会計パッケージ活用(買う)」。最近はERP・会計パッケージの標準機能も充実、スクラッチ開発よりERP・会計パッケージ活用(買う)を推奨
- 統合型パッケージ(ERP)と専用型パッケージの特徴と見極め方
統合型はERPの一部として会計システムがあるもの、専用型は会計システム単独であるもの。統合型と専用型では、設計思想や機能構成が異なるためこれらを吟味
- 密結合・疎結合などERPの設計思想と拡張性の見極め方
ERPの設計思想により、導入方法や機能拡張性が異なるため、各ERPの設計思想や拡張性を吟味
- オンプレミス型とクラウド型(SaaS・IaaS・PaaS)の違いとクラウド活用の前提
システム資源をどこまで自社でもつかによって、オンプレミス型とクラウド型の構築に分かれる。昨今は、Fit to Standardでの導入を前提に、運用・保守性やスケーラビリティ性などが高いクラウド型での導入が主流
【図3】オンプレミス型かクラウド型か
【第4回】会計システムの標準機能活用・機能追加の秘訣とは
ERPや会計パッケージを導入する場合、それらが用意している標準機能を利用することが前提となります。自社の業務要件をどうしても満たせない場合、「カスタマイズ開発」や「アドオン開発」が必要になりますが、これらがあまりにも多いと後々の保守メンテナンスに支障が発生し、ERPや会計パッケージを導入するメリットを打ち消しかねません。会計システム刷新にあたっては、ERPや会計パッケージの標準機能活用、カスタマイズ開発やアドオン開発の内容や方法、特徴を正しく理解し、カスタマイズ開発やアドオン開発を最小化することが重要です。
そこで「第4回 会計システムの標準機能活用・機能追加の秘訣とは」では、会計システム刷新の成否を分ける「標準機能の使いこなし」と「Fit to Standard」の視点から、導入・拡張の考え方を解説しました。
主なポイント
- パラメーター設定による標準機能の見極め
ERPや会計パッケージにおいてシステムの動作や業務プロセスを柔軟に変更・調整するための設定項目がパラメーター。パラメーター設定などの標準機能設定で業務要件をどこまで実現できるかを見極め、過度なカスタマイズやアドオンを防ぐ
- API連携による機能拡張
API(Application Programming Interface)とは、ソフトウェア同士が互いに機能やデータをやり取りするための「窓口」や「ルール」。API連携で、外部システムやクラウドサービスを安全・効率的に連携し、拡張性を高める
- カスタマイズ開発の留意点
カスタマイズ開発は標準機能の画面、業務ロジックを直接修正・拡張する開発手法。プログラム改変による開発コスト・保守コストの増加やバージョンアップ時の弊害から、カスタマイズ開発は行わないことを基本方針とする
- アドオン開発の留意点
アドオン開発とは、ERPや会計パッケージの標準機能を変更せず、外部モジュールや追加プログラムとして機能を拡張する開発手法。標準機能を変更せず機能拡張できるが、開発コスト・保守コストの増加などを招くため、アドオン開発は最小限とする
【図4】アドオン・カスタマイズの弊害
【第5回】会計システムのデータベース構造とは
ERPや会計パッケージもシステムの一種ですから、アプリケーションソフトウェアとデータベースで構成されています。会計システム刷新の成功のためには、ERPや会計パッケージの機能だけでなく、データベース構造の理解が不可欠です。
そこで「第5回 会計システムのデータベース構造とは」では、リレーショナルデータベース、マスターとトランザクション、仕訳・元帳残高テーブルとサブシステムといった会計システム特有の構造を整理し、経営に資する会計システムを実現するための視点を解説しました。
主なポイント
- リレーショナルデータベース(RDB)の特徴
データを表形式(テーブル)で管理し、複数のテーブルを相互に関連付けて高度な検索・集計を行うデータベース。テーブルには、データ(レコード)が格納され、データは主キー・データ項目などで管理
- マスターとトランザクション
データベースの情報は、勘定科目マスターや顧客マスターなどのマスター情報と、日々発生・蓄積する取引データのトランザクション情報で構成
- 仕訳テーブルと元帳残高テーブル
仕訳テーブルと元帳残高テーブルは、会計の仕訳帳と総勘定元帳の役割。仕訳テーブルは、日々の仕訳データを発生順に記録。元帳残高テーブルは、一定の期間の総勘定元帳残高を、仕訳データを基に計算し記録。仕訳データとして持てる情報や元帳残高のデータ粒度・更新タイミングなどはERPや会計パッケージごとに異なるので導入時に吟味
- サブシステム(補助簿)
サブシステムは、会計の補助簿の役割。債権、債務、固定資産などの対象ごとに取引明細を履歴管理し、減価償却・金利計算などの処理も実施
【図5】仕訳テーブルのイメージ
【第6回】会計システムの基本設定のポイントとは
ERPや会計パッケージを使用するためには、いくつかの基本的な設定項目があります。
例えば、各種マスターの設定を行わないと、会計システムとして想定する入出力処理が適切に行えません。こうした設定はERPや会計パッケージによって異なりますが、会計期間、勘定科目、組織、会計単位、会社、取引先やセグメントなどのマスター設定が基本的なものになります。これらの基本設定をうまくやるか否かで、会計システムの使い勝手や経営に必要な情報提供に大きな違いがでます。
そこで「第6回 会計システムの基本設定のポイントとは」では、経営に資する会計システムを作るための基本設定の考え方と確認すべきポイントを解説しました。
主なポイント
- 会計期間設定
会社の会計期間に応じて会計期間を会計システムに設定。会計期間のオープン処理・クローズ処理で入力制限や特殊処理などを制御。月次・四半期・週次決算の設定や決算仕訳・先日付仕訳の扱いなどは、ERPや会計パッケージごとに異なるので導入時に吟味
- 勘定科目設定
会社が通常使っている勘定科目を会計システムに設定。勘定科目体系の設計、階層管理と表示科目の考え方、有効日管理や元帳残高テーブルのキー設定などは、ERPや会計パッケージごとに異なるので導入時に吟味
- 組織設定
会社の組織体系を会計システムに設定。組織・会計単位・会社コードの役割の違いと階層管理、P/L・B/S項目や権限・承認ルートと連動した組織設定などは、ERPや会計パッケージごとに異なるので導入時に吟味
- その他の基本設定
記帳通貨設定、言語設定、取引先・セグメント・プロジェクトなど各種マスター設定など。これらも、ERPや会計パッケージごとに異なるので導入時に吟味
【図6】会計期間とオープン処理・クローズ処理のイメージ
まとめ
今回は会計システム刷新シリーズ総集編(その1)として、第1回から第6回を振り返り、会計システムの基本的ポイントをご紹介しました。
今後の会計システム刷新は、ERPや会計パッケージに限らず、様々なクラウドサービスやAIサービスを活用して「真に経営に資する情報システム」として実現する必要があります。個別のERPや会計パッケージ、クラウドサービスの活用のポイントについて、レイヤーズ・コンサルティングでは多数のご支援実績をもとに、貴社の課題感に合った内容をご紹介することが可能です。是非お気軽にお問い合わせください。


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この記事の執筆者
-
村井 泰三経営管理事業部
バイスマネージングディレクター -
山本 晶代経営管理事業部
ディレクター -
飯田 稜大経営管理事業部
シニアマネージャー
職種別ソリューション









